セレン
SF短編集『セレン』より。
その日、僕は父に呼び出された。
理由としてはどうってことのない。僕の父は英雄だ。いや、正確にいえば僕の家系は、だろう。やがては僕もその名誉ある英雄の中に名を連ねる。そのためにはいろいろと面倒な準備期間は付き物。いわば、お説教だ。
かつて、僕らの祖先は自分たちの母星を棄てた。棄てざるを得なかった。
大昔の人類たちは取り返しようもない『あやまち』を犯した。それがどのようなものについてかなんてのは、今では古文書や歴史書のアナログな情報としてしか残っていない。それもごく断片的な記録で、だ。
星というものを見捨てなくちゃならないプロセスはどうあれ、結果的に今の人類は、第二の住処を獲得することに成功している。その先頭に立ち彼らに生き残る未来を与えたのが、僕の遠い御先祖様ってことらしい。
――惑星セレン。
それがもっとも古い記録に残る、僕らの母なる星の名だ。
「時間をとらせてしまって悪かったな。もう行っていいぞハクシン」
長引いた父の話も終わり、僕は自分の部屋へ向かおうとした。
自覚めいた物などありはしないが、僕も一応は英雄の末裔として、父の恥にはならないように努めているつもりだ。努力の甲斐もあって、世間一般的に見て僕は『出来のいい息子』を演じきれているようだ。
ただ一つ。僕の趣味を除いて。
父の部屋のドアノブに手をかけたその時だった。
「ハクシン」
「なんでしょう、父さん」
父はさっきまで話していたときよりも増して、表情を渋くしていた。
「お前のしていることに関して口を挿むつもりはない。実のところ、お前はよくやっている。自慢の息子だ」
「はい」
「だがな」
父は言葉をつまらせた。
僕には次に来る父からの台詞が、容易に想像できてしまう。
「……星の外に興味を持つのは、もうやめなさい。あれは子供のする遊びと同じなのだからな」
僕はひとまず頷くと、無言で父の部屋を後にした。
父との会話から一週間後。帰宅時間がいつにも増して遅くなってしまった僕は、家までの近道である路地裏を歩いていた。
英雄の子である僕は、学校でも特別な存在として扱われている。
卒業と同時に星を導く立場になるであろう僕は、学校の中でも学生長の地位にいる。毎回他の生徒たちが帰宅するころには、教師たちとの会議に出席していたり、書類の整理などをしている。みんなとは2時間ほど遅れての帰宅となるのが日常茶飯事だ。
それに加えて今日は、途中にある図書館に寄り道し、天体の動きについての古文書や、太古に存在した『ろけっと』といった星と星を行き来する乗り物についての資料を借りてきたのだ。
僕は小さいころから、夜空を見上げるのが好きだった。
誕生日には、父にねだって知り合いのコレクターから大昔の望遠鏡を譲ってもらったことすらある。
成長と同時に落ち着くであろう僕の好奇心は、今なお冷めることはない。
なぜ人類は……この素晴らしい技術を放棄してしまったのだろうか。
今では星々を観察する巨大なレンズも、星の外へと進出する巨大な船も製造されてはいない。いや、出来ないのだ。僕らの祖が母星を脱出した際に、その術をも同じく棄ててしまったのだから。
そんなことを悶々と考えていたからだろうか。僕は街灯の光も届かない薄暗い路地裏の真ん中で、ぼうっと夜空を眺め突っ立っていた。
そして、僕を下から見上げる少女の存在に気がつくまでの、少しのタイムラグが発生したのだ。
「……」
「えーっと」
女の子は僕を見つめたまま動かない。
小さな子だ。こんな時間に、こんな場所で出会うにしてはあまりにもイレギュラーすぎるほどに幼い。
「迷子かい?」
とっさに笑顔をつくった僕の問いかけに、女の子は黙って首を左右に振った。
「……ノアール」
「え?」
「“のあ”のなまえ、ノアール。まいごじゃない」
「ああ……」
なるほど。そういう応答ってわけか。
「ごめん、ノアール」
「のあがいい」
「じゃあ、ノア。僕はハクシン、よろしく」
「はくしん?」
「そう、ハクシン」
「……はく」
ノアは僕を指差して、確かめるようにそう呼んだ。
「うん、それで構わないよ。ノア、君はどうしてこんなところに?」
夜の路地裏なんて、大抵はネズミと野良猫の鬼ごっこで使われるような場所だ。僕でさえ滅多に通りはしない。
それをこんなに幼い女の子が、しかも一人で現れたとなれば放っておくのはよろしくないだろう。
それでもそんな気遣いなどおかまいなしなのか、ノアは自分の肩までかかった黒髪をふわりと揺らし、道端に棄てられていたスクラップを見つめ、そのゴミ溜りまでとことこと近付けば、しゃがみ込んでしまった。そして――。
「たからもの」
ゴミの中へと手を突っ込み、ノアが何かを拾い上げた。
それは一見、寿命のつきた電球のように思える。
「そんな物、いったい何に使うっていうんだい」
彼女の背後から、僕は電球を覗きこむ。とくに変わったところもなければ、旧時代のアンティークのようにも見えない。普通の一般家庭で使われる物とまったく同じ物だ。
「……こっち」
ノアが突然に僕の手を引き、路地裏の奥へと引っ張っていく。
どうやら僕をどこかへと案内したいらしい。
少女を一人置いていくわけにもいかなかった僕は、おとなしくノアに引かれるがまま、ついていくことにした。
複雑に曲がりくねった路地裏を抜け、街中の様子が一変する。
木々が次第に多くなり、いつしかそこは森と呼んでも差し支えないような場所へと変化していた。この街で生まれ育った僕でも知らない場所があったのが、なんだかとても新鮮だった。
ふと、視界が広がる。森の中にぽつんと、丸い広場のような土地があった。
その中央に、意外な物が待ちうけていた。
何度、恋い焦がれたであろう。
幾度、書物を読み直したであろう。
地面に突き刺さった、巨大な塔と見間違えるような鋼鉄の物体。
――天に向かって伸びる、大破した宇宙船が。
ノアと出会ってから数日。僕は毎日のように彼女のもとへと出向いていた。
人間の近寄らない森の中にひっそりと佇む宇宙船。そこが彼女の住居でもある。
今日も彼女の家からは、けたたましい騒音が響いていた。
宇宙船の外からでもわかるその音は、普段なら耳にしたところで不快にしか思わないだろう。しかし、今の僕には希望への賛歌に聞こえた。
突然、鼓膜を裂くような爆発音が地鳴りと共に襲ってきた。宇宙船の窓や装甲の隙間からは、黒煙がもくもくと上がっていく。
さすがに心配になって、僕は宇宙船のすぐ真下まで駆け足で近付いた。
扉の開閉する音と一緒になって、身体中を真っ黒にしたノアが現れる。
「……みすった」
僕の目の前まで近づいてきて、ノアは真顔で咳込んだ。とりあえずは無事なようで安心する。
「いったい、何をどうミスすれば宇宙船が爆発するってんだい」
ハンカチでノアの煤けた頬を拭ってやる。その行為が息苦しいのか、ノアは顔を渋らせていた。
「超空間跳躍稼働炉をれいきゃくする特殊圧縮気体をとおす高圧耐性バルブのふびをなおしてた。そしたらどっかーん」
「よくわからないけど、それは素人が修理できる範囲の物なのかい」
「ちしきにぬかりはない」
誇らしげにノアは瞳を輝かせる。そこには頼もしさの片鱗も感じない。
「今日からは僕も手伝うよ。家にある古文書をごっそり持って来たんだ」
そういって僕は背負っていた大荷物を地面に下ろした。宇宙船や星の外に関連しそうな書物をすべて詰め込んできたのだから、総重量たるやまるで丸太を担いでいるかのようだった。
あの日。僕とノアは一つの約束を交わした。
宇宙船を初めて目にした僕に、ノアは自分の知る限りの話を聞かせてくれた。そのどれもが、本に載っている情報の一歩上をいく説明であった。
難しい装置の名前や機能のこと。
星の外では物の重さが失われるということ。
かつて人類が住んでいた星は自然が豊かで、とても美しい星だったこと。
そして。この船の動力がまだ、生きているということ。
それを聞いた僕は、いてもたってもいられなかった。
――この船を動かそう。そして一緒に、星の外の世界を見よう。
僕の提案に、ノアは黙って頷いてくれた。初めてのことだった。ノアという協力者と共になら、僕の夢を叶えられる。それは確信だった。
ノアの宇宙船へと上がらせてもらうと、彼女はなにかを持ってきた。どうやらそれは先日拾ってきた電球のようだ。
小さな身体で椅子を運び、その上へとよじ登って天井へと手を伸ばしている。どうやら拾ってきた電球を取り付けたいらしい。しかしノアの身長ではいつまで経っても届きそうになかった。
僕は電球を彼女の手から取り上げると、それを難なく取り付けてやる。
「……ありがと」
「どういたしまして」
「はく、きよう」
……はたしてこの程度のことが器用と感じれるほど、ノアの手先は不器用なのだろうか。まぁ宇宙船を爆発させてしまうほどだから、想像は容易だ。
「はくなら、なおせるかも」
「日曜大工程度の技量で宇宙船が直せるとは思えないなぁ」
「かんたん」
そういって、ノアは椅子から飛び降りる。
「成層圏摩擦真空耐久装甲のほしゅうと、推力調整モーターのせんじょう。それから超空間跳躍稼働炉につかう動力個体ケアだけでおしまい」
なんだか聞いてるだけで星の外側まで飛んでいってしまいそうな単語が飛び交う。ノアの話に頭をついて行かせるだけで精いっぱいなのに。前途多難だ。
それからも、僕は連日ノアの宇宙船まで出向いた。
彼女と共に宇宙船の修理を行うのが楽しかった。
どうやら、ノアは生粋の機械音痴らしい。知識は十分でも、手がついていかないといった感じだ。彼女の説明にしたがって、僕が直す。その関係がまた、心地よかったのだ。
時には学校をサボることすらあったので、父に詮索される前にサボるのは止めた。あくまで『自慢の息子』を演じなければ、いつ父に宇宙船の存在を知られるかもわからない。それだけは避けたかったから。
僕らの計画は順調に進んでいく。いつしか本当に、星の外へ向かうために。
そしてついに、その日がやってきた。
大破していた宇宙船は、ちぐはぐながらある程度原型に近づいたらしい。僕には確かめる術もないが、ノアがそういうのだから間違いないだろう。
「あとは燃料の動力個体ってのを炉の中に突っ込むだけだな」
僕の心は高揚を隠せなかった。上手くいけば今日中にでもこの船は飛べる。ついにここまで来れたんだ。もうすぐ僕の見たかった、知りたかった世界が見れるのだ。僕らの祖先が住んでいた惑星セレン。その美しい星への乗車券はすでに手にしたも同然だった。
「ノア、動力個体ってのはどこにあるんだい。僕が取って来るよ」
「……」
ノアは無言のままで、目の前の炉の中へと進んでいく。
「ノア?」
「……このふねの動力個体は、のあ」
――一瞬、理解ができなかった。宇宙船の設備や用語についてはいろいろと勉強したつもりだ。それでも、僕の脳はノアが放った言葉を処理してはくれない。
「え、と……なんだって?」
「このふねのねんりょうは、のあ」
それはつまり……この巨大な炉の中に……。
「ふねがうごいたら、超空間跳躍稼働炉のそばにはちかづかないでね」
すごく、あついから――。ノアは笑って僕にそう告げる。
「ちょ、ちょっと待って」
「だいじょうぶ。のあはつよいから」
「そんなわけあるか!」
いくらノアが人の常識からかけ離れた頑丈さをもっていたとしても、炉の中では推定数万度の熱量が随時発生している。恒星一個分が宇宙船の中にあるのと同じなのだ。それを僕に説明してくれたのは他ならぬノア自身じゃないか。それなのに、どうしてキミは笑っていられるってんだ。
「はく」
今になって禍々しく思える鉄の炉から、ノアの細い腕が伸びてくる。
その両手が、僕の熱くなった頬を包みこんだ。
「のあがつれていってあげる。はくのいきたいところへ」
「でも、それじゃノアが!」
「のあはへいき。だから、なかないで」
僕の瞳から、大粒の雫がこぼれ落ちているのがわかる。
胸の奥が苦しくなって。ノアともう二度と会えなくなるんじゃないかって。
それでも、ノアは健気に微笑んでいて。
僕は――。
「いっしょにいこう?」
「……出来ないよ」
ノアの言葉に、僕は顔を俯かせた。涙は止まっていなかったかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。
「僕は、ノアを犠牲にしてまで……行きたいところだなんて」
「のあはいきたい。はくといっしょに」
ノアの手が、顔が、距離が……離れていく。
「またね、はく」
最後に見た彼女の姿はまるで、神話に描かれている女神のように美しく輝いていた。
炉の入り口が閉じる。眠っていた宇宙船の機能が目を覚ましていく。
僕らを乗せた船は幾千の時を超え、動きだす。
振動が伝わる。地響きのような轟音が延々と続く。
船内のモニタに文字が浮かび上がった。
――セレン。
目的地は自動的に選択された。僕とノアの目指した星。
僕らの出発点にして、終着点。
前にノアから聞いた話によると、この船は完全オートコントロールで航海するらしい。セレンに到着するまで、僕はおとなしく星の海を観光するだけ。
ノアがいつも座っていた椅子に腰かける。
まもなく発射するであろうアラームが鳴り響く。
準備は万全だ。今の僕に、為すことはない。
真下からとてつもない爆発音が聞こえた。身体が吹き飛んでしまうかと錯覚するほどの激しさだ。
窓の外に見える景色は、どんどん上昇を続けていく。
僕らの住んでいた街は、すぐに米粒サイズにまで縮小してしまった。
「……さようなら、父さん。行ってきます、みんな」
帰れる保証なんてのはどこにもない。それでも、これは僕らの選んだ道なのだ。絶対に、辿り着いてみせる。一人きりではない。ノアと共に。
不思議な浮遊感だった。身体中の重さから解放されている感じだ。
窓の外は暗黒の世界。その中に浮かぶ白い星。僕らの第二の故郷。
まるで広大な海原に放り投げられた、孤独な漂流者のようだ。
その海を進む一隻の船。
上も下も。奥も手前もわからない旅。
遠くに輝く星々の輝きが、日の光を浴びた珊瑚礁のように思える。
この宇宙船は今、想像を絶する速さで航海を続けているのだろう。
僕は息をのんだ。資料や古文書でみる写真とは比べ物にならない。
なんて綺麗で、なんて神秘的で――なんて寂しい世界なのだろう。
夜空を見上げていれば、あんなに仲良く隣同士輝いていた星も、いざ近づいてみれば驚くほどに遠く、遙か彼方に存在している。
『超空間ワープ航行二移行シマス。衝撃二注意シテクダサイ』
室内に電子音声が放送され、ガクンと視界が揺れた。
窓にはシャッターが降ろされ、無機質な壁へと様変わる。
僕を蝕む強烈な孤独感から逃れるように、僕はノアを想い眠りについた。
どれほどの時間が経ったろうか。
船の中には変化のないモニタ、外にはきっと真っ暗な世界が広がっているだけ。
僕はすでに思考能力の半分以上を失っているように思える。
僕は……どうしてここにいるんだっけ。
突如、船内にアラームが鳴り響く。その音で僕の朦朧としていた意識は回復した。
モニタに現れたセレンの文字が点滅している。
窓を見てみると、シャッターは未だに降りていたので外を確認できなかった。
出発したときと同じように、凄まじい轟音が鳴り響く。
それに伴い、久しぶりの重さが僕に襲いかかってきた。
床に倒れこみ、振動が収まるのを待つ。
しばらくして、音はしなくなった。
「到着……したのか」
しばらく飲食物を通していなかった咽が痛む。
ふらふらとした足取りで立ち上がり、壁伝いに部屋から出る。
出口に向かう途中で、炉の前を通った。
エンジンはすでに停止しており、炉を冷却する気体が送り込まれている。
真っ赤に膨れ上がった炉は、まさに融解寸前だ。ときおり心臓のように、どくどくと脈打っている。
ノアの顔が脳裏を過る。
僕は泣き出してしまいそうな気持ちを堪え、炉の傍まで近づいた。
一歩歩み寄るだけでも異常なほど熱い。
そこからさらに一歩。また一歩、近づく。
いつの間にか身体中が汗だくになっていた。
目の前で鼓動する炉。
「おつかれさま、ノア」
キミのおかげで、ここまで来れた。
頬を伝い落ちた雫が床に落ち、じゅわっと音を立てて蒸発した。それが汗だったのか、それとも涙だったのか。僕にはわからなかった。
炉に背を向け、僕は再び出口を目指す。
ノアの語った美しい星、セレン。
それをこの目で望むことだけが、今の僕を動かしていく。
扉の前に立って、一度深呼吸。
「……よし」
僕は扉の開閉スイッチを押した。
灰色の世界。
砂と礫にまみれた、銀色の砂漠。
――それが、惑星セレンの姿だった。
美しい自然はおろか、人類の栄華の痕跡すら見当たらない。
風もなく、水もない。音もなければ、色もない。
これが。
こんな星が。
僕の見たかった世界だとでも言うのか――。
「うう……うあぁぁ……っ」
声にもならない悲鳴と共に、僕は砂の海の上に倒れた。
倒れた感覚も感じなかった。
僕の瞳からとめどなく流れる雫は、綺麗な球体となって宙に流れていく。
父の言葉は正しかった。
この景色をみるために僕は、どれほどの人を巻き込んでしまったのだろう。
どれほどの時間を費やしたのだろう。
わかっている。悪いのはこのセレンという星ではない。
夢を見続けていた僕が悪いのだ。それなのに……。
情けなかった。
球体となった雫が、途絶えることなく浮遊していく。
僕はこの日。セレンへと辿りついたのだ。
――爆発音。
「……爆発音?」
ぐしゃぐしゃになった顔を拭い、僕は音のする方へと振り向く。
それは宇宙船からだ。
力無く立ち上がり、僕は宇宙船の真下まで近づいた。
そして、開くはずのない扉が、ひとりでに放たれる。
中からは、真っ黒になった女の子がひょこひょこと現れた。
「……こんどは、みすらなかった」
「ノア!」
それは紛れもない、ノアだ。
僕は思わず駆け足になる。
「すとっぷ」
と、ノアに制止された。
「いま、のあにさわっちゃだめ。はく、とけちゃう」
よく見てみると、ノアの身体は所々がマグマのように赤色に輝いている。
今にも崩れてしまいそうな僕を見てノアが微笑んだ。
「いったはず。のあはつよいって」
そうだ。ノアのいうことに間違いなんてなかったじゃないか。
彼女は僕なんかよりもずっと賢く、強い。
それを疑うことなんか、出来やしない。
なによりそれを一番知っているのは、他ならぬ僕なのだ。
「……ついたね、のあたちのふるさと」
「え?」
そうしてノアは真上を指差す。
「きれいでしょう?」
そこには、蒼く輝く美しい星が浮かんでいた。
僕らの母なる星――地球が。
セレン