~ビー玉の思い出~

ラムネのビー玉から蘇る物語です。

微炭酸の甘い罠

 今から6年前……つまり小学1年生の頃、よく友人と一緒に遊んだ。
 特に夏休み。

「喉渇いたね、恵那ちゃん」
 彼女は芹香と言い、親友だった。
「何かジュースでも買おうか」
 私は喉が渇きすぎて苦痛を感じていた。

 目の前のスーパーを通り過ぎる彼女に私は疑問を持った。
「どうして?スーパーで買えばいいじゃない」
「ダメよ。スーパーのジュースは美味しくないから」
 彼女は頑固に首を振り、そのまま歩く。

 私は当時、ラムネを知らなかった。
 オレンジジュースとか、そういう物しか飲んだ試しがない。

「ほら、ついたよ。ここのラムネがおいしいんだよ」
 彼女は駄菓子屋に入っていった。

 中は見たことのないお菓子が甘い匂いで誘ってきた。
 木製の棚の上には、綺麗に並べられたクッキーやビスケット、煎餅が置いてある。
 
 奥の方に、冷蔵庫があって、沢山のジュースがひしめき合っていた。
「ラムネ、美味しいんだよ」
 彼女は水滴の付いたラムネの瓶を2本取り出し、私に差し出した。
「えっ?ラムネ?」
 
 カラン――
 ビー玉のぶつかる心地よい音色は今でも鮮明に覚えている。

「ラムネっていうの。炭酸がしゅわぁっていって、甘いの」
 大きい泡、小さい泡が泳いでいた。

 そして、初めて聞いたこの音が、堪らなかった。

 プシュッ――!

「わぁ――!」
 驚愕して、飲むのを戸惑う私を見て彼女は苦笑し
「大丈夫だって、飲んだことないの?おいしいから」
 と促した。

「う……うん」
 今思えば、ブシュッと爆発する得体の知れないものをよく飲めたなぁ、と思う。
 そこの駄菓子屋のラムネの特徴は、炭酸が私の喉を刺激するほど強くない、微炭酸――……

ラムネ

 確かこの引き出しに……あぁ、あった。

 中学生になっても、『あれ』は持っていた。

 ラムネのビー玉をよく貯めていたなぁ~とふと思い、ずっと封印していた引き出しを開けてみた。
 水色で真珠のように丸く、ダイアモンドのような輝きを発している。

 正直言って、ダイアモンドとラムネのビー玉って同じくらい綺麗だと思う。
 綺麗なものでも、それが大量にあるか、貴重なだけかで価値が違う。
 大した事のないラムネのビー玉だけど、1つ1つに思い出がある。

 今は缶とかペットボトルになっているけど、私の幼い頃は瓶がまだ売っていた。
 平成になってかなり珍しいが、お祭りになると、瓶のラムネは駄菓子屋の4分の1を占めていたる。
 そして売上の半分を占めていた。
 でも今ではお祭りだろうが何だろうが、缶やペットボトルだ。ビー玉も入っていない。

 箱の中には大体30個程入っていて、一つ一つ光源の様に輝いていた。
 そして箱は見事に錆び付いている。
 まだ6年しか経っていないのに――……

~ビー玉の思い出~

短いのですが、これから延ばしていこうと思います。

~ビー玉の思い出~

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-28

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  1. 微炭酸の甘い罠
  2. ラムネ