天父虫

ノンフィクション。
「天父虫」=「てんとうむし」です。

嫌な胸騒ぎ 何かを感じた
立ち尽くしたまま動けない 恐怖

一本の電話 何かを悟った
口を開けたまま動けない 驚愕

久々に二人でドライブ もう会えないんだね
時々二人で外遊び もう出来ないんだね

天父虫 暗い箱の中
燃やされる音
生まれ変わった

嫌な酒の匂い 言葉を失った
座り込んだまま動けない 悲哀

たまに聞こえるあの声 もう聞けないんだね
時折見せていた笑み もう見れないんだね

天父虫 熱い火の中
白い骸骨
生まれ変われた

本当は寂しかった でももう遅いんだ
最期に残した走り書き 僕の名はなかった

天父虫 一枚の絵
戻らない時間
生まれ変わった

天父虫

「暗い箱」=「棺桶」
「一枚の絵」=「遺影」

私は、暗くなった式場の寝床の天井にいる小さなてんとうむしを見つけました。
それを親戚のおばさんに伝えると、「きっとお父さんはてんとうむしに生まれ変わって、あなたを見守っているんだよ」と言いました。
たとえ違ったとしても、私にはそのてんとうむしが父にしか見えなかった。
今でも思い出して涙がでます。

天父虫

当たり前に自分を愛してくれていると思っていても、実際はそうでもないということもある。 それでも、あなたは、私は、想い続けなければならない。きっと。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-18

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