ある日の会議


 私はカフェを経営しているのだが、最近非常に苦しくなってきた。原因は二つ考えられる。
 ここ二年くらい、売上が徐々に落ちてきているのがまず一つ。
 大学に行きながら手伝ってくれていた妹が忙しくなって来れなくなったので、代わりにアルバイトを雇ったのだが、一人では間に合わず二人にしたのが、二つめ。
 いや、原因はきっとこの二人のバイトの人間性(?)にもある。注文の聞き間違いに計算間違いばかりするA子。おっちょこちょいで皿やカップを割りまくりのB美。こんな店にはもう来たくないな、とお客に思われても仕方がない。
 そんな二人に喝を入れるべく、経営の抜本的構造改革をするぞ! と呼び掛け、閉店後に会議を開いてみたのだ。
 最近売上が思わしくない、と私が話し始めたところ、A子が「はーい」と手を上げ、勝手に喋り出した。
「大体、せっかく女の子がやってる店やのに、かわいくないから駄目なんですよー」
 B美も便乗して発言する。
「そうそう、あのコーヒーカップのピカソみたいな絵なんか、凄い怖いですし」
「どこがピカソやねん! あれは棟方志功や! あのカップはな、昔々のコーヒーの景品でな、うちの父親がせっせとコレクションして蔵に眠らしとった奴を発掘して」
 と私が語っているのに、B美が遮る。
「それと、あのレインボーブリッジかなんかの写真もちょっとねー」
「あれはニューヨークのブルックリンブリッジや! そこの**社の社長が撮りはった奴やの! そんな常連さんからの寄贈のを外す訳にはいかんやろな」
 ……暫し沈黙。それを破ったのはA子だった。
「ねえ、こんなとこでぎゃーぎゃー言っててもしょうがないですよ、ここは一つ、リフレッシュっていうことで、みんなで温泉でも行って、露天風呂に浸かりながらゆっくり語った方が良くないですかぁ?」
「賛成ー! それいい!」
 B美が手を叩く。A子も一緒になって手を叩く。私は一人、大きな溜息をつくのだった。

ある日の会議

ある日の会議

設定:2006年

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-08-02

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