高校時代

*再会
ちょっとおしゃれな服を着る。
確かココらへんに…
あったあった
宛名には水嶋様と書かれている。
手に取ったのは同窓会の会場までの道が描かれた
手書きの地図だった。

そう、今日は高校の同窓会なのだ。
ちなみにさっきの絵地図はクラスで一番絵がうまかった
柴田が書いたやつだ。
おれのクラスはみんな仲がよく和気あいあいとしていた。
とうぜん恋愛なんかも普通にあるわけで
ちょっと遅めの初恋の相手もいた。

おっと、こんなことを考えてるうちに
会場についてしまった。
地元の居酒屋だ。
大部屋が確保してあるらしいから気兼ねなく話せるだろう。

部屋に入ると懐かしい顔が並んでいた。
絵地図を描いた柴田に仲のよかった岡本、中山…豪華な顔ぶれだ。
他にも女子のリーダー的な存在だった森田もいる。

おれは柴田の隣に座り、みんなと思い出話に花を咲かせた。
それから、どういう流れだったか忘れたが当時の恋愛の話になった。
突然、中山が
「水嶋さ、雨音と付き合ってたんやろ?」
なんて言い出した。
「そんな昔の話、忘れたわ」
そう答えた。笑いながら。
おれの頭の中に昔のいろんな思い出がどっと溢れ出した。

*高校時代
高校2年。
高校生活にも慣れ、みんな部活で汗を流し休日は友だちと遊びまくっていた。
そんな頃おれには片想いをしている子がいた。
おれにとっては初恋だった。

雨音 唯。
明るくて友達も多いし、何をするにも熱心。
今まで喋ったことがなかった。
一目惚れってやつだと思う。
彼氏はいなくて、狙ってる奴も多いとかいう噂は何回も聞いた。
まあ、それぐらいモテる子だっていうこと。
暗い感じのキャラのおれが告白できるはずもなかった。
いつも遠くから見ていた。
そんな感じで毎日が過ぎていった。

*きっかけ
おれは自分の気持にどう対処すればいいのか分からず戸惑っていた。
いつも友だちに囲まれている雨音さんに近付くことなんてできないし…
何かきっかけが欲しかった。
6月に入ってもうすっかり衣替えが終わり、みんな涼しげな格好になっていた。

今日はちょっと寝過ごしてしまった。
電車通学のおれは普段は乗ることのない、いつもより一つ遅い電車に乗った。
普段おれが乗る電車よりは人も少なく、座ることができた。
学校まではあと4駅ある。
今度からこの電車にしようかな、なんて考えてると次の駅についたらしい。
あまり人は乗って来なかったが一番近くのドアから一人乗ってきた。
はじめのうちは気付かなかったのだが、それは雨音さんだった。
おれがじっと見ていたのか、目があってしまった。
はじめは怪訝そうな顔をしていたが、少し驚いて
「水嶋くんやんな? うち、雨音唯っていうんやけど、誰かわかる?」
ちょっと意地悪な顔して聞いてくる。
「知ってるよ。同級生やろ?」
「バレたかっ(笑)」
なんて、楽しい会話が続いた。
「水嶋くんさ、いつもこの電車なん? あんま見かけへんけど」
「いや、今日はちょっと寝坊しちゃってさ」
「そっか、それは残念」
「間にあうから問題なし。そういう雨音さんはいつもこの電車?」
「うん、この電車。 それからうちのことは唯でいいよ」
「了解。じゃあ、おれのことも雅樹で」
「オッケー」
どうしてこんなに親しく喋れているんだろう。
今まで一回も喋ったことなんかなかったのに。
「水嶋く…雅樹さ、よかったらこれからこの電車乗って学校一緒に行かへん?」
「え? 唯はいつも友達に囲まれてるやん」
「ぜんぜん…この電車の子おらんからさ…で、いや…?」
急にしょんぼりするとかかわいすぎる。
心のなかで、惚れてまうやろーと叫んでいた。
あ、もう惚れてるか。
「いいよー。おれもいつも一人やし」
「ありがとう」
おっと、もう降りる駅だ。
降りてから学校につくまでは、ずっと二人でしゃべった。

*溢れ出す懐かしい話
みんなちょうどいい感じに酔ってきているみたいだ。
あっちではちょっとエロトークも始まっている。
ほんとにいろんな話がどんどん出てくる。
おれたちは本当に仲よかったんだなーと思う。
たまに女の子たちも会話に入ってきたりしてさらに盛り上がる。
隣に誰か座ったので見てみると唯だった。
「おー、唯、久しぶりやん。元気してた?」
「うん。ほんま久しぶりやなー」
「おまえらほんま仲いいなー」
誰かが言う。この声は…岡本か。
記憶っていうのは不思議なもので、「きっかけ」があればどんどん蘇ってくる。
同窓会はその「きっかけ」になった。
「まあね〜。みんなは仕事とかどうなん?」
唯がうまく話をそらす。
「消防士ってマジできついぜ」
「部長にこき使われてて、もう嫌やわー」
とか、だんだん仕事の話に移ってきた。

*電車通学
あれから毎日同じ電車で一緒に通学している。
それが楽しくて、嬉しい。
告白しようかなんて考えることもあったけど、今の関係を壊したくないからやめた。
たまに学校で他の男子から睨まれることもあったが、気にならなかった。
それから、最近、「おまえ明るくなったな。なんかあった?」
みたいなことをよく言われるようになった。
そりゃ、好きなこと毎日一緒に学校行ってたら明るくもなるだろうと内心思っていた。
携帯ばっかりいじってたのが嘘みたいに、朝はずっと唯と話していた。
彼女は最新のファッションとかバラエティなんかにとても詳しくて感心した。
そんなこともあってどんな服を着たらいいとか、最近はあのコンビが人気だとかいう話をしていた。
当たり前の流れだろうが、彼女は
「今度一緒に買物でも行かへん?」と言ってきた。
「う〜ん…暇な日連絡するわ」
そう答えると、彼女は満足そうな顔をしていた。

ときどき思う。唯もおれのことが好きなんじゃないかな…なんて。


それから数日過ぎて、週末にショッピングに行くことになった。

*Go to shopping
地味なおれは、当然女子とふたりきりで買い物なんて経験があるわけもなく
当日はかなり緊張していた。自分でも鼓動が聞こえるくらい。

おれたちはいつも通学に使っている路線の電車で、地元ではかなり人気のショッピングモールに行った。
よく考えてみればおれは彼女の制服姿しか見たことがなかった。
彼女の私服姿はとても可愛くて、一緒にいるだけで顔が赤くなってしまいそうだった。
少しメイクもしているのだろうか。いつもより大人っぽく見える。

ショッピングモールについてからは、フレッシュネスバーガーでランチを食べ、映画を見に行った。
コメディー系の映画だったので、彼女はずっと笑っていた。

「うちさー、こういう高校生活したかってん」
「じゃあ、夢叶ったな」
「うん!」
こういう子どもっぽいところも可愛い。
なんて思ったり。 おれはどうかしてるのか?

いつもの様に他愛もない会話をして彼女の服を見たり、
おれの服を選んでもらったりもした。
周りの人から見ればカップルに見えるんだろうなとか思ってた。


「……ー! …ーき! 雅樹ってばー!」
「あ、ごめん…」
ぼーっとしていた。
「どうしたん? 気分悪い? 大丈夫?」
心配そうな顔で覗き込んでくる唯。
「大丈夫大丈夫。ぼーっとしてただけ」
とは言ったものの、本当は考え事をしていた。
告白してもいいんだろうか。 そんなことを考えていたのだ。

好きでも気持ちを伝えられない。伝えて今の関係が壊れるのがイヤ。歯がゆい。
ワガママ? そんな事わかってる。

もうここは当たって砕けろだ。あ、砕けちゃダメか…
まあ、思い切って気持ちを伝えよう。
それがおれの出した結論だった。

「なあ…唯。」
「何? どうかしたん?」
「あの…さ… おれと……付き合ってくれへんかな?」
「え… ちょっ…」
「いきなりごめん…」
「いや… うちなんか、ちびでブスで性格悪いし…」
「そんなことない。 もしそうだったとしても、おれは唯が好きだ。」
「ほんとに… いいん……?」
「うん。 おれと付き合ってください。」
「……よろしく…ね」

高校時代

展開早すぎるとかそういう事言わないでください(笑)
わかっては、いるんですけどね… 書くのって難しいです(^_^;)

高校時代

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-10-07

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