薬師丸明のポケットホラー館 ダーボババアを見た!
俺は、20年前までバリバリのトラックドライバーだった。
自分が言うのもなんだがね。
そいつが、今じゃその欠片もねぇ、だだのアルバイトのおっさんになっちまったのさ。
なんで俺がそんなになっちまったか、聞きたいか?
それは高速道路でアイツにあっちまったからなのさ。
今でも俺は、高速道路を走ることができないんだよ。
誰に会ったかって?
ターボババアだよ。 奴が俺の人生狂わせちまったのさ。
一章 ターボババアなんて信じてなかった・・・
俺は二十三歳の若きドライバーだった。
ガキの頃から、ドライバーになることばかり考えていて、それが良かったのか大型免許も一発合格と言ったどころだった。
俺は近くの運送会社に入社したが、今のご時世こんなに簡単に入社出来ていいのかというほど、簡単に入社しちまったわけさ。
しかし今思えば、あれも何かの前兆、奴に呼ばれてたのかもしれないと思える。
入社して二、三ヶ月たった頃、俺は会社の赤塚っていう先輩に助手席に乗ってもらって、初の高速デビューを果たした。
こいつが悪夢の始まりだったなんて、あの頃の俺はこれっぽっちも考えやしなかったよ。
高速乗って二、三時間頃、ふと赤塚さんが俺に、「おい、おめえさん、ターボババアって知ってるか?」と聞いた。
第二章 奴が現れた
「ターボババア? 知ってますよ。 あの都市伝説の。」
俺はそう言った。
ターボババアとは、トラックのドライバーの間では結構有名な都市伝説で、夜中高速道路を走っていると、後ろから足音と笑い声がする。
何かと気になって窓の外を見ると、化け物みたいな顔のババアが「ケラケラ」笑いながら走っている。
しかし、高速に乗ってるトラックと並んでんだから、想像を超えるようなスピードで走っているらしい。
確かなのはそこまでで、そこから先は、そのババアに追い越されたら、そのドライバーは事故を起こして死ぬとか、何も起こらないとか人それぞれだ。
まあ、俺はそんな話、これっぽっちも信じちゃいなかったんだかな。
「赤塚さん、そんな話信じてるんスカ? ターボババアなんて、いるはずないじゃないじゃないっスカ。」
俺がそう言って笑うと、赤塚さんも照れくさそうに
「そうだよな。」と笑ってたよ。
そんな所で時計を見ると、もう2時だったね。
すると、自分でも信じられなかったんだか、どこかから、 「キャハキャハキャハ」って笑い声がするんだ。
赤塚さんかと思って隣を見ても、そうじゃない。
もしやと思って窓の外を見ると、何がいたと思う?
アイツだよ。 アイツがこっちを見てわらってんのさ。
ターボババアがね。
第三章 ホントにいたんだ
「ヤバいっすよ。 窓の外にターボババアが!」
俺は急いで赤塚さんに知らせたよ。 でもな赤塚さんは窓の外をみて、
「何言ってんだよ。 そんなのいやしねえじゃねえか。 おいおい、俺を脅かそうってのか?」と優しく笑ったよ。
彼の言うとおり、俺が見るともう外にはあいつはいなかった。
「確かにいたんだがな。赤塚さん、ホントに俺見たんで・・・・。」
そこまで言って、俺は言葉を失ったよ。
なんたってバックミラーには、俺と赤塚さんの間でニタニタ笑う、アイツが映り込んでたんだからな。
「大変だ。 あ、赤塚さん・・・。」
俺は赤塚さんの顔を見て、ドキッとしたよ。
なぜって、俺の隣には赤塚さんじゃなくて、ターボババアが座ったてて、俺に向かってケラケラ笑ってたのさ。
四章 最悪の事態
「わわわわわ…」
あまりにの衝撃にどうにもできない俺を、アイツは嘲笑うよう笑いながら、前を指さしてたよ。
なにかと思って前を見ると、俺たちの目の前に、同じような大型トラックが迫ってたのさ。
「キキーッ」急いでブレーキをかけてハンドルを切ったけれど、間に合わなかったのさ。
その後どうなったかはわからないが、頭の中にアイツの声が響いてて、気がついたら病院だったよ。
聞いたところでは、高速道路で大型トラックと正面衝突して、相手のドライバーと赤塚さんは、即死だったらしい。
俺だけが軽傷ですんだなんて、奇跡だって言ってたな。
終章 今の俺から言えること
その後すぐ、俺はドライバーを辞めたよ。
みんなどうして辞めるんだって、聞きたがってたけど、あんな話口にするだけでも、嫌気がさしてね。
まあ、アンタが高速乗る時には、ターボババアの話なんかしないことだな。
俺から言えることはそれだけだ。
終
薬師丸明のポケットホラー館 ダーボババアを見た!
あとがき ターボババアにご用心
ターボババア… 現在の都市伝説としてはなかなか知名度は高いほうだと思う。
現に「ご当地都市伝説」なんかでは、ターボババアの話は映像化されていたりもする。
果たしたターボババアは存在するのか?
それは誰にもわからない。
くれぐれも、ターボババアにはご用心。