『運命と知って...』第一章:Primula

『運命と知って...』第一章:Primula

―――あらすじ。

小暮坂町。斎宮駿は平凡な高校3年生だった。
だが、彼には過去ある組織によって14歳だった妹を殺されていた。
その組織とは超能力者(サイキック)と呼ばれる団体
見かけは人とは変わらないのに超能力を持っている5人
斎宮駿は超能力者に復讐する為、彼らを探していて…。


第一章:Primula 1話「突然」


この世の中は誰にとっても不都合極まりないもの。
幸せ、恋。 そんなものはただの理屈にすぎませんからね。
誰もがずっと幸せとは限らない。
そうですね、それは例えば…。
“大切な者を亡くした時”とか、ですかね


小暮坂町。

生まれも育ちも俺はこの町で育った。


「…いや、俺達。か?燈」


俺には2つ下の妹がいた。だが14歳で妹は殺された

最後さえ見届けることが出来ず、燈は死した。

俺が拝んでいる墓にさえ、骨はない。いや正確には遺体が発見されなかった。

警察は殺害されたと思わしき場所の出血量で死んでいる事は確かと決めた。

その場には俺もいた。あれじゃ、確かに即死だ。

DNA鑑定の結果も燈だと分かった。謎なのは…


「どこ行ったんだ?燈…」


遺体の行方だった。


「駿。…お前、また遅刻すんぞ?」


「兄さん…。どうも」


右手に桶に柄杓、左手に花を抱えた男性が立っていた。

その顔は昨日見たばかりの顔だった


「燈は元気か?」


「ふざけないでください。この下に燈はいませんよ」


「…はは。悪い」


彼は俺の従兄(いとこ)の霧ヶ暮さん。頼りになって早くに両親を亡くした俺達、兄妹はよく遊んでもらっていた。

兄さんは燈に良くしてくれた。その分、亡くなったと伝え、知った時のショックは相当受けていたのを俺は覚えている。

こんな冗談を言っていられるはずがない。燈が死んでから2年が経過しても心の傷はそう癒える筈もない。

だから俺は「“燈は元気か?”」という言葉は兄さんの願望なんだと勝手に思い込むことにした

「(にしても俺、そんなに酷い顔してたか…?)」

兄さんは俺が暗い顔してると昔から、きまって冗談を言い笑わそうとする。きっと今も、そうなんだ


「生きていれば16歳。高校生か、駿と一緒だな」



『駿兄!後2年でまた一緒に学校通えるよ!』



そうだな。燈…………

“斎宮家”と彫られている文字を悔しそうな顔で見ている兄さんの横顔 駄目なんだ、まだ。 こんな祈ったって燈は還らない。

そんなことは分かりきったことたけど。


「駿、お前 マジで学校遅れんぞ。」


「あ…… そうですね」


苦笑いしながら兄さんは俺に言った

時刻は8時をさしていた。 後30分と言った所か


「そうですね、では。俺はこれで…」


「あぁ、行ってらっしゃい」


「はい。行ってきます」


踵を返し、俺は学校へ向かった。

今年から燈も通うはずだった私立高校



『やっぱり駿兄の高校、制服可愛いよねー…。私も絶対、通うもんね』



やっぱり世界なんて残酷だ。俺をこんな不幸に陥れたって回り続けまた明日を迎える。もう散々だ。


「はぁっはぁっ、はぁ、はぁはぁッ!」


俺だって好きで生きてるわけじゃない。でも死にたいとは前ほど思わなくなった。

多分それはまだ燈が生きてるんじゃないかと、そんな事を考えているのだろうか…。


「はぁ…はぁはぁっ、はぁっ!ってうわぁぁぁぁぁ!?」


「…?!」


急いでいる息切れの声に振り返ると何かとぶつかった。


「いってぇ…」


「あぁぁ…。お、お兄さん……ごめんね?」


手を合わせて謝ってくるその姿に俺は反射的に


「あ、あぁ。俺は大丈夫…」


と答えた。

仮装パーティー中なのか真っ白な衣服を纏ったちびっ子は良かった、と息をついた



『今日は霧ヶ暮さんの誕生日だから…!駿兄も…はい!仮装、してね!!』



懐かしいな仮装パーティー……


「じゃあ、申し訳ないけど…、俺はこれで―――」


「おい、お前。」


「え…?」


何で呼び止めた俺は!!


「急いでんなら悪いけど、その格好よ 仮装パーティーだろ?楽しいよな、俺もやったよ…。」


俺、何でこんなちびっ子に昔話してんだ。急に恥ずかしくなってきたわ…


「お兄さん、格好って、これのこと?」


と、言いながら自分の服をさしている。それ以外何があんだよ。


「…私服だけど?」


は?


「出かける時は私服着るでしょ?…お兄さん、何言ってるの?」


え、待て待て。 異世界の住人みたいな格好してるやつに言われたくないんだが…


「はっ!まさか、さっきぶつかった衝撃で…おかしくなったのか!?嘘だろ!?」


「いや、待て。それは俺の台詞だ」


「へ?」


相手は子供だ。そうムキになるな、俺。


「まぁ、なんだ。そんな格好でウロウロすんな。補導されんぞ」


「えー」


えー。じゃねぇよ!


「あ、後。俺、急いでないぜ?」


今更だな…。なんだか付き合いにくいな、コイツ


「お前、この辺の子供か?」


と言った直後に腹に痛みが走った


「ったぁ!!」


ちびっ子の蹴りが急所をついていた


「俺は子供じゃない!160cmあるんだぜ?」


身長で年齢は決まるもんじゃねぇし… 痛ぇし


「あ、そいや。お兄さん、名前は?」


「はぁ…?」


「いや。聞くの忘れてたなーっと」


いやいや、普通聞かねぇから


「斎宮…駿。」


「ふーん。俺はリシュアン!よろしくな!」


「リシュ…?外国の人か?」


「あ、違う違う!俺はちゃんとした日本人だぜ?ジャパニーズ!!!」


ジャパニーズって言ってる時点で疑わしいんだが…


「じゃあ、変わった名前だな」


とりあえず、今はとやかく聞きたくねぇし、この大暴れ少年と別れたいからな…


「……そーだな。うん、この時代ではね」


「は?どういう事だ」


「俺は“今”未来から来たんだ」


急に何、言い出してるんだ…?コイツ

未来から来た? 俺をおちょくってんのか?


「…悪いが、俺はお遊びに付き合ってるほど暇じゃない」


「えぇ!?んん…、嘘つくのは嫌だからつかないんだけど」


「んなら、証拠でも――、なぁ、おい!未来に俺に…!妹はいるか!? 斎宮燈は生きてるか?」


「えー…」


リシュアンは嫌そうな顔をした


「俺、駿は今日 初めて会ったし…知らないよ」


「…あ、悪い」


そうだった、俺いまめっちゃ恥ずかしい。んだ、これ。

さっきまでの冷静な俺どこ行ったんだ、っあー。


「ねぇ、駿。俺が未来から来た事は信じてくれる?くれない?」


「…あぁ、信じるよ」


「ありがとっ!…じゃあ、またいつか会おうな!」


「え、あ。あぁ」


手をブンブン大きく振るとリシュアンは去っていった。

おかしなやつもいるもんだな…。と思いながらさっきまでの会話を思い出した。


「“俺は今 未来から来たんだ”」


そんな能力があったら良いだろうな。 俺だったら燈が死ぬ前の時間に戻って、一緒にいてやるさ。

それで燈が死なずに済むんなら


「あ、やっべ。学校…」


時刻は8時31分 完全に遅刻だ ならもういいかと、ゆっくりと通学路を歩いた。

リシュアンが俺とは逆方面の先で俺を見ていた事に気付かず…



結局、高校についたのは56分頃 ホームルーム中だった

授業に間に合ったからいいもの、今度からは反省文を書かせると担任に怒鳴り散らされた後

教室に入った。


「駿、おっせーよ!」


「今日はお前にニュースがあんだよ!」


「…到着早々、騒ぐなよ。小学生か」


「そんなこと言ってられなくなるぞ…!ほれ!」


クラスメイトの友人が開いて見せた新聞には目を疑うような内容が大きく取り上げられたいた。


「……死体を、残さずに。 殺害が………多発…?」


一瞬にして、冷や汗が首をつたった


どういう事だ…


「しかも、これは最近の話じゃないらしい… 事件が起こり始めたのは………」


「2年前」



その日の授業は思い出せない程、空っぽだった

あの後、言われた新聞の追記…


「“殺害を繰り返しているグループの一人の名は特定出来てるらしい…、そう書いてあるね”」


「“名前は?”」


「“天王寺、ハル…”」


「“あ!その名前聞いたことあるわ、確か天王寺ハルって人 この世の理を変える団体組織……”」


「超能力者{サイキック}……」の一員だって」


警察が放置していたせいで情報量も少ない、知恵も少ない。

だから確定は出来ない……だが、こんな条件が一致した殺害事件があるか?


「超能力者、って…能力者たちのこと?」


聞き覚えのあった声が頭上から聞こえた。静寂の中聞こえた為か多少驚いた


「………なんだ、お前か。未来人 んなところに居たら落んぞ」


「リシュアン、だって自己紹介しなかったっけ」


初めに会った時より冷静で静かなのが逆に怖いな…

そんなことを考えているとリシュアンは外壁から地面へ綺麗に降りた。

「超能力者、がどうしたの?」


リシュアンの口からは意外な言葉が出された。

超能力者の話、聞いてたのか… ってか

「お前、超能力者知ってんのか」


「未来にも超能力者はいるからね。」


そうなのか…


「さっき知ったんだ俺の妹は超能力者に殺されたかも知れない…いや。殺されたんだ、このまま黙ってろってのか?」


一瞬、リシュアンの表情が動揺を見せたが、気のせいなのか今は冷静なリシュアンだ


「超能力者は人を殺すような団体じゃないぜ」


「人なんて理不尽だ。何をするか分かったもんじゃねぇ」


リシュアンの顔が明らかに最初に会った時とは違く暗い顔していた。 本当のこいつはこっちか


「家族を殺されて黙ってられるかよ…」


「……家族か」


暫くの沈黙


「駿。君は…超能力者をどうしたいの?」


改めて聞かれると戸惑いが俺の中に出ていた。

なぜ迷ってる俺は…答えは決まってんだろ


「…燈と同じ報いを受けさせる。俺の手で」


「死す」


リシュアンは俺が言った後、即答で言い放った。


「それじゃあ、超能力者がやってることと同じだな」


「……」


「駿…、俺は―――」


「あ、あのっ」


リシュアンの言葉とぶつかって女の声が被さった


「…誰?」


「す、すみません。あの、お二人が超能力者のお話をなさっていたので………部外者がすみません」


控えめなのか少女は目線を合わさずに言った


「大丈夫だぜ!お姉さん 俺達も部外者みたいなものだから」


リシュアン…、お前の言うことは正しいが少し辛いぞ


「そうでしたか…! あの、超能力者をご存知なのですか?」


「いや、今からそいつらを探しに行くとこだ。顔も知らんが」


そうだ、顔も知らずにどう探すか……


「よ、よろしければなのですが。 私も一緒に超能力者探しに行かせて頂けないでしょうか?」


「え?」


リシュアンは驚きの声を漏らした


「会って確認したい人がいるんです」


「……いいぜ。構わない」


俺が承諾した時には少女は嬉しそうな顔をした


「ありがとうございます!ふつつかものですがよろしくお願いします」


「…リシュアン。」


「ん?」


明るいリシュアンがこちらに向き直った


「乗り合わせた船だ、お前も行くか?」


リシュアンは躊躇った後に


「…駿!お姉さん!よろしくね!」


と笑ってみせた。

これから俺達は復讐を始める。






――とある地下



「何も知りはしないカラスは何を目指す……のか」


「あら、どうかなさいまして?」


「いいや。楽しい物語が始まる予感がしてな」


「それは、良いや!ボクは退屈しているからちょうどいい…」


「ねぇっ!どんな物語かしら!予言は当たるって言うもの!楽しみだわ!」


「…そうだな。例えば 復讐劇 とか」




-1話「突然」 end-

『運命と知って...』第一章:Primula


因みにタイトルの読み方は『さだめとしって...』です

これからよろしくおねがいします。
Twitter:@Arcus_Tokoname

『運命と知って...』第一章:Primula

1話「突然」 登場人物 斎宮 駿(いつき しゅん)/リシュアン(Lucien)/霧ヶ暮(きりがくれ) クラスメイト 男2人-女2人 末尾の声 4人

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-07

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND