一粒の種子

相変わらずのトシャブツです。

「始まり」

胚がない一粒の種子

黒と白
白と黒

空に胚がない一粒の種子(たね)が落ちた

根を空に向け
葉を地に向け

種子は地に落ちた種子を羨んだ
種子は空に落ちた種子を拒絶した

種子はとても美しい花を咲かせた
ただ自分の為

しかし
それは、虚しいだけだった


地に胚がある一粒の種子が落ちた

根を地に向け
葉を空に向け

種子は地に落ちた種子を拒絶した
種子は空に落ちた種子を羨んだ

種子はキレイな花を咲かせた
ただ他人の為

しかし
それは、虚しいだけだった

芽のなる種子

ヒラヒラ空から一粒の種子(たね)
ポトリと地に落ち

ニョキニョキ空へと二枚の葉っぱ
スックと元気に

キラキラ空にと大輪の花
ウルッと艶やかに

カサカサ空からも見放された
ヒラリと華やかに

してまた種は落つ
してまた種は落つ

色色々

僕は
青が緑に
緑が黒に
黒が灰に
灰が茶に
茶が白になった

その時
無から白に
白から灰に
灰から黒に
黒から燈に
燈から赤になりました

七夕

16光年先のあなたを想う

わたしは今年も会いに行きます

あなたは会いに来てくださるのでしょうか?

今日は16光年先のあなたに会える特別な日

もしも

もしも
僕があと少し弱かったら

もしも
うちに両親がいたら

もしも
私に財力があったのならば

もしも
ぼくがあの時、ああなっていたなら

もしもを考えても始まらない
もしもを考えて自分を保つ

けど、

欲しい
けど、手に入らない

会いたい
けど、会えない

始めたい
けど、始まらない

終わりたい
けど、続けてしまう

こんなのはいやだ
けど、だけど…

コンクリロード

熱く滾ってた想いも
熱望した未来の夢も

ただ毎日を経ることで
ただ年月を経ることで

すべて冷えて固まって硬くなってしまった

ただただ時間を削って
ただただ寿命をすり減らしているだけ

勝手な夢を抱くことは人に迷惑をかける行為
想いをまた融解させることはワガママな行為

なにが間違いなのか

無題

例えば
ここに言葉がなかったとして

例えば
ここに伝えたい心があったとして

僕は努力をするのだと思う
伝える努力を

でも
ここに言葉があったとしても
ここに伝えたい心があったとしても
僕は努力をし続けるのだと思う

それは
言葉があったとしても上手に伝えることができないから
100を100のまま伝えられないから

もしも
僕が上手に100を100のまま伝えられる言葉を持っていたなら

知覚世界

僕らが
見て
触って
聞いて
嗅いで
舐めて
感じている世界は
脳が処理して僕らに見せている世界だそうで

それは、本質とはまた異なった世界かもしれないそうで

それは、僕らには決して感じ取れる世界ではないそうで

それは、僕らの想像の範疇の外のお話で

だから、心が崩れると世界も崩れるのは大袈裟でもなく、嘘でもないそうで

つまり、世界は見るものによって形を変えるのだそうです

肩が痛い
砕けるように痛い

僕の鞄の重みで
僕の体の弱さで

鞄の中にはたくさんの物が詰まっている
僕の体にはとても耐え切れないほど

僕には不相応の重み

もう耐え切れない

負けという事実より
力を出し切れなかったという不甲斐なさより
結果を残せなかったという悔しさより

お世話になった人の思い
この場に立ちたくても立てなかった人の思い
慕って羨望を傾けてくれる人の思い

これらを知っているから涙が零れる

その涙を見て胸がギュッとなるのは
僕もそれを経験しているから胸がギュッとなる

一粒の種子

土にうまり
根をはやし
葉をひらく

茎をのばし
葉をふやし
蕾をつける

花をひらき
実をむすび
種をおとす

これが全て
世界の全て
宇宙の全て

少女の問い、僕の答え

ねぇ
はやく大人になるには、どうしたらいいの?

それは
歳をとればいいんだよ。ただそれだけ。ただそれだけ。

水をまくということ

水をまく
今日も
明日も

水をまく
僕の為
君の為

水をまく
利己的に
排他的に

水をまく
ただ機械的に
なにも疑問を持たず

水をまく
ここに種があろうと
ここに種がなかろうと

水をまく
僕は気付いた
この行為に意味はない

一部

僕は足だ
百足の足だ
体のために存在する
僕がいなくてもほかの足がある

僕は尾だ
カナヘビの尾だ
体のために存在する
僕は体のために我が身を捨てる

僕には心臓はない
ずっと前に自ら押しつぶした
体のためになにができる?
僕は努力した

僕は羽になりたかった
白く柔らかく軽いあれ
体をおいて舞い上がりたいと願った
けど僕はやっぱり足だった

ベガ

ひとつ息をつく
白い息が空気に溶ける

ひとつ息をつく
なんとなく空を見上げた

ひとつ息をつく
ベガを探していた

白いため息をついた
まだ寒い季節の中だというこうとに気がついた

ぽち

”これ”を君に渡すということは
”ぼく”が大人になるということ

”これ”を君が受けとるといことは
”きみ”が私のことを認めるということ

”きみ”は”これ”受けとるだろう
”これ”は”きみ”が思っているよりも意味があることなんだよ

たぶん、きづいていないのだろうね

元旦

今年最後の日

友達と一緒にいる夜

ポケットの中に忍ばせた携帯

日付が変わると同時に火照る指先

今日という日を言い訳にして送信する言の葉


今年は良い一年になりますように...

一粒の種子

気に入ったもの、考えてしまうもの、反吐が出るもの
読んでいただいた方に何かを残せたのなら、幸せです。

こちらもいっぱいになってきたので、新しい「月記」もよろしくお願いします。

一粒の種子

全18話の詩集です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-01-02

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 胚がない一粒の種子
  2. 芽のなる種子
  3. 色色々
  4. 七夕
  5. もしも
  6. けど、
  7. コンクリロード
  8. 無題
  9. 知覚世界
  10. 一粒の種子
  11. 少女の問い、僕の答え
  12. 水をまくということ
  13. 一部
  14. ベガ
  15. ぽち
  16. 元旦