刹那の記憶

小説家になろう の方でも更新してます。
温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
いきなりどーんっと更新することが多いです、そこらへんすみません。

第零話 せかいのはじまり。

 雨が訴えかけているように強く降っていた。
さっきまで賑わっていたはずの街の市場には人一人いない。

街の中にそびえたつ城の前にはたくさんの人たちが集まっている。
人々は不安そうに城を見上げていた、やがて城から慌てて数名が飛び出してきて息をきらしながら言った。
「生まれたぞ!!現界に王たちがお生まれになった!!」
その瞬間人々は歓喜に包まれた。

「王たちがお生まれになった!!これ以上の喜びはない!!」
「宴だ!!祭りだ!!祝おう!!」
 人々はとても嬉しそうに騒いでいた。


*****巡り巡って魂は行き交う 6人の王に一人の真王 生まれしとき世界に安定と恵みがおとずれるだろう ただ、安定と恵みだけとは限らぬが*****



ーあなたが望む世界は何?

第一話 おさななじみ。

 いつも通りの朝の喧騒、友達との会話
 私はこれが好きだ。いつもの幼馴染にあたる2人との登校。
「怜、おはよう」
ふわふわとした声で私の幼馴染の一人である伊邪那花織が家に迎えにきた。
「おはよう、尚を迎えに行きましょ。」

尚も幼馴染の一人で神武尚という。

「うん、ちゃんと起きて仕度できてるかな?」

少し期待しているのか楽しそうな様子の花織とは違い、私はいつものパターンを思い浮かべ 気が滅入っていた。

「うーん、どうかな 多分できてないと思うけどね。」

いつもたくさんのバリエーションで尚はお出迎えしてくれる。
昨日は部屋の中まで迎えに行ったところ、部屋は物で溢れかえり 尚は埋れてなかなか助け出すのに苦労した。
花織は今日は何が起こるのだろうとわくわくしているのだろう。

「ふふ、そうね。」

数分で尚の家に着く。
ガチャッ
すごい勢いでドアが開いたかと思うと尚が出てきた。

「どうだ!!俺だって仕度ぐらいできるんだぜ」

制服はよれよれ、ネクタイが見当たらない。
(なるほど、今日はこうきたか…)
だが残念なことにやっぱり完璧ではなかった。

「尚、ネクタイが無いわよ。」
花織は唖然として尚を見ていた。

「げっ!!どこにしまったかな?」

私達は呆れてなにも言葉が出なかった。
今回も時間がかかりそうである。

第二話 がっこう。

「尚のせいで遅刻するとこだったじゃない!!」尚に怒鳴る。

「悪かったって、でも間に合っただろ?」
実に尚らしい答えにむかつく。

「間に合わなかったらどうしてたのよ!!」

尚は少し考えて笑顔で言った。
「遅刻?」
あまりにもむかついたので腹を一発殴る。
「ゲフッ!?」
尚は腹を抱えてうずくまる。

少しスッキリしたため尚を放って教室に向かう。その時廊下で何か人影をみたような気がしたが振り向くと誰もいなかったのでそのまま教室に向かった。


教室に入ると丁度チャイムが鳴った。

「ふぅ、本当にギリギリだったわね。」花織も私のすぐ後に教室に入ってきた。
「尚は?」
「あれ?さっきまで私の後ろにいたんだけどなー。」
花織は不思議そうに考えていた。

「まあ、後でくるでしょ。」
「そうだね。」

私達は席について午前の授業を受けていたが、それにしても尚がいつまでたってもやってこない。
3限が終わったのに尚はまだ教室に来ていなかった。

「花織、尚はどこに行ったんだと思う?」
「うーん、保健室とか?」

確かに朝に殴ってしまったがそこまで強かっただろうか?
いつもと同じぐらいにしか殴っていないはずだ。

「まあ、4限が終わっても来なかったらお昼に探しに行こう。」

「わかった。」

花織と約束して4限目の授業を受けた。

第三話 しゅうげきしゃ。

 結局、尚は教室にやってこなかった。
「もう‼︎どこに行ったんだろう?」

殴ったことを少し後悔し始めた。
(私が殴らなければこんなことにはならなかったのに…)

花織と校舎の端の方まで探しにきて、諦めて帰ろうとした時に、一番奥の教室から怒号が聞こえた。

「何言ってんのかわかんねぇよ!!」

この声は尚の声だ。
(こんなところにいたのかだけど誰と話してるんだろう?)

私と花織は足音を立てないように少しずつ近づいて中の様子を確認した。

教室には椅子に縛り付けられた尚と金髪の少年と黒髪の少女がいた。

「君が真王ということは知ってるんだ。一緒にいたあの女も仲間なんだろう?」

少年は呆れたように言った、一方で少女は実につまらなさそうに髪の毛をいじっている。

「はぁ!?何言ってんだよ…王とか何だよそれ…。」

少年はもう我慢できないかのように尚を見て、そして手を掲げた。
少年の手の近くで光が集まったかと思えば次の瞬間その手には剣のようなものを持っていた。
いや、剣のようなものではなく剣だった。

少年は鞘から剣を抜き尚の首筋に剣の切っ先を向けた。

「もう消えちゃう?だから僕は回りくどくてやだって言ったのに……。」

尚も私達も驚愕した。
(やばい…さすがにこれはやばい…
どうしたらいいんだろう、どうすれば尚を救えるんだろう。)

考えても考えても案は浮かばず、もう少年は剣を振り上げて尚を斬ろうとしていた。

(まずい!!)
そう思った瞬間に体が動いてしまっていた。
私は駆け出して尚に向かって手を伸ばす。

「やめて!!」
尚をかばった瞬間に私はホッとした、これで尚は助かる。
何としてでも尚を守る、でもこれで2人とはお別れかな?

(私、死ぬのか…嫌だな…もっと2人といたい!!)

そう思った瞬間、手元が光った。

来訪者

飛び出したのはいいが、どうしようもなく
近づく刃に身が縮こまる。
その瞬間、眩い光で周りは見えなくなる。

(斬られるっ…)

ぎゅっと目を閉じていたが、痛くない。

(あれ?おかしいな。)

不思議に思い、目を開いたら私の手には二丁の拳銃があり、それで剣を防いでいた。

「え、なにこれ!?」
私は状況がつかめず慌てた。

「やっぱり仲間だったんじゃないか!!」
少年は剣で銃を振りはらい再び斬りかかろうとした。防ぎたいが足が震えて動けない。

(危ない!!)
その瞬間に近くから窓ガラスが割れたような大きな音がした。
しかし、窓ガラスが割れたようなではなく本当に割れていた。

少年と少女、私たちは割れた窓ガラスの方を見た。

「ふぅ、何とか間に合いました〜よかったですぅ〜。」

「これは間に合ったっていうの?まあいいか、真王も無事だし怜も無事だし…お、花織も無事みたいです。」

不思議なふわっとした衣裳をまとった少女とキチッとした英国風の衣裳を着た少年がそこにはいた。

「アルム…ユリウス……、また王達のお迎えか?」

金髪の少年は憎々しげに2人に言った。

「まあ、そんなとこだよ。お前こそ王達のストーカーなの?」

愉快そうにユリウスと呼ばれた少年は尋ねた。

「ストーカーだと?僕を侮辱するな!!」
すると、怒っている少年の腕を黒髪の少女が引っ張った。

「もう帰ろう?疲れた。」
(少年と違い、ずっと座って様子を眺めていただけなのに疲れるって……)

とりあえず助かると思いほっとした。

「でも、こいつらは僕を侮辱したんだ!!始末しなくちゃ!!」
少女は呆れたように少年を見た。

「帰ろう?私は疲れたって言ったのよ。」

少女の眼光はするどく、少年の顔は恐怖にゆがんだ。

「あ…ああ、帰ろう。」
少年は少女と一緒に窓から出て行った。

「ふぅ…なんだったのよ、いったい…。」
私はペタンと膝をついた。

誰なの

いったいあの少年と少女は何だったのだろうか…。
思考を巡らせているとユリウスと呼ばれていた少年がこっちに近づいてきた。

「怜、怪我はない?」
(この人は味方のようだが、なぜ名前を知っているのだろうか。)

「ええ、怪我はないけどあなたたちはいったい何者なの?なぜ私たちの名前を知っているの?」

私の質問に2人は顔を見合わせ、驚いたような顔をしている。知り合いだっただろうか、いやそんなはずはない。完全に見覚えがないのだ。

「もしかして、私たちのことがわからないですぅ?」

「全然わかりません。どこかでお会いしたことがありました?」
2人は再び顔を見合わせ困ったような顔をした。

「まあ、とりあえずここは危険だから避難しよう。護衛するためしばらく僕らといてもらうよ。」

ユリウスは服の胸ポケットに手を突っ込み、何かを取り出してこっちに差し出した。

「これはフォシスという僕らの魔道具。これからこれを使って僕らのアジトに行きます。」
私は自分の耳を疑った。
フォシスという、小さな石ころのようなもので、どうにかできるなど信じられない。

「こんな結晶でどうしようっていうの?」

そうユリウスに尋ねるとユリウスは不敵な笑みをうかべた。

「まあ、見てて。見てからのお楽しみだ。」

尚の方をみるとむすっと不機嫌そうで、花織の方をみるとニコニコとこっちを見ていた。

新たな世界

「3人ともこっちにきて手をつないで、手をつながないと行けないから。」

尚はしぶしぶその指示に従っていた。
(さっきから何がそんなに気に食わないのだろうか?)

「じゃあ行きますよぉ。」

『ゼビア城へ!!』
2人がそういった瞬間、天と地がひっくり返ったような現象が起きた。視界がゆがんで気持ちが悪い。

気分をおちつかせて目をひらくとたくさんの人が綺麗に並び道を開けて立っていた。

立っていたたくさんの人々は一斉に頭を下げる。

「お帰りをお待ちしておりました、真王様、姫王様、皇女様。」
その言葉を聞いた瞬間に私たちはユリウスとアルムを見た。

「説明はあとで、とりあえず部屋を用意させるから少し待て。」
ユリウスが前に出た瞬間に何人かがよってきた。

「ユリウス様、お帰りなさいませ。こちらの方々があの?」
ユリウスは少し困った顔をした。横からアルムが口を出す。

「少し疲れてますぅ、後にしてくださいませ。」

アルムの言葉に青ざめ、ピンと背筋を正す。

「それは申し訳ございません‼︎失礼します。」
慌てた様子で走って行ってしまった。

「じゃあ行くよ、ついて来て。」
ユリウスとアルムが歩き出したので私たちはあとについていった。

(何だか面倒なことになったが無事に帰れるのだろうか?)

お城

ユリウスについて歩いて行きながら城の中の様子を眺めていた。

見たことがないぐらい豪華な造りで装飾など恐れ多くて近づくこともできない。

ドンッ

「いったぁ〜、急に立ち止まらないでよ!!」どうやら目的の部屋についたらしい。

「はは、すいません。この部屋です。」
なんだか懐かしい、何処かで見たことがあるような部屋だった。
よくみる社長室のような造りで大きなデスクがある。

「使うのはこの部屋にあるそこの扉から行くことができる部屋です。」

ユリウスが指差した方向をみると確かに扉があった。

「先に行ってて、僕はお茶をいれさせてくるから。」

私たちは指示に従いその扉を開けた。

扉を開けるとそこはおしゃれなソファーやテーブルといった客室だった。
尚は少し機嫌がなおったのか素直に感動している。

私たちが部屋を物色しているとユリウスとアルムが入ってきた。

「さて、話を始めようか。そこの椅子にかけて。」
私たちはユリウスに促され座った。

アルムは持ってきたティーセットでお茶を用意してくれ、温かい紅茶を飲んだ瞬間に安心したのかほっとした。
紅茶を飲んでユリウスはこっちを見た。

「まず昔話というか一つの伝記の話をしようか。たくさんの記録が残っている。」
ユリウスは真剣な面持ちに変わった。

昔話

ある家系には不思議な力を持った女の子が生まれるという。

その女の子は大きな力で恵みと安定をもたらす。

その女の子のように、不思議な力を持った女の子が他にも生まれたが、どの子もその女の子の力には及ばなかった。

そこでこの不思議な力を持った子どもたちを巫女と呼び、その一番力の強い女の子を姫宮の巫女、通称 姫巫女と呼んだ。

この世に愛され、この世界の中心となる男の子がたびたび生まれる。

それは王の中の王であり、全ての王の上に立つ存在。彼のことを人々は真王と呼んだ。


姫巫女は真王付として真王の補佐を行うことになった。
真王は姫巫女を巫女の国の王とした。

そして月日が流れ、真王には特別仲がいい王たちが6人いた。

7人はお互いを尊重しあい、助け合った。

6人の王たちを人々は真王を守る者として騎士王と呼ぶようになった。

間も無く真王と姫巫女は婚約した。

他の王たちは2人を盛大に祝福した。
そしてついに、真王と姫巫女は結婚することになった。

ところが婚姻式の日、国中が歓喜に包まれている中で喜ばしい日が絶望に暮れる日となったのだ。

たくさんの人ならざるものが襲ってきたのだ。
それらは深い闇の力を持つものたちだった。

騎士王たちはそれらと戦ったが次々と命をおとしていった。


その後、真王も……
他の騎士王と同じようになってしまった。

姫巫女はたいそう悲しみ、大きな力を使った。

その力は使ってはいけない力、世界を改変してしまうほどの力。

それほどの大きな力を使い、姫巫女は未来に託した…。

『絶望することはない、私は再び生まれくる… 騎士王も…真王も… またいつか会えるだろう。またいつかどこかの世界でみな再び会える。この世界で出会えたことは、偶然ではなく必然なのだから。』


そして20年後、再びこの世には王たちが生まれたが、悲劇は繰り返された。


何度も何度も………
悲劇は未だ終わらない……

姫巫女

ユリウスが喋り終わり、紅茶を一口飲む。アルムが代わりに話し始めた。

「伝記の他に姫巫女の手書きの日記のようなものには、こうつづられていたですぅ。

『たくさんの記憶をあちこちにばらまいてきた。

あの様なことが再び起こってしまってはいけない。

真王、いやショウの魂の一部が別の世界へ旅立って行った。

元々、真王の魂は人より大きいが一部が旅立つ事例は聞いたことがない。

無事なことを祈る。

私たちはみな生まれ変わって再び生まれてくる。

その度に賭けよう。

希望を未来を世界の命運を。』と。」

あまりに大きな話に話についていけない。
花織は変わらずニコニコと話を聞いていた。
尚の方はどうだろうかと気になり見てみたら、驚いたことに寝ていた。
あまりに呑気な様子に怒りを覚え殴る。

「いっっってぇーー‼」涙目で立ち上がり、こっちを睨みつける。

「なんで寝てられるのよ‼」

いつも通り口喧嘩が始まる。見兼ねたように花織が間に割って入る。

「はいはい、喧嘩しないの。」
仕方がなく大人しくソファーに座る。

「で、いきなりこういう話をするのもどうかと思うけど…
実は君たちが伝記に出てくる生まれ変わりなんだ。」
ユリウスはまた真剣な面持ちでそう言った。

「はぁ⁉」
私と尚が立ち上がってユリウスに詰め寄る。

「ほらね、君たち絶対そう言うと思った。」

(信じられない。いきなり何を言い出すんだ。)


「じゃあ怜、さっき武器を出したよね?それをやってみて。」

そんなこと言われてもできるはずがない。

「どうやるかなんてわからないわよ。」アルムが私に近づく。

「あの時何を思ったですぅ?何を願ったのですぅ?」私の顔を覗きこみ、尋ねた。

あの時…確か私は…

「守りたいと思った。尚を守らなきゃって思った。私が命をおとしてでも助けなきゃって……。」

アルムもユリウスもうなずいた。

「「それが君の、いや、姫巫女の力の本質、彼や仲間を守りたいと願うほどその力は大きくなる。」」

アルムが立ち上がった後に続いてユリウスも立ち上がる。

「まあ、唐突に君たちの世界じゃありえない話をしたからね。部屋を用意させてある、今日はゆっくり休んで。夕食の時に部屋に迎えに行くから、それまで自由にしてていいよ。」

そう言って部屋を出て行く。

「また後でですぅ〜。」

アルムもあとに続いて出て行った。

私たちはそれぞれ部屋に案内され、私はそのまま頭を休めるために眠った。

変化

ー誰かの声がする…その声を聞こうと耳を澄ます。


「***が***でも、僕がすぐそばにいれば怖くないだろう?だって手を伸ばせば僕がこうやって***の手を握ってあげるのだから。」

何処かで聞いたことがあるような随分と懐かしい声だった。
彼はクスクス笑って手を握っている。

(ああ、この人は誰だっけ?)

もう少しで出そうな気がしたが出てこない。



ガバッと体を起こす。部屋の中は暗かった。

(あれ?ここどこだろう。私の部屋じゃない。)

寝ぼけた頭で考えていたら、コンコンと部屋をノックする音がした。

「だあれ?」

私が聞くと少しためらうように声がした。

「私です。ユリウスです。」

そういえば、ユリウスとアルムに城に連れてこられたんだっけ。

考えているとまた扉の向こうで声がした。

「怜様にお話があります。」

また、ためらうような声だった。
私は扉を開いて迎え入れた。

「中にどうぞ、椅子にかけてお話ししましょう。」

ユリウスはおそるおそるといった感じで椅子に座った。

「で、話って?」

私が尋ねると彼はビクッとして顔を俯かせて言った。

「先ほどはご無礼な振る舞い、誠に申し訳ありませんでした。
アルムにはああやって振舞っていろと言われておりましたが、私にはもう耐えられません。」

たいして変わってないと思うが本人は相当気にしていたようだ。

「あの…別に前みたいな喋り方でいいよ。どうしてアルムはそんなこと言ったの?」

彼はバッと顔を上げて涙目で喋り始める。


「いいえっ…そんな恐れ多いことです。こんな喋り方では尚更私たちが怪しく見えると…もう少し気さくな感じにしろと言われたのです。」

たしかに気さくな感じの方が親しみやすいが、さほど変わらないし別にいいのに。

「それならそれで別にいいけど。」

私が答えると彼は笑顔になった。

「ありがとうございます。それと、夕食のお時間なので行きましょう。」

そういえば寝たせいでもう夜になっていたのだった。

「うん、行きましょうか。」

私は彼の後について廊下を歩き出した。

城には様々な人がいるようだ。
すれ違うたびに挨拶をされる。


ユリウスがチラッとこっちを見た。

「この部屋です、どうぞお入りください。」
ユリウスが部屋の扉を開くと、そこはとても華やかな明るい部屋だった。

もう花織や尚が席についていた。
ユリウスが椅子を引いて座らせてくれる。

(これはマナーが必要なのだろうか。)

あまりに豪華なので気が引けた。

希望

私がマナーを気にしてためらっているとアルムが部屋に入ってきた。

「食べないですぅ?」

アルムは不思議そうに怜を見た。

「マナーとか必要なのかな?って…。」

私が控えめに尋ねるとアルムは尚を見てから言った。

「普通に食べていいですよ。ほら、あんなでも構いませんし。」

アルムの視線の方向には尚がいて、尚を見るとガツガツと食べていた。

(あれは…とっても行儀が悪すぎる。)

嫌なものを見る目で尚を見ていたら、尚がこっちに気づいた。
だが、気にせずに食事を続ける。

花織は私の隣の席に座って、オススメの食べ物を紹介していた。

「これとね、これとこれと…あっ、あれも美味しいよ‼」

実に幸せそうだ。
花織や尚を横目に怜はユリウスに尋ねた。

「ねぇ、いつになったら帰れるの?」

ユリウスは悲しそうな顔を一瞬した。

「帰れない、と思っていてください。」

部屋は一気に静かになった。

「どういうこと?」

ユリウスはまた一瞬だけ悲しそうな顔をする。

「帰ったとしても、あなた達は死ぬことになります。ですから、死なないためにもやってもらいたいことがあるのです。」

アルムも話に入ってきた。

「あなた達を襲った奴らにも伝記にも関係があるのですぅ。

伝記の通り行くと20歳になると確実に何かあって死ぬのですぅ。

ある時は戦争で死んで、ある時は民衆に殺され、ある時は事故にあって死ぬ…

とにかく様々な死に方なのですよ。
生まれ変わりは必ず死んできました。
そうさせたくないから、姫巫女は書記に書いてあったように、記憶をばらまいたのですぅ。

その記憶だけが今の希望なのです。」

ユリウスが涙目でこっちを見た。

「僕はあなたを死なせたくない。いや、死なせてたまるものか。」

(帰れない…死んじゃう……?)

衝撃的な話で目の前が真っ暗になった。

「で、俺らはどうすればいいんだよ」

尚が口いっぱい入っていた食べ物を飲み込んで尋ねた。

「記憶を探す旅に出て欲しいのです。手がかりなのはその記憶だけですから……。」

(記憶が手がかり…その記憶があればなんとかなるのだろうか。今はその記憶が頼りらしいし…)

「記憶はどこにあるのかわかるのか?」

尚が珍しく真面目な顔で尋ねる。

「わからない、ただある程度の距離ならばわかる手段があります。」

尚はその答えに満足気に笑う。

「わかった、旅をしよう。だけど、なぜお前達はここまでしてくれるんだ?」

その問いにユリウスは少し困ったように微笑んだ。

番外編、生きがい

ふと目を閉じてみると昔のことを思い出す。

どれぐらい昔のことだっただろうか、それさえも思い出すことができない位かなり古い思い出だ。

僕が暗殺の仕事をしてた頃だった。
僕には親がおらず暗殺者が僕の親代わりだった。

人を殺せば殺すほど感情というものがわからなくなる。

ふかく暗い、闇の中だった。

光が一筋も見えなかったあの頃は、ただただ依頼を受け人を殺した。

ある時、街を歩いていると前から歩いてきた女に、すれ違いざまに声をかけられた。

「お前、昔の私とそっくりの目をしてるね。」


女はそう言って何もなかったように歩き出していた。


その日の依頼をいつも通りにこなし、帰ろうと振り向いた瞬間、自分が後ろをとられていたことを知った。

「お前、いつからそこにいた。」

後ろに立っていたのは街ですれ違ったあの女だった。

「最初からだよ?」

どうしてこの女からは、気配を感じ取ることが、できなかったのだろうか。

何より、この余裕のある態度が気に食わない。

「不思議そうな顔だね、私も昔は暗殺者と変わらない生活だったからね。」

「お前何者だ?」

女はくすりと笑った。

「第一の真王付きウェスタだ。」

その言葉に驚きを隠せなかった。
真王付きといえば潜在能力が高く、天才の中の天才と呼ばれるほどの実力者だ。

「で、お前が真王付きだったとして何の用だ。」

女の雰囲気がスッと変わる。

「君を連行する。」

ぞっとするような低い声、冷たい目でそう女は言った。

「それに従わなかったら?」

そう尋ねてまっすぐ女の方を見ると女の姿がそこにはなかった。

あたりを警戒してうかがっていると首筋に光るものが当たる。
それはナイフだった。

「君を殺すことになるね。」

女はにっこりと笑って答えた。
しばらく沈黙が続き、女は尋ねてきた。

「それで…どっちを選ぶんだい?ここで殺されるか、連行されるか。」

ため息をついて片手を上げる。

「わかった。連行される方を選ぶ。」


女は俺の言葉にパッと笑顔になり、目を輝かせた。

「うんうん、賢明な判断だね。」

女はにっこりとまた笑ってナイフをしまった。
そんなこんなで、ウェスタに連れて行かれた先は立派な城だった。


「君にはここで生活してもらうよ。」

いま、耳を疑うような言葉が聞こえた気がする。

「………………はぁっ!?今なんて言った!?」

女は面倒だと言わんばかりの顔でこっちを見た。

「だからここで生活してもらうって言ったんだよ、そしていろんなことを学んでもらう。」
女はにっこりと笑って歩き出した。

「頑張れよー、たくさん学びなさい。」


そんなこんなで僕の暗殺者としての生活に幕が下りた。



あれから6年後、僕は15歳になり ウェスタは18歳になった。

今、僕はウェスタ様のご命令で、新兵の指導をしたり騎士隊長をやっている。

訓練が終わった午後、自分の部屋に帰ろうと歩いていた。

歩いていると草原にウェスタ様が座って何かをしていた。

「何をなさっているんですか?」

僕に気がつくと、手にあったものを見せてくれる。

「小鳥だよ。人懐こいみたいでね。ほら、手のひらの上で可愛らしく動くだろう?」

随分と楽しそうに笑った。

「ところで、どうかな調子は?」

「いつも通りですよ。」
ウェスタ様は少し顔をうつむかせた。

「ふと目を閉じると昔のことを思い出すよ。
君を無理矢理連れてきた日のことをね。

暗殺者だった君を放っておけなかったんだ。人を殺せば殺すほど、自分を見失いそうになるだろう?

でも無理矢理連れてきてしまって、悪かったなと今更ながら思うんだよ。」

彼女は切なそうに笑った。

「僕は今が一番幸せですよ。
あなたには感謝してるんです。
あのまま暗殺者であれば、いつか僕は壊れていたでしょう。
あそこはとても暗かった……。」

そう答えると彼女はふふっと笑い、ありがとうと言った。

そう、僕はとても感謝している。
何もかもが、どうでもよくなっていたあの頃は、生きがいもなくただつまらなかった。



だが、今は違う
ウェスタ様のそばにいたい。


騎士の誓いをたてユリウスという名をもらった。

そしてウェスタ様を守り抜くと決めた。
それが僕の生きる意味。
ユリウスとしての生涯だ
後書き編集

刹那の記憶

刹那の記憶

かつて神に作られた人々と人間は共存していた。 だがある日、神に作られた人々は迫害されるようになった。 神に作られた人々は 人間を憎み、やがてこの2種族は争うようになった。 神に作られし娘は人間の少年と出会い 2人は心惹かれいくが、幾度となく2人は切り離された。 繰り返される悲劇、終わらない悲しみ、人々は闇に侵される。 -あなたが望む世界は?

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • アクション
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-09-26

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND
  1. 第零話 せかいのはじまり。
  2. 第一話 おさななじみ。
  3. 第二話 がっこう。
  4. 第三話 しゅうげきしゃ。
  5. 来訪者
  6. 誰なの
  7. 新たな世界
  8. お城
  9. 昔話
  10. 姫巫女
  11. 変化
  12. 希望
  13. 番外編、生きがい