神芝居

(1)

目の前に運ばれてくる食料品を慣れた手捌きでレジに通していく。

ピ。ピ。ピ。ピ。ピ。ピ。

これだけの量なら大体8000円か。
そんなどうでも良い予想を立てながら、眼前に立つ主婦をちらりと見やる。
そのふくよかな体型とパーマがかった少し茶の入った髪。
まさに関西のおば様のモデルケースといった佇まいだ。
カウンターに映る合計金額が増えていく様をじっと見つめている。
浮かべている険しい表情が加算されていく数値に対してのものなのかは分からないが、そんな顔をされても自分に値引きが出来るわけでもないし、見ず知らずの女性の生活費を援助してやる気もない。

「7800円になります。」

女性に対して無感情に死刑宣告にように金額を言い放つ。
その数値はそのまま彼女の生活に対してのダメージ量だ。
そんな事が頭をよぎりゲームのやり過ぎだなと自分自身に少し呆れた。
毎日毎日、商品を通し、金銭を受け取り、思ってもいない御礼を客に向ける。

つまらない。


いつからこんな渇いた人生になったのだろうか。
こんなにも面白みのない生活を続ける事に意味があるのだろうか。
そう思いながら暗い夜道を俺はゆったりとした足取りで家へと帰っていた。
曲り角に差し掛かり、右へと折れるその瞬間、

「ひゃっ!」

という甲高い声と共に、ずんっと自分の胸部に強い衝撃を受けた。
突然の出来事に戸惑いながら徐々に広がる胸元の感触と目の間に転がる人影を見て、自分に起きた事態を把握した。

「大丈夫ですか?」

驚きを抱えた心臓の脈動の波打ちを感じながらも、ようやくその一声を相手にかけた。

「あ、はい…すみません。」

白いシャツに黒めのだぼついたパーカー。
デニムのショートパンツ。
見上げた顔はそんな若々しい恰好に適した、かわいらしい女性だった。
年齢的にも自分と同じぐらいに見える。おそらく女子大生だろう。
正直言って、タイプだった。
どうやら怪我はなさそうだったが、彼女が抱えていたバッグからはいろいろと物が飛び出し散乱してしまっている。

「いやこちらこそ、すみません。ぼーっとしてて。」

そう言い訳をしながら、道に散らばる彼女の私物を拾い集めた。

「あ、すみません!ありがとうございます!」

彼女も慌てて同じように物を掻き集める。
慌ただしく動く彼女の手元が、突然の出来事に対しての気恥ずかしさを感じさせた。

「あれ?」

自分が手にしたものにどこか見覚えがあるなと思い、目を凝らしてみる。
やっぱりそうだ。
同じものを自分も持っている。

「ひょっとして、XX大学に通ってるんですか?」

ふいに呼びかけられた声に、彼女は「へ?」と間の抜けた声と間の抜けた顔を惜しげもなくこちらに向けた。

「あ、すいません。いや、自分XX大学の文学部でこの教材持ってるんですよ。だから一緒なのかなって思って。」

そこまで言うと、彼女は自分の言った言葉の意味を理解し、驚きに満ちた表情へと変わった。

「そうです!私も同じです!ごめんなさい、びっくりしちゃって。すごい偶然ですね!」

気持ち悪がられるかなと思ったが、彼女の顔には屈託のない笑顔が広がっていた。
人付き合いに対して抵抗のないタイプなのかもしれない。

「何回生なんですか?」

「俺は今2回生です。」

「えっ!?すごい、私も!」

「本当に!?」

こんな事もあるものなんだなと本当に驚いていた。
そうなると知らない所で自分達は何度もすれ違っていたのかもしれない。

「いや、こんな事あるもんなんだね。」

「うん、びっくり!すごいね、なんか。」

「こんなのマンガとかでしか見たことないよ。はい、これで全部かな。」

「あ、ありがとうございます。あの、名前聞いてもいい?」

「ああ、櫛矢謙三(くしやけんぞう)。君は?」

「私は湊可菜美(みなとかなみ)。謙三君ってこの近くに住んでるの?」

スムーズに名前を呼ばれた事にどきりとした。
対人において臆さず踏み込む事の出来る人当たりの良さは彼女の見た目通りのふるまいであった。きっと交友関係もそこそこ広いのだろう。

「そうだよ。こっから5分もないよ。さっきまでそこのスーパーでバイトしてた所だったんだ。」

そう言うと可菜美はまたも驚きの表情を浮かべていた、

「嘘!?ひょっとしたら住んでる所すんごい近いかも。なんて所?」

「ヒューマンハイツって所だけど。」

「ちょっと待って。すんごい近くなんだけど!私その横のレインボーセイントってとこなの!」

「ホントに!?」

これは、よもやまさか。耳にした事は幾度となく、だがしかし現実としてその身に降りかかる事は落雷を受けるかの程の微塵の可能性。

運命。

「なんか、ちょっと運命的じゃない?」

可菜美から発せられた雷が謙三の体を貫いた。
彼女も同じように感じているのだ。
この運命を。

「今まで出会わなかったのって、この日の為だったのかもね。」

気付けば謙三はとんでもない事を口走っていた。
普段なら恥ずかしくても言える訳もないセリフ。
でも運命が呼んでいる。
偶然出会ったタイプの女性。しかも自分と同じ大学、同じ学部、同じ授業を受けていて、住んでいる所も近いときた。

「結構、キザなんだね。」

彼女はふっといじわるっぽく、それでいて妖美な笑みを浮かべた。

(2)

朝日が射し込んでくる。
自分の真横から聞き慣れない寝息が聞こえる。
だらしなく開いた口元が気にはなるが、平和な寝顔である事は間違いない。
こう見るとやはりかわいい。どストライクだ。

嘘みたいな、夢のような一瞬。

運命という魔法は時間も何もかもをすっ飛ばして、二人の仲をぎっちりと縛り上げ、容易には離れられないものへと変えてしまった。

こんな事があるなんてな。
謙三はそっと彼女の柔らかい髪をなでた。
こうなった今もまだ夢の中にいるような浮遊感が拭えないが、確かに伝わる手の感触がそれを現実だと教えてくれる。

「最高。」

昨日の夜の事を思い出す。
あの後可菜美と謙三の部屋に上がり、晩酌を交わした。
たまたま酒を購入した後で良かった。
彼女は聞き上手でもあり、話し上手でもあった。
彼女のきれいにまとまった話は面白かったし、また自分が話しすぎないように適度にこちらにも話を振り、謙三のくだらない話にも不自然さを感じさせない絶妙な相槌や合いの手で、気付けばながながと話してしまってこちらが苦笑したり。
非常に心地の良いものだった。そしてそのまま何の戸惑いもなく男女の仲へと踏み込んでいった。
自分からだったのか、彼女からだったのかもよく分からない。
それほどまでに自然の成り行きであり、その時も変に興奮はなく、むしろ落ち着き払っていた。
終始流れていたのは、こんな事もあるんだなというどこか他人事めいた感情でもあり、これが自分の運命なのにどこかぴんときていない、そんな感じだった。

そんな時、ふと思い出した。
今日は宝くじの結果発表の日だ。

たまに謙三は気が向いたときに宝くじを買っていた。
別にこれで一攫千金を狙ってどうこうは思っていない。元より当てる気なんてさらさらないのだが、ちょっとした人生の楽しみというか、スパイス程度に買っている程度のものだった。
これまでで一番高額の当選で確か1万円だったと記憶している。
十分すぎる結果だ。

机の上に放り投げていた新聞を手に取る。
期待などしていない。いつも通り、あー駄目だったなとそう思えればそれでいい。
そう思いながらも神棚よろしく棚の一番上にくじを置いているのはちょっとでも天運をもらえるようにという願いが入っている部分もあり、結局は大金がもらえるならそれに越したことはないといういやらしさじみた想いがあるのだなとその度に意識させられ、なんだか情けない気持ちになる。

購入したのは10枚。
取り出して新聞に書かれた文字の羅列とそれとを見比べていく。
1枚、2枚。
当然のように外れていく。かすりもしていないと思わず笑ってしまいそうになる。
当たる訳がない。
特に今の謙三にとってその気持ちはより強かった。
運命的な女性と出会いそれを手に入れるという類まれない幸運を掴んでしまったのだ。
こんな紙切れに注がれる運など自分の体に残っているはずがないのだ。

「ん?」

6枚目。謙三の目が止まった。
この数列。似ているぞ。
しかもそれは300円や1000円なんて低額なものではない。
1等だ。
待て待て。まさか、くるのか?
慎重に数字を確認していく。
組はまず合っている。
番号も一緒のような気がする。
ゆっくりゆっくり。
番号に指を添えながら照合していく。

「…。」

残っていたのだ。
使い果たしてしまったのではない。
使い始めただけなのだ。
とんでもない自分の中に眠る幸運とやらを。

「3億…。」

俺の人生、始まったな。

(3)

「夢みたい。」

「だな。」

目の前に広がる札束の海。まず思ったのはよくある雑誌の裏表紙にあるいかがわしい札束風呂の画だった。
これだけあれば、あんな風に自分の体を札束に浸す事が出来るだろう。
ちょっとやってみたいなと思ったが、あまりにもくだらなすぎるし、それでせっかくのお金が駄目になってしまっては元もこうもないと思い実行には移さない事にした。

しかし一体何なんだ。
金に運命の女性。これで名声まで手に入ればもはや無敵だが、一大学生のステータスとしては十分すぎる程の装備だ。

3億か。
小さい時にもし宝くじがあたったらどうするかなんて話をしていた事を思い出す。
あの頃はどう考えていたっけ。
お菓子、ゲーム、マンガを好きなだけ買って後は貯金。
確かそんな感じだ。
今はどうだろうか。
少し欲しいものの幅は増えたとはいえ、ほとんど考えは変わっていない。
自分が欲しいものをリスト化してそれを全て購入していっても、持て余すほどの大金だ。
やはりほとんどは貯金に回るだろう。
面白みはないが、堅実にいって間違いはない。

「いざこうなるとどうしていいか分かんないもんだね。大金すぎて。」

可菜美も同意見のようだ。

「とりあえず、何かおいしいものでも食べに行く?」

「本当に?これだけあるっていっても君のお金だし、なんか悪いよ。」

なんて出来た女性なんだ。
この大金を目の前にして果たしてこのセリフを言える人間がこの世にどれだけいるだろうか。
素晴らしい女性と出会えた事に謙三は心から感謝した。

「何言ってんだよ。もうそんな遠慮する仲じゃないだろ。」

そう言いながら彼女の頭を抱きかかえた。
自然に彼女も謙三の体に腕をまわしてくる。

「そっか。ありがと。」

満たされ過ぎて逆に恐怖すら感じる。
大丈夫なのか、一気にこれだけの幸福を掴んで。
この後に待っている人生が地獄絵図だったりしないだろうか。
いや、そんな事考えても無駄か。
この幸福はここで終わらせない。もっともっと膨らませる事が出来る。
これは始まりに過ぎないんだ。
しかしそれにしても。

「ほんと、夢みたいだよ。」

たった二日のうちに何度そう思い、口にしただろう。
だがそれでもまだ言い足りない。
これが夢じゃないと、そう自分に言い聞かせる為に。


「まあ、夢なんだけどね。」

「え?」


自分でも、可菜美のものでもない男性の声が、はっきりと聞こえた。
その瞬間、周囲の景色は全てが無へと変わっていった。

(4)

なんだこれは。
何も見えない。
というよりまず何が起こった?
あの声は誰だ?

「いろいろ考えたいのは分かるけど、無駄だからやめてくれる?」

まただ。またあの声が聞こえる。

「誰だ!?」

「うるさいなあ。大声で叫ばなくても聞こえてるよ。」

気怠そうな声。本気で謙三の存在を鬱陶しがっているのが窺える。
しかし、謙三に声の主の聞き覚えはない。まして邪険に扱われる覚えなど更にない。

「あんた誰だよ?」

「あーもう。ほんとに無駄だからやめようよ、こういうの。」

何を言ってるんだ。全く意味が分からない。
そもそも質問に答えろよ。
見えぬ相手に向かって毒づく言葉がとめどなく胸の内にこみ上げてくる。
しかしこれをぶつけた所でまた無下に扱われるか、理解の及ばぬ答えが返ってくるのだろう。
だがそれにしたって何一つ分からないこの状況をこのままずっと過ごすわけにもいかない。

「あんた、夢だって言ったよな?」

「ん?そうだけど。」

「あれはどういう意味だ?」

「意味?意味なんてそのままだよ。夢って言ったら夢なの。」

決して幼い年齢ではない声色だが、幼稚なその言葉遣いに苛立ちを覚える。

「そう言われても分からない。可菜美も宝くじも俺にとっては紛れもない現実だったんだけど、違うって言うのか。」

「違う、とも言えないんだけどねー。」

なんだそれは。おちょくられているのだろうか。
それでいて全てを知った風なこの口の利き方。
上の立場から物を言われている事も気に食わない。

「まあ、君がそう思うのも仕方ないよね。うん。だってそういうもんだと思うよ。」

「意味が分からないんだが。」

「意味意味意味意味。鬱陶しいったらないなー君は。もっとましなのにすりゃ良かったかな。」

「鬱陶しがられようが、この状況を俺はどうにかしたいだけだ。」

「あっそ。じゃあ早めに言っとくけど、無理だよ。」

「無理?」

「うん、無理。どうにもならないよ。」

「絶対にか?」

「君の力じゃ無理。」

「お前なら出来るってのか?」

「僕にしか出来ないよ。」

進んだかと思えば後退するようなもどかしさ。
話せば話すだけエネルギーを消費するだけで何も得る物がない。
まさに無駄。
だが鍵を握っているのは間違いなくこいつなのだ。
無理といいながらも、こいつは突破口を知っている。
こいつをどうにかしなければ俺は戻れない。

「どうすれば、お前は俺を助けてくれる?」

「助ける?なんで僕が君を助けないといけないの?そんなつもりはないんだけど。」

あっけらかんと声の主は絶望を謙三の目の前に振りかざしてくる。
奴にしか出来ないのに、奴にその気は全くない。
やはり自分の力でなんとかするしかないのか。

「話戻すけどさー。」

声が呼びかけてくる。

「どう思ってんの、実際。」

「どうって?」

「君の身に起きた事。」

それは、可菜美や宝くじの事を言っているのか。
奴は夢だと言った。
でも、謙三にとってはそうじゃない。
間違いなく体験した出来事だ。
第三者にそんな審判を下される謂れはないはずだ。

「運命的だと思ったよ。夢のような出来事だが、確率的にはなかなかあり得ない出来事だが、現実だという事に変わりはない。」

声は押し黙った。
先程までの神経を逆撫でしてくるような棘づいた言葉は何一つ返ってこない。
逆にその沈黙が謙三を痛めつける。不安が押し寄せる。
くそっ。これでは本当に立場が完全に下ではないか。

「間違ってはないんだろうなーそれって。」

しばらくして聞こえた声は相変わらずだるそうなものだった。
その内容はやはりのらりくらりとして真実を掴みとれない。
いつまで泳がせるつもりなんだ。

「君の言う通り、なかなかあり得ない出来事だろうね。運命的。そう思うよ。」

「一体何が言いたいんだ。」

「でも、君こう言ってたじゃない。」

「?」

「彼女と初めて出会った時。」

「初めて出会った時…。」

「”こんなのマンガとかでしか見たことないよ。”って。」

こいつは何故だか分からないが、全てを知っている。
俺に起きた出来事。
少なくとも彼女に出会ってからの事を。

「…それがどうした。」

指が震えている。
俺は恐れているのか?
奴が次に何を言うのか。

途端、耳を塞ぎたくなる衝動に駆られる。
でもだめだ。
しっかり聞かないといけない。
それは俺がしなくてはならない事だ。

「あんな事、そうそう現実に起きるわけないじゃない。」

ため息まじりで吐き出される声には疲れを感じさせた。
今までの気怠さも、ただの疲れからきていたものだったのかもしれない。



「だってこれ、小説だもの。」

(5)

なんて言ったんだ、こいつは?
そう思ったが、奴の言葉ははっきりと耳に残っていた。

これは小説?
だとすれば、俺はただの登場人物?

「察しがいいじゃない。って言ってもそう君が思うようにしているのも僕がそう書いてるだけなんだけどね。」

嘲笑混じりに声が語りかける。
可菜美、3億円。
奴はそれを夢だと言った。
俺はそれを現実だと言った。
これが小説ならそれは間違っていないのかもしれない。
いくら俺が現実に感じようが、これは奴の作った虚構に過ぎないのであれば、これは唯の夢幻と同じだ。

「君、今の段階で小学校の記憶とかある?」

頭を巡らせる。
今の俺は大学生。
生きて人生を駆け抜けてきたなら、あるはずの記憶。
なのに…。

「何も…思い出せない。」

いや、違う。

「思い出せないじゃなくて、思い出にないだろ。」

忘れているなんてものではない。
そっくりそのままないのだ。
ぽっかりとその部分だけ消失したかのように。

「まあ今書き足してあげてもいいんだけど、面倒だし、いらないよね?」

軽い調子でそう言われてももう腹も立たない。
それも奴の制御通りなのか。
あんなにさっきまでは不満やらで一杯だったはずなのに、そんな感情すら消え失せている。

「こういう作者と登場人物が直に喋るような感じ。やってみたかったんだよね。」

なんだったんだ一体。
可菜美と出会った時に運命を感じ、最高の幸せを手に入れたと喜んだ。
3億円という大金を得て、恐ろしい程の充足感に満ち溢れた。
自分で生きていると思っていたのに。
俺は、一切自分で生きていなかった。

「斬新な設定のつもりか。使い古されてるんじゃないか、こういうパターンって。」

「知らないよ。やってみたかっただけなんだから。」

なんともシンプルな意見だ。

「ただねー…。」

声のトーンが少し落ちた。どこか腑に落ちていないといったような声色。

「なんかうまくいってない気がするんだよね。」

「そんな訳ないだろ。お前の物語なんだから、俺との会話に不自由があるわけないだろ。」

「それがそうじゃないんだ。君初めいろいろ聞いてきたでしょ。確かに設定上、君が自分の置かれた身について僕にいろいろと尋ねるっていうのは自然な流れだし、僕だってそう書いたつもりなんだ。でも、君めちゃくちゃくうるさかったじゃん。」

「悪かったな。っていうかお前のせいだろそれは。」

「違うんだよ。だって君が意味意味うるさく言ってた時、本当にいらついたんだから。」

思い返せば、確かにだいぶ鬱陶しがっていた。
それに、こんな事も言っていたな。
”もっとましなのにすりゃ良かったかな。”

「僕の物語のくせに、作者の僕を本気でいらつかせるなんておかしいよ。」

「そんな事俺に言われても困る。」

「まあそうなんだけどさ…なんでだろ。」




そりゃそうだろ。


「え?」「何?」


所詮お前ら二人とも、俺の手の中の駒にすぎないんだ。


「誰だ?」「どういう事?」


面倒だ。終わりにしよう。


「終わり?」「終わり?」



私はキーボードを打つ手を止めた。
この物語が、これ以上続かないように。
もっといい物語を書かなければ。
そしてそのまま、私は立ち上げた文書プログラムをゴミ箱へと投げ捨てた。

神芝居

神芝居

つまらない人生を送る謙三の身に次々と幸運が舞い降りる。 「俺の人生始まったな。」 そう思った矢先の出来事だった…。

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登録日
2014-03-03

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