ねがいごと


 わたしはチエミ。
 かわいい服を着せてもらって、いっぱいお友達もいて、それなりに幸せに暮らしているけれど、一つだけ、楽しくないことがある。
それは、変な神様が時々わたしたちのところへやって来ること。
 今日も、のし、のし、と足音が近づいてきて、
「ナオヤ神だぞー」
 と言いながら神様はあらわれた。
「さあ、ねがいごとを三つ言いなさーい」
 いつものようにそう言って、神様はどっしーんと音を立てて座る。
「私は幸せなのでねがいごとはありません」
 なんて言ったら、ひどい目にあわされる。ちょっと前に、ヒトミちゃんが、大きな湖にほうりこまれた。
「はやく言いなさーい」
「……えっと、赤い靴下がほしいです」
「うむ。赤い靴下か。では……今はいてる白い靴下をぬぎなさい。わたしが赤く染めてやろう」
「それはいやです!」
「だめだ! あまっている靴下はないから、ぬぎなさーい!」
「いやー!」
「こら、待てーい! 神様の言うことがきけんのかー!」
 必死に逃げたけど、やっぱりつかまって、ぬがされた。
「はい、次のねがいごとを言いなさーい」
「……じゃあ……ウサギみたいなかわいい尻尾がほしいです」
「尻尾か。尻尾な……ちょっと待っておれ」
 神様は立ち上がって、どこかへ行ってしまった。
 待ち疲れてうとうとしているところへ、やっと帰って来た。
「ウサギの尻尾は品切れじゃ。豚の尻尾でがまんしなさい」
 そう言って神様はにぎっていた手を開いた。そこには、すぐ近くの牧場にいて私を時々背中に乗せてくれるブタさんの尻尾が!
「あー! 勝手にちぎったな!」
「神様に向かってなんという言葉づかい! 無礼ものが! はやく三つめを言え!」
「うう……じゃあ、お味噌汁が飲みたいです!」
「お味噌汁? そんなもんないぞ、まず第一、こいつらのお椀ってないよな。困ったな」
 神様はすっかり神様らしくないしゃべり方になっていた。
 また長い間待たされた。もう逃げてやろうかと思ったころに、やっと足音が近づいて……きそうで、なかなかこない。来た……
「本物の味噌汁じゃー! へっへ、参ったか!」
 神様は、私のお風呂ぐらいのでっかいお椀に、お味噌汁を入れて運んで来たのだ。
「こらー! ナオヤー! お味噌汁なんかどこへ持って行ったんよー!」
 遠い遠いところから、大きな声が聞こえる。ナオヤ神のお母さんが、怒っているのだ。やがて、お母さん神は走ってやって来た。
「何してんのあんた! あ、この尻尾、下に置いてるぬいぐるみの奴やろ! なんで千切ったん! ちょっとこっち来なさい!」
「あいたたた、ごめんなさいごめんなさい」
 ナオヤ神は、お母さん神にひっぱられて、向こうの世界に消えていった。
 もう、そのまま消えてなくなっちゃえ。あほ。

ねがいごと

ねがいごと

設定:1984年

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-08-06

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