なりたくない

なりたくない

year 1999

こんな悲しい日記をつけた卑屈な著者を私は知っているが、私は彼が一体何者かは知らないー 



 主人公とは己のみならず。自らに手を貸し出してくれた者さえ主人公とひとは呼び、それを仲間と呼ぶ。
 仲間と呼べばそのキズナは絶対であり、手放すことも、無視することさえ許されない。
 もし、禁忌を犯したものならばその者は後、必ず後悔し、懺悔するであろう。
 
 私は、禁忌を犯した。
 懺悔しても仕切れず、自殺しようものならば更なる禁忌とされ、人という魂の輪廻転生を繰り返さ無ければいけない。
 前世とはありし、前世の多いもの程、罪深き、殺戮の者である。転生は地獄。閻魔はおのが内に潜む魔物なり。

 私は前世を見ることも知ることも出来る。
 私は自分にあだ名をつけた。

 地獄と。

 己ほど、殺戮の多き地獄はいないだろう。



 



 彼はおそらく一度、主人公となったのだ。そして前世を肯定し、自らを殺戮の地獄だと言っている。何の事件の主人公かも、何を殺戮したのかも知れず、ただひたすら懺悔している。現在、彼自身が事件となってしまっている。
 私たちはなぜ地に立つことが可能なのか。重力に対し、抗力が働くからだ。事件には必ず抑止力という抗力が働き、主人公が現れる。その者は事件と同じ地獄から這い上がってきた者しかなれないレッテルなのだ。主人公とは周囲から羨望というプレッシャーと嫌味のあだ名。私は彼らに期待し、待ち続けるとしよう。
 
 因みに、私も地獄からの使者であり、すでに事件に関与する主人公のひとりだ。

 1999年2月14日

Invitation

>1

 生きることには、楽しさや苦しみが付きまとうと言って父はこの世を去った。
 1998年。滅多に雪の降らないこの土地でさえ遂に、?3度を記録した。早朝、学校にいつも通り登校。元気に小麦粉で遊ぶ奴ら。体力の無駄だと思い、冷めた視線を送る反面、やってみたいという気持ち。でもキット、俺が雪遊びなどしたらどうした?という周囲からの疑問の視線が一斉に俺に来るだろう事を想像する。
 「お前、もらえると思う??」
 「いや、お前どうなのよ?」
 「別に・・・。」
 今日はもてない奴も、もてる奴も気持ち高ぶる「バレンタインデー」だ。勿論、ここまで冷めてる俺でさえ気になる行事だ。
 「はいはい、席につけぇ!」
 男子の気持ちとは関係なく、日常という時間は通り過ぎる。

 「全国学力推移調査」。遂に、小学校でも開始されるらしい。なんでも、担任の評価に関わる重要なテストらしい。実施日は明日。担任はしっかり勉強するように、とプリントを20枚近く出した。せっかくの雪が台無しになったと皆騒いでいる。
自慢になるが俺は頭はずば抜けて良い。一度中学入試の専門塾に入ろうとしたことがあったのだが、入塾テストで史上最高得点を出し、是非入ってくれとせがまれるがあまりの興ざめに断る。・・・その話はさておき、要するに、このプリントもチョチョット終わらせられる。
 家に着くと、女子が数名。毎年チョコをくれる子は2人。マジで俺に惚れてるらしい。・・・メッチャうれしい。そしてその他見ない顔は・・・チョコと『プリント』を持っていた。なぜさっきの自慢のような前置きがあったか理解したと思う。
 「少し待ってて。」
 多分、須恵兄が来ているはず。ドアを開けると、
 「おお!!一泰、チョコもらったか!?」
 「今、そのことで忙しいんだよ。」
 は??という須恵兄の質疑を傍目に、
 「いいよ、入って。」

 後、俺は自分の部屋で数人の『生徒』にプリントの解説をし、御礼をもらう。これは後で須恵兄の食う分。
 「藤野君、頭いいね」
 そう言われ、テレながら本命ゲット。中学に入ったら多分俺が一番初めに交際をスタートするであろう人間だな。



>2

 「須恵兄ってつくづく暇だよね。高校生活ってそんな何もないの?」
 「うるせぇな。俺だって彼女の一人ぐらいいればお前の家なんか来ねぇよ。」
 この暇人は前田須恵。兄、とよんでいるが実際一滴の血さえ繋がっていない赤の他人。出会いはネットで、暇でサーフィン(ネットサーフィン)をしていると、面白い名前の人がいたのでプロフィールを見てみると境遇があまりに俺とそっくりでチャットで話していくうちに意気投合し、住んでいる所も近いので実際に会おう、という話になり何度かお互いの家に行ったり来たりしてるうちに藤野家の住人は二人になってしまったのだ。ちなみに、高校生でなかなか頭のほうもよろしいので小学校の奴等よりも断然、話してておもしろい。
 そして今その暇人高校生はこたつでぬくぬくしつつ、人のチョコをバリバリご賞味なさってる。
 「それうまい?」
 「形はありえないけどうまいな。」
 「なにそれ?自分のことチョコにかけて形容してんの?」
 「うるせぇわ!お前自分がチョット甘い顔してるからって調子乗ってんじゃねぇぞ!?お前から見たらどうかしらねぇが、俺の容姿は平均より少し上だわ!」
 「と、まあそれはそうと、明日学校で学力推移調査あんだよ。」
 「軽く流されんのも腹立つな・・・。まあ、俺はこういう役回りだし仕方ないか・・・。」
 「お!ちゃんと自分の振る舞いをわかってる人ってかっこいいよね!」
 「だろ?」
 アホめ。こんなことだから女に振り回されるのだ。とか思いつつ結構俺はこんな須恵兄が好きだ。
 「今日どうせ泊まりでしょ?」
 「ああ。」
 「じゃ、風呂入って来て。飯作っとくから。」
 「んじゃお先。」
 こうして一日は終わる。


 翌日も寒かった。家の屋根からは霜が降りていて、布団から出たくはない。しかし、やらなければいけないのだ。まだ俺は休んではいけない。進むしかないんだ。
 「おはよ。」
 「ん。」
 朝飯は須恵兄が作ってくれている。毎朝違うメニューなのでこちらも自然とそれが楽しみになる。今日のメニューは・・・もつ鍋・・・。複雑。

 「じゃ、行ってくる。意外と朝にもつ鍋ってのもいいね。月に一回ぐらいはいいかも。」
 「お褒めの言葉、ありがたく頂戴いたします。んじゃ、テストがんばれよ!」
 「あいよ。」
 俺は幸せでいっぱいだ。なのに、不安だった。こんなんでいいのかな。俺はただ、素直に幸せを幸せとして感じたいだけなのに、それをまた自らが拒む。幸せの後って、不幸が来るんだよね。


 四時限目。国、算、理、社、と終了した。最後にアンケートを行い終了らしい。どうせ「一日の自宅勉強時間は?」とかだろうな。実際勉強などしていないが、高得点のうえ勉強をしていないとなるとカナリすかした小学生扱いを受けるので一応六時間と記載しておこう、などと考えてるうちにアンケートは開始されていた。


 
 

>3 

 「んで、テストどうだったわけ??」
 「別に?なにさ、急に。」
 全国学力推移調査が行われてから約三ヶ月。晩飯を食ってる途中、いきなりにも程がありすぎる位のタイミングで聞いてきた。しかも、 須恵兄という人は行事などにはあまり首を突っ込まない人なので、俺はかなり怪しく思った。おそらく何か裏があるはずだ。
 「なんかあるんでしょ?」
 「・・・いや?特に。」
 「怪しすぎだよ・・・。」
 「ま、卒業&入学おめでとうだ。ポスト見て来い。」
 は?と最初思ったが取りあえず不審なので確認へ急ぐ。すると、中には一つ便箋が。宛名は藤野一泰様となっている。頭には『?』しかない。一旦須恵兄に。

 「で、これが?」
 「ああ。開封した?」
 なんだろ??カッターで慎重にオープン。中には二枚の紙。
 「ん??模試の結果?」
国語 100点
数学 91点
理科 97点
社会 100点
アンケート 85点

となっている。一見普通の結果発表に見えるが、アンケート 100点??
そして、もう一枚。
 「・・・瀬良儀中学・高等学校入学おめでとうございます。本校入学にあたり、準備やパンフレットなどを同封いたしました・・・。何これ?しかもこの学校須恵兄の学校じゃん。ドッキリかなにか?」
 「いや?オオマジ。瀬良儀入学おめでと。お前は来るだろうなって、思ってたよ。」
 「は!!!???」


 一応、話を聞くとこの全国学力推移調査というのは、瀬良儀中学・高等学校が主体となり行ってるものらしく、全国から約二百人近くのアンケートなども含めた精鋭達を入学させるためのものらしい。そして俺は見事その試験に合格した、らしい。
 ちなみに、須恵兄も昔俺と同じ年にこのテストを受け、合格。そして今にいたるということらしい。なんちゅう偶然。この学校、全寮制で朝昼晩としっかり飯も出してくれて、金があるなら食券で好きなものも食べられる。また、部屋も個室か二人部屋どちらかを選べて、風呂、トイレ、キッチン、クローゼット、冷蔵庫など様々なものを一人につき一つずつ与えてくれる。しかも共学。こんな好条件のまないはずがない。
しかも、
 「お前が入学するなら俺も学校に戻る。」
 と言ってる人がここにいるので。


 1999年3月5日。俺は不思議な招待状を送られた。

again&first

>1 

 
 四月二十日。桃色のふぶきを前に、俺は絶句していた。
 「ねぇ、これ学校?」
 違うのだ。よく聞いて欲しい。学校があまりにパンフレット通りではないのだ。いや、その、違う!ボロイ、とか、そういうんじゃなく、ただ・・・。そうだ。街なんだよ。学校とかじゃなく、街。確かに学校はあるし校庭もある。それにちゃんとした、おそらく寮であろうものもある。そして校門があり、そこまでは学校。そこからが変。校門の外に家や道路、商店街。そしてしばらくすると、カナリの大きさのショッピングモール。そしてまた住宅街の真ん中に道路。空き地などもあり、そして瀬良儀中学・高等学校と書いてあるデカイ門。
 「はぁ・・・」
 両親と共に今日の春の日にお似合いな笑顔でその門をくぐり抜けて行く。俺には両親がいない。だから昔、入学式や授業参観になるとヤケを起こして学校を休んだ。今はもう、慣れたけど。両親は俺に残した。家と土地と一生遊んで暮らしていける程の財産を。モット、プライスレスなものって在るんじゃないの?
 
 
>2

 本日、前田須恵不在。彼の意識上、自分の事を藤野一泰のバトラー(執事)兼、親代わりとなっている。よって、一泰の入学式に自分がいない事は彼にとってかなり重罪なのだ。彼には一泰と同じく、両親がいない。しかし、不幸中の幸いで彼には一泰のような資産は一つも残されなかったが、祖父母がいた。その祖父母には両親は交通事故で他界したと聞かされている。彼は祖父母が教えてくれることが興味深くてしかたなかった。なにが?問われても自分でさえわからないのだ。
 とにかく彼は今自分の部屋をせっせと片付けていた。
 「寮長ってさ、かっこいいよね。」
 「なにを当たり前のことを・・・」
 こいつ・・・。とか思いつつ、やっぱ男前ってのは事実だった。
 「そういえば寮長、結婚したんですよね。おめでとうございます。」
 「遅いわ。お前からだけなんも来ねぇし、俺嫌われてんのかと思ったぞ。」
 「お子さんは??」
 「気が早い。そういうことしか考えない奴は一生結婚できねぇな。」
 ちぇっ、少し自分がリードしたからって・・・。てか、一泰大丈夫かな・・・。


>4

 「全然大丈夫じゃねぇよ!!」
 あれ・・・?やべぇ、いきなり訳わからんことを叫んじまった。俺らしくもねぇ。ま、いいか。
 てか、俺どこ座れば言いわけ??なんか、資料もなんも渡されてねぇし。ま、いっか、とりあえず・・・。俺、何組だ??
受付で渡された用紙に目を通す。4組か。あんま好きじゃねぇな。4組って。
 「よっこらせっ」
 取りあえず適当な席に腰をかける。俺が今いるのは、学校の入学式専用のホール。しかし、豪華な場所だ。そんな俺らから金取ってる訳でもなしに、どうやって経営してるんだろうか?やはり・・・
 「君、名前は?」
 「うえいうぇか!!」
 思わず、飛びのいてしまった。隣に人がいて、更に俺に話かけてきた。
 「あ、えと、藤野一泰です。」
 「プッ、」
 なんか笑われてる・・・。くそ、女に笑われるなんて、屈辱だ・・・。
 「そんなに屈辱??」
 「え!?なんで・・・?」
 「君、ここが何勉強するとこか知ってる?」
 「何って・・・?」
 こいつ、何が言いたいんだ・・・。
 「あれ、今なんか思った??」
 「こいつ何が言いたいんだって。」
 「あれ?何で今わかんなかったんだろ・・・。へぇ。君面白いね。自然に『一方通行』を妨害するなんて。私、前田奏。すごい名前似てんね。」
 「ああ、よろしく・・・。じゃないでしょ!!なに!?今の!!人の心を!!」
 「『一方通行』。ホントニなにも知らないでここ来たの??」 
 「ああ。普通の勉強をする所じゃないみたいだな。頼む、教えてくれ。」
 「うーん、勉強なんかより10倍は難しいことする。最初は書物から入る勉強っぽいけど、2年生からの、実技になってからは難しいかな?要は君みたいな勉強に自信がある人でもここではただの『人』になっちゃう。」
 「・・・俺、やっぱアホなのかな、まだいまいち何をするのかわからないんだが・・・。」
 「クク、プッ、あはは、だってまだ言ってないもん。まあ、もう校長の話始まるし、多分今からの話でだいたい何すんのかわかるよ。」
 こうやって須恵兄以外の他人と気さくに話したのなんてどの位ぶりだろう。俺はそんな温かい懐かしさに喜びを感じていた。

なりたくない

なりたくない

生きている意義が見出せない俺。 前進し続ける彼女。 きっと、俺も彼女も本質は一緒。 俺は意義は見出せないが、やることはやらないといけない、この理屈で動く。 彼女は前進しないと、生きていることがイヤになってしまうから前進している。 俺らは、神様からのエコヒイキに悩んでいた。 ・・・・・(本文より) 小学校で実施された全国学力調査。それは、国算理社、アンケート、と普通の内容だった。しかし、それは主人公の道を大きく変えることであった。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2010-10-24

Copyrighted
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