世界で一番やさしいケモノ #1

「平熱だ」
 俺は、矢田部にそう言ってやった。
 案の定というか、矢田部は不満そうに口をへの字に曲げ、
「なんでだよー。頭が痛ぇーって言ってんじゃん」
「なら、俺も知らない脳の病気かもしれんな。早めに大学病院に行って開頭検査してもらえ」
「かい……? え、なに? なんか溶かすの?」
「………………」
 俺はため息をついてみせた。
 一応、この高校は、それなりに進学校として知られている。地方の公立の男子校なんていうのは、基本、進学校か工業高校のどちらかだ。いや、最近は工業にも女子生徒がいたりするのか? よくは知らないが。
 とにかく、その進学校の生徒がこの程度なのだ。不思議なものだが、どんな進学校でも必ず「落ちこぼれ」や「不良」といったものは生まれる。どんな蟻の群れでも必ず働き蟻と働かない蟻が生まれるのと同じようなものだろう。だとしたら、人間も蟻も集団としての傾向はさほど変わらないということになる。霊長などと言っている割には、遺伝子的に数パーセントの差というわけだ。
「おい、センセー」
 我に返ると、幼児のように頬をふくらませた谷田部の顔が目に入った。
 俺は、見たそのままを口にしてやる。
「……ガキか、おまえは」
「っせーなー。そりゃ、オッサンから見れば、みんなガキだろ」
「は?」
 俺は教えてやる。社会の仕組みをろくに知らない子どもに、目上の人間に横柄な態度をとったらどういう目に遭うかということを。
「いっ……痛たたたた……痛っ……痛ぇって!」
 顔面をつかんだ指に力をこめ、さらに締め上げる。
 谷田部は、情けなくもがき苦しみ、
「ちょっ、待っ……強え……強えって! あんたプロかよ!」
 ああ、プロだ。
 職業的な意味ではなく、生来的な意味でだが。
「痛たたたた……! ギギ、ギブ! マジギブだから!」
「違うだろ」
「はぁ!?」
「そうじゃないだろ。おまえが言うべき言葉は」
 容赦の必要なし。言ってわからないやつには、身体で存分に思い知らせて――
「すす、すいませんでしたぁっ! すいませんでした、月村センセェッ!」
「……フン」
 微妙に心がこもってない気はしたが、まぁ、いいだろう。俺は谷田部のバカを解放してやる。
「ハァ……ハァ……こいつ……マジでコロす気かよ……」
 馬鹿か。
 それができたら、どれだけ楽なことか。
「ほら。さっさと出てけ。出ていかねーならまた……」
「ま、待てよっ! ったく、どこまでドSなんだよ、保険のセンセのくせに」
「もっと教えてやってもいいんだぞ。Sの本格的なやり方ってのを」
「自分でSとか言っちゃうわけ? でもなぁ……」
 谷田部がにやりと笑う。
「……おい」
 こいつ、何かろくでもないこと考えてやがるな。ったく、馬鹿のくせしやがって。
「あんまりオレに逆らわないほうがいいぜ、センセ」
「はあ?」
 どうやら、おしおきが足りなかったようだ。俺は再び顔面をつかもうと――
「うっ、動くなよ! こっちには……」

「人質がいるんだからな!」

 俺の名前は、月村春(つきむらはる)。
 この北藍男子高校の養護教諭。いわゆる保険の先生だ。
 これまで大した事件も起こさず、やるべき仕事は無難にこなし、周りともうまく折り合ってやってきたこの俺がいま――
 人質を取られていた。
「おいおい、御冬ー」
 俺は頭をかきながら、疲れたように口を開いた。
 月村御冬(つきむらみふゆ)。
 俺と同じ黒髪で、俺の腰くらいまでの高さしかない――そんな俺の弟だ。
 御冬は、保健室の前の廊下にいたところを谷田部に引きずりこまれ、小さな身体を拘束されていた。
 そんな状況にも関わらず平然としている御冬にむかって、俺は、
「何度も言ってるだろ。ここには来るなって」
「言った」
 こくり。うなずく御冬。
「だったら、なんで来るんだよ?」
「来たかった」
「俺は、来るなって言ってんだろ?」
「来たかった」
 御冬が抑揚のない声で繰り返す。
 俺は、ため息まじりに頭をかいた。
 我が弟ながら、こいつは自分の本能に忠実すぎる。こいつの欲望の前には、兄貴の俺の言葉なんてあっさり吹っ飛ぶ。
 一方、矢田部の馬鹿は、悪ぶった笑みを見せ、
「おいおい、センセエよぉ~。あんたのガキの命が惜しかったら、オレの言うことを素直に聞くんだな」
「ガキじゃねーよ。弟だよ」
「弟の命が惜しかったら、言うことを聞くんだな!」
「……ハァ」
 この馬鹿につきあうのは気が進まないが……俺は仕方なく口を開く。
「なんだよ、要求は?」
「さっきから言ってんだろ。頭が痛ぇからここで寝かせろって」
「『頭が悪いから』の間違いだろう」
「っておい!」
「ああ、もういい」
 馬鹿の相手は正直つかれる。長々相手なんかしてられるか。
「おい、御冬」
「なんだ、ハル?」
「そいつ食え」
「え!?」
 思わぬ俺の言葉に矢田部が目を見開く。しかし、俺は構わず、
「いいからそいつ食っちまえ、御冬」
「やだ」
 すぐさま御冬が首をふる。そして、俺のことをじっと見つめる。
 俺は御冬の目を見つめ返し、
「『やだ』ってなんだよ、『やだ』って」
「やだ」
「それはわかったよ。なんで『やだ』なんだよ」
「食べるなら、ハルがいい」
 子どもが真顔でとんでもないことを言ってくる。もう俺はため息をつくしかない。
 と、矢田部が驚きに目をゆらし、
「なんだよ、おまえら……」
「あ?」
「兄弟で食うとか食わねえとか……おまえらひょっとして……」
「ねーよ。おまえの想像してるようなことは」
 そう。
 これはもっとシンプルな問題だ。
「もういいから。こっち来い、御冬」
「ん」
 御冬が矢田部の腕をどける。小枝を払いのけるように易々と。
「ちょっ……あれ!?」
 矢田部が目を丸くする。何をされのたかわからないという顔だ。
 何をされたもない。御冬はただ邪魔なものをどけただけだ。細身で小柄な小学生にしか見えない御冬が、長身で大柄な高校生である矢田部以上の力で。
「あっ、おい、待てって……!」
 我に返った谷田部が、再び御冬をつかまえようとする。しかし、それより早く俺は踏み出した。
「だーーーーーっ!」
 さっきより力の入った顔面わしづかみに、矢田部はもだえ苦しんだ。
「ぐっ……ぐおお……」
 苦痛から逃れようと、必死に抵抗する。しかし、御冬ですらつかまえていられなかったやつに、その兄である俺をどうにかできるはずもない。
「痛だだだだだだーーーーっ! 無理ぃ! マジ無理だからあああーーーっ!」
「言い残すことはあるか?」
「死亡確定!? マジでええぇぇーーーーっ!?」
 それから俺はたっぷりと〝教育的指導〟をたたきこんでやり、矢田部の馬鹿は「おぼえてろよー!」と悪の下っ端のような捨てゼリフを残して逃げていった。涙目で。
「ったく……」
 俺はやれやれと椅子に座りこんだ。馬鹿の相手は本当に疲れる。
 すると、当然という顔で御冬が俺のひざの上に乗ってきた。
「……おい」
「ん?」
「いつまで経っても……。ガキかよ、おまえは」
「御冬だ」
「知ってるよ」
 よく知っていた。この弟に俺の皮肉なんか通じない。無理にどかせるだけの気力も残っていない。俺はそのまま御冬の椅子になってやるしかなかった。
「あー……。ったりい」
「病気?」
「じゃねーよ」
「死ぬ?」
「死なねーって」
「ハルが死ぬなら、死ぬ前に御冬がハルを食べる」
「……あのなぁ」
 肩越しにこちらを振り向く御冬の髪を、俺はぐしゃぐしゃと乱暴にかきまぜる。
「これも何度も言ってるけどな。食べるってのは簡単じゃねーんだ」
「?」
 御冬はよくわからないというように首をかしげた。
「パン、食べる」
「おう」
「肉、食べる」
「おう」
「プリン、食べる」
「おう」
「おいしい」
「おう」
「簡単」
「だな」
 俺はあらためて御冬の髪をかきまぜる。
 そして、目を見つめて言った。

「人を食べるのは、そう簡単じゃねえ」

 そうだ。
 人を食べるのは、プリンを食べるようにはいかない。
 俺たちは、人を食べる。御冬はまだ子どもで、一度も人を食べたことはない。けど、最近になってその欲求が見え始めてきた。しかし、それで食べたがっているのが俺……というのが大いに問題なのだか。
 俺たちは、人を食べる。
 ただ肉を喰らうというだけではない。その魂ごと、存在ごと、俺たちは食べる。
 そのために、俺たちは獲物を弱らせなくてはいけない。
 俺たちは、強い魂を喰らうことはできない。
 肉を潰し咀嚼することはできる。だが、それはスーパーで売っている豚肉や牛肉を食べるのと変わらない。むしろ、味としてはまったくそれらに劣る。
 肉だけでは、俺たちは満たされない。
「ハル」
 じれたように、御冬が俺の上で身体をゆらす。
 俺は、思考を中断し、
「とにかく、そういうことだ。おまえは人を食うにはまだ……」
「わかった」
 妙に聞き分けがいい。と思ったら、
「人を食べるのは、難しい」
「おう」
「だから、ハルを食べる」
「………………」
 わかってない……。残念ながらこいつには何も伝わっていない。
「……よし、わかった」
 俺は、さっき谷田部にしたのと同じように実力行使に出る。
「御冬」
「ん」
「おまえが俺を食いたいってなら……」
「っ!」
 不意に羽交い絞めにされ、息をのむ御冬。
 俺は腕に力をこめ、
「俺を倒してからにしろよ。ん?」
「……っ……く……!」
 俺の腕の中でじたばたとあがく御冬。矢田部の馬鹿相手ならともかく、この俺から簡単に逃げれられるはずもない。
 俺は御冬の耳元でささやく。
「なぁ、御冬。あんまり、聞き分けがねえようだったら……」

「俺が、おまえを食うぞ」

「やだ……」
 途切れ途切れの息で、それでも御冬は即座に拒絶の言葉を口にする。当然だ。誰が好きこのんで他のやつに食べられたがったり――
「ハルが御冬を食べたら……御冬がハルを食べられない……」
「………………」
「御冬が……ハルを……食べる……」
 わかっていた。こいつはこういう弟なのだ。
 自分の身の危険よりも、自分の欲望を優先してしまうような。
 それともこいつ、俺が本気じゃないってことをわかってるのか? 実際、俺に本気で御冬を……同族を食べるつもりなんてありはしない。
「!」
 ちょっと気を抜いた瞬間、御冬が俺の腕に思いっきり噛みついた。
「っ……痛ぇ!」
 あわてて御冬をふりはらう。
 腕に歯型がくっきり残っている。普通の人間の肉なら簡単に食いちぎれる御冬の噛みつきだ。さすがに兄の俺までは無理だが、激痛なことに変わりはない。
「おい、御冬!」
 一瞬で頭に血がのぼった。
「マジで食うぞ! ああ!?」
「食われない。御冬がハルを食べる」
「おまえ、いいかげんに……」
 シャッ――
「っ」
 間仕切りのカーテンの開く音に、俺は息をのんだ。
「あ……」
 顔を見せたのは、不機嫌そうに眉間にしわを寄せた眼鏡の男子だった。童顔と言っていい顔だちで、大人びたシンプルな眼鏡が浮いて見える。
 俺は思い出す。
 矢田部の馬鹿が来る前に保健室にはすでに一人生徒がいて、カーテンで仕切られたベッドの上で休んでいたことを。
「いや、あのな、久住……」
 不意をつかれた動揺を引きずりつつ、俺は場を取りつくろおうと口を開く。
「えー……悪ぃな、うるさくして。こいつは俺の弟で……」
「ふーん」
 久住は不快そうに鼻をならし、
「いい身分だよね」
「は?」
「昼間から児童虐待とかさ」
「おい」
 その誤解は解いておかなければならない。職業的にも俺の名誉のためにも。
「だから、言ったろーが。こいつは俺の弟だって」
「だとしたら、より罪は重いよね。倫理的に」
「おいおい……」
「何も言わなくていいよ。その体勢じゃ説得力ないし」
「……っ」
 俺は気づく。
 床に押し倒した御冬の上に、馬乗り状態になっていたことに。
「……あ、あのなぁ」
 努めて冷静さを装い、俺は御冬の上から降りる。
「だから、カン違いしてんじゃねーよ。こんなの、ちょっとふざけてただけだろーが」
「ふーん」
 またも久住が鼻をならす。かわいい顔に似合わずその目は冷めきっている。
 思わず頭に血がのぼりそうになったが――
「………………」
「……何?」
 無言のままでいる俺を不審に思ったらしい。冷めた表情がわずかに崩れ、久住は怪訝そうに俺を見てきた。
 けど、それに応えるほど俺も優しくはない。
 久住に背を向け、俺はそっけなく言ってやった。
「行っていいぞ」
「え?」
「さっきより顔色はよくなった。もうここで寝てる必要はない」
「………………」
 数秒。憎々しげな視線を俺に向けたあと、久住は足音高く保健室から出ていった。
「ハル」
 御冬が立ち上がる。
 たったいま久住が出ていった扉を見つめながら、
「あいつのこと――」

「食べる?」

 御冬は気づいたらしい。
 俺が、あいつに向けている〝特別〟な感情を。
 そんな心配はないとわかりつつ、俺は御冬の頭をなでながら言い聞かせる。
「誰にも言うなよ」
「ん」
 素直にうなずく御冬。
 そして、
「あいつを食べて、ハルは太る」
「ん?」
「太ったハルを、御冬が食べる」
「………………」
 ため息をつく。結局この弟の思考が行きつく先はそこなのだ。
 まあ、俺もそう偉そうなことは言えない。食欲を満たすために行動しているという点では、御冬と何も変わらないのだ。
 保険医という職業は、俺にとって実に好都合だった。
 待っていれば、勝手に手負いの獲物がやってくる。ほとんどは、体育でひざをすりむいたとか、貧血で調子が悪いとかいった大したことのないものだが、その中にはまれに絶好の獲物がいる。
 身体の変調の理由が、心の不調と直結している者が。
 特に、この高校という場には、そんな心の悩みを抱えた者が必ずと言っていいほど存在する。
 俺は、そんなやつに目をつけ、さらにじっくりと弱らせる。
 心を弱らせ……魂を弱らせ――
 そして――

 膝から突っこむようにして、体操着姿の生徒がグラウンドに倒れこんだ。
 視力はいい。
 救護テントの下にいた俺は、そいつの顔を見て思わず笑ってしまった。その地味な眼鏡と童顔を見間違えるはずもない。
 久住だ。
 どうしようもなく笑いがこみあげてきてしまう。
 今日は、体育祭。
 といっても、小学校や中学の運動会を想像してはいけない。高校の、しかも男子校の体育祭ほど、生徒たちのやる気のないイベントは他にないだろう。
 ほぼ十割の男子どもから「なんでこんなことを」という気持ちがにじんでいる。
 やらせている学校側も似たような思いだろう。伝統、もしくは上からの指導というやつで動いているに過ぎない。
 惰性以外の何ものでもないという、生ぬるい空気がグラウンドを包んでいた。
 そんな中、久住の真面目さは目についた。
 周りの男子たちのようにほどほどにやっているというのではなく、真剣な面持ちで競技に参加している。いまも、転んだばかりだというのにすぐさま立ち上がり、痛みをこらえてゴールに向かって走っている。
 駄目だ。笑いが止まらない。
 幸い、周りには誰もいなかったが、一人笑い続ける俺の姿を見られたらかなりあやしいと思われただろう。
 俺がおかしかったのは、周りの空気から浮いているあいつの姿だけじゃない。
 あいつが……久住が、一週間前保健室に来たときより、さらに弱っているのが感じ取れたからだ。
 これでいい。
 このまま順調に弱ってくれれば、ちょうどいい具合に――
「あの……」
 不意に声をかけられ、俺の思考は中断させられた。
 見られただろうか……。すかさず口もとの笑みを消し、俺は何事もなかったように顔をあげる。
 と、
「……っ」
 久住だった。
 相変わらずの不機嫌そうな目で、厚い眼鏡越しに俺のことを見つめている。かすかな動揺を、俺はすぐに抑えこみ、
「……どうした?」
「………………」
 なぜか何も言わない久住。
 と、俺の鼻が、かすかな血の匂いをかぎつける。
 見れば、むき出しの久住の膝が、大きくすりむけ血をにじませていた。さっき転んだときのものだろう。
「………………」
 パイプ椅子に座っていた俺は、目の前に立つ久住の膝から目が離せなくなる。
 ごくり。無意識に喉が鳴る。
 最後に血で渇きを潤したのは、何年前だったろうか。
 不意打ちのように訪れた衝動に、俺の理性はあっさりかき消された。本能のままにパイプ椅子から腰を浮かせ、引き寄せられるようにして久住の膝に――
「痛っ……」
 小さな悲鳴に、俺はかろうじて理性を取り戻した。
「……たいした傷じゃない」
 保険医らしい言葉を口にし、治療のために触れたというように自分の行為を装う。
「こっちに来い。とりあえず傷口を洗わないとな」
 そう言って歩き出す。手を引いてやろうかとも一瞬思ったが、小学生ではないのだ。事実、久住は無言で俺の後ろについてきた。
(ったく……)
 久住に背を向けたまま、俺は渋面を作る。
 変なところでプライドが高い最近のガキは、基本的に頼みごとが下手だ。傷の手当てをしてほしいならそう言えばいいのに、そっちで察しろとばかりに何も言わない。無愛想の奥に見え隠れする甘えの心。先ほど自分が見せそうになった無様さへのいら立ちもあって俺はふくれあがる不快感を抑えきれなくなる。
「おい」
「………………」
「おい」
 足を止め、ふり返る。
 背の高い俺から見下ろされる格好になり、ひるんだ様子を見せる久住。だが、すぐにいつもの不機嫌そうな目で俺を見つめ返す。
 俺の中のいら立ちは、さらにふくれあがっていく。
「おまえ、口がきけないのか」
「……は?」
「『は』じゃねーよ」
 俺は、久住の胸倉をつかみあげる。もちろん、ここが校舎裏で人目がないのをわかってのことだ。
 俺の突然の行為に、久住の目が泳ぐ。
「………………」
 ……イラつく。
 この弱々しい人間を、いますぐにでも食べてしまいたい。肉を引き裂き、血をすすり、魂までもしゃぶりつくしてやりたい。所詮、人間なんて俺たちに食べられる以外に何の価値もない存在だ。
 しかし、いまは駄目だ。
 まだ果実は熟していない。こいつの魂は、完全に弱り切っていない。飢えに負けて安易に青い実を喰らっては、これまでこいつに費やしてきた時間を無駄にするだけだ。俺の飢えは満たされない。
「……放してよ」
 目をそらしつつ、久住は吐き捨てるように言った。
 俺は、不承不承手を離した。激情にかられてしまった自分に苦い後悔を覚えながら。実際、俺はこいつにこれ以上何もできない。
「……………」
 こいつのせいだ。
 とろくさいこいつが血なんか流したりするから、俺の気持ちがかき乱されたのだ。久住が転んだときに俺の中にこみ上げたささやかな歓喜は、もうとっくの昔に消えていた。俺は感情を押し殺し、黙々と自分の仕事をこなす。校舎脇の水道で久住の傷を洗い、救護テントに戻って簡単な手当てを施す。
「……消毒しないの?」
 無視しようとも思ったが、それも逆に大人げないと思い、
「過剰な消毒は、自己治癒に必要な菌まで殺す。余計なことはしないほうがいい」
「ふーん……」
 納得したようなしていないような、そんな息をもらす久住。自分で質問しておきながら興味がないという態度にも取れた。
 再び頭に血がのぼるのを感じたが、今度は暴発することはなかった。
 反動というわけではないが、俺は冷静になって思考していた。
 俺たちほどではないが、人間の身体は適切な治療さえ施せばあとは勝手に修復されていく。程度の差はあるが、心の傷もそうやって癒されることが多いと聞く。けど、俺は久住を放っておくつもりはなかった。久々に見つけた獲物だ。それを簡単に回復などされてたまるものか。
 これまではただ見守ってきただけだが、やはりぬるすぎた。
 もっと……もっと――
 こいつを追い詰めていかなくては。

 久住恵介(くずみけいすけ)。
 三年文系クラス。
 成績は、中の上。この進学校においては、国立大を狙えるレベルの学力は持っていると言っていい。
 といっても、この学校のメインはあくまで理系だ。理系六クラス、文系二クラスという数の差がそれを物語っている。北関東の平野部にあるこの地方では、昔からさまざまな工場の誘致が盛んだった。年配の教師から聞いた話では、成田より先に空港ができる話さえあったそうだ。そんな工業系が重んじられる環境にあって、公立校が理系メインになるのは当然だと言えた。
 理系が主流の校内において、文系の生徒たちは変わり者、落ちこぼれ、もしくはそれらを超えた圧倒的な天才として見られる。そんな中で久住は――
 浮いていた。
 極端に周りの人間との接触が少ない。休み時間は一人で本を読み、昼も一人机で弁当を食べている。特に人を避けているわけではないが、積極的にかかわるつもりもない。そんな空気を久住はまとわせていた。
 しかし、これは進学校の長所の一つと言ってもいいが、生徒たちは基本的に他者への過剰な干渉を好まない。試験や受験に向けて、彼らにはやるべき多くのことがある。部活に所属している者はなおさらだ。クールすぎるようにも思われるが、小学校や中学校のような人間関係の密度はここにはない。ゆえに摩擦も起こらないというわけだ。
 そんなところも俺の目的には好都合だった。
 誰かが消えても、一週間も経たずに記憶から消える。
「あれ? 何してんの、センセ」
「………………」
 聞き覚えのある声に、俺はどうしようもなく顔をしかめた。
 何も聞こえなかったふりをしてその場から歩き出す。しかし、矢田部の馬鹿は俺のあとをついてきて、あげく前に回りこんだ。
「逃げんなよー、セン……」
 俺は、問答無用で谷田部の顔面をわしづかんだ。
「うおっ! な、なんだよ、おいっ!?」
「黙れ」
「『黙れ』も何もねーよ、いきなりこんな……痛たたたたたたたっ!!!」
 大騒ぎする谷田部の声を聞いて、廊下を歩いていた生徒たちが次々とふり返る。俺はため息をついてうずくまりたくなった。
 最悪だ。できるだけ人目は引きたくなかったのに。
 だが、俺が手を出さなくても、どうせこいつは馬鹿みたいに大声で騒いで、すべてを台無しにしていたことだろう。
「おい」
 俺は谷田部の顔を放し、威圧するようににらみつけた。
「軽々しく俺に声をかけるな」
「なっ、なんだよ、それ!? それが保険のセンセの言うセリフかぁっ!?」
「優しくされたかったら、保健室に来い」
「え? 保健室だったら優しくしてくれんの?」
「追い返す」
「だったら、意味ねーじゃねーか!」
 矢田部が声を張り上げる。おかげでさらに人目を引いてしまう。いまさら手遅れだとはわかりつつも、俺はとにかくこの馬鹿を追い払おうと、
「消えろ」
「はあ!?」
「いいから消えろ。三秒以内に消えろ。俺の目の届かないところに消えろ。そのままこの世から消えろ」
「ちょっ……『消えろ』とか言うかぁ!? しかも、『この世から』とか!」
「さーん」
「カウントダウン!?」
「にー」
「いやっ、ちょっ、ま、待てよ! いきなりそんな、いくら先生だからって……」
「いーち」
「!」
 俺にひとにらみされ、一気に青ざめる谷田部。そして、
「あ。そーいえば、俺、急用があったんだー」
 幼稚園児なみの無意味な言いわけを口にし、矢田部は全力で走り去っていった。
「ふー……」
 ぐったりと頭をかきながら、俺はさりげない調子で周りを見渡す。こちらを見ている男子どもに、それとなく「見なかったことにしろ」という無言の意思をこめて。効果はすぐに出て、何事もなかったような顔でガキどもは散っていった。というか基本、こいつらは他人のことになんか興味はない。
 しかし、
「……チッ」
 思わず舌打ちがもれた。
 いた。
 野次馬たちが去ったあと、ただ一人残っていた久住がこちらを見つめていた。
「……よう」
 俺はさりげない調子を装ってそれだけ口にする。そして、久住の脇を通ってこの場から去ろうとする。
 と、
「……どう?」
「あ?」
 意味不明な問いかけに、俺は思わず足を止めた。
 久住は俺と目を合わせないまま、
「気に入ってくれた?」
「……何が」
「僕のことだよ――」

「食べるんでしょ、僕のこと」

「………………」
 返す言葉を見つけられないまま、俺は自分の顔がこわばっていくのを感じた。
 とっさに目だけであたりを見渡す。近くに生徒たちの姿はない。いまの久住の言葉を聞いたのは俺だけのはずだ。
 俺は、憎々しげに声をひそめ、
「……なに言ってんだ、おまえは」
「なに言ってるんだろ?」
 そう言って、久住が笑う。
 瞬間、俺はもう自分の中の荒れ狂う気持ちを抑えられなくなる。
「うっ!」
 いきなり壁に押しつけられ、久住の目が恐れにゆらぐ。
 わずかに溜飲が下がったのを感じる。しかし、こんなものではまったく足りない。血のうずきに飲みこまれそうになるのを感じながら俺は、
「なめんなよ、ガキ」
「………………」
「聞いてやがったな……保健室で」
 それ以外考えられない。
 俺と御冬が話していたのをこいつは聞いていたのだ。おかしいことは何もない。たった一枚の薄いカーテンで仕切られていただけなのだから。
 そんなすぐそばに人間がいたというのに、俺はふざけて御冬と……。
「………………」
 口の中に血の味が広がる。そうと気づいていても、俺は強く唇を噛むのを止められなかった。
 かろうじて残っていた理性が、俺の頭の中で警鐘を鳴らす。このままではまずい。さっき谷田部を相手にしていたときとは違う。いまの状況を他の人間に見られたら、久住に害意を持っていることが明らかになる。
 そうなれば、久住を喰らうことは限りなく不可能になる。
「………………」
 俺は、久住をつかむ手を離した。
 久住の瞳はまだゆれている。しかし、挑発的な色は消えない。
「……どうしたの?」
「………………」
「僕を食べないの? 僕を食べるんじゃないの? ほら!」
 俺は、その挑発には乗らなかった。
 代わりに一言、
「放課後だ」
「え……?」
「屋上に来い。そこでおまえを……」
 ゆっくりと久住の前から去っていきながら、途中で久住をふり返り、
「食べてやる」
 荒れ狂う熱情を抑えた声で、言った。

 そして、久住は来た。
 正直、半々だと思っていた。
 挑発に乗ってくるとの確信があった一方、怖気づく可能性もかなりあると思っていた。もしくは本気にされない可能性も。
 しかし、久住は来た。
 ということは――
「ねぇ」
 薄い笑みを見せつつ、久住が口を開く。
「僕を食べるってさ……どうするの?」
 俺は何も答えなかった。久住は言葉を重ね、
「もしかして、あれ? 僕の身体をもてあそぶって意味?」
「………………」
「ってことは、あの小さな弟ともそういうことしてるんだ。うわー、犯罪者ー」
「………………」
「ていうか、これも犯罪だよね? 学校で教師が生徒に手を出そうとしてるんだから。あれ、保険医って教師と違うんだっけ? ま、どっちでもいいけど」
 久住はぺらぺらと飽きることなくしゃべり続けた。普段の孤独で寡黙な彼とは別人のように。
「どうしたのさ、ずっと黙ってるけど。僕のこと食べるんじゃなかったの? それとも怖気づいた? そうだよね、いまどきそんなことしたら結構な事件……」
 久住はそれ以上の言葉を止められた。
 俺に制服の胸元をつかまれ、高々と吊り上げられて。
「っ……く……」
 目を見開いた久住の顔が、苦悶に歪んでいく。
 俺に遠慮はない。二人きりの屋上なら、誰の目を気にすることもない。かといって、いつ誰が来ないとも限らない。
 手短にすませよう。俺はそう決めた。
「……っ」
 久住の喉の奥から、かすれた悲鳴がこぼれる。
 恐怖にゆれるその瞳を見ても、俺は何も感じない。
 久住の目は俺の口許を凝視していた。
 日ごろは決して見せることのない――〝獣〟として獲物を噛み砕く無骨な牙を。
 唇を押し上げせり出した牙が、唾液に濡れていくのがわかる。俺の一部でありながらそれは別の意思を持つ生き物のようでもあった。人間の社会に潜む中で抑えこんでいた獣性の象徴。それは俺以上に、激しく猛り狂っていた。
 喰らいつけ。噛み砕け。血を啜れ。
 そして――
 魂を蹂躙しろと。
「あ……」
 不意に久住の身体から力が抜ける。
 怯えを残しつつも、その顔にあの不敵な笑みが戻る。
「本当だったんだ……」
 恐怖にそまった瞳に、わずかながら歓喜の色が混じり出す。
「終わらせて……くれるんだ……」
「……っ」
 久住のつぶやきに、俺は動きを止めた。
 本能の火が満ちつつあった胸に、かすかな疑念が芽生える。
 なんだ――いまの言葉は? 
「……おい」
 わずかな心のさざ波。しかし、それがどうしても無視できず俺は口を開く。
「どういうつもりだ?」
「………………」
「答えろ。おまえはどういうつもりでここにいる?」
 久住の唇が、さらに皮肉そうな笑みを作る。
「なに言ってるの?」
「こっちの台詞だ」
「どうでもいいでしょ、僕が何を考えてるかとか。ほら、食べなよ。さっさと僕を食べなよ。それで全部終わらせてくれよ……こんな意味のない世界なんか!」
 瞬間、
「うわっ!」
 俺は久住を突き飛ばしていた。久住の身体は勢いよくコンクリの上をすべり、落下防止の高いフェンスにぶつかって止まった。
「く……」
 苦痛にうめく久住。横への勢いが強かったために落下の衝撃はさほどでもなかっただろうが、あれだけ激しくすべれば服の上からでもそれなりの痛みはあったはずだ。
 しかし、そんなことはどうでもいい。
「おい……」
 必死に冷静さを保とうとしながら、俺は久住に近づいていく。
 一足飛びでつかみかかれないぎりぎりの位置で止まる。これ以上そばに行っては、自分の本能を抑えきれないそうにない。
「いま、なんて言った?」
「………………」
「『意味のない世界』……そう言ったか?」
「だ……!」
 俺の問いかけに反応して、久住は目をむき、
「だって、そうじゃないか! なんの意味があるんだ、この世界に!? いったい!? なんの!? 生きる意味があるっていうんだよ!」
 さらに声をはりあげ久住は言った。
「僕は……僕は家畜だ!」
 思わぬ言葉に、俺は息をのんだ。
「なんだと……?」
「何の疑問も感じず、ただ与えられる餌を食べて生きている! そういう生き物を家畜って言うんじゃないのか!?」
 何かのたかがはずれたように、俺の目の前で久住はわめき散らす。
「僕は家畜だよ! 優秀な……飼い主にとって都合のいい家畜なんだ! 自由になろうとも思わない! 他に自分がやりたいこともない! ただ……」
 久住の肩が落ち、うめくような声で、
「ただ言われたままに生きるだけの……みじめな家畜だ」
「………………」
 主張は終わったらしい。
 俺は黙って久住を見つめていた。うつむき肩をふるわせている卑小な人間を。
 卑小。
 そうだ、あまりにも卑小すぎる。俺はこんな人間を喰らおうとしていたのか? こんなにもか細く力弱い魂を――
 俺は……俺は――
「!」
 眼鏡の向こうで、久住の目が見開かれる。
 俺は再び久住を持ち上げていた。片手で制服の襟元をつかみ、子猫のようにつまみあげていた。
 そのまま、何も言わずに歩いていく。
 屋上をぐるりと囲っている高い金網のフェンスに向かって。
「……っ」
 かすかに聞こえた久住の悲鳴。
 俺は、跳んだ。
 人間なら五輪選手であろうと不可能な高さに助走も道具もなしに跳び、そのままフェンスの上に着地した。
 ゆらがない。拳ひとつの幅もない場所に、さらに久住という荷物を持ったままでも、俺は地面にいるのと変わらない調子で立っていた。
 そして俺は、久住をぐっと前に突き出した。
 その下には――何もない。
 四階建て校舎の屋上フェンスの向こうに広がるのは圧倒的な無。そこに放りこまれた人間は重力によって確実なる死へと至る。
「ひ……い……」
 吹きつける風にまじって、はっきりと悲鳴が聞こえた。しかし、その程度で治まるはずもない。俺の――
 俺の……この怒りは。
「家畜に価値はねえ」
 俺のつぶやきが聞こえたのだろう。久住が俺を凝視する気配が伝わってくる。
 しかし、俺はもう久住を見ていなかった。
「ゴミは消えろ」
 手放した。
 鈍重な人間の身体は、あらがいようもなく地上へむけて落下した。
「…………………」
 風を切る音が俺の耳に届く。
 俺は前を見つめたままだった。何も考えることなくフェンスの上に立っていた。
「…………………」
 やがて聞こえるであろう死の音に俺は耳をすませた。前を見つめたままで。
「…………………」
 俺は何も見ていなかった。ただ耳をすませていた。
 そんな俺の耳に――

 どくん……どくん……――

 俺の中で脈動する……徐々にその大きさを増していく――

 どくん……どくん……――

 人間と変わらない……俺の身体に血潮をめぐらせる――

 どくん……どくん……――

 まったく治まらない……どんどん速さを増していく……胸がはじけそうなほどにそれは脈打ち……身体からあふれ出す音が世界のすべてになり――

 どくん!!!

 跳んだ。
 上ではなく、下へ。
 自然落下の速度を超え、一瞬で俺の視界いっぱいに地面が迫り――

 ぱしんっ――!

 つかまえた。地面に激突する寸前、俺はすくいあげるようにして久住の身体を抱え取っていた。
「………………」
 何の感慨もなかった。何も考えられなかった。
 麻痺した思考で、俺はただ他人事のようにいま自分がしたことを反芻していた。
「はう……はっ……はあぁっ……」
 久住は、過呼吸のように息を乱れさせていた。その顔にあの地味な眼鏡はない。墜落の途中、もしくは俺がつかんだ衝撃によって落ちたのだろう。
「あう……ああ……」
 眼鏡なしで焦点の定まらない目が俺に向けられる。
「あ……う……あ……」
 もれるのは意味のないうめき声ばかり。
 やがて、
「うあ……あ……あああああああああああっ」
 嗚咽。あふれ出す涙。
 そして、久住は俺にすがりついた。命を――その魂すらむさぼり喰おうとしていたこの俺に。
「あうっ……うわっ……あっ……うわああああああああああああっ」
「………………」
「やっ……だっ……あっ……やだああああっ」
「………………」
「……っく……ない……し……しにっ……」
「………………」
「しっ……た……しにたっ……死にたく……なっ……」

「自分で死を選ぶ家畜はいねえ」

 久住の嗚咽が止まった。
 焦点の定まらなかった目が俺をとらえる。
 虚飾も驕りもない。裸の、弱々しい子どもの目に戻った久住に向かって俺は憎々しげにつぶやく。
「結局おまえに死ぬことなんてできねえ。おまえは本物の家畜だよ」
「………………」
「家畜は家畜として生きろ。そして、勝手に誰かに食われて死ね。けど、俺は家畜を喰うほど飢えちゃいねえんだよ」
 嘘だ、嘘だ、嘘だ!
 誰かが俺の中で大声で叫ぶ。俺のことをあざ笑う。
 俺はそれに耳をふさぎ、
「世界に意味がねえ? ハッ、当たり前のこと言ってんじゃねえよ。ていうか、意味ってなんだ? おまえが思う世界の意味ってなんだ? 知ってるなら教えてくれよ……」

「俺が存在するこの世界の意味は――なんだ?」

 すでに俺は、久住に向かって語っていなかった。
 それは誰に向けられた言葉でもなかった。
 行く宛のない言葉は、俺の中にとどまり、ふくれあがり、さらなる疑問の嵐となって吹き荒れる。
 なぜだ? なぜだ? なぜだ?
 なぜ、俺は存在する?
 人を喰らう化物……なのに――

 人を喰らえなくなってしまったこの化け物は。

「違う……」
 つぶやく。それは、自分でもやりきれなくなるほど力のない声だった。
「違う……」
 久住を下におろす。地面にへたりこみながらも、久住は俺のことを見つめ続けていた。その視線から逃げるように、俺は背を向ける。
 間違いない。俺は本気で久住を狙っていた。
 本気で久住を喰うつもりだった。
 なのに…………なのに…………なのに!!!

 夕暮れの空に見える月に向かって俺は――吠えた。

世界で一番やさしいケモノ #1

世界で一番やさしいケモノ #1

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更新日
登録日
2014-01-03

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