最初で最後のデートの思い出


 あれは四年前の秋。
 高校時代の仲間男女七人で久々に会って、ボーリング&カラオケ大会の予定だったのに、みんな急に都合が悪くなって、当日京橋に集まったのはおれと住江の二人だけだった。中止にしようかと言うと、せっかく一日空けてあるのだから京都にでも出掛けよう、と住江はおれを京阪の駅へ引っ張って行った。
 京都に行こうなんて、住江も高校を出て七年も経てばまともなことを言うようになったもんだ、と一瞬感心したが、
「前から気になってるとこあんねん。琵琶湖疎水のインクライン」
「インク、ライン? 何それ」
「何か分からんから見に行くんやん!」
 やっぱりわけが分からんのだった。
 で、琵琶湖疏水記念館へ行ったのだけれども、結局何のことやらよく分からんまま。
 南禅寺の近くだったから、湯どうふの店に入って食べてみたら、住江は
「湯どうふって肉ないから食べた気せえへんわ」
 と文句を言った。
 そして、店を出てから三分ぐらいでトイレに行きたいと言い出して、どうしようもなく、拝観料を払ってなんやら寺に入らされた。トイレ使用代高過ぎ。
 その後は哲学の道をひたすらしりとりしながら歩いて、銀閣寺を見て、
「なんかはりぼてみたい」
 という住江のばち当たりな感想を聞いただけですぐ退散、バスで三条まで戻った。
 鴨川のほとりでベンチに座った。疲れて溜息をつくおれをよそに、じゃじゃーん! とか何とか言いながら、住江はリュックから水筒とチップスターとアポロチョコレートを出して広げた。この歳になって喫茶店にも入らずにお菓子持参かよ、とつっこむ気力もなく、おれは黙ってお菓子をつまんだ。少し離れたところでいちゃつく高校生カップル×2を見て、
「いやー、青春やなあー、ははは」
 と他人事のように笑っていた……あの住江が、なんと結婚するらしい。お相手との初デートは“下水道科学館”だと言っていた。良かったなあ、趣味の合う人が居て。
 おれも早く彼女を作ろう。可愛くてごく普通の彼女を。

最初で最後のデートの思い出

最初で最後のデートの思い出

設定:2005年

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-08-05

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