『力を合わせて』

前作を読んでくれた方、開いてくれた方、ありがとうごいます。

今回は主要キャラ三人で挑戦してみました。

『力を合わせて』


「ヒロシ。また失敗したの」
 アヤに笑われてムッとした。アヤは俺たち幼馴染のなかで一番優秀な魔法使いだ。でも、それは

俺たちのクラスではどんぐりの背比べにすぎない。俺たちよりちょっと出来るだけなのだ。
 アヤはまた小さな火のかたまりを作り出す。火のかたまりと言っても小指の先くらいで、自慢さ

れても困る。なら俺だって、
「アヤだってこれは出来ないじゃん」
 集中して指の先に電気のかたまりを作り出した。
「ふぅー」
「「あっ」」
 俺たちの魔法がかき消された。
 ミミだ。
 ミミもまた指の先に小さな水のかたまりを作り出しいていた。
「喧嘩、だめ」
 なら消すなよ。
 俺たちは属性ごとに得意分野が違うようだった。
 普通の人は一通りできてくるらしい。この年齢になってもこれだと、将来が不安になってくる。
 おちこぼれ、というやつだ。
 成績のふるわない俺たちは、いつのまにか特別学級に移されていたのだった。
「先生、来ないね」
 さっきから一時間以上待ってる。でも、誰も来る様子がない。もしかしたら休校かもしれない。
 ガタ
 先生の机あたりで音がした。
 誰もいない。
「あっ見て」
 机には休校の案内が届いていた。
「あーあ、時間の無駄しちゃった」
 アヤは俺の机にドカッと座った。
 アヤのポニーテールが顔に当たる。
 うっとおしい。
 抗議の声をあげようとすると、横から引っ張られた。ミミだ。
 ミミは指を指している。
 ミミの指先には、ボロボロになった紙が落ちていた。
 あれ、あんな物あったっけ?
「あれ、なんだろ」
「どーしたのミミ、ヒロシが」
 アヤも紙が気になって、言葉を途中で止めた。
「なに、あれ」
 俺たち三人は、恐る恐るそのボロボロの紙に近づいた。
 いや、紙じゃない。これは羊皮紙というやつだ。なんでこの教室に?
 ボロボロと端が崩れかけていて、強くひっぱったらすぐにバラバラになりそうだ。
 慎重に手にとって、中身を確かめる。
 地図が描いてあった。これは学校の裏手にあるやつだ。
 怪しい。みるからに怪しい。
 裏手には森がある。その森は普段から近づくなと言われていた。
 そんなところに、×印があった。森をある程度歩いたところだ。そんなに深くない。
 これは、宝ものというより、なにかの秘密かもしれない。
「危険、かも」
 ミミは不安そうに言った。
「これは怪しいわ」
 アヤは眉間に皺を寄せて考えている。
「なにか隠しているのかも」
 この教室の片隅あった。それが風でも吹いて、床に落ちたのだろうか。
 先生は、どこにいるのだろう。
「ねえ、探しに行ってみない?」
 アヤは×印に指差していった。
「私たちが協力すれば、絶対、なんとかなるわよ!」
「でも、裏手には近づけない」
 ミミは反論した。
「いいえ、それもなんとかなるはず。ヒロシ、あんたも行くわよね!」
「ああ、行くよ」
 ミミは不安そうだが、いきたそうだった。
 それに、三人力を合わせれば、なんとかなるはずである。あの森は、深く行かなければモンスタ

ーなど居ないはずだ。
「よし、行こうか。休校にした先生が悪いんだし」
「出発」
「しゅっぱーつ!」
 三人で手を重ね合わせた。
 すぐに教室前を確認し、出発する。
 今はまだ授業中のはずだ。慎重に慎重に行けば見つからないはずだ。
 校門を抜けて裏口に辿るが誰もいない。
「すんなり行けたわね」
 俺たち三人は、裏口をすぐ出た傍のコンテナに隠れていた。
 そこから森の入口を見ると、教師が一人立っている。
「先生、邪魔」
 ミミはじーっとその先生を見てる。
「どうしたらいいのかしら」
 先生の注意を逸らすことが出来たなら。
「陽動だな。俺たちの魔法は小さいから見つからない。ちょっと遠くで三人の魔法をぶつければ、

そっちに注意が行く。そのうちに行くってのはどうかな」
 俺は悪巧みな顔をしながら言った。
 アヤとミミは興味津々な顔をした。
「私たちがおちこぼれだからって舐めないでよね」
「絶対、成功」
 アヤとミミは闘志を燃やしている。
 もう一度先生の様子を見てみた。
 先生はタバコを吸って、一服しているようだった。
「悪い先生だな」
「悪い、先生」
「よし、行くわよ」
 俺は指に集中する。指の先ほどに、小さい電撃の玉を作った。大きさは小豆ほどだ。
 アヤとミミも小豆ほどの小さい玉を作っていた。
「いっせいに投げるわよ」
 先生の様子をしっかり確認する。
「必ず、仕留める」
「いや仕留めちゃだめだろ。……入口からだいぶ離れたあの大きな木を狙うぞ」
「ぶつ、合う」
「せーのっ」
 俺はそれをおもいっきり大木に投げた。
 三つの玉は競うように突き進み、大木に近づく寸前、合体した。
「合体」
 合体した玉は光り輝いた。
 ズドーン
 震度3ぐらいの揺れが響き渡る。
「うわ」
「きゃっ」
 大木がふっとんでいた。
 入口に立っていた先生も仰天して、校舎に入っていた。
「い、いくわよ」
「うん」
 俺たち三人はそのすきに森へ入っていった。
 俺たちの魔法の威力、あんなんだったか?
 教室の机を傷つけることさえ出来なかった魔法が、あんな威力になっていたなんて。
 魔法が合体すると強くなるってだれか先生が言っていたな。それには、同じ意思、力、エネルギ

ーが必要と言っていた気もする。俺たちは、それが出来たんだ。
 俺たちは自然と笑顔になりながら森へ入った。

 森をある程度すすんだところで、休憩にした。
 小川の安全性を確認。水をむさぼるように飲み込む。
「ふぅー疲れた」
「結構、遠い」
 ミミは羊皮紙と周囲を睨めっこしながら今の位置を確認していた。
 アヤはバッグからお菓子を取り出し、三人分に分けている。
 準備が良い。なんか俺たち、良いコンビかもしれん。
 腰をおろして、お菓子に手を出す。
「ミミ、あとどれくらいなの?」
「あと、十分ぐらい。それより、これ」
 ミミが指した羊皮紙の隅に、言葉が書いてある。
「んーなになに、……ぬしが守っている、だと」
「どういうことよ」
「危険、かも」
 気づかなかった。ぬしがいるなんて知らなかった。
「「「……」」」
 俺たちで倒せるだろうか。
「さっきの、合体技」
 ミミが神妙に言った。
「あれならなんとかなるかも」
 アヤは不安そうに顔を向けてくる。
「そうだよ、ね?」
 ミミも確証を得ていないようだ。
 まだ出会ってない敵だ。相手がどんな敵かわからない。
 王宮警護クラスだと俺たちは即死になりかねない。
 ちょっと膝が震えた。
「学校の裏手に危険なレベルのモンスターが居るとは思えない」
「そうよね、うん、そうよ」
 確証はないけどな。まあ、いざとなったら俺たちは逃げれば良いのさ。
「×印が、気になる」
 ミミの言う通りだ。死ぬ恐怖よりも、好奇心が勝っていた。
 お菓子を食べ終え、俺たちは立ち上がった。
「行こう、絶対に」
「うん」
 ×印を目指して俺たちは歩いた。

 ×印には、トロールと呼ばれる怪物が立っていた。
 それほど大きくはない。しかし、落ちこぼれの魔法使いである俺たちには強敵だった。
「ここから一発であてるわよ」
「一発、必中」
 トロールの後ろには石の棺があった。そこになにかあるに違いないようだ。
「あそこに、宝ものがあるはず」
「宝石、宝石」
「こらお前ら、集中しろ」
 不安そうだった二人が、目をキラキラさせていた。
「行くわよ、ヒロシ」
「ヒロシ、はやく」
「せーのっ」
 いっせいに魔法の玉を投げる。
 三つの魔法の玉はぐんぐん近づきあい、最後に合体した。
「よっしゃ」
 トロールはそれに気づき、身構える。
 行け!
「あっ」
 しかしぶつかる寸前、一つの玉は分裂し、跡形もなく見えなくなってしまった。
 トロールは強烈な叫び声をあげて、こちらに向かってくる。
「に、逃げるぞ!」
「うん」
 俺たちはいっせいに逃げた。トロールは結構足が遅い。逃げられる距離はある。
 バタッ
 後ろで音がした。振り替えると、ミミが倒れていた。
「ミミ!」
 俺たちはミミに駆け寄った。
 トロールが目前に迫ってきた。
「うおおおおおお」
 トロールが目の前にたち、こん棒を持ち上げた。
 俺はそいつに、下から電撃の玉をぶつけた。
 電撃の玉は爆発し、トロールを頭上数メートルに持ち上げる。
 その時、息があった気がした。
 そいつに三つの光の玉が重なっていき、合体してトロールにぶつかった。
 膨大な爆発。
 森の入口の時より、威力が桁違いになっていた。
 爆風で俺たちは地面に伏せられる。
 トロールは跡形もなく、消えた。
「ぐっ」
 風の圧迫で、地面とキスをしていた。
「倒し、た」
 ミミが立ち上がる。
 俺も顔の埃を落として、向き直る。
「やった、わね」
 アヤはゆっくり立ち上がった。
 三人で手を繋いで喜びにあふれる。
「「「ヤッター」」」
 倒した。俺たちが倒したんだ。
 しかも、トロールだ。あの爆発は、試験だって見たことがない。
 中級魔法使いといっても過言ではないはずだ。
 ガッツポーズ。
 その両手にアヤとミミが手を合わせた。
「やった、やった」
「あんな小さな玉でも威力を出せるのね」
 アヤは試しにやってみた。
 木が吹っ飛んだ。ミミもやってみた。同様だった。
「これでもう、馬鹿にされない」
「落ちこぼれ、卒業」
 俺たちは抱き合う。
「石の棺、見てみよう」
 それが本来の目的だ。興味は薄れかけていたが、アヤとミミがせかすので、石の棺を開けていた


 そこには、ネックレスや指輪など、大量の宝石があった。
「うわ、すごーい」
「綺麗、綺麗」
 ほんとに宝石があった。
 でも、よく見ると、名前が有って。
「あ、これ。先生のだわ」
「これ、美術館で見たな」
「侯爵、夫人」
 どうやら盗まれたものらしい。
 それじゃあ仕方ない。ちょっと残念だが、それらをバッグに入れて持ち主に返すことにした。
「これでおっけーね」
 俺たちは協力して石の棺を締め切った。
 それからは急いで帰る。もうあたりは夕方だからだ。
 夜の森は危険である。
「また、こういうことが出来たらいいね」
「うん。賛成」
「賛成だな」
 俺たち三人は自信に満ちあふれていた。
 また、こうする機会があったら良いと思う。

 そのあと先生にこっぴどく叱られた。でもすぐに笑顔になって、校長先生に褒められた。
 表彰も受けた。
 なんでも、あそこは盗賊たちの予備の隠し金庫らしい。
 そのあと、盗賊も摘発された。
 なんであんな羊皮紙が学校にあったかというと、盗賊のうち一人学校に忍び込んだ奴が落とした

らしい。
 トロールは警備のために召喚したらしかった。
 俺たちは今、三人でコンビを組んでる。魔物討伐で大活躍している。
 あれから一緒だ。そしてずっと一緒だと思う。
 これからもっと有名になると思う。落ちこぼれじゃない。
 三人いれば、敵などなかった。                     END

『力を合わせて』

ちょっとハーレム入ってるかも。

今回は5000字超えなかった。
でも、前よりは動きがあるかな。
しばらくは四千から六千あたりをうろうろするかも。
目指せ一万!
読んでくれた方、開いてくれた方、ありがとうございます。

『力を合わせて』

落ちこぼれの話です。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-09

CC BY
原著作者の表示の条件で、作品の改変や二次創作などの自由な利用を許可します。

CC BY