小さいサンタ

 ひと足早いクリスマスストーリー。
 方向音痴だけど、一生懸命。見習いサンタのリルは、無事プレゼントを配り終えることができるのでしょうか?


 今年も、クリスマスがやってきました。リルと、おじいちゃんが、一番いそがしい季節です。
 「今年は、ぼく一人で、いけるよ。おじいちゃんは、腰もよくないし、僕に任せて」
 リルは、サンタのおじいさんの孫。見習いサンタです。
 「本当に、大丈夫かい?リルは、優しい心を持っておるから、サンタに向いておる。ただ、お前はなあ・・・」
 「僕、今年は、猛勉強したんです。地図だって、読めます。」 
 サンタは、本来地図などなくとも、すいすいと全国を回れるのですが、リルは、方向音痴でした。そのことは、リルが一番知っていて、その分、努力は惜しみませんでした。おじいさんも、リルの真剣な瞳を見て、今年は思い切って任せてみることにしました。
 お仕事を任されたリルは大喜びで出発です。
大きな、プレゼントの詰まった袋を、トナカイさんにのせて、地図もしっかり持ちました。
 リルは、順調にプレゼントを配っていきました。勉強の成果です。さて、最後は小さな島国です。プレゼントも後少し。リルは、トナカイさんを公園につないで、袋をしょって出発しました。
 みんなの幸せそうな寝顔を見るのが、リルは大好きでした。この国でも、眠っている子どもたちに、まちがわないようにプレゼントを配っていきます。
 しかし、この国は、少し道が複雑でした。これは、さすがのリルも計算外です。全部配り終えたのはいいのですが、公園まで戻れなくなってしまったのです。
 「地図を見ても・・・どうしよう、わからないよう」
 早くしないと、夜が明けてしまいます。トナカイさんも心配しているに違いありません。リルは、泣きたくなってきました。肩をふるわせてると、ちょんちょんと、背中をつつかれました。振り返ると、リルより小さな女の子です。空き地で地図とにらめっこしていたリルは、本当にびっくりして、ベンチから落っこちてしまいました
 「おどかしちゃって、ごめんね?あたし、ももっていうの。うちには、サンタさん来てくれたことないから、ここで待ってたの。あたしとパパ、ここに住んだり、移動したりしてて、お家ないの」
 もも、と名乗った女の子は、この寒いのに、薄いTシャツ一枚です。すごくやせていて、でも、瞳はかがやいていました。リルは、お家がないこの分のプレゼントを持ってきていなかったことを心底後悔しました。
 「ごめんね、僕は、サンタ見習いのリル
プレゼントは、もうないんだ。ぼくは、道をちゃんと覚えられないだめなサンタなんだ。がっかりさせちゃったね」
 「ううん、そんなことない!ここで待って
てよかった!だって、リルに出会えたこなんて、きっとももだけだよ。うれしいなあ」
 ももは、リルの手を握りました。ももの手は凍えていて、冷たかったのですが、リルの心に温かさが満ちていきました。
 「もも、地図見れるよ、いつもお父さんと移動してるから、そういうの、得意なの」
 リルは、ももに地図を見せました。
 「ここ、もも知ってるよ。送っていってあげる」
 なんて優しいこでしょう。リルは、ももと手をつないで、再び歩き始めました。
 ももは、ごきげんで、リルにいろんな話をしてくれました。毎日ご飯を見つけるのに忙しくて、学校に行けないので、お友達がいないこと、お父さんは体が弱いけど、すごく優しいことなどなど。リルは、毎日天界の学校に通い、おいしいご飯を食べて、ぐっすり眠っていましたので、ももの話を聞いて、すごくびっくりしました。そして、ももに、どうしてもプレゼントをあげたくなったのです
 もものおかげで、リルは無事公園に着くことができました。
 「本当にありがとう。君のおかげで、サンタの国に帰れるよ。これ、プレゼント」
 リルは、自分の着ていた、温かい赤いセーターを、ももにプレゼントしました。
 「リル、寒いじゃない。ももは大丈夫だよ。こうやって、同じ年くらいのこと、しかもサンタさんといっぱいおしゃべりできたんだもん、すごくうれしい。」
 「もも、これをもらって。これをももが着てくれることが、僕の幸せなんだよ」
 ももは、とても迷いましたが、受け取ることにしました。Tシャツのうえに着てみると、赤い色は、ももにとても似合っていました。リルは、ももに抱きついて、
 「すごく似合ってるよ、似合うと思ったんだ。ももは、すっごく優しいもの。僕も、ももに出会えて、幸せだった」
 そして、ももに気づかれないように、小さな紙を、服のポケットに入れました。
 「もも、リルのこと忘れないよ。リルも忘れないで。約束」
 二人は、指切りしました。
 リルは、トナカイに乗って、自分の国へと戻っていきました。ももは、リルの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振っていました。
 リルが無事帰ってきたので、サンタのおじいさんは、本当に安堵しました。そして、今回のリルの話を聞いて、
 「わしからも、ももちゃんにおれいをせんといかんのう」
 と言って、きれいな粉を、ちょうどあの島国のあたりに振りまきました
「おじいさん、何をしたのですか?」
「ふふふ、リルはもうお休み」
 リルは、疲れきっていたので、眠り込んでしまいました。
 ももは、リルが消えてしまったお空を見つめて、寂しさを感じながら、空き地に戻るところでした。歩いていると、ポッケのあたりがかさかさいいます。探ってみると、手紙でした。
 「ずっと、友達」
 ももにできた初めての友達は、サンタさん何てすてきなんでしょう。今年のクリスマスは、ももにとって、最上のものになりました。
 家に帰ると、サンタのおじいさんからのプレゼントが届いていました。ずっとうまく歩くことのできなかったお父さんの足がしっかりしていて、帰ってきたももを、しっかり抱きしめてくれたのです。
 「もも、お父さん、もう大丈夫だ。体が、ほらこの通り。病気がふっとんじゃったみたいだ。お仕事に行けるよ。ももも、学校を探さないとな」
 夢にまで見た学校に行けるのです。ももは、きっとリルのおかげだと思い、お空に向かって大きな声で、ありがとうを言いました。
 学校に通い始めたももには、たくさんのお友達ができました。毎日元気に学校に通うももを、リルは、天界から見守っていました。リルは、もも以上に幸せを感じていました。そして、サンタのお勉強を、今まで以上にがんばるようになりました。今度のクリスマスには、もものおうちに一人で行けるように。
                 

小さいサンタ

 一生懸命な姿、優しさのもたらした絆を描きたくて、このお話を創りました。すべての子が、しあわせになれますように。読者様の心に、少しでも温かさを伝えられたら嬉しいです。

小さいサンタ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2010-11-09

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