雷さま

 昨日の雷雨で雷様が落ちてきたというので、行ってみた。
場所は小石川の神社。神木の大きな杉に落ちたらしい。
わいわいと見物人が多くいて、遠巻きに雷様を囲んでいる。
 雷様は悠然とあぐらをかいている。目はつむっているが大した威厳だ。風体は裸で赤褐色。あご髭がイナズマのようで、ザンバラ髪の頭から角がぐいっと生えている。口元に牙は見えない。腰にふんどしもない。
 立派なもんだねえ。と女たちが口々に言い。たしかに立派だと私も思った。
何かをする為に来たのかもしれない、と年配の男がいうので、なるほど、神社に用でもあって、はるか天から落ちてきたのか、と私も思った。
 剽軽者が雷様に近づいて話しかけてみたが、微動だにせず、調子に乗って、からかうような真似をしだすと、剽軽者は、いきなり卒倒して倒れた。剽軽者の家族や友人が雷様の側から引きづるようにして運びだすと、すでに絶命している。やはり恐ろしいものだ。
 その後も、近づこうとした者ことごとくが死んで。見物人もいなくなり、拝むものもおらず。恐ろしさで引越す者などもおり。遠巻きにして見ているほか無いなかで、雷様はウンともスンとも言わぬまま、何年も何年も座り続けて石像のようになってしまった。
 やがて大きな戦があって、私も死んでしまい。神社も朽ちて、近づく者もいなくなり、雷様の周囲には枯れ葉や泥が重なり合って、草が茂り、小さな山のような案配になり、そこに木が生え、栄養が良いのか、ずいずい大きくなって、百年もたつと、皆がその木を神木と呼んでいた。

 このようにして生えた木が日本には何十本もあると、物知りの神様が教えてくれた。
 ついでに言えば、本当の雷様ではないそうで、強いて言えば侵略者なのだそうだ。

雷さま

雷さま

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-16

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