宇宙映画館

宇宙映画館

 宇宙映画館(極上中年浪漫)
           新 宿   了


お品書き



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1序章ー三本立て映画館の鑑賞諸注意
2Ⅱ二章ー映画その壱・【浪花心中】
3三章ー映画その弍・【食通野郎】
4四章ー映画その参・【遊色舞妓】
5終章ー鑑賞後振込口座・贋金惑星宛
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1 三本立て映画館の鑑賞諸注意

 皆様、長らくお待たせ致しました。当映画館のシステムをご説明致します。
この映画は、三本立てとなっており、上映時間は自由に決めて頂けます。
お客様が映画の途中で鑑賞を中断されたら、次はそこから再生してくだされば結構です。鑑賞が終了したら、最後の章の振込口座をご覧になって下さい。

 尚、次のような諸注意がございますので良くお読みになって下さい。



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一、鑑賞中は、むやみに便座を離れない事。
一、通信体は電波をOFFにする事。
一、上映後に異空間を漂わない事。
一、上映後に旅する惑星の番号を入力送信する事。
一、料金は各惑星の開発担当行に振り込む事。

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 では、ごゆっくりご覧下さいませ。


2 浪花心中

   一

 菜美(なみ)和衛門之丞(わえもんのじょう)は、朝露の残る空気の中、十時の鐘楼の音が鳴り響くのを合図に即天神社の三叉路(さんさろ)で落ち合った。和衛門之丞は既にお菜美と駆け落ちする覚悟で今朝方おとっつぁんに勘当されて家出したのだった。父子家庭の稲作農家で貧乏が染み付いた農民の子倅(こせがれ)に対して、代々続く海鮮問屋の町娘・菜美。世間的にどう見ても、釣り合わない恋人であり、和衛門之丞のような農家の長男坊に庄屋の娘を嫁がせる訳にも、逆に問屋の跡取りとして婿養子に迎える事は言わずもがな、どちらも無理な話であった。傍目(はため)に見ても(はかり)が傾く身分均衡であった。一方のお菜美の方も、和衛門様と来世で(かた)い契りを交わすのよと固く決心した(むね)を母上に打ち明け、涙々の岸壁のオカン別れをしたばかりであった。

 そのような、西洋で言う所の”ロミオとジュリエット”の江戸時代版を地で行く恋仲になった和衛門の心中はと言うと、
――――おとっつぁんには申し訳ないが、お菜美と別れて同じ百姓の娘を嫁子(よめご)(もら)って農家を継ぐのはできへん。かと言って、庄屋の喜八(きはち)さんに頭を下げ、お嬢さんと一緒に所帯を持ちたいからどうか俺を見習い丁稚(でっち)としてこのちりめん問屋で年季奉公させてくだせぇまし、と述べ立てた所で喜八さんは絶対に首肯しては下さらねぇ。お菜美以外の女子とは誰とも付き合いたくねぇし、今後も付き合わへんで。――
という有様であった。
 そんなもんだから、和衛の狭い了見(りょうけん)で考え抜いた結論は、向こう三軒の三叉路(さんさろ)脇にある納屋にしばし身を隠して恋の花火の成就を遂げて、いっそ心中して絶命しこの世から二人仲良く消え去ろう、あの世で水入らずの夫婦となって永遠に愛の絆を深めよう、というものであった。

   二

 菜美の着物は、これ以上心中の盛装にはないぐらいの(まばゆ)い白無垢に髪はいわずとしれた文金高島田。この髪結いは、菜美の知り合いの郁代さんに事情を説明して結ってもらったものだ。角隠しも、帯も、帯締めも日向(ひゅうが)縫いの刺繍の入った極上品で、綺麗に整えられていた。
 一方の和衛門之丞も、紋付袴(もんつきはかま)に白鶴の絵入り扇子、金色の錦織の帯締めといういでたちであった。流石に着倒れの都、京の出の百姓だけのことはあった。これは和衞門が菜美の知り合いの旦那衆に無理矢理頼み込んで貸してもらったものだ。
 一方、朝早くに起きた和衛門は、おとっつぁんに()ててしたためた計画の書を枕元にそっと置いた。いつもなら和衛門よりも早く起きるおとっつぁんだが、怪しまれぬよう出発しようとの企で、和衛は知り合いの又吉(またきち)から密かに入手した眠り薬を(うす)でこっそり()いて粉末にしたものを晩遅くにおとっつぁんの湯呑に仕込んでおいたのだった。こんな所だけは悪知恵の冴える和衛門之丞。さて、その策たるや見事に成功し、おとっつぁんがいつものように和衛門より早く起きて小便してからその湯呑で茶を飲んだ。おとっつぁんの日課なのを和衛は知っていたのだ。飲んで一時(いっとき)経つと、布団でいびきをかいておとっつぁんは眠り出した。それを見届けた和衛門はそっと障子を閉め、玄関に回り、格子戸を開けて菜美との約束の場所へ向かった。途中、隣の祥子(さちこ)|婆さんに会ったが、「これから祖母の墓に水をやりに行くんや」と言っても怪しまれぬ様子だったので、
――これから誰かに会っても嘘《うそ》をついてやり過ごそう、全ては思いを遂げた後になってみんな納得するに違いない――
と思う和衛門之丞であった。

 かくして心中する娘御には到底見えぬ出で立ちの菜美は即天神社前で和衛門之丞と無事合流できた。
 恋人のあまりの美しさにしばし見とれること数分間。和衛門は彼女の手を引いて納屋の扉を開けた。窓の格子から朝の陽光が穏やかに地面を照らしている。乾いた黒土と(わら)の匂いが(こと)の外、甘く切ない。それは、お菜美の白い(うなじ)から(にじ)み出た汗と可愛らしい唇から漏れる吐息とが混じって匂い立ち、和衛の感覚を狂わせていたのかもしれない。
 俯く女子の顎を片手で上げて接吻(せっぷん)した益荒男(ますらお)は、
「さあ、お菜美。あの世で結ばれよう。おっかあもまっとるでぇ」と言って優しく女の手を握り締めた。
「ええ、和様。いつでもどうぞ。菜美の覚悟は出来ております。観音様もおっかさまもきっとお許しのことでしょう」菜美も謙虚にコクリと頷き、小さな顔を赤らめた。
 外で雲雀がさえずり始めた。

   三

 そもそもどちらが相手を見初めて交際に発展したのか。それは次のようなものだった。

――ある晴れた(うら)らかな春の日の午后、おとっつぁんの野良仕事を手伝って田んぼの土を耕していた和衛門之丞。そこへ村の童が釣り遊びの(えさ)としてミミズを取ってくれと和衛のもとへやって来た。心優しい和衛は子らの為に乾いた黒土を三寸ばかり掘り返して竹の釣竿にふさわしいミミズを五六匹ばかり捕まえようとしていた。
 ワー、ワー、そこや、そこ……。
その賑やかな光景に気づいたのが、父親である庄屋の喜八と共にお得意先を回っていた菜美嬢だった。
「(あれは何をしているのかしら )おとっつぁん。あたし、ちょっと田んぼの横の小川で用を足したいの。先に帰ってていただけますか?」と嘘を申した菜美。まだ十九になったばかりのお嬢は、格式ばった庄屋の家から離れるときはいつも周囲の出来事に興味津々(きょうみしんしん)な娘だった。俗にいう、箸が転んでも笑うような子女でもあった。毎日毎日庄屋の店先でじっと座って愛想を振りまくだけの看板娘の退屈な生活から抜け出せた今日の目の前の楽しそうな機会をみすみす逃して棒に振るのは勿体無い、と思うてもその年の娘には仕方の無いことだった。お菜美は、喜八を計略通り先に帰すと、喜んで田んぼに近づいた。すると、小僧たちが、ミミズを片手に土をいじる若者を、しきりに頑張れ、頑張れと囃しているではないか。
――あれ、このヒト、子供に優しいのね、いい人だわ。しかもイケメン、いいオトコ。あら、心の臓が、どきりんこ、どきりんこって……。どうしちゃったの?? なんだか、わたし、恋に落ちたかしら?
「ねぇ、お兄さま、何してはるん?」
てな具合に声を掛けたのは、菜美の方であった。それから、その経緯を丁寧に説明した若者に、若い娘が惹かれて恋に落ちるのは時間の問題だった。
 かくして二人は自然と若者同士で意気投合し、交際をスタートさせた。
 奈美にとっては、何でも詳しい優男が頼もしくて、また、自分に思いを寄せてくれている事に悦びを感じて毎日が幸せだった。一方の和衛門も、綺麗な女子を恋人にでき、満ち足りた楽しい日々を過ごすことが出来た。
 ある時は和衛門之丞が奈美を遠くの池へ連れて行った。小舟を出して二人きりで池の真ん中に来ると、和衛はわざとオドケテ舟を揺らした。菜美は、キャーキャー言いながら(これも和様の作戦ね)と思いつつも派手に和衛の体に抱きついた。こんなシーンを幾度も重ねて行くと、二人の距離はみるみる近づき、お互いに固い信頼関係が結ばれて行った。

 しかし、その次のステージ、結婚を考えると、二人に未来は無かった。
――純愛だけでは先に進めないけれど、駄目だからこそ愛のパワーは燃え上がる――。

   四

 契りを交わした後に心中するのはこの時代の不遇な男女の定番である。
 菜美は目を閉じて、これからの短く長い一時に己の全てをぶつけようと集中した。和衛は逆に、これまでの菜美との出会いから始まった様々な思い出を振り返り、今日で絶命する二人の事を周囲はどういう風に見るだろうかという迷いが頭に浮かんでは消えるのだった。

 雲雀のさえずりが静かになり、我に返った和衛門之丞は、意を決して菜美の白い雪肌を抱き、そっと口を口に重ねた。かと思うと、次の瞬間、(はかま)をはだけて、菜美の股間に片足を割り込み、猛々(たけだけ)しく荒れたごつい手を片や胸元に入れ、片や股に突っ込んで閉じられた脚を開いた。あっと()らす菜美の声を合図に、着物の裾をたくし上げると、菜美の上気した顔からは湯気が立ち上り、息づかいも声も荒くなった。勃起した乳首は爪先の倍以上そそり立ち、和衛門には、前まで豆粒だったそれが湯がいた落花生(らっかせい)の如くに感じられた。左手で右乳房を鷲掴みにして揉みしだき、乳房の上の落花生をほじくりいじると、びくんびくんと体全体が反応する菜美は、「はぁ~ん、いぃ~ん」と訳のわからぬ言葉を発し、しきりに体を(ねじ)った。それに気を良くした和衛門は、柔らかな菜美の乳房を更に慣れた手つきで愛撫した。豆腐のようにポヨンポヨンと持ち上げたり、ゴム(まり)を掌で二三度握り潰すようにしてみた。舌全体で乳を吸っては()み付き、乳輪から乳頭へ乳頭から乳首へと舌を()わせて頂点の辺りをイカの当たり目をしゃぶるが如く噛みつしがみつし、赤子のように何度も吸っては舐め回した。また、乳首にはさみを入れるが如く指でちょんちょん挟んでは離すのを繰り返すと、菜美は体を上下に揺すりながら短い(うめ)き声を速射砲のように漏らした。熟練した己の技への自信感と女の声への興奮が相まって一段と怒張した和衛の大砲は、ドクンドクンと、砲身に濁流が押し寄せ、最高潮の山場に対する準備が万端となった。もうええな、と思った途端、和衛は菜美の秘部をたちまち露出させて、自分の鋭利で嵩増(かさま)しした大砲を局部にそっと挿入した。充分潤った陰部は陰茎を深く収めて、蛇腹のように伸縮しながらそれを包み込んだ。しかし、龍頭は前後左右に首を振れば振るほど(うぶ)な裂け目に激しい痛みを容赦なく浴びせ、小さな薄皮が破れるまで忍耐の時が数秒続いた。痛みが快感に変わった瞬間、小さな薄皮は張りをなくして穴が広がり、破裂した風船のように垂れ下がった。そして、秘部の裂け目から、白の高島田(たかしまだ)に鮮血がパッと飛び散り、深紅の円を大きくしてじわわじわわと広がっていった。破瓜(はか)の運命的顛末(てんまつ)だった。
「初めてか」「…そうです」「痛いか」「痛いねんけどもっと欲しい…、もっと長く続けて欲しい…」
「女子の悦び、よう味わえよ、菜美。…好きや、…好き、す、好き同士やもんな、おれら。おれ、お前となら、あああ、○○○、ⅩⅩⅩ、ううう、○○○」

――その時であった。ガタンと納屋を開けた男が闖入(ちんにゅう)した。折も折、組んず解れつの取り込み最中に、下馬橋太郎(しもうまはしたろう)だ、勤皇(きんのう)阪神落ち武者だ、と名乗る珍客が、「拙者も加わる」とのたまって二人に割り込んだ。男二人に女一人で相手することとなった菜美は、有り得へんわぁ、と思いつつも興奮の坩堝(るつぼ)の中、ウブな聖女から修羅の痴女と化して、初体験にもかかわらず、えげつない状況下でも健気に男二人を愛してやった。片方の口と手では橋太郎の一物をしごいては尺取り虫の如く嚥下(えんげ)し、もう片方のお口は愛する和衛門之丞の砲身をしっかり吸い取ったまま、下半身は自然に彼と連動してリズムを刻んだ。たったん、たったん。しゅぱ、しゅぱ、しゅぱ。上と下で異なる音が納屋に響き渡った。それが耳についた菜美は、愛する男と知らない通りすがりの間男双方に乙女の恥ずかしい姿を晒しているのがたまらなくなり、
――穴があったらいれて欲しい?入りたい?どっちもやんか!
 と思うのであった。異常な状況に興奮した和衛門は、腐女子の耳たぶに吸い付き、ちゅうちゅう吸っては項を舐め回し、同時に両手も動かした。片手を乳房揉ませ係長に任命し、空いた片手を陰唇まさぐり隊長に特命した。両長とも任務を全うせんが為、猛烈に動いて活動する時と優しく撫ぜて休ませる時の二交代勤務で臨んだ。また、耳の穴、鼻の穴、臍の穴、穴と名のつく全ての所に舌先を入れて掻き回した。江戸で流行りの瓦版に書かれていた、女は九つの穴を持つからくの一(女=く+ノ+一)だ、という説を和衛門は思い出した。しかし、頭の悪い和衛門は、蘭学で言う”きゅうけつき”、とは助け平女の九穴鬼か? などとも思うのであった。冷静に思考したのも束の間、再び快楽の噛ませ犬となり、乳房を手で掬い上げ口付けしては伸びた黒髭を白い谷間に擦りつけるのだった。一方の間男は出すものを出すと用事を思い出したかズラカった。納屋の熱が少し引いたので、裸の二人はまた激しく抱擁し合った。そして、何度か蛇腹の中でぐじゅぐじゅのおつゆにまみれて気持ち良くなった亀頭をいったりきたり寄せては返す潮の如くに擦った挙句、押し寄せる快楽の渦に体中のぼせ上がったまま残り少ないケチャップのボトルの中身を押し出すかのように白い男性粘液を素早く放った。その瞬間に快感が和衛門之丞を髪先から足爪まで走馬したのと対照的に、菜美のそれは挿入前と発射後もほとんど変わるどころか発射後も快感連絡船の汽笛の余韻が一五分間続くのであった。
 しかし、覚めたかに見えた若い男の身体は再び性欲に焚き付けられて炎上するのが常。(よだれ)をだらしなく垂らす犬のように膣から精液を垂らさせた陰茎は、最初の放水後も何度も何度も『たちまくれ日の本』と叫んでは大海溝に突撃して激震をもたらした。夕刻の逢魔(おうま)が時が訪れ、男女ふたりの水入らずも終盤、迎えること何度目かの痛みと絶頂快感の大嵐を受けた豪華客船伊太伊太丸は、ようやく港に錨を下ろして落ち着こうとしていた。手延べ製麺風愛撫も合唱付連呼往復運動も絶頂段階を経て、スローダウンした。安寧の吐息と満ち足りた甘美(かんび)(かお)りに酔いしれた二人の心の臓も、納屋の戸外でさえずる椋鳥(むくどり)のホッホホーホー、ホッホホーホー、という鳴き声に歩調を合わせてゆっくりとあい脈打つのであった。
 一段落して、納屋の中を見渡すと、そこここに(わら)がなぎ倒されており、それが彼らのした行為と同じ事をしょっちゅう他人もしていた事を(うかが)わせる印のようだった。高島田が土と性行為で(ほこり)まみれ泥まみれになったのを見て、白いものを汚したくなる衝動が再び蘇った。しばし、考えた和衛門之丞は、今度は納屋の窓のさんに菜美の両手を握らせて、尻を突き出させた。菜美は、今度は後ろから責められるのだと悟り、暗がりの中、和様のお顔が見れないのに身体が悶えるであろう自分の不貞を恥ずかしく悔しく思った。案の定、和衛門劇場の第二幕は、後ろからだった。両手で菜美の腰をだき抱えると、オスの股間をメスの股間に密着させて、すぐには入れず、陰唇と膣口がしっとりじっとりと濡れそぼる迄わさわさと陰茎と片手を押し付けて擦りつけた。ああーん、いやーん。菜美の牝の本能が剥き出しになり、陰核も剥き出しになって露を溢れさせた。溢れた露が真後ろの和衛門の足にぽたぽた垂れてそのいやらしい光景に興奮した和衛門は、濡れたな、と思い、陰茎を割れ目に象の鼻の如く上下に擦るとあっという間に挿入した。ずぶずぶズンズンと洪水の密林に入った天狗の鼻は、ビンビンに硬直しつつ柔らかな肉襞(にくひだ)の内壁を駆け上り洞穴奥の袋小路をどんどんと鈍く突き上げた。始めは、行儀よく腰を抱えていた両手も、片手が虚空(こくう)をさまよいながら愛液まみれの陰核を愛撫したり、もう一方の片手も割れ目より左半分の雪尻から太腿を太腿から雪尻を大事な品をさするように()大胆(だいたん)に撫で回した。ああぁ、あかんて、あかん……、あっ、あっ、いや~ん、と呻く菜美は、もう何度も昇天した心地でこの世の快楽を前世から知ってた娼婦の如く身体は熱く悶え気持ちは(たかぶ)った。興奮状態で酔いしれている女体は、少しの痛みで快感刺激が倍増する。左手を和衛に後ろ回しに掴まれ、彼の歯で己の人差し指を三度甘噛みされたれ菜美は蒸気機関車の発車状態となり、頭の上から幾度も魂が抜けた。昇天したのだ。そして、その身体から溶け出した蝋燭のように汗と愛液がしたたっては秘部太腿太腿足首へと流れ落ちて快感が体内に充満した。和衛門は尚も攻撃の手を緩めない。落ちていたぼろ縄を拾い上げ、酒樽か下手人を縛り上げる要領で、まず女体の割れ目に()てがうと首までを三重に回しかけて腹で(くく)り、十文字に交差させて、腹から乳房を円に(かたど)って(しば)り、乳房の形がお(わん)から絞り袋のように垂れるよう括った。そして両手を手首で交差させて縛り、足も同様に縛って、最後に尻の結び目に結わえ付けた。痛さと恥ずかしさで一杯の菜美は、あんあん言いながら身悶えるが、動けば動くほどもがけばもがくほど縄は菜身の裸をじりじりと締め付けて柔肌に食い込んだ。縄地獄汗(なわじこごくあせ)まみれの(けい)(しょ)す、と冗談(じょうだん)めかして和衛は言うと、縄を持ち上げて陰唇を()め付け、陰唇にかかる縄を前後に引っ張った。あん痛いけど気持ちいい、いたぎもちイイわ、とツボ刺激のような事をのたまう菜美を尻目に、和衛門は尻をパンパン叩くと足首を縄ごと持ち上げ鮟鱇(あんこう)の吊るし切りのように尾っぽを持ち上げた。下半身を持ち上げられた菜美は、思わず少し失禁し、ブスリブスリと放屁もかました。

 納屋の戸の隙間から一部始終を見ている女子がいた。菜美の後を尾行していた妹、おリョウだった。三つ下の十六になるリョウは、二人が納屋に入ったらきっとそうなる、と展開は予想していたものの、あまりの激しいプレイに自身の顔も身体も熱く火照り、脇の下や胸の谷間に汗を()き始めた。濡れ始めた陰唇にも着物の上からしきりと押し返し刺激を与え続けた。
――おな、おな、お菜美(ねえ)やんが、……、あんなこともこんなことも。う、ウチもしたいし。でも一人で乗り込むのは怖い――。
 考えあぐねた末におリョウのとった行動とは、近所の若女子(わかじょし)を集めて皆で乗り込もうということだった。幸い今日は、城主の誕生日で、祝日の故、一同、昼間は暇だと言う。
「恋人とはいえヒーヒー言う女子に容赦ない野郎に殴り込んで、姐御を救出するんやで」。こう言って同士を集めた。
 女子連、これみよがしに薄いスケスケの肌襦袢(はだじゅばん)で頭に白いタスキを鉢巻替わりに()めて、えいやとばかりに納屋に突撃を強行した。すると恍惚(こうこつ)の男女二人は何が起きたのかしばらく理解できなかった。間男の次は、ヤリマン子女か、ぐらいにしか思わなんだ和衛門は、ひとまず菜美に接吻してから、おもむろに子女達の肌襦袢をビリビリ破き、あっという間に白い包帯のミイラの抜け殻の山を築いた。かと思うと、キャーキャー言う裸の若子女を両手で二三人抱き寄せ、脚を()けては倒し掛けては倒し、片手である子女の股間をまさぐり、片手で乳房を掴んでは揉み上げ、口で違う女子の乳房に吸い付いた。俗にいう淫乱輪姦(いんらんりんかん)の酒池肉林が始まった。肉林女子たちは、当初の目的を忘れ、興奮して一匹の大王牡蜂に群がる働き牝蜂衆の如きに狂気乱舞した。陰茎を口で愛撫する二三の牝、毛むくじゃらの太ももや脚を舐める牝、腕を乳房に絡ませる牝、手を秘部に(あてが)い指を出し入れさせる牝、胴体から背中にかけてぴったり密着する牝、もちろん金玉をしゃぶる牝、それはそれは日の本子女の撫子パワーたるや一気呵成であった。阿鼻叫喚の刻が過ぎ去るまで太陽も欠伸を続けるしかなかった。
 やがて、居合わせた牝蜂連の上気した(はまぐり)もようやく貝殻を閉じ、余韻を反芻する如く時々ヒクヒクと痙攣(けいれん)するのであった。

 しばらくして全員が落ち着きを取り戻したのを見計らって妹に心中の事を打ち明ける和衛門之丞。十六の娘御も姉と彼氏の固い決意を知ると女子連を外に出して帰って行った。

   五

 着物を羽織った二人。しばらく静かな時が流れた。やがて、小声で心中の段取りを説明する和衛。真剣な眼差しをオトコに向ける菜美。キリリと引き締まった表情をしている。四方の壁に藁を積み上げる。近くの井戸から()み上げた水を手元に置く。お互いに柄杓(ひしゃく)で水を掛け合う二人。腰巾着から石を取り出した和衛門之丞はカチカチと打ち付けて火を起こす。それを燃えやすい紙燭(しそく)に移し更に紙燭から藁へと移すと、乾いた藁を巻き込んで一気に炎が燃え広がった。まだ火が付かない藁に和衛は紙燭を放り投げる。小さな炎が乾いた藁に燃え移り、火勢を増してパチパチ燃え出した。初めのうちはそれを見ているだけの二人だったが、十五分もすると、赤い炎が小屋全体に広がるのを間近にしてだんだん気持ちが興奮してくるのだった。
 和衛門には、自分たちのする行為が恐ろしくも、崇高にも、また、清らかで罪深くも感じられた。そういう情念が心中に広がる気がした。アツイ、アツイ……。気付くと菜美が裸になって白い肌襦袢で扇ぎながら、必死に火を遠ざけようとしている。ムダやで。ムダやんか。和衛が(なだ)めても半狂乱の女には通じないのか、中々止めようとしない菜美。十九の娘だ。頭で分かるコトとやってるコトとは一致しなくても無理はない。年上の男は哀れな女に残りの水をザブリとかけてやった。カズサマ。アタシ、まだシニタクナイ。しゃあないで。こうなるしかないんや。……ソウネ。でもアツイ。裸の皮膚に(すす)が付き、白い肌を汚す。熱さで皮膚の所々が紫に変色してくる。小屋全体が燃え、二人の影もいつしか炎に包まれて行く……。
――灼熱地獄。――もう逃げられない。
――満願成就。――すぐに解き放たれる。
――阿那盛衰(あだ)。――短い命。
――聚楽永劫(じゅらくえいごう)。――長い眠り。

 一年後、きれいな菜の花畑で寄り添う若夫婦が歩いている。楽しげに並んで。あの日の二人のように。

(@・@・@)


3 食通野郎

   一

 N野K介は、海の幸を求めて、天上海の小島に来ていた。二泊三日の仕事出張だった。彼の食通ぶりは(つと)に有名で、旅籠(はたご)の主人も知っており、もてなす主菜・副菜には特に神経をこらして珠玉の幸を器にちりばめねばならなかった。
 タクシーを降りたK介の前に、今回の取材先である旅籠が居を構えていた。月乃新聞の経済記者を経てフリーのライターとして、様々な雑誌のコラムを担当したN野。全国を飛び回る内に地方のうまい(どころ)を見付ける嗅覚が発達し、気付けば<食通コラムニスト>とか<グルメ評論家>の名がプロフィールに冠せられるようになったのはつい最近である。ライターとしての記事の説得力に加え、地方巡業で鍛えられた舌と味覚の鋭さ。それゆえ、今日もこうして地方の名産品と郷土料理を取材しに来ているのだ。

   二

 宿の記帳を済ませると支配人に黒塗りのタイルとヒノキのカウンターへ通される。椅子の横に荷物を下ろし、さっそくK介の仕事開始。客のいない午後三時。
 食べて書く。書くために食べる。それが彼の仕事。
 板前が料理の下ごしらえに掛かっていた。やがて、次々に料理がカウンターに並び出した。
「親父。この(あわび)、どこで採れたもんかな」
「ハイ。これは、酒楽之島(しゅらくのしま)産で、今朝とれたばかりの一品でございます。旦那」
板前は息を継いで、つづけて言った。
「関兵助の永徳包丁、いい切れ味ですな。いかがです? 烏賊(いか)の刺身……? 」
「ほう。さすがだ。いい包丁で切っただけのことはある。刺身の歯ざわりがタマランな」
「それではこちらもどうぞ。鮑の朴葉(ほおば)(ぶた)土瓶(どびん)蒸し、養老牛の(あぶ)り焼き、里芋の海老新条(えびしんじょう)、白菜の山東風(たまねぎ)玉子スープもご賞味下さい」
「うむ。サケをたのもうか」
「へい。カンいっちょう~~」
 熱燗(あつかん)がでてくる。(コイツをちびちびしながら食そう)。
「……。コノワタか。……。ウマイな。このナマコ、どこ産だ? 」
「へい。能登産です」
「やはりな」
「旦那。トリガイもどうぞ」
「うむ。トリガイの刺身か。地のもんだ。ここでしか食えん……。うん。ウマイ!!」
(はし)休めの甘味(かんみ)で御座います。旦那の甘党・左党は有名ですから」
「ん。羊羹(ようかん)か……。よう()んで、食わんとな。はは、はは。ぐはははは……」
不敵に笑うK介は、続けて言った。
「ん? これはなんだ? 」
「ハイ。(くり)とお多福豆のタルト柚子杏仁豆腐ソース、です」
「ふーむ、ワシの甘党魂を揺さぶるのぅ、旨いわい」
「この器も箕尾(みのお)焼きにて最高級品を取り寄せました。滅多な客人以外には出しませぬが」
「ほう、さすがじゃ。中々揃えられる代物じゃないぞ、コレはねぇ、……ほぉーっ」
 料理人のS本Y夫は一瞬満足げな表情を浮かべたものの、すぐに仏頂面に戻ると、地鶏の手羽先を炭火で炙っては醤油とみりを配合したタレを刷毛(はけ)で手早く塗っていく。それが一般の宿泊客に出す夕飯の主菜となるからだ。K介に出されるメニューと夕食が違うことはこれまでも度々あった。気を遣っているのである。

 食通のK介は鞄から素粒子手帳を取り出し、マイドキュメントをタップして星三つを老舗旅籠に付け、ゆっくりと食後の珈琲を(すす)った。
 時計を見やると午後4時半。
――――来週の主戦場(ターゲット)は沖の丑島(うしじま)だな。またM社の編集者か。P氏に連絡入れとかんとな。――――
 目を閉じて荒海の多々力海(たたりきかい)の波飛沫を思うだけで垂涎と動悸がしばらく続いた。
(@・@・@)


4 遊色舞妓

   一

 評判のヨシミが座敷に通されると、宴の場は華やいだ。
「彼女、この界隈で、イッチャンの売れっ子舞妓どすぇ。お客さん限定で、今晩お相伴できるんどすぅ」女将はのたもうた。
「そうか。ワシもここの常連になった証やな、おかみ」松太郎(しょうたろう)は上機嫌で盃を飲み干した。
「で、何か、芸、できるんか」
桃扇慕(とうせんぼ)いうんが十八番ですよってに、それをお目にかけます。ホナ、……」
 すると、お座敷のお三味線が♯しゃんしゃんしゃらり♯と鳴って、ヨシミは左手に扇子を持ち替えて身体を捻りながらくねらせた。鼻をつまんで五、六回仰いだら、懐から取り出した桃の香料粉末を扇子の上にヒラヒラと右手で振り掛けた。香料の匂いが松太郎の鼻腔を刺激するや、たちまち舞妓への恋慕が体中を駆け抜けて、松太郎はヨシミの艶姿の虜になった。
――これが、噂に聞いた、桃扇慕(とうせんぼ)か。……。 扇子を的に投げて倒れ方を競う投扇興(とうせんきょう)は良く知られたお座敷遊びである。その遊興中にトイレに立った判定側の芸者が客の投じた扇子にぶつかって踏んづけた、というエピソードがあった。その話が花街で広まり、話に尾鰭(おひれ)が付いていった。客が対戦相手の芸妓に惚れていただの、それを阻止したい芸者がワザと邪魔して客の気をそがせただの、と言われるようになった。トウセンキョウ――レンボ――ジャマ――、ときて、新しい座敷芸=トウセンボ(←通せん坊、から)となった。それらしき当て字も使われ、桃扇慕という芸が一人歩きしていった、との説もある。粉末香料を使い始めたのはヨシミから、という触れ込みだが、勘の鋭い松太郎は、古株の芸者衆がアレヤコレヤと入れ知恵を授けたのでは、と踏んでいた。トウセンキョウのような派手なアクション・ゲームとは異なり、芸妓の舞踊中心のトウセンボは地味で固い芸である。まだ客扱いの下手な、経験の浅い芸妓には無難なダシモノ、オハコであった。
 やがてヨシミの踊りも見飽きたオトコは左手を脇息(きょうそく)に置き、横の芸者にお酌を命じた。かつて京を訪れた松尾芭蕉や北大路魯山人も愛用した脇息である。松太郎も古今の文人と肩を並べた気がしてきた。その高揚感が中年客を雄弁にさせていった。
「京都には名品が数々あるじゃろが。ワシは京焼の器が好きじゃ。乾山(けんざん)とか、仁清(にんせい)もな」
 乾山、任清と言えば、名工と呼ばれる京都の大御所。優美な絵付けと、はんなりした形の器の数々は、多くの人々を魅了してきた。それは、彼らの足跡が大きいのである。
「まあ。ホンニ。ウチらも商売柄、よく京焼は目にしますえ」
「ワシは大鉢や向付(むこうづけ)が気に入っとるんや。唐草のコーヒー茶碗の藍色や、菊型向付で料理を味わう生活に憧れるからのぅ」
「そうどすな。京焼は様々な物に使われよりますが、食卓も華やぐし、料理を引き立てる(いろど)りが、また抜群どす」
「器の持つ、はんなりとした風合い。――それに直に触れていると、心まで穏やかになるわ」
「そうどす。ソレこそが京都の<おもてなしの心>でありますよってに」
 しばらく京都の伝統工芸の話で場は盛り上がった。

 話が一段落すると、右側にヨシミが座り、松太郎のお酌を始めた。
――どことなく、この若いムスメには見覚えがあるが。どこで会ったオンナかな? ん~~~、思いだせん……。
「これ。ヨシミ。オレとどこかで会わなんだか」ストレートに答えを求めたオトコに対し、オンナのすまし顔は平然と、
「いいえ。今夜がお初どすぇ」と返してきた。
合点(がてん)の行かぬ中年客はオンナの事を根掘り葉掘りと聞き出していく。その内にようやく事態が飲み込めた。
 つまり、先程中座した芸者の一人が松太郎と昔付き合っていた佳子である。その佳子、芸名・佳乃(よしの)の娘が母と同じ道を歩んで、先程までお座敷でトウセンボを踊っていたヨシミだったということ。そのヨシミをこれから同伴してホテルで一夜を共にする男は、
「母とも、娘ともカンケイをもってしまうのか、オレは……。どうしたもんだろか――」
 とため息をついた。途端に酔いも()め、頭を冷やしたくなった。「オイ。ちょっと用を足すゾ」
 座敷を離れて便所に立った松太郎。アノ日とイマが交錯する。オレは同じ蝶の影を追い続ける虫取りのガキのまんまだ……。と思ったら、用を足したムスコまでがコクリと頷いた。
そうか。そうか。


   二

 座敷での迷いを振り切って鴨川沿いのラブホテルに入り、一泊した松太郎。
 ヨシミとの行為の最中も何度かヨシノ(ヨシミの母)の姿が重なった。彼は二十五年前深入りしなかった。社会生活も家庭もあり、相手は芸者。相手にしても男の甲斐性(かいしょう)ぐらいの付き合い方、接し方だった、との記憶があった。その芸者の娘が時を経て今こうして母と同じ相手に抱かれている。
運命の巡り会わせか。懲りぬ男の本能か。――
あのオンナはこうなるのを知ってて自分の娘をオレに引き合わせて……。

――アリガトウ。
せめてヨシミだけでも幸せになってくれ。――こんなオトコだけには引っ掛からんとナ。
(@・@・@)


   5鑑賞後振込口座・贋金惑星宛

 ご鑑賞が終わりましたか?
では、料金を精算(ウソですよ!)し、座っておられる座席からお手洗いの座席へと移動し、これから移動したい惑星の惑星番号を画面から選択して入力し、個室の便器の”フラッシュ(流す)”ボタンを押して下さい。PC画面から塵粒子が噴出されて、お客様は塵粒子となり、便器の水もろとも次の惑星へとワープなされます。
 あ~~~~~~!!!!

※ 旅行先で観光が終わられたら現地の映画館で同様に映画をご鑑賞し、同じ操作をして最後に”リターン”ボタンを押して下さい。地球に帰還いたします。

 では、よいご旅行を!! ボン・ボヤージュ!!

宇宙映画館

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三部構成の風変わりなオムニバス小説。時代物あり、グルメ紀行ありの実験的なアマチュア時代の作品。 文庫本形式を意図しており、このような横書きの公開にそぐわない箇所はご容赦下さい。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 時代・歴史
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2014-03-24

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