会話ゲーム:三枚のお札

 山姥と小僧(三枚のお札)
 パブーエッセイ書籍化を記念して、TRPG(会話ゲーム)の小説化を書いていこうと思います。
 TRPGは、ドラクエやファイナル・ファンタジーなどのRPGと似てますが、会話とさいころで成立するところが違っています。
今回の元ネタは「山姥と小僧」。ゲームをした場所は、MMO女神幻想ダイナスティアってところ。そこのオンラインキャラが集まって、ゲームをしました。
 TRPGは、即興で演劇しつつ、ストーリー展開を楽しむゲームです。
 ちょっと分かりづらいので、普通なら会話のみで表現するところを、描写をイメージして着けてみました。

 ゲームの参加者は、GM(司会者)の「わたし」と、ゲームを演じるプレイヤー二人の三人です。説明するより、読んでもらう方が早いので、とりあえず読んでみてください。

 「山姥と小僧」をやるつもりなんだけど、ストーリー展開、知ってるかな? と、わたしが聞くと、プレイヤーの一人さんが、
「三枚のお札とは違うものですか?」
 と聞きます。
「それそれ」
 わたしが肯くと、
「なるほどー」プレイヤー1さんは、納得したようです。
「それをTRPGにしたらどうなるか、腕の見せ所です。ネタがわれてますが、経過を楽しんでください」
 
 三枚のお札は、あまりにも有名なので、ストーリー展開はご存知の方も多いでしょう。ただ、忘れちゃった人もいるかもしれません。
 会話ゲームでは、役名を言ってもらって、その登場人物として、ストーリー展開を楽しんでもらいます。
「でわでわ役名をどーぞ」と、わたし。
「綾香(あやか)で」と、恥ずかしそうに、プレイヤー1さん。では、以降、綾香さんと呼びましょう。
「おお、かわいい」わたしは、女の子らしい名前に、ちょっと感動したりします。
「えーと、じゃあ「ゆき」で」と、プレイヤー2さん。では、以降、ゆきさんとお呼びします。
「では、お話を始めます」
 わたしは、メモを取り出しました。
「はーい」と、綾香さん。すでに大きく身を乗り出しています。
 わたしは、メモを読み上げます。

「あなたがたは、寺の小間使いです。今日も和尚さんに命じられて、雑用をしています」
 女性の雑用係がいるかどうかは、まあ、お話なので、そんなに気にせず。
 寺を掃除したり、和尚さんの身支度を調えたり、来客を歓迎したり。
 雑用係のやることは、いっぱいあります。
 この話の登場人物として、綾香さんとゆきさんは、熱心に働くのでした。
「和尚さんがやってきて、こんなことをいいました」
 わたしは、なおも話を進めます。
「仏様にあげるヒガンバナを、山へ行って取ってきてくれないか
しかし、山には山姥が入るから、三つのお札を上げよう
山姥が襲ってきたら、このお札を使って逃げればいい
お札は、小間使いのきみたちがサイコロを振って6の目が出たときに使える
さいころの目が1が出たらえらいことになるぞ
山姥はおまえをつかまえて、とってくうかもしれん」
さいころ次第で運命が変わる。そこが普通の会話とは違うところです。
「ふむふむ」
 ゆきさんは、おおきくうなずいてます。

「というわけで、綾香とゆきは、三枚のお札を持って、ヒガンバナをとりに、山へ行きました」わたしは、メモから目を上げます。
「サイコロを振ってください」
 ゆきさん、綾香さんは、6面ダイスを一個、振ります。
わたしは思わず、「一が出たっ」
 出た目を申請する二人。
「3」とゆきさん。
「1……シクシク」
 と、綾香さん。あ、山姥が出るかな?? と思わせといて、
「ヒガンバナは見つからないので、山奥へ行くしかありません。危険ですが、山奥へ行きましょう」
 
 1は不幸なさいころの目です。自動的にどんな行為も失敗します。
「サイコロを振ってください」
 わたしが言うと、ゆきさんは、
「おぉっ、がんばりましょう!」
 ぐももも?っと拳を握りしめています。
ゆきさんは、4の目
綾香さんは、3の目 が出ました。
「ヒガンバナの綺麗な花がいっぱいあります。でも、もっと奥へ行けば、もっと綺麗な花がありそうです。和尚さんは、「できるだけ、大きなヒガンバナを」と言っていました。なおも山奥へ行きます。サイコロを振ってください」
ゆきさんは1…
綾香さんは、4。
 
 一が出ちゃった!

 「ごめんなさーい」ゆきさんは、頭を抱えてしまいました。わたしは、話を少し、変えることになります。わたしは、状況を説明します。
「やばいことに、山奥に来すぎたらしく、山姥が出てきました!
「おまえを取って喰う!!」
 さあ、逃げなくちゃ行けません
 逃げ切れるかどうかは、サイコロ次第です。振ってください」
綾香さんは、「ガーン、1」
 ゆきさんは、「2」
「一がやたらと出てますが」
 わたしは、とっさに、山姥にこの二人を殺させるシーンを考えてしまい、その案を却下します。
ゆきさんは、「今日は1の日ですね。笑」
綾香さんは、半泣きで、「うんうん」
 以前、2ばっか出たことがあったんです。

「1が出たので、山姥は襲いかかろうとしています。ここでペナルティとして、山姥にお世辞を言いましょう」
 ゆきさんは、思わず吹き出してしまいました。
ゆきさん「あはは」
「もしかしたら、喜んで、すこしぽーとなるかも」
 わたしは付け加え、恐怖の1の法則、とわたしがいうと、綾香さんは、とっさに機転をきかせて、お世辞を山姥に言います。

「そんな恐ろしい顔をしては美しい顔(かんばせ)が台無しですわ
笑ってくださいな^^」

「山姥はぽーとなり、しばらく立ちつくしています」
 わたしは、山姥が顔を赤くして、すこしもじもじしている様子を、想像してしまって、ちょっと笑えてきましたが、

「その間に逃げる綾香、ゆき。しかし山姥はながくぼーっとしていなかった
「ごまかそうとしてもムダだっ!」
 追いかけてきます。さいころを振ってください。山姥の追っ手から逃げられるか」
綾香さん「2」
ゆきさん「5」
「足して7か、えーと……」わたしは、手許のメモをカンニング。
「山姥の足元に木の根っこがあった。山姥はつまづいてころんだ。が、すぐ立ち直って追いかけてくる。逃げろふたり!」
 
 きゃー、しつこいのです。
 
「さいころを振ってください」
 わたしが言うと、
綾香さん「5」
ゆきさん「3」
「足して八になった場合は、と。ヘビが落ちてきて、山姥はおどろきました。しかし、すぐ追いかけてくる! しつこい!」

 二人、だんだん、切迫した表情になってます。

「まだまだ寺は遠い。さいころを振ってください」
 オンラインでサイコロを振れるのは、便利です。
綾香さん「3」
ゆきさん「2」
「なかなか合計で6にならんな……」
 とわたしが言ったのは、お札を使えるのが6の目だと、なかなかお札が使えないことに気づいたからで、勝手にルールを変えてしまったからでした。この点、既成のルール(システム)がないので、自由です(笑)
「クモの巣に引っかかってもがく山姥。しかし山姥は巣をひきはがし、にたーっと笑う
「まてまて?」
しつこい!」

 綾香さん「きゃー」
 綾香さん、とうとう、悲鳴を上げてしまいました。

「さいころを振ってください」
 わたしが言いますと、サイコロを振る綾香さんたち。
綾香さん「3」
ゆきさん「3」
足してろくになった!「お、お札が使える」
 わたしが言うと、ゆきさんたちは、ほっとします。

ゆきさん「やった」
綾香さん「わーい」
わたしは、三枚のお札を差し出しました。
「一枚、使ってください
「川」
「山」
「火事」
の三種類があります。どれを使う?」
 
 綾香さん、迷ったらしい。
「ゆきちゃんお願い」
 人頼みです。
ゆきさん、とっさに、「えーと、では山?」
 わたしは、すぐさま答えます。
「山になれーと、ゆきがさけんで、お札を後に投げました
 すると!
 むくむくむくっ!
 森のまんなかがもりあがって、たかーいたかーい山になりました
 山姥は、「ぐぐっ。山登りをさせるのか……なんだ坂こんな坂」
 山姥、根性で登ってきます」
 
 ゆきさん、ぽつりと、「おちゃめさんな山姥…」
 わたしはなおも、説明します。
「その間に綾香とゆきちゃんは、寺まであと、半分のところまで来た!」
ゆきさん「すたこら?」

 ふたりは、「森の熊さん」の歌のとおりに、すたこらさっさと逃げ出します。

「山姥はまだ追いかけてくる。にげろお二人さん!」
 わたしは、さらに、「さいころを振ってください」
ゆきさん「5」
綾香さん「3」
「合計で8だね」わたしは、考え込みました。「二回目の8なので」
 普通にしたら、楽しくないし。

ここはひとつ、ドラクエ風に。
「ゆきが妙な踊りをおどる。山姥は混乱している」
ゆきさん「あはは」
綾香さん「^^」
「しかし山姥は正気に戻り、また追いかけてくる! しつこい!」
ゆきさんは、頭に手をやりました。「あはは、ダメか。笑」
 自分のオンラインキャラでも、妙な踊りを踊っている……おいおい。
「にげろお二人さん。もいちど振って」わたしが言うと、
ゆきさん「4」
綾香さん「1」
わたしはおごそかに、「一のペナルティ。お世辞の時間です」
ゆきさんは、ひとごとなので、
「綾香さんがんばって!」
 
こうしている間にも、山姥が迫ってきます。

「今日はなぜか1が多いが……」
 コンピュータで、さいころを振るから、確率的には六分の一のはずなんだけどね。
綾香さんは、頭を悩ませているらしい。
「うーん」
 うなったあと、

「お世辞じゃなくてもいいですか? 山姥を引きつける言葉とかで?」
 わたしは、興味をそそられました。
「いいよ」
ゆきさんは、「綾香さんナイスアイディア」と褒めます。
 綾香さん、必殺の山姥撃退ワード。

「あ、後ろにハンサムな男の方が‥‥」

「えっ」
 ふりかえる山姥
 その間に逃げるふたり

「ぐっ????
ハンサムなどおらぬ???!!!」
 逆上する山姥。

綾香さん「きゃー」

「逃げろお二人さん! さいころ振って下さい」
 わたしが言うと、二人はさいころをころころ。
ゆきさん「4」
綾香さん「4」
わたしは呟きます。「8がおおいな」
ゆきさんは、口に手をやります。「また踊りますか?笑」
わたしは言いました。
「こんどは綾香さんに踊って貰いましょう」
ゆきさんは、「いよっ」かけ声を掛けます。

 綾香さん、ぴこぴことオンラインのキャラクターを動かします。
「山姥は混乱した。そのあいだにふたりは逃げる!
 お寺まであと半分の半分に来た」

ゆきさん「やったー、あと少し」
 ぜいはあ言いつつ、必死で走る二人組。
「にげろお二人さん。振ってください」
綾香さん「4」
ゆきさん「6」
わたしは、「10だね」とメモに目を落とします。

「オオカミが山姥のそばにあらわれて、
「お手伝いします」
スピードがアップした!
背中に乗ったからね
ゆきさん、「あ、6のせいか…」
 ひとりで呟いています。
 もちろん、足して10になれば、出た目が6でなくてもオオカミは現れます。

「にげろお二人さん。振ってください」
ゆきさん「4」
綾香さん「4」
ゆきさんは、「踊りか?踊りなんだな。笑」
 いや、足して8ですから踊りでしょう!

「こんどはふたりで踊りましょう」
 わたしが言うので、ゆきさん、綾香さんは、オンラインキャラをぴこぴこ動かします。

「山姥とオオカミは混乱した」
 わたしが言うと、
ゆきさん「いえーい」ぴこぴこキャラが動いてます。「ヘイヘイ」
綾香さん「やったー」ほっと一安心の様子。
「オオカミは逃げだした。スピードがダウンした」
 わたしは、森の奥へオオカミが逃げたことを描写。
ゆきさん「あはは、そりゃ逃げますよね。笑」
 非暴力で退治できたのが嬉しかったみたい。

「あと少しだ、振って」
 わたしは、メモを取り出して言います。ころころ、さいころが転がり、
綾香さん「1」
ゆきさん「6」
「どっちをとろうかなあ」
 わたしは、迷ってしまいました。
綾香さん「・・・」固唾をのんで、わたしを見つめています。
わたしは、「一がめちゃおおいので」
ゆきさん、感想をひと言。「すごい組み合わせですね…」
 一は自動失敗ですが、6と言えば、最強の目ですから。

「6をとって、クマが山姥に加勢する」
 一の影響で場の性格が変わったのです。ほんとは、6が二つ出れば、山姥から解放されるはずだったんだけどね。
ゆきさん、ひー」
綾香さん「きゃー」
 悲鳴を上げる二人。クマになりきり、わたしは言います。
「オレがふたりの前にたちふさがる」
ゆきさん「やまおやじ!」いや、クマはおやじじゃありませんって。
綾香さん「www」思わず笑っているようです。

「お札を使う許可を与えましょう」
 わたしは言いました。
「今残っているのは「川」「火事」」
ゆきさん「綾香さんお願いします!」
綾香さん「川で」
「では綾香さんは、川になれーと、クマに向かって投げつけた
クマの前に川がざあっと現れた! クマは流された」
ゆきさん「鮭…取らないのか。笑」

 いや、とってもよかったけどね。
「しかし山姥はそのクマの頭をふんずけて向こう岸へ。お寺はあと百メートル。
逃げろふたりさん。振ってください」ころころ……。さいころが転がり、
綾香さん「1」
ゆきさん「6…」
綾香さん「またか」
ゆきさん「またですね」
「こんども6をとりましょう」
 と言ったものの、いつも同じじゃ飽きてくるし。

「猟師が現れた
「山姥さん、私の罠を使ってください」
罠を差し出す猟師
ぬけだせるか
ゆきさん「えー、ひどい。猟師さんたら」
 そりゃー文句も言いたくなるわね。

「ちなみに罠は火に弱いので、ここでお札を使う許可を与えましょう。罠に掛かったら山姥につかまってしまいますので、ぜひ、つかわれることをおすすめします」
 わたしは、言いました。
「山姥、罠を受けとってます
山姥「うっしっし……」

ゆきさん、切迫して、「ではいかないといけないですね」
 すでに、火事を使う気になってる。
綾香さん「やるっきゃない」
 拳を握りしめる綾香さん。
ゆきさん「うん!」
綾香さん「あとちょっとだしがんばろ」
 はげましあう二人に、冷静なわたしは、
「ではゆきさんが使う、でいいですね?」
ゆきさん「えーと、良いですか?」上目遣いのゆきさん。
綾香さん「はい」
 しっかりうなずく、綾香さん。


ゆきさん「すみません、では失礼して…えいっ」
 わたしは、状況を説明します。

「お札を使うと、罠はぼおっと燃えた。ふたりは同時に寺に飛び込んだ。
 和尚さんが、「どうした」
 すぐ中に入れてくれました。
 ところが!
 山姥が閉めた扉をたたく
「こらおしょーっ! ふたりがここに逃げ込んだのは判ってるんだ!」
ふたりをだせ?
 和尚さん、ふたりを井戸のそばの木の上にのぼれ、と指示します
 のぼってください」


 それから、扉ががたんっと開いて
 山姥の姿が
 「ふたりはどこだー」
 さ、今度もサイコロを振ってください
 1が出ませんように……」
 祈るような思いで、さいころをふる二人。

綾香さん「3」
ゆきさん「6」
 お、6が出た。これはさい先がいいかも。

わたしは説明をはじめます。
「山姥は、井戸に気づいた
井戸の中をのぞき込み、
「ははーっ! こんな中にいた!」
水鏡にうつっているのをみまがえてる
山姥は、中に飛び込んだ
和尚さんが井戸にむしゃぶりつき、
井戸にふたをした

「こらっ。山姥、出てきたかったら、もう悪さをしないか!」
山姥「ごめんなさーい」

こうしてふたりは命が助かり、
山姥は山に帰っていきました
 めでたし、めでたし
 というお話でした
以上、ルールブックなしで行うTRPGでした。
あなたもTRPGをやってみませんか!
ルールブックなしでもやれますよ。
主として、ファンタジーやホラーの会話ゲームになります。
詳細を知りたい方は、aslia01@yahoo.co.jpへ!

会話ゲーム:三枚のお札

2007年に女神幻想ダイナスティアってところでゲームをやった、その詳細です。
脳が冴える方法論、泣ける話など、わたしのエッセイも発売中。http://p.booklog.jp/book/10529

会話ゲーム:三枚のお札

会話ゲーム(TRPG)のゲーム内容です。システム(ルールブック)は使用していません。内容は、「三枚のお札」(昔話)。さいころ一個でどこまでできるか? どんな話になってしまっているのか? 乞うご期待。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • サスペンス
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2010-10-03

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著作権法内での利用のみを許可します。

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