空ガ一回転

空ガ一回転

小学二年生の奈央ちゃんは焦っていた。
同じ逆上がりが出来ないクラスでたった1人の仲間の勇太君が今日、華麗に逆上がりを成功させたからだ。
明日から私だけが逆上がりが出来ないんだ…と焦っていた。

今まで友達やお父さんに協力してもらって一生懸命練習をしていたけれど、奈央ちゃんはいつまで経っても逆上がりが出来なかった。鉄棒を逆手に持って、とかお腹を鉄棒から離しちゃダメ、とか足を思い切り振り上げて、とか、色々言われて奈央ちゃんの頭の中はこんがらがっていた。

「勇太君ずるい…」と泣き言を言ってみた。
えへへ、と勇太君は照れ笑い。その笑顔がますます奈央ちゃんを焦らせた。

「すごいんだよ逆上がりって。空が一回転するんだよ!」勇太君は自慢気にそう語った。
「空が一回転…くるんって?」奈央ちゃんは興味津々。
「そうだよ、くるんだよ!」勇太君はますます自慢気に。
逆上がりしたら空が一回転するなんて、今まで誰も教えてくれなかった。奈央ちゃんは逆上がりがしたくてたまらなくなった。空が一回転するところを見てみたい。

奈央ちゃんは勇太君に逆上がりを教えてもらう事に決めた。今日まで逆上がり出来なかった者同士の勇太君には断る理由が無かった。

二人はその日の学校の帰り道の公園で特訓を開始した。
「足を振り上げる時に、思い切り振り上げるんだ。」得意気に喋る勇太君。
そんな事分かってるよ、でも怖くて出来ない。その気持ちが分かってる勇太君は、
「怒りを振りしぼるんだ!」と更にアドバイス。

怒り…奈央ちゃんは考える。ピーマン嫌い!とかスイミング行きたくない!とかもっと夜更かししたい!とか色々考えて足を振り上げるけれど、なかなか怒りを振りしぼる事が出来ない。時間も経って、空がだんだん赤く染まってきた。奈央ちゃんはまたまた焦っていた。
早く帰らなきゃお母さんが心配する…

そんな奈央ちゃんの気持ちも知らずに、頑張れ〜と呑気に応援する勇太君を見て、奈央ちゃんの心にふつふつと怒りが込み上げてきた。
勇太君のバカ!と怒りを振りしぼって足を振り上げた瞬間、

奈央ちゃんの身体がフワッと浮いて、足がくるりん。

やったー!と喜ぶ勇太君。奈央ちゃんの空が一回転した。

空ガ一回転

空ガ一回転

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-25

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