君影草と魔法の365日-第5話

君影草と魔法の365日-第5話

ゴーレム・コンクール

その高層ビルの様に高いレンガ造りの塔は校舎から少し離れた平地にポツンと建っていました。

“星読みの塔”

中には図書室や視聴覚室、応接室に校長室と様々な部屋があり、大きな望遠鏡が突き出た屋上は天文台になっています。

時間を守れば誰でも自由に利用する事ができるのですが…

彼女達は閉館時間を過ぎた真夜中に忍び込んでいました。

何をしているのでしょう?

この時期、2っ星以上の上級生達 は“ゴーレム・コンクール”に参加します。

“ゴーレム”とは魔法で仮初めの命を吹き込んだ巨大な土人形の事。

本来は城や砦を守る城兵として活躍します。

屈強で力強い基本に忠実な作品。

繊細できらびやかな芸術的作品。

滑らかでしなやかな命を思わせる作品。

コミカルでカワイイフィギュアの様な作品。

コンクールでは全国から様々な作品が出品されて、その出来栄えが競われました。

箱庭は上位入選の常連校。

今年もかなり気合いが入ってる様子。

塔の周りにはゴーレム制作の足場が組まれ、大勢の生徒が徹夜の作業に追われています。

雰囲気は学校祭の前夜。

皆が一つの目標に向かって邁進し、青春を謳歌しています。

作業は細かく分担されていて、班ごとに任された仕事を協力して進めていました。

先生は助けてくれません。

設計から制作まで学生の力だけで完成させるのです。

当然、調べなければ分からない事など山程出てきました。

なので、調べ物を円滑に行う為、遅い時間も図書室を特別開放していたのです。

彼女達は簡単に紛れ込む事が出来ました。

ランカの手には鍵が握り締められています。

静かな部屋で鍵を回すと、思いのほか大きな音が響きました。

「ねぇねぇ、気付かれなかったかな?」

「大丈夫なの。早く本を…」

すずは扉の前に残って周囲を警戒します。

ランカは魔法で小さな明かりを灯すと、本棚をあさり始めました。

ソコは先生か図書局員しか入れない立ち入り禁止の部屋。

中には危険な書物がたくさん眠っています。

整理が不十分な本棚から目的の本を探すのは一苦労。

焦れば尚更時間がかかります。

しかし彼女は落ち着いて指でなぞりました。

「あったよ」

彼女が手に取った一冊の本。

その表紙には“禁書”の文字がハッキリ記されていました。

サイテーな杖魔法

「本当に信じられないの」

「ドルイドン先生らしいよね」

すずとランカはいつもの温室でおしゃべ りを楽しんでいました。

話題は今日受けた“杖魔法”の授業についての様です。

杖魔法とは名の通り、杖を用いて魔法を行使する技術の事。

魔法は繊細なセンスを要求するものが多く、一歩間違えると大変な事故に繋がってしまいます。

例えば炎を扱う魔法で操作を間違えれば、大火傷を負ってしまいかねません。

そこで指先からではなく杖の先から魔法を出す技術が編み出されました。

これならチカラを集中する場所がズレても、指を焦がす心配がありませんよね。

実は杖って格好良いから持ってる訳じゃ無いんです。

教壇に立つドルイドン先生はお調子者のお爺さん先生。

笑いと実技がモットーの授業は生徒皆から支持されているのですが、今日は思いっきり引かれていました。

「では…今回はオナラの魔法について勉強するぞよ」

…主に女子生徒に。

“オナラの魔法”は掛けられた相手が、オナラの様に精神力を放出する下品でサイテーな魔法でした。

先生曰く退魔のチカラがあって必修科目らしいのですが…

いくら探しても教科書には載っていません。

「調子に乗って友達にかけていると嫌われてしまうかもしれんぞよ!」

そーでしょうとも。

「何事も程々が肝心じゃ!」

・・・・・・。

程々ならいいのでしょうか?

案の定、男子生徒が悪戯を始めて教室は大混乱!

そんなこんなでゲッソリ疲れて帰って来たのです。

「学校であんな魔法を教えるなんてあり得ないの」

「でも一つ星のあたし達じゃ“退魔の魔法”は教えてもらえないし意外と役に立つかもよ?」

「そう笑っていられるのは一度も魔法にかからなかったからよ」

そんな話で盛り上がりながら紅茶を飲んでいると…

大きな揺れと音が聞こえ、下の階からホコリが舞い上がってきました。

更に、明るく晴れていた空が急に暗転して真っ暗に。

やがてうっすらと紫色に染まっていきます。

「な、何なの?」

急に色々な事が起きすぎて、すずは混乱気味。

一方ランカはワクワクを抑え切れない様子。

ガラス張りの壁に近づくと、クルッとターンして笑顔で伝えます。

「本当の箱庭にようこそ。これが“紫の黄昏”だよ」

それは“ゲート”が“異世界”に繋がった事を意味していました。

紫の黄昏

箱庭の地において“紫の黄昏”は珍しい事ではありません。

黄昏の樹海には開けっ放しの“ゲー ト”が無数に存在すると伝えられているくらいですから。

ゲートとは異世界に繋がる出入口の事。

ある人は薄汚い壊れかけの扉だと言います。

ある人は美しい装飾が施された立派な門だと言います。

またある人は無形の空間の裂け目だと言います。

紫の黄昏が起きる原因は、異世界から流れ込むチカラに関係があると言われていました。

ソレがある場所こそ見つかっていないものの、この現象は毎月1~2回ほど起きる箱庭名物みたいなものなのです。

すずは初体験なんですけどね。

夕焼けが紫に染まった様な空。

普段の夜にはお目にかかれない珍しい星達が瞬き…

大地も紫に染められて異世界が侵食しているみたいです。

見た事も無い動物がそこらじゅうを駆け回り飛び回り…

不可思議な植物が早送りした様に一斉に芽吹き成長する。

その様子を見たすずは、ガラス張りの壁に手をついたまま暫く絶句します。

ランカから話は聞いていましたが、実際に目にした世界は想像以上に刺激的でした。

「早く行くの!」

期待通りのリアクションをみせるすずの姿にランカもテンションを上げます。

長く箱庭に住むランカでさえ、紫の黄昏が起きる度に新しい驚きと出会いがありました。

彼女も二人でこの時を迎える瞬間を楽しみにしていたのです。

しかし、本当なら外へ駆け出して紫の黄昏を満喫したいトコロなのですが、状況は許してくれません。

それは階段を降りて外へ向かう途中、異様な光景を目にしたから。

「皇子! 皇子! 大丈夫!?」

開かずの扉の前を光り輝く何かが飛び回っています。

そして床には見たことの無い石像が倒れていました。

まるで扉から飛び出てきた様子で。

光はひっきりなしに虚空へ声を掛けますが“皇子”と呼ばれた何かからの応えはありません。

見ると石像の横には砕けた赤い透明な石が散っています。

「“言霊石”が割れた!? これじゃ皇子 と話せないじゃん…」

声は毒づきました。

“言霊石”(ことだまいし)とは“チカラ を持つ言葉”を封じ込めた宝石の総称で す。

正確に刻まれた魔法語が所持者の魔力を糧にチカラを発揮し続けます。

話の流れから察して、砕けた石には“皇子”と会話するチカラが秘められていた様ですが…。

深紅の瞳のリリー

「妖精?」

透き通る様な白い肌に少し癖毛なブロンドの髪。

背中には薄く透明な羽があって、パタパタ羽ばたくと輝く鱗粉が軌跡を描きます。

血の様に深く赤い瞳が印象的で、自信に満ちた表情と鋭い眼差しが小悪魔の雰囲気。

すずの肩に乗れてしまう程小さい女の子(?)です。

「アタイは“リリー”だ」

そう名乗った妖精は注意深く辺りを見回します。

いいだけ高い声で騒いでおいて無意味な気がしますが。

「ここはどこだい?」

「箱庭の学生寮なの。…まさかこの扉から出てきたの?」

「お前達は誰だい?」

「アタシはランカ。彼女はすず。魔法学校の学生よ。リリーさんは何に属しているの?」

「アタイの事はリリーでイイよ」

・・・・・・。

あ、ランカが訊いた“属”は“属性”の事。

妖精とは“精霊”等から命を与えられた従者で、創造主のチカラやセンスにより様々な姿をしています。

一般的に水の精霊が妖精を生み出せば水の属性。

木の精霊が生み出せば木の属性を持つ妖精になります。

妖精に属性を訊けば“どんな役割を与えられているのか”が、だいたい分かるのです。

しかしリリーは二人の質問に一切答えず、ぐるぐる飛び回りながら考え事をしています。

妖精は自由気ままで主以外の言う事を聞かないのは有名なんですが、ちょいと少し感じ悪いですね。

「そうだ、早く隠さないとな」

言うなり倒れた石像に一直線。

端を持って一生懸命に持ち上げようとします。

しかし…当然ですがピクリとも動きません。

「なにボサっとつっ立ってるんだい? アンタ達も手伝うんだよ!」

つか、完全にやらせる気ですよね。

二人は彼女の勢いにおされて駆け寄ります。

「綺麗な顔…」

すずは思わず声にしていました。

モデルは中性的な顔立ちの美少年。

格調高い服がよく似合っています。

恐らく歳は自分達と変わりません。

魔法を使う瞬間を表現した作品なのでしょう。

目を閉じて呪文を詠唱している様子で杖を構えています。

その石像はとても精巧に作られていて今にも動きそうでした。

「ねぇねぇ、靴の裏まで彫り込まれているよ。どうやって展示するんだろう?」

色々と不可解な事が多く訊きたい事がたくさんありますが…

まずは3人(?)でギリギリ持ち上がる重さの石像を温室へ運びます。

皇子の石像

その国は北方の小さな島にありました。

とても小さな国でしたが、自然と人間の調和がとれた幸せな国でした。

でもそれは全ては過去の話。

戴冠式の日。

国王は王冠を掲げた姿のまま。

皇子は抵抗して魔法式を唱える姿のまま。

その場にいたほとんどの人間が、黒い霧に包まれ石像に姿を変えました。

首謀者が誰かも分からないまま国は滅び、数名の近衛騎士とリリーは皇子の石像と亡命を試みます。

しかし追っ手に襲われて、やむなく“始まりと終わりの扉”を使いました。

始まりと終わりの扉とはゲートの事でしょうか?

なるほど。

つまり皇子とは美少年の石像の事で、彼女は石像に話し掛けていたんですね。

そのクチから語られた話は、まるでドラマやアニメの様でした。

「でもテレビもネットもニュースになってないよ。もしかしたら違う世界か違う時間から来たのかな?」

ランカの言葉にリリーは焦りの色を滲ませます。

「紫の黄昏が終わる前に“言霊石”を精製しないと、アタイ達帰れなくなるじゃん…」

どういう事でしょう?

紫の黄昏は翌日の日の出と伴に終わりを迎えますが…。

「紫の黄昏が続く間はまだあっちと繋がってるのサ。皇子から魔法式を教えてもらえれば扉が開けるんだよ。」

リリー達は追っ手から逃げ延びる為に、ドコだか分からない世界に繋がってる扉を通って来たんです。

一度切れてしまったら、また元の世界に繋がるとは限りません。

このまま帰れなくなる事を2人は望んでいないんです。

すずは腕時計に目をやりました。

針は既に16時を回っています。

今は5月の始めですから日の出は…

「ジョギングで5時に起きたら、外はもう明るいの」

「多分、今の季節は4時くらいで日が昇り始めるから、余裕もって見積もると12時間無いよ」

何も分からない状態から始めて事を成し遂げるには、あまりにも時間が足りない様に思えます。

「ねぇねぇ、先生達に相談した方が良いんじゃないかな?」

“言霊石”の精製には高度な技術が必要になります。

学生の2人には…

「だめだめだめ! 大人は建前やら法律やらでがんじがらめだ! アタイはアンタ達にお願いしてるんだよ」

・・・・・・?

それを聞いた二人は使命感を持って思案し始めますが…

どうもリリーには隠し事がある様です。

深夜の図書室

言霊石を精製するには高い技術と強い魔力が不可欠でした。

どちらも持ち合わせていない二人には知識が必要です。

そもそも精製の方法さえ見当もつかないのですから。

「図書室で調べてみたらどうかしら?」

的を得た意見の様に聞こえますが、すずの提案は大胆不敵なものでした。

一般の生徒には公開されていない“魔導書”を盗み見ようと言うのです。

明らかな校則違反なんですがランカは反対しません。

「時間が無いの。直ぐに準備よ」

計画は実行に移されました。

閉館前に星読みの塔へ出向き、最短ルートや障害の確認。

既存の資料で調べ、精製に必要と思われる全ての物をかき集めます。

明るいうちに出来る限りの用意を整えました。

今は紫の黄昏で普段の深夜よりうっすら明るい25時。

塔の回りにはゴーレム制作の足場が組まれていて、上級生達が作業に追われています。

今年のテーマは造形美。

どっかの美術館の中庭に置かれているモニュメントの様な曲線が美しい自信作。

上級生達は仕上げに取り掛かっていて、集中し周りが見えていません。

すず、ランカ、リリーの3人は不用心に開け放たれた門を通って難なく侵入を果たしました。

塔の中心部は吹き抜けの螺旋階段になっていて、所々に点在するランプの灯りが静かに照らしています。

二人はホウキに跨がると、魔法式を唱えて宙に舞いました。

階段を真面目に上ってたら、うるさいし時間がかかり過ぎ。

吹き抜けをホウキで飛ぶのは目立ちますが、ここは勇気をもって一気に進みます。

塔には蔵書の種類ごとに幾多の図書室があり、存在する部屋の七割を占めていました。

目指すのは最上階近く。

司書室の隣にある特別な部屋です。

すっとチカラを緩めて音も無く降り立ちました。

扉は施錠されていますが、鍵はリリーが外の上級生から拝借済み。

ランカが解錠を試みます。

「あ…」

と、思いのほか大きな音が響きました。

「ねぇねぇ、気付かれなかったかな?」

「大丈夫よ。早く本を…」

ランカは魔法で小さな明かりを灯すと、リリーと本棚をあさり始めます。

すずは周囲に問題が無い事を確認すると、部屋の入口まで戻りました。

ジッと辺りを警戒します。

すると…

「足音…話し声も…」

下から階段を上る人の気配を感じます。

「キシシシ。鍵を無くしたら反省文モノだナ」

「お嬢…完全に他人事ですね」

「黙って探しナ。鍵はかけたから階段のどこかに落ちてるヨ。たぶん…」

恐らく上級生であろう男女2人組がここへ向かって来ます。

彼女は息をのみました。

螺旋階段の奇襲

壁一面に納められた魔道書の数々。

意外に管理が行き届いていない様子で、探している本がちっとも見つかりません。

焦れば焦る程、探し物は見つからないもの。

ソレを理解しているランカは努めて心を落ち着けて、あえてゆっくり背表紙をなぞりました。

「…あった」

本棚から取り出した一冊の魔導書。

背表紙には“言霊石”と書かれていて、表紙には“禁書”の判が捺されています。

それは学生の閲覧を禁止する表示。

彼女はアッサリ警告を無視して内容を確認し始めました。

そこへすずが静かに駆け寄ります。

「ランカ! 誰か来るの」

「まって。もう少し…」

上級生は鍵を探しにやってきます。

当然、明かりを灯して探すでしょう。

このまま隠れてやり過ごす手はありません。

すずは覚悟を決めると、部屋を出て静かにドアを閉めます。

ここは開いていてはいけない場所ですから。

音も無く階段を上がり、上級生達の上をとって杖を構えました。

「見つかりませんね。もう司書室に着いちゃいます…って、ちゃんと探して下さいよ」

「あー見つからなかったら、オマエが反省文書きなヨ」

「そんなゴムタイな」

何の罪も無い人を傷付けるのがどれだけいけない事か…

勿論、すずは理解してます。

でもここで見つかれば停学処分…いや、そんなことは問題ではありません。

いまはリリー達を無事に元の世界へ還す事が大事。

その為に覚悟を決めてきたのです。

彼女は心の中で謝罪すると、精神を集中して魔法式を唱えました。

杖から放たれた見えない力は、確実に上級生の一人を捉えます。

刹那…

「!?」

そのお姉さんが大きな“オナラ”をしたんです。

少しの沈黙。

それを聞いた連れのお兄さんは大笑い…しそうになって表情が凍りつきました。

「イナバ!! 豆腐の角で殴り殺してヤル!!」

「ちょ…待って下さ…」

何をどう勘違いしたのかグーで彼を殴りつけるお姉さん。

「3ミリで楽にしてやるヨ」

お兄さんは訳も分からず階段を飛び降りると、百何十メートル下の床ギリギリで重力を中和し降り立ちます。

「お嬢、落ち着いて!!」

「逃げるナ! バナナで釘打ち付けるヨ!!」

一方、お姉さんは虚空からホウキを取り出して、猛スピードで追いかけていきました。

再び静かになった螺旋階段。

「本当にごめんなさい」

すずは悪戯っぽく舌を出します。

白み始めた空

「本当に私ではないんですよ…」

そう訴える長身の彼はイナバ。

白ウサギの様な長い耳は普段真っ直ぐ上に伸びているのですが…

今は二重に玉結びされています。

「あの場にオマエ以外の誰が居たってんだヨ!!」

犯人は同じく長身のガラッパ。

山羊の様なカーブのある角と尻尾がチャームポイントの女の子です。

赤く長い髪は毎日丁寧にブローしているのですが、粗雑な振舞いが仇となり、よくボサボサに逆立っていました。

2つ星のクラスでは御約束。

一方的なガラッパのイナバ弄りがようやく収まり、二人は星読みの塔へ戻ります。

「ちゃんと探せヨ!! 3ミリで見つかったダロ!!」

鍵は螺旋階段の一段目に落ちていました。

「これは…?」

イナバは鍵を拾うと、三重玉結びする彼女を半ば無視して司書室前に向かいます。

東の空が白み始め、もうすぐ紫の黄昏が終焉を迎えようとしていました。

一方、短い時間でしっかり内容を読み込んだランカ。

三人は直ぐに温室へ戻りました。

「大丈夫。特別な材料や道具はいらないよ」

ガーデンテーブルを除けた煉瓦の床。

直径1メートル程度の二重の円に見慣れた図形や魔法語を描き込んでいきます。

それは調べたばかりの魔方陣。

基本をしっかり押さえている彼女にはわりと簡単でした。

中心には集めた言霊石の欠片と小振りなルビー。

準備を終えた時。

もう時計の針は3時を回っていました。

間に合うのでしょうか?

すずとランカは両手を繋いで魔方陣を囲みます。

“砕けた言霊石のチカラを移す法”

それは危険な賭け。

もし砕けた石に吹き込まれていたチカラが暴走したら…

何が起きるか分かりません。

爆発をおこして消し飛んでしまう可能性だってあるんです。

でも時間も技術も魔力も無い2人にはこの方法しかありません。

リリーは胸の上に両手を組んでお祈りを捧げ…

いや、小瓶を背中に準備します…?

「いくよ」

ランカの言葉にすずは頷いて瞳を閉じました。

2人が魔法式の詠唱を始めます。

やがて弱い風がおこり髪が騒ぎ始めました。

まぶたにチカラが入り、唇を固く結びます。

パシッと弾ける音。

するとリリーは小瓶を抱えて魔方陣に入って行きました…?

刹那、中心から暗い煙が立ち上ぼり彼女の視界を遮ります。

『…チッ』

少しして煙が晴れると、魔方陣の上には赤く透明な石が煌めいていました。

朝日の光を浴びて…。

君影草と魔法の365日-第5話

君影草と魔法の365日-第5話

第5話 皇子の従者。 動物や植物に酷似した亜人達の住む世界。 科学と魔法が共に栄える文明で紡がれる物語。 稚拙だけど等身大の全力。 君影草と魔法の365日。 愛娘と楽しい時間を過ごしたゲーム『とんがりボウシと魔法の365にち』より。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-30

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. ゴーレム・コンクール
  2. サイテーな杖魔法
  3. 紫の黄昏
  4. 深紅の瞳のリリー
  5. 皇子の石像
  6. 深夜の図書室
  7. 螺旋階段の奇襲
  8. 白み始めた空