不器用な人

不器用な人

夏休みに入って1ヶ月が過ぎようとしていた頃。

片想いの相手からメールが来た。
「暇なんだけど、花火大会一緒に行かない?」と。
突然のメールに驚いた私は「いいよ!メンバーは?」と打って送ろうとした所で考えた。
この内容で良いだろうか?
もしメンバーは?何て打ったら2人だけで行けなくなるかもしれない。
ちょっと意地悪して、後でまた連絡するね!と言っても良いかもしれない。と。
色々考えた結果、結局「いいよ」と一言で返した。
それから1時間くらい経って彼から来た返信は、何処の花火行こうか?だった。
何も決めずにメールしたのね、誘っておいて。と思ったりもしたが、何処がいい?と
聞いた。
すると、うーん、のどかは何処がいい?と来た。
始まった、質問のオウム返し。
はいはい、調べますよ。
「睡蓮公園の花火どう?」
いいね!の一言返信。
こういう場合はいつも
「じゃあ17時に睡蓮公園前駅で」と待ち合わせの場所や時間を指定してまう。
「はーい」と返信がくる。
はぁ。いつも2人で遊ぶ時はこんなんだ。私が行く場所も時間も決めて。
この人はどうして私を誘うのだろう。
何でも決めてくれるから?
自分は行くだけで楽だから?
気付くと彼に対する不満ばかり浮かぶ。それでも会ったら、きっと好きだと思ってしまうのだろうと。そんな彼をを好きになったダメな自分に後悔する。

前日。
明日の確認事項のメールを一応、送る。すると
「了解!浴衣着てきてね!」と来た。
一瞬、彼らしくない注文にドキッとした。
わかったよーとだけ返す。
いつもならそこで終わるはずなのに「楽しみにしてる。」なんて言うもんだからまたドキッとしてしまう。
この人は小悪魔なんだか、ただ何も考えていないのかよくわからない。
私が深読みし過ぎなのかなとも思う。

当日。
天気は曇で小雨が時々降ったり止んだりしていてハッキリとしない天気だった。
花火大会中止になるのかな、、、
不安が頭を過る。
走行しているうちに彼からメールで「着いた。」と来た。
何故か深呼吸をしている私。
ショウウィンドウ越しに確認した髪型や浴衣も、もう何回目だろう。
「私も着いたよ。改札口出て左にいるよ。」と返信して少し待つと彼が来て「久しぶり」と笑顔で言った。
其の後に「浴衣じゃ~ん」と彼は言った。
「だって着て来てねって聡がいったんじゃん」と言うと彼は静かに笑った。
その笑顔は何を意味するの?
なんだか好きという事を悟られてる気がする。少し恥ずかしくなった。
彼が持って来た傘を差し、一緒に花火会場へと向かう。

会場に着く頃には雨はすっかり止んで晴れ間が差していた。
辺りは段々と混み合ってきて、それと共に日も暗くなり始める。
花火大会と書かれた提灯には暖かな光が灯り始めた。
屋台で買った、たこ焼きと焼きそばを2人で食べながら花火が始まるのを待った。
やっぱり学校で会う時とは違う。
この時間やその時見せてくれた彼の表情は自分しか知らないもので何か特別なものを感じる。

花火は様々な形の物があった。
丸く弾けた後にパチパチと光が下に落ちて消えていくのがとても綺麗で儚かった。

帰り道。
2人であれが綺麗だったとか、こういう形の花火が好きだとか言い合いながら駅までの道を歩いた。
ふと沈黙が訪れた。
それと同時に現実に戻される感じがして淋しくなった。
しかし、それを紛らわす様に彼が突然私の手を握る。
まるでそれは私が淋しいと思っている事を悟り優しく宥めているかの様だった。
でもどこか頼りなくて、それが彼らしいなとも思う。
それから私はそっと彼の手を握り返した。

駅。
彼は私が乗る駅の改札口に着いた途端に急に恥ずかしくなったか、パッと手を離して「じゃあ、気を付けて帰ってね!今日はありがと。また学校で」と手を振って少しの笑顔を私に向けて行ってしまった。
なんだか呆気なくてまた淋しくなる。

それから2週間が経ち学校が始まった。
久々に会う友人に挨拶を言って、またいつもと変わらない学校生活が始まる。
講義室で2週間ぶりに見かけた彼は私と会っても普通に接した。
その反応はまるであの花火大会の出来事が夢とか妄想とかそういう部類のものだったかの様に感じさせて淋しくなる。
でもふと視界に入った彼の手を見て彼はきっと不器用なだけなのだと思った。それから彼の表情を見て同じ様に無かった事にしてしまう私も、また不器用で彼と対して変わらないんだと思う。
これで良いんだ。と自分に言い聞かせる。
ただ、あの花火大会の出来事がいつか単純に楽しかったなぁと思える日が来ればそれだけで素敵だ。少なからず今は、そう思っていないと悲しくなるから。
そんな日が来る事を心の中で願って、また普段通りに彼に接っすることにした。
「おはよう」って。
ちゃんと自然に言えたかな?と考えたりしながら。

不器用な人

読んでいただきありがとうございました。
季節外れな話ですが許してください 笑
これは実体験で今考えても、なんであの時彼は手を繋いできたんだろうって思ってます。でも、男性ってその場の雰囲気とかノリでっていうのもあるんだろうなぁと最近は軽く考えるようになりました、はい。男性の皆さん、実際どうなんですか?笑
教えて欲しいものです。とも考えつつ、、、。
逆に、こういう体験した方はいらっしゃいますか?何だか複雑ですよね正直。でも、悪気は無いんだと思いますよお相手さんは 笑
やっぱり気にしないのが一番ですね 笑
ヘタ(ryは置いといて気楽に考えましょ 笑

それではまた、違う作品でお会い出来たら嬉しいです。

不器用な人

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-15

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