なくなる日

なくなる日

今後も更新していく予定です

雨の外出

 彼女は僕を見ながら何かをしゃべているようだが、その声を聞くことは叶わなかった。
 その彼女の顔も声も彼女の全てが年を取るごとにわからなくなっていき、彼女は今日もまた僕から少しずつ遠くなる。


 外の雨音と腕の痺れにより夢の中から目が覚めると、僕は条件反射のように布団の上に充電されながら転がっている携帯電話で時刻の確認を行う。
 時刻は午前7時をすぎたころであった。
 どうやら僕は昨日は依頼会社のロゴの制作中に寝てしまったらしく、椅子に座っている僕の腕はよだれか何かにより少し湿っていた。
 眠ってしまった事実は頼まれていたロゴの納品日まで残りわずかということを考えるとあまり嬉しくない事実である。
 惰性で僕は片手にもっていた携帯電話の着信とメールの確認を行う。
 ここ数年友人からの連絡は皆無であり、理由としては僕が友人からの連絡に対して反応をしなかったからであろう。
 1年もすると僕の携帯電話はほとんど必要のないものとなってしまった。
 何も変わり映えのしない履歴を見た後僕は意味もなく友人のツイートなどを見て現状を見たりしている。僕の知る限り結婚した友人も少なくはない。
 そんな僕は収入があるとはいえ世間一般的には引きこもりの部類であろう。
 僕は痺れてしまった腕を伸ばしデスクトップに目を向けると、そこには30年毎日一緒にいる顔が無表情で僕を見つめていた
 机の上で眠ってしまったせいで疲れもとれず、このまま布団の中でもう一眠りするという欲求は納品日の事を考えると抑えることとなり、けだるげに僕は制作途中の作業を始めた。
 僕は電話が嫌いなため、社会的には声がでない、耳が聞こえないという設定にしているため。納品日には必ず間に合わせるという心情のもと仕事を行ってきたが、そのためしゃべるという活動をほとんどしてこなかった。
 一時期は声の出し方を忘れてしまうほどであり、半年ほど前に弁当を買いにコンビニへ行ったとき、異常なほど大きな声でレジの店員に向け「あ、あ、温めませんんだ、だ大丈夫です」と甲高く叫び、コンビニを異常な空気に包み込むという活動を行う。
 そのためそれ以来猫のよもぎとかなでとよく会話をするようになった。
 現在僕の唯一の友達は今僕のベッドの上で眠る猫の「よもぎ」と「かなで」の2匹だ。 
 しばらく作業をしていると起きた猫が、なーごなーごと僕にエサの要求をよこしてくる。
「今あげるからちょっとまってろ、ごめんなさっきまで寝ちゃっててさ」と僕はだるい体で立ち上がり、タンスの中に置いてあるキャットフードをとりだし2匹分の量を2枚の皿にわけた。
 よもぎとかなでの目の前にそれを置いて僕はまたパソコンの前に座り作業を行う。
 これが僕の5年間の主な流れである。

 昼過ぎになるとロゴの制作も終盤に差し掛かってきたところで、突然インターホンが鳴った。
 作業途中であったため僕は無視をしようと思ったが、3回ほどインターホンが鳴ったところで僕は椅子から立ち上がり、玄関のドアを開けた。
 ドアを開けると目の前にはスーツ姿の男性二人が立っていていかにもエリートのような雰囲気をかもしだし個人的には好印象ではない。
 そして何より二人とも身長が180は超えているようで、まるで僕を見下しているのではないのだろうかという威圧感がある。
「……あの、どちらさまでしょうか?」
 警戒をしながら僕が聞いてみると
「お忙しいところ申し訳ない、私は群馬県警の志村といいます。」「私は加藤といいます」
「あなたは狭山蒼生さんでよろしいでしょうか?」
 男達は低い声を響かせながら紳士的で嫌な自己紹介を行った。予想の遥か上をいった来客。
「そうですけど……あの、自分何かしましたか?」
 僕自身に心あたりがなさすぎて普通の受け答えをしてしまった。心あたりのない人間はだいたい聞きそうなことである。
 志村という高身長で大きな瞳にやせ形の男は表情を変えずにしゃべりだす。
「伊田芽麻友さんはご存知ですよね?そして事件のことも」と志村さんは僕に訪ねてきた
「伊田芽のことは知ってますが、事件ですか?」
 毎日僕がつぶやき思い浮かべる名前が他人から聞えるのは久しぶりであり僕は少し感動を覚えたが、僕は最後の言葉に大きく反応を見せた。
「半年前にあった伊田芽麻友さんの行方不明事件ですよ。ご存じないのですか?」
「……え?……伊田芽行方不明なんですか?今伊田芽はどこに?
いつどこで行方不明になったんですか?伊田芽が?誰に?」
 僕は思わず志村さんに近づき我を忘れ聞き返す。
 久しぶりの他人との会話でいっぱいいっぱいであったのに、その言葉により僕は混乱をし始めてしまった。
 その姿を目の前にいる二人は冷徹に見下していた。
 一呼吸を置くと隣にいる細い目の天然パーマっぽい加藤という高身長男が呆れながらしゃべりだす
「半年前ニュースで大きく取り上げられてましたよ、ニュースは見ないのですか?」
 少しむっとしたが、今の僕にはそんなことはどうでもいいことであった。
「……テレビがないのでニュースはほとんど見ません。それで伊田芽は?」
「そうですか……伊田芽麻友さんはまだ見つかっていませんよ。現在捜査中です」
志村さんが機械的にしゃべる
「……」
体温が少しずつなくなっていくような感覚を感じながら、僕は呆然と立ち尽くしてしまった
「狭山さん、狭山さん聞いてますか?」
 気づくと志村さんが少し心配そうに僕を見ていたが隣の加藤はどうでもよさそうに僕を見ている。
「えっと……詳しく聞かせてほしいんですが、もしよければ入ってください」
 普段の僕からは考えられないような言葉であったが、ただ少しでも今は情報が知りたかった。
「私達も少しお伺いしたいことがいくつかあるので、少しおじゃまさせていただきます」
 僕は志村さんと加藤を自宅に招き入れ折り畳み式のちゃぶ台を部屋の真ん中に置き、インスタントコーヒーを2人にだした。
 二人はちゃぶ台の前に座り志村さんがコーヒーを一口のみ
「パソコンが多いですね、3台以上はあるみたいですが……」
「仕事で使うんですよ、まあほとんど1台ですましちゃうんですけどね。今は誰でもできる簡単な仕事ばかりです。ムダに買ってしまうんですよ、このマンションの一室も猫とずっと一緒にいるために借りたんです」
僕は愛想笑いを浮かべながら、椅子に座り。二人を見下ろした
「それで伊田芽の件なんですけど、犯人はまだ?できれば詳しく知りたいのですが……」
「現在捜査中なので、詳しいことは申し訳ないがお答えできないんですよね。一応今回の事件の流れの資料がありますのでそれをお渡しします。おい加藤」
 そう志村さんが言うと加藤はバックから1枚の紙を僕に渡してくれた。内容は大雑把ではあったがこのように書かれている。


「伊田芽麻友さん行方不明事件」

 2019年6月7日群馬県桐生市の伊田芽麻友さん(当時29歳)は、午後5時に友人との食事に出かけ食事が終わったあと友人の車に乗せてもらい自宅に帰る予定であった。
 友人の証言によると伊田芽さんは食べ過ぎたため徒歩で歩いて帰ることにしたそうだ。
 この場所から伊田芽さんの家までの距離は2キロ以上離れていて、歩くには少し不自然な距離であったことから当初はこの友人が疑われたが、一人で帰る目撃証言と監視カメラの映像により友人の疑いは晴れた。
 そこから伊田芽さんの足取りは途絶えている(伊田芽さんの家周辺は田んぼ道で人通りがとても少ないために捜査は難航を極めている)
家族にも午後10時には遅くとも帰るということは伝えてあり深夜になっても帰ってこないことに対し心配した母親が警察に連絡して捜索願いがだされた。
 10日間で延べ50人あまりで付近一帯を捜索するも伊田芽さんは見つからなかった
 見つかったものは伊田芽さんのものであろうストラップが落ちていて
後日調べたところ伊田芽さんの彼氏がプレゼントしたものであることがわかった。
 伊田芽さんの自宅までの道は何もない田んぼ道で、人通りもまったくなかったため
 有力な目撃情報などはまったくないまま捜索活動は10日後に中断された。
 現在も伊田芽さんの家族は捜索活動を行っている。



「……」
 言葉がでずしばらくの静寂が流れると、志村さんは喋りだした
「現在提供できる情報はこれだけです。それでお伺いしたいことなんですが
狭山さん6月7日にあなたは何をされてましたか?」
 志村さんは感情なく聞いてくる
「……それは僕を疑っているということですか?」
「いえただの捜査の一環ですから、ご気分を害されたなら謝ります」
「いえ、大丈夫です。6月7日はここにいましたよ、この5年間この家に1日もいなかったことはありませんでしたし。ちょっとパソコンでその日なにしてたか調べてみますね」
「あ、大丈夫ですよ。その日はコンビニであなたの目撃情報がありましたので」
 鼻につく加藤の声が僕の検索の手を停めさせた。刑事じゃなかったらどついているところだ……
「……そうですか、聞きたいことはそれだけですか。協力できることならできるだけしますよ」
 僕がそう言うと少しの静寂が流れ、すると志村さんが少し頭を下げしゃべりだした
「狭山さんあなたと伊田芽さんの関係をお教えしてもらえませんか?」
「……僕と伊田芽の関係ですか、それは今の関係ですか?……それともあなた達が僕に行きついた理由の関係ですか?」
「両方教えていただきたい」
 志村さんが僕の顔を見上げる
 僕は少し考え「今は何の関係もありませんよ、昔はお互い好き合っていた時期もありましたが。付き合うまではいきませんでした。」
 「体の関係はあってもですか?」
 加藤がいやらしそうに僕を見る。
「そうです。僕が付き合おうと言えなかった。それだけです」僕は加藤を睨みながら答える。
「それで今でも彼女の事をお引きずるになられているのですか」
 加藤はさらに僕を見上げてきたので 僕は怒りを抑え平常心を装いながら答える。
「そこまでわかっているなら、僕に会う必要はなかったのでは?」
 加藤は嫌らしい笑みを深め
「いえいえ、あなたの気持ちを確かめるのと心あたりを聞きたと思いまして。」
「そうですか」と僕は答え椅子から立ち上がり自分のコーヒーを作りに行った。
 コーヒーをいれて椅子に座ると志村さんが低い声で僕に問いかける
「狭山さんあなたが知る限り伊田芽麻友さんを怨んでる人やよく思っていなかったご友人をお聞きしたい」
 僕はコーヒーを一口呑み一人だけを思い浮かべることができた。
「僕の知る限り、伊田芽のことをよく思っていなかった人はたくさんましたよ。伊田芽は猫のような人間でしたからね、まあ拉致されるまでひどい女性ではないですよ。ですが……」
 僕はもう一口コーヒーを飲んで僕はしゃべりだす
「……僕が知る限り伊田芽麻友を怨んでいるかもしれない人間は安達海(あだちかい)一人だけです。」
 志村さんと加藤はそれぞれメモを取り終えたあと立ち上がり
「ご協力ありがとうございます。では私たちはこれで失礼します」
「コーヒーごちそう様でした」と言いながら玄関へむかっていった。
 僕も玄関へむかい、「見つかったら教えてください」とだけ伝える、
「わかりました、私たちも捜査に全力を尽くします、それでは失礼します」
 加藤が最後だけまともになり二入は家から出て行った。すると少し気がゆるんだところに志村さんがまたドアを少し開け、僕に対して聞いきた
「ちょっとすいません聞き忘れたことがありました。いや質問の仕方を間違えたことが一つありました。狭山さん、伊田芽麻友さんの事を一番怨んでいる人間は誰だと思いますか?」
「……さあ検討もつきませんね」
「そうですか、では失礼します。」
 志村さんは無表情のまま僕に頭を下げドアを閉めた。僕はその場に座り込み少しだけ考え答えをだす。 
 たぶん……伊田芽麻友を一番怨んでいる人間はこの僕であろう。



 
 警察官の二人が帰ったあと僕は携帯を取り出し、大学時代の友人にメールを送ってみることにした。
メールを送ると、すぐに返信が帰ってくる。どうやら友人は外人になってしまったようで英語の文章は「MAILER-DAEMON」と書かれていた。
その文章を確認して、僕は作りかけのロゴのデータをノートパソコンに移動させ外出の準備を行い始める。しかたがなく、8年ほど前に彼が入社したと言っていたK社へ電話する。
「私、株式会社C社の狭山蒼生というものなんですが、吉田陽様いらっしゃいますでしょうか?」
「はい、なんの御用でしょうか」
この切り替えしは考えておらず、僕は適当な返事を返す。
「……以前吉田陽様から頼まれていた、発注の件なんですけど」
「お名前をもう一度伺ってもよろしいでしょうか?」
「狭山蒼生と申します。」
「はい少々お待ち下さい。」
僕が以前1年ほどやっていた僕の営業の仕事が初めて役にたった瞬間である。

「はい、お電話かわりました。営業部長の後藤です」
営業部長という言葉に驚きながらも僕は要件を伝える。
「久しぶり-、仕事中悪いね、ちょっとさ今からお前んち行くから住所教えてくれない?」
 そう言ったあと吉田は会社にいたせいもあり気を使いながらしゃべりだす。
「…………はい、では繰り返させていただきます。群馬県高崎市○○町3-×となります。あ、あと連絡先もお伝えしときます0××-4×××-24××ではよろしくお願いします」
やはり、部長ともなるといろいろ大変なんだろう。とは感じられずにはいられない言葉だ。
「ありがとさん。ではまた」
久々に話しては見たが、声からはあまり変化というものは感じられず、なつかしさも感動もなかった。

電話を切ったあと、僕はタンスの奥にある服をとりだし学生時代に着ていた服に着替えた。
タンスの匂いを纏いながらノートパソコンをバッグに入れて、いつもと違う僕を見ているよもぎとかなでをひとなでをする。
そして5年ぶりに昼間の世界へのドアを開けた。


電車に乗り30分程すると辺りはビルが多くなってきていた。目的の駅で降りた僕はすぐにタクシーを拾い、車で約10分ほどかかる住宅街の一軒家に訪れた。
携帯を確認すると16時を過ぎたところであった。さすがにまだ早すぎるとは思ったが一応確認はしようと思った。
タクシーの運転手に少しだけ待っていてと伝え、僕は表札に吉田と書かれているその家のインターホンをためらいながらを押した。
すると「はい」と若い女性の声が聞こえる
「すいません、私吉田陽さんの大学時代の友人の狭山蒼生というものなんですが、陽さんいますか?」
「……主人は今仕事中でまだ帰ってきていないのですが」
「何時くらいに帰るとかわかりますかね?」
「たぶんそろそろ……またきていただけないでしょうか?」
「わかりました。あの伊田芽蒼生がきたとご主人に伝えていただけないでしょうか」
「いいですよ。」
少しめんどくさそうに女性は答えてくれた
「ありがとうございますでは失礼します」
僕はタクシーに戻り運転手に「このあたりで近いカフェにお願いします」と伝える。


5分もせずに着いたそのカフェはこじんまりとした店で、久しぶりの人ごみで疲れていた僕にとってはありがたかった。
店に入るとお客さんもいないようで、コーヒーを頼んだあと僕はノートパソコンを開き自分の世界へと入る。
数時間もすると仕事も終わり納品日にはどうにか間に合った。
納品後は各社にしばらく耳の手術で仕事を受注できないという適当な嘘を各社に伝えノートパソコンの電源を落とした
携帯の時刻を見ると午後8時を過ぎるところで、液晶画面には5年振りに親以外からの着信履歴が5通ほどのこっていた。
リダイヤルを押すとその携帯番号の持ち主は、昼に聞き覚えのある声と怒りをあらわに怒鳴る。
「おまえ今なにやってんだよ!」
 昼の丁寧な対応が嘘のようだ
「近くのカフェにいるよ。ここコーヒーがうまいね。店の名前は……四角カフェってとこ」
「そうじゃなくて……そっち行くからちょっとまってろ」と彼はあきらめたようで、大きくため息をついた
「あいよー」と僕は適当に返事をしておいた。
5分ほどすると小太りの中年に差し掛かろうとしているような男が現れた。先ほどの電話の声の主吉田陽だ。どことなく大学時代の面影が顔にのこっていた。
僕はこのあいだあったかのように
「おつかれー」
と言いながら手を振ってみる。
彼はものすごい勢いで僕に近づき
「おう久しぶり、それで……今まで何してたんだよお前は連絡もよこさないし」
彼は僕を睨む
「いや……ほらメールしても返ってこなくてさ、なんていうか……その……」
「お前が先にメールアドレス変えたんだろ、俺が以前アドレス変えてお前に送ったらメッセージエラー、電話をしても現在使われていないと言われるだけ。明らかにお前の問題だ」
そういえば、そんなことをしていた時期の記憶があるようなないような……と僕が思い出しているところに彼は僕の目の前に座り、メニューをみてコーヒーを注文していた。

「そっか、まあいいじゃんまた会ったわけだし」と僕が話題を変えてはみたが

「よくねーよほんとに、連絡ぐらいよこせ。」という彼の怒りは収まってはいない様子であった。
「うん、ごめん」
素直に謝ると、彼はため息をついてあきれ返っていた
「……それでいきなりどうした。昔のことまだ気にしてるのか?」
「いや、それは……まあ気にしてるけど、その件じゃない。伊田芽の行方不明だっていう件なんだけど」
「あれ、お前が犯人?」
自然の流れで発せられた言葉ではあったが、冗談だとしてもひどいのではないだろうか
「違うわ」
僕は断固として否定した
「そんなことするくらいならもう一回告白してくるよ」
「お前はかわんねーなー」
さらに陽は呆れる
「どうにかしたいもんだよね、それでさちょっと協力してくれないかな」
「嫌だ、俺は伊田芽のことあんま好きじゃないし、何より仕事ある」
「時間はそんなにとらせないからお願い。
川井さんと安達の連絡先と今住んでる場所教えてくれない?」
彼は少し驚いて何かを察して寂しそうな顔付きになった。たぶん呆れるの向こう側の感情だろう。
「……安達のは知ってるけど、川井さんはわかるか微妙なところだぞ。ってかお前2人と話せるのか?会いづらいってレベルじゃないだろ」

「まあね、確実に嫌われてるしな。でも一番近い二人ではあるから話し聞きたいんだ。」

「……1週間くらい待ってろ、とりあえず安達には話しつけとくから。川井さんのも入手しておく」
陽は安達の連絡先と住所を紙に書き僕に渡してくれた
「ありがとう、吉田今日は俺がおごってあげるよ」
「いやいいよ、お前どうせ無職だろ?」
少し笑みを浮かべながら僕を見下している。やはり体格は変わっても昔とかわらない
「残念。今はフリーでいろいろ仕事してるよ。ほれ名刺。ただしばらくは休業だからそこんとこよろしく。ではまた一週間後に」僕は名刺を吉田に渡しお会計をすませ、急いで伊田芽の実家がある桐生市に向かった。

なくなる日

なくなる日

引きこもり生活を5年間続けている狭山蒼生(さやまあおい)は 生涯で一人だけ好意をよせることができた女性、伊田芽麻友(いたがまゆ)が現在行方不明になっていることを警察官の志村という男から知らされる。 その事実を知った狭山蒼生は、伊田芽麻友を見つけるために外の世界へ踏み出す。

  • 小説
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  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-10

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