菜瑠の甘い生活

二十三世紀の未来。人類は生活に余裕持ち宇宙へ再び進出した。
宇宙エレベーターが世界の各地で建設している時代。


戦争、貧困も犯罪もない時代、百年も平和な時代が続き潜在的に眠っている格闘心を呼び起こすローラーボールという格闘技に大人たちは夢中になっている。

そして女の子たちは、アイドルになることが社会で最も高い地位にいられる。

貧困が撲滅した社会。貧困がないから差別も犯罪もない。ひつつの企業、アキバという巨大企業による共産主義社会になった。平和が長く続きすぎた。


ふたりの女の子が転入した。
柏原瑠奈と石岡ひとみ。

彼女たちは社会派タレントを目指す。彼女たちは平和ボケした大人たちに批判的。でも、休日の学院活動に参加しない。


彼女たちに翻弄される佐々木美沙、お嬢様の大沢多恵。

やる気ない三人の女子中学生と、アイドルに熱い熱心な三人の女の子が対立する物語。

やさしい雰囲気の女学校・日曜日の午後

 日曜日、アイドルに熱い彼女たちは、朝からダンスに歌のレッスンに熱心に受けている。そして英会話の勉強もする。そのあと生徒会の話し合いがある。でも、あたしはアイドルなんかになる気がない。日曜日は浪費して、親から送られたおこずかいは、すぐに洋服になる。

「ねえ、ねえ、あたし、新しい洋服を買ってきたの。夏はエアコンで身体が涼しくなるし、冬は温かい洋服。それにコンピューターが内蔵しているの」
「そうなの。いいデザインだわ」
 佐々木美沙が褒めた。
「でしょう。とても高かったの」
「で、ショッピングにローラースケート、日曜日は何をするのも自由だし」
「そうよ。日曜日くらい。のんびりしないと」

 あたしは午前中は趣味のローラースケートで遊び、お昼を食べるのを忘れてショッピングをする。私は、みんなと一緒に行動するのが好きじゃない。みんなは昼食会を毎週、日曜日に行う。育ち盛りだからよく食べる。

「瑠菜さん。この洋服、どこのメーカーなの。やはりアキバ三○三というメーカー。東京第三百工場で作ったもの」
 味気ないような企業名だ。北半球は裕福な共産主義社会になった。


 善良な独裁者、政治家が支配する遠い未来。二十三世紀の社会である。

 約百万人もの人たちが、宇宙に夢見て太陽系への冒険をしている。そんな遠い未来。私の服は超ハイテク。色も自由に変えられるし、周囲の温度を気にしないで済む。

 人類は二十一世紀の末に経済危機を脱し、長いあいだ平和な時代を過ごしたが、中東全域とアフリカ大陸、中央アジア、中国の奥地などは、まだ貧困と飢餓がある。当然、治安は悪いし因習も根強く残っている。人類は極端な格差、二極化状態が続いている。


 先進国である日本列島でも、不道徳な遊びを新たに考え出し、それが社会問題となっている。科学が進歩すれば、新しい問題が起きる。


 関東女学院は、成績優秀、スタイルも容姿も良い女の子だけが集まる女子校。六年間、アイドルになるために訓練を受けるが、あたしはローラースケートが好き。都内ではローラーボールという格闘技が流行っており、かなりハードである。

 気性が激しいたくましい男性たちが、ローラーボールというゲームをする。大ケガもするだろう。

 あたしは特待生として入学金免除、日曜日の寮活動、学院の生徒会などに一切参加しない。社会問題とローラースケート、それにしか関心がない。

親友ができる。田中美優という女の子

 日曜日の午後、つい新しい洋服を買うと、みんなに自慢したくなる。お金持ちの大沢多恵は、私に文句言う。
「ねえ、あなたやる気あるの。何のために、この女学院に入学したの。遊びに来ているの」
「あたしの実力で、この女学院に転入して・・・」
 その時、女学院のモデル・ダンス科の担任の先生である南先生が来た。
 むしろ南先生もファション談義で花をさかせる。南先生は休日が週に二日ある。休日でも、寮に遊びに来る。そして、いつも、あたしの味方になる。
「柏原さん。かわいいらしい服装をしていて。いいわね。私、もう四十を過ぎているから、大人の女性としてどんな服装がいいのか、迷うことがある。で、数十年前から超ハイテクの洋服が当たり前でしょう。常時、私たちはネットに接続しているから」
「ねえ先生、あたし、背が低すぎて、まだ十三歳だから許してもらって、この女学院に入学したの。身長が百四十センチしかなくて」
「まだ十三歳だから成長期だわ。必ず背が伸びるから大丈夫よ」
「でも、あたし、ほとんど食べ物を受け付けない。あたし、他の子たちのように日曜日の昼食会にでたくないの」
「気にしないで。あなたは、あなた」
 あたしは、そのままローラースケート場に向かう。

「南先生、なんで彼女に甘いの」
「特待生で転入したし、それに作詞など特別な才能があるのよ」
「私の家は、お金がいくらでもあるのよ。だからファッションにお金がかけられるなら、お金に糸目を付けません」
「大沢さん。無駄使いしていけないわ」
「じゃあ、先生、あの柏原さんは、どうなの。庶民なのよ。お金使いすぎ」
「それと、これは別。大沢さん、お金持ちでも、ちゃんと貯金して。無駄使いしないで」
「でも、私、アイドル活動に熱い思いを持っているの。そんな適当な子の言いなりになるなんて」
「大沢さん。絶対に柏原さんのことを悪く言わないで。もし、彼女を傷つけることを言ったら」
 優しい南先生も厳しい目つきで、大沢多恵をみつめた。
「はい、柏原さんには何も批判しません」

 でも、多恵は悔しい気持ちを感じた。

 寮の休憩室、コーヒーの匂いが心地よい。お菓子もあるが、あたしだけがボリボリ食べる。
「ねえ、私、田中美優というけど、あなたの名前は、確か・・・」
「あたしの名前は、柏原瑠菜。よろしく」
「よろしく」
「あなたも、日曜日は、部活に出ないで、のんびり過ごす方でしょう」
「そうだけど」
「ねえ、あたしと一緒にローラースケートしない」
「だって危ないし」
「大丈夫よ。今は絶対にケガしないようにできているから」
「ヘルメットがあると髪が潰れるし」
「大丈夫。今は必要なくなったから」
「そうなの」
「で、田中さん。なんと呼べばいいの」
「美優と呼んで。私、ほんとうは、この女学院に入りたくなかった。美術の勉強をしたかったの」
「そうなの。なんで」
「親が強引に勧めて。アイドルにさえなれば人生、バラ色になるというから」
「アイドルになってダンスできるのは、せいぜい十代から二十代前半まででしょう。それ以降、ボーカリストとして続けるには作詞作曲、それに楽器を演奏する才能がないと。あたし、アイドルに興味ないの」
「同じ。ねえ、私たち気が合いそう。みんな燃えているのよ。とっつきにくい雰囲気なのよ」
「そうね。今年の夏休みには宇宙に行くでしょう。なんで、宇宙旅行とアイドルが関係あるの? 宇宙に行けば放射線を全身に浴びる。無重力なんて気持ち悪いし」
「そうね・・・。みんなロマンチストなの。夢ばかり追い続けて」
「あたしはリアリスト。あたしは将来、政治活動して、よりよい社会を作るの」
「そうなの。私は芸術家になりたいの」
「そうなの。あたし、ローラースケートに夢中なの。もしよかったら、私に付き合って」

 あたしは、やっと友達ができた。都内のローラースケート場で、門限ギリギリまで過ごした。

男の格闘・ローラーボールに夢中な私

 金曜日、「花金」と呼ばれる夜。私は学院の放課後の補習と自習活動をサボり、都内にあるローラーボール場に向かう。長いあいだ平和が続いた日本列島、世界はひとつの企業だけが生活のすべてを独占した。そして共産主義社会として貧困がなくなった。

「それでは、これからローラーボールをはじめます。最強チーム・アキバとライバルのトキオとの対戦をします」
 やる気のない私の親友・田中美優もアイドルになるつもりは、さらさらない。そして、彼女は私の話をうなずくだけ。それでも聞いてくれる人がいるだけで幸せ。
「すごい熱気。先進諸国では、貧困も政治的争いもなくなって百年。でも、南北問題だけは解決していない」
「そう。私、社会問題に関心ないわ」
「そうね。女学院生は倫理感が強い女の子ばかりの集まり。みんな優しい子しか入学できない」
「だって、性格が悪いという疑いがあれば、とても寒いカムチャッカ半島で石器時代を体験させられる。そこでも更生のみこみなければ、生涯ボランティアとしてアフリカへ送られる。頻繁に殺人事件も起きるし、食料も水もまともに入らない」
「そうよね。それだけ厳しい規則があれば、二十一世紀のような学園が荒れていたということはありえない。究極のスパルタだわ」
 私は椅子に座りながら、田中美優と話をしている。

「それでは、激戦を開始いたします。なお、かなり激しい戦いですから、選手たちには多額の保険がかけられいます。それでは、スタート」
 あたしたちは立ち上がったが、私は背が低いので見えない。背が高い観客たちに隠れるような形になった。 ローラーボールで激しい戦いが始まっているが、前にいるお客さんは背が高いので見えない。
「美優、席を外して」
「うん」

 あたしたちは、観客が怪我しないために三重になっている金網の前まで走る。前方から試合に参加している選手たちが直に見える。
「こら!そこのお嬢ちゃんたち。ダメでしょう。勝手に観客席から離れないで」
 警備員に注意された。
「ご、ごめんなさい」
 あたしは、瞬間的にしか、実物の選手しかみられない。巨大なスクリーンに迫力の映像が映し出されている。

 あたしは、それでも、トキオチームと戦うアキバチームを応援している。
 明日は土曜日、ネットで見知らぬ人とチャトを朝までしたいが、南先生でも、規則を破らせてくれない。

「すごい熱気。ねえ、あたしも背が高ければいいのに」
「瑠菜、成長期だから大丈夫よ。これから背が伸びるよ」
「あたし百四十センチ。まだ中学一年生だから背が低いのを見逃せてもらったから」
「ねえ、もしかしたらコネがあって入ったの。この学院に」
「いいえ。違うわ。実力で。転入試験に合格できて」
「そうなの。すごいじゃない。ひとり空席ができたからね。規則正しい寮生活に、学院での厳しいレッスン。それじゃあ、夏休み前に、ひとり抜けるわ」
「でも、あたし、議員を目指しているの。社会をもっとよくしたいの」
「そう。あんたって純粋だね」
「そうかな・・・」
「先進国諸国では政治の自由を失ったかわりに貧困がない安定した社会が実現した。北半球は先進国。そこでは貧困による差別も犯罪がない。じゃあ何が足りないの」
「あたし、不道徳な大人が嫌いなの。大人たちが目覚めて欲しいの。開発途上国では、二十一世紀のときよりも状況が悪くなった。そんなの、おかしいよ」


 午後四時から都内のスタジアムでローラーボールの試合があり、けが人もたくさんでた。何人もの選手が救急車に運ばれる。

 サイボーグやロボットではおもしろくない。生身の人間がロボットスーツを使わず自力で戦うから、観客のみんなは熱くなる。

 午後八時、すでに門限が過ぎていた。幸い担任の南先生が夜遅くまで残業していたので、寮長にかわりに謝ってもらう。南先生は寮長からお説教を喰らう。私は、申し訳ない気持ちを感じるが、南先生は、私のことを大事にしてくれる。

門限に遅れ、担任の南先生は寮長に叱られた

「どうする。もうすぐ門限の午後八時」
「瑠菜、最後までローラーボールを見るからよ。それに多くの観客で、駅に戻るまで、とても時間がかかった。電車は超満員」
「そうね。とても長いあいだ、平和な時代が続いたから。みんな潜在的にある闘争心が、あのローラーボールで蘇るのよ」
「そうね。戦争も犯罪もない国、日本列島。犯罪をなくすには厳しい社会規律と貧困の撲滅だから」

 あたしたちは超満員の電車に乗る。二分おきに四両編成の電車が来る。むかしのように十両編成の電車がなくなったのが、二十一世紀中頃、日本列島では、超高齢化によって人口が急激に減った。
 
 団塊ジュニアという人たちが、団塊世代のために長時間働く。当然、医療も当時は充実していないというよりも、医療を受けるお金と時間がない。二十一世紀の中頃、日本人の平均寿命も男性では五十二歳へと落ち込んだ。団塊ジュニア世代の病死が急増する。二十代で働き過ぎで身体を壊して介護を受けるありさま。介護受けられるのはほんの一部。若い人たちは、まともな医療が受けられない。自殺者が年間十八万人へと急増した。団塊世代の平均寿命は百十歳。団塊世代の人たちは百歳でも自転車に乗り回せる。アンチエジチング技術なしで百四十歳まで生きられる人たちがたくさんいた。

 当時、通勤電車は十両編成だけど、車内はガラガラ状態。老朽化した電車が都内を走り回る。

 それから二百年以上たち、平和が長く続きすぎた。日本は幸い数世紀も外国と戦争をしたことがない。日本の人口の三十パーセントが外国人になったとき急激に経済力が伸びた。善良で有能な外国人実業家が海底資源を開発した。資源の輸出で経済が潤った。外国人労働者や外国人起業家によって日本列島の経済が復活した。


 午後八時五十分、西東京にある関東女学院へ向かう。
 スマートフォンで南先生と相談した。
「先生、こんばんわ」
「こんばんわ。どうしたの。こんな遅い時間に」
「あたしたち、門限に遅れて」
「そうなの。私も、残業でおそくなって。でも、もうじき仕事が終わるから」
「でも、寮長さんが厳しい人で」
「まかせて柏原さん。なんとかするから」
「ありがとう」

 午後九時三十分、寮の前に南先生のロボットカー(自動走行ができる電気自動車)が停めてあった。近くには何人かのおまわりさんがいる。異様な雰囲気がする。
「寮長さんに連絡した」
「はい。でも、怒っていますよ。寮長さんが」
「私が責任をとるから。でも、寮長さんは怖い人だし」
「先生、ごめんなさい」
「いいのよ。ねえ、門限なんか廃止できないかしら。治安もいいのに。今夜は黙って寮長から説教を聞くだけで、私が反省文を書く。あなたたちはすぐに寝なさい」
「でも、あたしタブレットで世界中の人とチャトを朝までしたいの」
「そうなの。チャトも楽しいからね。その件も考えないと」
「先生、でも、あたしたちのために」
「いいのよ。いいのよ。気にしないで」


 あたしたちはカードを取り出して、回転式のドアにひとりひとり入る。堅牢な警備システム。この百五十年間、東京市西部で一度も犯罪がおきたことはない。でも、年々、警備システムだけは進化する。警察は限りなく拡大する。

 カードを通すと、パスワード入力、網膜スキャンに指紋認識。声帯認識など徹底的にひとりひとりを機械が確認する。一人ひとりづつが、寮の中に入る。南先生が責任を取る。

「南先生、なんですか。こんな遅い時間まで学院生が外出していて。もう消灯時間が過ぎています。あなた本当に教師なんですか。管理能力を疑いますよ」
 南先生は目を赤くした。あたしは強い罪悪感を感じた。
「すみません」
「すみませんで、すんだら警察はいらない。ねえ、次の月曜日まで学院に反省文を書いてください」
「はい。以後、気をつけます」

 それから、しばらく南先生は寮長からお説教をされた。

 午後十時を過ぎていた。寮の中は消灯で、とても静か。
 美優は、四人部屋に静かに入るところ。
「瑠菜、おやすみ」
「おやすみなさい。明日の午後、一緒に遊びに行きましょう」
「いいわ。嬉しい」

「南先生、ごめんなさい」
「大丈夫よ。遊びたいさかりですからね。柏原さん、寮の今後のこと、私に任せて。夏休みが終われば、もっと楽になるから」
「いいいの。なんだか悪いわ」
 南先生は、あたしに対して優しすぎる。余計に罪悪感を感じる。
 
 あたしはひとり部屋の狭い個室に入る。服を脱ぎパジャマに着替えて、ベットで横になるが、ほとんど眠れない。なんだか南先生に悪いことをしてしまったようで恐縮する。


 土曜日の朝、ほとんど眠れないで眠い。南先生は、あたしのために反省文を書き、昨夜は寮長さんから叱られた。あたしが、寮長さんに強い口調で叱られたほうが、まだ、精神的に楽だったと思う。

日曜日、みんな忙しそうだけど、あたしのために時間を作ってくれる

 あたしは横田国際空港の近くにある拝島駅から短距離リニア新幹線に乗った。あたしはアキバに行った。土曜日に人工知能とネット接続できる新しいハイテクの洋服をいくつも買う。おこずかいなんて、二週間で全部使い切ってしまう。庶民だから、おこずかいなんて無制限にない。アキバは温暖化で半分水没している。海上に多くの高層ビルやデパートが並んでいる。
 
 あたしは、お金持ちのお嬢さんの大沢多恵よりも浪費癖である。

 寮の中にもダンスの練習をするスタジオがある。みんな一生懸命になって、ダンスの練習をする。リズミカルな音楽が流れる。あたしは、昨日買った、あたらしい洋服を着て、みんなに見せた。
「ねえ、見て。あたし新しい洋服を買ったの」
「すばらしい」
 レオタード姿の女学院生たちが、あたしを取り囲む。
「アキバで買ったのでしょう」
「そう」
「このスカートはかわいいわ」
「ありがとう」

 大沢多恵は、その場から出て行った。同じく佐々木美沙も。彼女たちは不愉快そうだった。
「かわいいわね。でも、わたしたち用事があるから」
 なんだか、冷たい雰囲気を感じた。あたしのことを鋭い視線を見つめて、怖かった。彼女たちは、あたしに敵意を持っている。

 だって、アイドルになるなんてバカらしい。それなら音楽の才能を磨いて、本格的なボーカリストを目指すべきだと思う。メッセージ性がある作詞をする。不道徳な大人たちに目覚めて欲しい。長い平和な時代、大人たちは腐っている。

「ねえ、この服、いくらしたの」
「そうね・・・、ネット接続のAIミニスカートが八千円したかな。シャツが五千円。半袖ジャケットが七千円」
「でも、柏原さんいいセンスしているわ」
「だって、ファッションのデーターは、担任の南先生から送ってもらうの」
「そうなの。ねえ、柏原さん。次の日曜日の午後、一緒にショッピングしない」
「いいわ。そのあとお茶しない。えーと、田中美優さんと」
「その子、私と一緒の部屋にいる子なの」
「そうなの。ねえ、友達にならない」
「いいわ。でも、もう少し、ダンスのレッスンをさせて」
 再びダンスのレッスンが始まった。

 長い平和の時代、自分勝手な子がイジメの対象になることなんてありえない。みんな優しすぎる。貧困はない。ストレスが少ない。「火のないところに煙がたたない」ように貧困がない社会には、犯罪もおきない。ストレスが極めて少ないからイジメをする必要がない。また、この関東女学院は倫理観が高い良い子だけしか入学できないから、あたしが何をしてもイジメることをしない。

 あたしが、もし二十一世紀に生きていたら、自己中心的な態度の、あたしは確実にイジメられていた。でも、みんなが優しすぎるから、いじめない。それにトコトン甘えてしまう。

「あら、柏原さん、珍しいわ。ダンススタジオに来ているなんて」
「南先生・・・」
「ねえ、みんながんばりすぎよ。寮の休憩所にいってお茶飲まない。お菓子を買ってきたの」
「ありがとう。先生」
 いつも、あたしの味方をする、南先生は、とても優しい。
「そうね。あたし冷たいお茶のみたくなった。南先生、冷たいお茶は飲みませんか」
「私も喉渇いているから」
 それから、あたし中心に、三時間もファッション談義で花をさかせた。
 南先生は、紺のジャケットに膝丈のスカートを履いている。大人っぽい雰囲気の服装をしている。
 でも、とても四十歳をすぎているとは思えない。南先生は、子供っぽいあどけない表情、とてもかわいい顔している。十代の女の子みたいに見える。あたしたちに紛れてたら先生なのか生徒なのかわからなくなる。
「先生、若さの秘訣は」
「そうね。あなたたちとお友達になることかな・・・」
「先生、照れくさい。ちょっと・・・やめてください」
「何よ・・・。本当のことじゃない。みなさん柏原さんのようにファッションにも気を配ってくださいね」
「はい」
「で、大事なことですが、明日も転入生が入ります。私たちのクラスは二十一人編成です。三人でひと組です。それには意味があります。三人のユニットで助け合うこと。九人でひとつのチーム。このファッション・ダンス科クラスでは、お互いに助け合うと同時に、ライバル意識をもってもらいます。だから九対九で競争します」
「えーと、のこり三人は」
「この三人は、将来、アイドルにならないで、作詞作曲ができるボーカリストになるためです。それに、特待生なのです」
「ということは、柏原さんは・・・」
「そうです。彼女は作詞の才能があります。彼女の作詞はメッセージ性があるのです」
「そうなの」
 あたしは羨望のまなざしを受けた。
「柏原さん。応援するわ」
「ちょっと、恥ずかしいわ。先生、あれほど黙ってと言ったのに」
「でも、みんなが同じ目的だと、個性がなくなるから」
 あたしは、みんなをリードする立場、みんなに良い影響を与える立場。
 でも、大沢多恵というお嬢さんは、あたしに敵意を持っている。

月曜日、転入生が来た・あたしのライバル

 アイドル育成の女学院「関東女学院」では、全寮制で規律が厳しい。当然、夜ふかしも禁じられている。中学生だから容赦しない。一般教養のレベルが高い。偏差値が高い。考える力を育てる思考力訓練もある。勉強もできないとならないし、運動神経も体力も高くないといけない。どの学年でも欠員ができてしまうほど厳しい。

 まだ、六月なのにダンス・ファッション科では、私たちA組に欠員が二人でて、初めは、あたしが転入試験に合格した。特別な才能として作詞ができるし、ある程度、作曲もできる。そして、月曜日、新たにもう一人転入生が入る。

 月曜日の朝、ロングホームルームの時間になった。
「みなさん。今日は新しい友達が来ました。仲良くしてください」
 みんなどんな子が入るのか、たのしみにした。
 ドアがあき、転入生が入った。
「では、自己紹介を」
「私の名前は、石岡ひとみです。よろしく」
 立体的に見えるCGで歓迎された。

 教室の前方にある大型スクリーンに、石岡さんの名前が表示された。
「では、後ろの席、左側から三番目の席があいているでしょう。そこに座ってください」
「はい」
 やや茶色い髪。とても長い髪。校則ではギリギリの長さ。
「石岡さんも、社会問題に関心があるので、柏原さんと気が合うかもしれません。それでは、私たちのクラスのことについて説明いたします」
 南先生は大型スクリーンにクラスのシステムをわかりやすく説明している。
「このクラスは定員は二十一名まで。で、二つのチームがあります。さらに三つのユニットが組まされています。三人の強い結束力が必要です」
「先生。なんで、二十一人ですか」
「それは、みんなの結束を強めるためです。さらに、どちらのチームに入らない三人が必要です。今は柏原さんと田中さんです。今日、転入した石岡さんも、どちらのチームにもユニットにも所属していません」
「では、何の意味があるのですか」
「だから、みんなの結束を強めるためです。二つのチームが互いにライバルとして競争させます。一人だけどんなに優秀でもダメです」
「では、三人で仲良くユニットで活動しないとダメなんですね」
「そうです」
「で、あえて個性が強い子。または、目的意識が異なる子をわざと入れました。でも、決してイジメとか言葉で傷つけることをしないでください」
「はい」
 あたしが、この学院に入ったのは、別にアイドルになるつもりではなかった。他にもアイドルになるために入りたかった子もたくさんいた。
「柏原さん。田中さん、特別扱いはしません。柏原さん、何か言いたいことありますか」
「あたしアイドルが歌う歌詞にメッセージ性がないと思います。あたしは歌で世界を良くしたい。ただ楽しいだけ、みんながダンスするだけでは満足できないのです」
 その時、あたしに敵意をもつお嬢さんの大沢多恵が、あたしの顔をみつめる。
「大沢さん。どうしたのですか」
「いいえ。何もありません。別にメッセージ性がなくてもいいのではないでしょうか。みんながハッピーになれれば、私はそれで十分ですから」
「他に意見は」
 南先生が訪ねた。転入生の石岡ひとみは一言挨拶した。
「先生、みなさん。これからも、よろしくお願いします」
「よろしく」
 クラス全員が言う。

 転入生の石岡ひとみが自分の意見を言う。
「私も、柏原さんの意見に賛成です。みんな平和ボケしています。それに世界を見れば、まだ数世紀も貧困や圧政、因習で苦しんでいる人たちがたくさんいます。それなにに、お金がかかる宇宙開発に夢を見る人たちもいる。アイドルに憧れ、ライブで熱中する女の子たちがたくさんいる。ローラーボールという危ない格闘技を見ることで日頃の憂さ晴らしをしている。私はアイドルで夢を与えるのも大事ですけど、もっとみんな社会に目を向けて欲しいです」
 みんなの拍手があった。

 あたしも自分の意見を主張した。
「あたしも歌で世界を変えたいです。今の大人たちは腐っています。目覚めて欲しいです」
 大金持ちの大沢多恵が、あたしに反論する。
「ねえ、そんな簡単に歌だけで世界が変えられたら、苦労ないわ」
 大沢多恵の意見も正しいかもしれない。あたしは多恵に反論した。
「だから歌で心を清めて欲しいの。大人たちに目覚めて欲しいの。だって歌には力があるから。あたし、みんなでダンスして歌うだけではダメだと思うの。ちゃんとしたメッセージがある歌を歌わないと」
 多恵は興奮して強い口調で言う。
「なんで、あんたはこの学院に入ったの。他にもアイドルになりたい子がいるのに。他の音楽学校に入ればよかったじゃない」
「まあ、まあ。二人とも仲良くしてください」
 担任の南先生は大型スクリーンの表示を変えた。
「こんなこともあると予測しました。意見が異なる人を、わざと入れました。忍耐も必要なんです。自分と違った意見も必要なんです。それで、チームの結束が強くなればいいのです」
「でも、一人だけ優秀でもダメなんですか。一人だけどんなに頑張っても」
「そうです。あくまでも忍耐と協調性が大事です。それから、夏休みに宇宙旅行に行ってもらいます。地上三万五千キロメートルにある静止衛星都市まで往復二週間です。希望者だけ参加してもらいます。なお宇宙には危険もあり、謎の病気も発生しますので」
「先生、宇宙に行くにはどれだけお金がかかるのですか」
「旅費はひとり七百万円です」
「それだけのお金があれば、開発途上国の人たちに」
「それがダメなんですよ」
 南先生はスクリーンで世界経済の実態を説明した。
「そうゆうことで、いくら私たちが善意があっても、途中でマフィアやテロリストに持っていかれるのです。物資を必要としている人には、何もわたらないのです。それでも、そのような地域で貢献したい人がいれば、大歓迎です」
 みんなはざわざわと雑談した。
「静かに。それでは、今後のスケジュールを説明します」

 このクラスは二十一人という中途半端な数字になっている理由がわかった。あたしは、歌で社会を変えようと思う。

忙しい一週間。補習のあと、みんな自主的なレッスンをする

 あたしたちの学院は偏差値が高いので授業が難しい。一日七時限授業。それに補習が一時間。そのあとクラブ活動をする。そうするとあとは夕食を食べてお風呂入って寝るだけ。消灯時間が午後九時。午前四時か五時に起きる。それから室内のシャワーを浴びるか、寮の大浴槽で少しリラックスをする。リラックスする時間がないと気がおかしくなりそうである。

 六月、昼間の時間が長い。午前四時、外は明るい。あたしたちは、とてもラフなタンクトップにショートパンツで寮の休憩室にいる。
「美優、おはよう」
「おはよう、瑠菜」
「ねえ、部活は入らないの」
「部活は義務だから。私、演劇に興味ないから美術部に入っているの。でも午後四時に補習でしょう。大学受験には有利かもしれないけど、アイドルには学校の勉強は関係ないでしょう」
「そう思うわ。あたしもともとアイドルに本気でなる気はない。あたしは有名なアーチストになって世間に対して、あたしの意見を言う。だってマスコミを利用しないと、あたしの考えが伝わらないでしょう。ブログとかSNSの日記では、戯言として伝わらないし」
「そうね、で、部活は」
「軽音部。楽器が上手に使えないと作曲ができないから」
「ねえ、私たち気が合いそうだね」
「うん。あとの十八人、いやあの転入生も・・・アホみたい」

 あたしたちはコーヒーを飲み、それから、個室のシャワーを軽く浴びる。汗を流し新しい下着を着る。そして、制服を着て、食堂に入る。
「美優、どこにいるの」
 田中美優を探したけど彼女の姿がみえない。
 もうじき午前六時になる。午前七時の早朝補習に行く子たちが、早い朝食を急いで食べる。いったい何時間、授業すれば気がすむの。この学院には「ゆとり」が全くない。

あたしは、寮の食堂のイスに座った。
「ねえ、隣にすわっていい」
「いいわ。たしか転入生の石岡さんだね」
「はじめまして。よく私の名前を覚えてくれて」
「だって、校則ギリギリの長い髪。それに少し茶色い髪が印象的で」
 彼女は甲高い声、とても高い声に、少し甘えたような言い方が印象的だった。男性からは、かわいいく思われる。
「ねえ、柏原さん。作詞したものを見せて欲しいわ」
 甘えたような言い方をしている。
「いいわ。学院に行くまで、少し時間があるから」

 美優は四人部屋で生活しているので、同じ部屋の子たちと一緒に行動している。朝、大浴場に行ったらしい。美優の髪が完全に乾いていない。石鹸の匂いがしそうだ。
「で、私、ビックブラザーの政策を支援させて平和を存続させないといけないけど、でも、まだ不幸な人が世界にはたくさんいる。どう思う」
「それは、大人たちが長い平和な時代で、自分たちさえよければいいと思っているじゃない。それに貧困もないから犯罪事件がおきない。平和ボケしているから社会に無関心。昔は猟奇的犯罪が頻繁も起きたけど、それは、たいていは冤罪で捕まった若者が死刑になったあとで気がついた。猟奇殺人はビックブラザーの熱心な支援者の家族が狙われて。真犯人は反体制派の元会社経営者の大金持ちの親族なのよ」
「そうなの。富裕層はいくらでも犯罪ができた時代があったのね。お金さえあれば裁判官や検事を買収させれば凶悪犯罪者は死刑にならなかったのね。本当に怖い時代があったのね」
「でも、世の中、理不尽なことばかり。大金持ちが腐れば、人々も腐る。大人たちも腐る。この世の中は、不道徳なのよ」
「でも、柏原さん。あなたは聖人君主ではないでしょう。時々、間違えていることをするかも知れない。そんな傲慢な気持ちはもたないほうがいいわ」
 あたしはカチンときた。あたしは平和ボケした腐った大人たちと違う。
「そんなことない。あたし腐った大人たちに物を言わせる」
「そうなの。で、あとで作詞した歌詞を見せて」

 この時から、転入生の石岡ひとみに対してライバル心が芽生えた。

七時限目の授業が終わって

 今日の授業が無事終わった。偏差値が高い。つねに満点をとらないとならない。みんな問題を解くのが得意。記憶力も優れている。これから補習に部活。あたしは軽音部に入る。みんながみんなアイドルになろうとは思っていない。中学高校一貫の六年制の全寮制の女学院。転入生が、また入るかもしれない。アイドルにならないで大学に進学する子もたくさんいる。

 あたしは作詞は得意だけど、作曲ができるように、歌が上手になるために軽音部で楽器の演奏の練習をする。午後四時から部活が始まり、六時頃に寮に帰る。
「意外と楽器の演奏は難しい。今は脳を読み取って自動的に作曲する装置もあるけど、作曲は人間がしたほうがメッセージ性がある」
 あたしは寮の喫茶室で、石岡ひとみと話し合う。彼女にとっておきの作詞した歌詞を見せた。
「うーん。私とは全然、感性が違う。大人たちへの反感ばかり。もっと自分をかえりみたら」
 それを聞いて、カチンときた。いったい何様のつもりだ。
「ねえ、もっと謙虚にならないと伝わらないわ。それに、たかが十二か十三歳で社会のことなんか知らない。この寮と学院の往復、たまに実家に帰るだけでしょう」
「そうだけど」
「それにネットの情報が常に入る環境だからって、社会全体を知ったつもりはどうなのかな」
 なんなの、この女は上から目線の態度は。
「で、歌詞の内容だけど、『改革』という言葉がたくさんでるけど、いったい何を変えたいか具体性がないじゃない」
 最もなことを指摘された。当然、あたしはグッサと来た。
 少し気が落ち込んだ。とっておきの作詞を散々、いわれた。
「ねえ、私も社会を変えたい。だって経済が停滞しているでしょう。共産主義経済で。でも貧困も撲滅したと同時に犯罪が全く無くなった。でも警察は縮小しない。むしろ国民の言動を監視するために拡大している。でも犯罪捜査関係の警察官は暇過ぎて、毎日、昼寝しているという噂があるの」
「そうよね。犯罪捜索をする警察官が暇な方がいいに決まっているわ。でも、暇なだけ、あたしたちのプライバシーが、よりこと細かく監視されているのよ」
「で、あまり過激なことだけは考えないほうがいいわ。政治犯として更生施設へと送られるから。私、あなたみたいな人が好きなの。良いライバルになりそうで」
 あたしは食べ物をうけつけない身体になっている。
「ねえ、一緒に食べない」
 石岡ひとみは微笑みながら甘えた口調で言った。
「いいえ。あたしいつも栄養チューブで十分だわ」
「でも、少しでもいいから何か食べないと内蔵が弱くなるわ。細すぎる身体も健康に良くないのよ」
「よけいなこと言わないで」
 あたしは栄養チューブを飲み込む。喫茶室でお菓子をほおばり紅茶を飲む。
 あたしは食べ物が受け付けられない体になっているし味覚も鈍感。美味しいとか不味いという区別ができない。

 それから、大浴場でリラックスし、身体と髪を洗う。洗濯機に下着と学院指定のシャツを入れ、半袖パジャマとショートパンツのパジャマに着替える。

 午後八時まで、学校の勉強の復習をする。短時間で、授業の内容を覚えなければならない。記憶力と思考力が優れていなければ、この学院に入れない。

 消灯前の午後八時、あたしの部屋が、うす暗くなりはじめた。あたしは、勉強をやめて、これから寝るところ。ベットで横になってリラックスした。
 部屋の中ではハーブの匂いがする。気が落ち着く。
 あたしは午後九時少し前に寝た。この時代、テレビ番組は廃止された。寮ではテレビゲームが禁止されている。ただしスポーツなどは寮が推奨される。健康を害しなければ、いくらでもスポーツしてもいい。スポーツウェアとか道具などを貸してもらえる。
 スポーツ施設の利用料金のお金も出してくれる。

 今日は疲れた。あたしは午前四時少し前に起きて、授業の復習をする。

 趣味などに熱中する子には、この学院の環境は苦痛にしか感じない。寮の生活は厳しい。

孤立しているのは、あたしではなく、佐々木美沙というクラスメイト

 あたしは、他の子のように、アイドルになりたいと思わない。アイドルになるのは、タレントとになれば、世間に、あたしの主義主張が伝えられる。

 あたしは一目を置かれている。
「柏原さん。たくさん洋服を買ってくるのね。それもハイテクなものを」
「そうよ。太陽電池で稼働するエアコン付きの洋服とか、有機ELを上手に使えば、透明人間にもなれるのよ」
 日曜日、みんなは自主的にダンスの練習をしている。
「みんな、がんばりすぎないで。運動しすぎると身体に悪いから」
 子供っぽい顔した担任の南先生は、毎週、日曜日、あたしたちが暮らしている寮に遊びに来る。
「はい」
「ねえ、あたしお菓子買ってきたの」
 南先生は、いつもあたしたちに気を遣っている。
「ありがとう」
 
 いつものように、大沢多恵と佐々木美沙は、その場から離れた。
 彼女たちは、あたしのことを嫌っている。やる気がない態度が気に食わないらしい。 

 Aチーム、なんだか味気ない名前。
「ねえ、私たちのチーム名はなにがいいの」
「考えておく」

 Aイレブン・ユニットの佐伯美沙は、あたしに対して優しい。あたしのファッションの話をトコトン聞いてくれる。
「私もファッションに興味あるの。でも、庶民だからお小遣いがかぎられているし。どこかで安く買えるお店ない」
「そうね。どこも同じ価格だし。ハイテクを使わなければ、それなりいいものが買えるから」
「そうなの」
「ねえ、柏原さん、次の日曜日、ダンスの練習を休んで、みんなでショッピングしたいな」
「そう、ダンススタジオも四つのチームが交代で使っているし。他のクラスのBワン、Bツー、あたしたちのクラスのAツーの三チームの使わせないと。それで、次の日曜日は、私たちのチームはダンスの練習はお休みにして」
「そうね」

 その時、佐々木美沙は悲しそうな表情していた。少し嫉妬をしている。
「どうして、こんなやる気ない子にみんなちやほやするの」
「そうだよ。世の中、理不尽なことが多い。私たちアイドルになるために一生懸命なのに、やる気ない子が、みんなから慕われていて」
「でも、建前ではアイドルを育成する学園というけど、結局、将来の指導的な立場にたてる女性たちを育成しているのよ。政府のために。アイドルというよりもエリート育成の学院なのよ」
「そうね、南先生も考えていることがわからない。みんなやる気ある子なら、もっと結束が強くなるのに」


 あたしは、クラスメイトのみんなからチヤホヤやされている。みんな、あたしに対して優しい。

資産管理会社より。あたしが警視庁のお世話になる?

 七月中旬、二度目のおこずかいを使い果たした。とある日曜日、あの担任の南先生から食事を誘われた。でも、あたしの身体は、ほとんど食べ物を受け付けない。
「こんにちわ」
 日曜日になると、南先生は寮に遊びに来る。今どき珍しく、夜遅くまで残業する。それも自主的に。授業の内容をロボットを使わないで考えてくる。一人ひとりあったレッスンのしかたを計画する。とても教育熱心な先生。これでは彼氏ができない。というか、彼氏をつくる時間も、つきあう時間もない。
 あたしは南先生から寮の中の目立たないところで声をかけられた。
「先生、こんにちわ。先生は日曜日は、学校とは関係ないでしょう。お休みでしょう。たまには自分のために休日を使ったら」
「そうだけど。今日は柏原さんだけで、お昼を一緒に食べたいから。このことは他のクラスメイトの子には言わないで」
「いいわ。嬉しいわ」
「ちょっと話したいことがあるから」

 あたしは、このあいだ買ったばかりのタンクトップにYシャツ、それにミニスカートにロングブーツを履いた。少し露出度が高い、でもシャツで露出を抑えている。
「いつも、かわいらしい服装をしているのね。それに、スタイルもいいし。あとは身長が高ければいいけど、それには栄養をとり、運動することだけど。そのへんはうちの学院ではいくらでも運動しほうだいだから」
「はい。そう思います」
「ねえ、柏原さん。背が低いことをコンプレックスにしないほうがいいわ。コンプレックスは人をダメにする力があるから。だから自信を持って」
「はい」

 あたしは南先生のロボットカーに乗った。ハンドルがあるけど、移動中、自動運転なので南先生は、あたしの顔を見つめながら会話をする。ロボットカーは目的地まで自動で走行する。
「先生、この自動車、車内が広いですね」
「あら、今の自動車は、こんなものよ」
「なにか音楽を聴かない。クラウドビル(サーバーのみある超高層ビルのこと)から好きな音楽を受信して。どんな曲が好き」
「えーと、あたし古典音楽が好きなの。一九八0年代の」
「そうなの。では、リクエストは」
「一九八0年代のアイドルの曲を受信するわ」
 南先生は腕時計状のスマホをいじる。カラーのディスプレイから、曲名がでてくる。都内にある超高層ビルは膨大の量のデーターが保存されている。

 温かい雰囲気の音が流れる。
「AMラジオ的な音質にしたから」
「なんだか、私が使っているスマートフォンとは全然違う音。これは新鮮。で、えーえむらじおってなんですか」
「最も原始的な原理で音を送る装置のこと」
「らじおって何?」
「音だけを受信する機械。二十世紀の初めに発明されたの。一九二0年代から二一00代まで使われたものなの」
「そうなの。とても古い技術なのね」
「だって、緊急時には、原始的なものほうが頑丈にできているし、原理がわかれば、融通が利くのよ」
「そうなの」

 あたしたちが顔を合わせて話しているうちに、ロボットカーは自動的にレストランの駐車場に到着した。
「ねえ、今のあたしのクラウドに保存をしたいわ」
「どうぞ。既に著作権が切れた古典だから。無料よ」

 ファミリーレストランで、南先生は料理を注文した。
 あたしはケーキと飲み物を注文した。
「あんたたちと同じ歳の子と話をするのは楽しいわ。柏原さん、作詞、がんばって、あなたの感性とメッセージ性を大事にして。訴えるものがあるから」
「先生。ありがとう。こんなこと聞いていいのかな」
「ああ・・・、歳ね。実年齢は今年で四十三歳なの」
「そんなに歳をとっているの。そうは見えない。まだ十代だと思っていました。だから、あたし先生が、まだ大学生で教師の見習いだと思ってました。でも、それにしては、教えるのが、とても上手なので」
「それでも教師生活は、もうじき二十年になるわ。いろんな学校で教師したわ。でも、この学院の仕事が一番楽しいわ。良いアイドルを育てられるから」
「そうですか。でも、あたし、実は浪費癖で、とても困っているのです。毎月、未成年用の電子マネーが送られて、すぐ使い切ってしまう。みんな洋服とか靴とかになってしまって」
「でも、洋服がたくさんないとファッションが楽しめないでしょう。女の子として生まれた特権を生かさないと」
「はい」
「で、実は、私、警視庁から呼び出されて」
「え!」
 あたしは驚いた。今どき貧困がない時代、犯罪などはありえない。
「実は生徒全員にタブレット端末に家計簿をつけるように指導されたの。警察署で。生徒たちに金銭管理の教育をするように指導されたの」
 あたしは目の前が暗くなった。浪費癖の、あたしのために南先生が警察官に注意された。
「元気ないようだわ。警察で注意されたことは気にしないで。これから、柏原さんが気をつければいいことだから」
「ご、ごめんなさい」
 
 いつのまにか、あたしは涙を流して泣いてしまった。
「気にしないで。ねえ、私と一緒にショッピングセンターに行かない。みんなに自慢できるハイテクな、かわいい服装を買いましょう」
「いいわ。先生。なんでそんなに優しいの。優しすぎ・・・」
 南先生は、しばらく声を出さなかった。


「そうね。それが、私の欠点。性格が優しすぎるのが。でも、アイドルになるのは、とても厳しいから。だから、私は、優しくできても甘くしない」
 あたしは、いつもの南先生のようになって安心した。
「ね、今度からちゃんと家計簿つけてね。金銭管理も大事だから」
「はい」
 あたしは素直に返事をした。


「まあ、この時代、プライバシーとか秘密という概念がないから、今のことは明日のロングホームルームまで、みんなにも知られると思う。でも、決して柏原さんには恥をかかせないように、うまくみんなに伝えるから」
「あたし恐縮してしまう。あたしの浪費癖のために・・・。あたし自分の過ちをみんなに話すわ」
「そんな・・・気を使わないで」


 翌日、朝のロングホームルームで、金銭管理について、あたしから自分の過ちを話した。でも、南先生の指摘で、あたしは浪費癖がなおった。

もう少しで夏休み・夏休み、あたしは別の学校で補習を

 あたしは別にアイドルになる気がない。で、この女学院は、本気でアイドルになろうと頑張っている。夏休みを宇宙旅行に、後半はサバイバルキャンプなど精神を鍛えるための訓練に四十日の休日を全部使う。

 あたしと田中美優と、ライバルの石岡ひとみの三人だけは、せっかくの夏休みをのんびり過ごしたい。
「あたしは、誰かに監視されつづけている」
「当然よ。この社会には既にプライバシーというものがない。秘密も隠せない。ただ生理的なことだけは人道上の理由でプライバシーが保っているけど」
「そうなのよ。生理的なものまで監視されると、それは日本列島全体が巨大な刑務所なのよ。でも、犯罪も貧困もない。でも選択の自由がある」

 あたしと美優だけで、家族ぐるみでお付き合いしようと考えた。で、完全に孤立するのが、石岡ひとみ。でも夏休みは実家に帰るだろう。



「美優は美術の勉強をしたかったのでしょう。なんで、この学院に入れたられたの」
「親が私をアイドルにしようとして。一時はやめようと思ったけど、ここは偏差値が高いでしょう。ちゃんと学科の勉強をさせてくれる。だから進学にも就職に有利だと思って、この学院に通っているの」
「そう。あたしもアイドルになる気はない。だって、みんなで笑顔でダンスして、歌を歌うだけ。あたしアイドルよりもボーカリストになりたい。ちゃんとした歌を歌って。作詞作曲もでき楽器も演奏できて」



「そうね、アイドル産業は三世紀も続いた。先進国世界共通の娯楽。だって社会の規律は厳しいし、みんな窮屈に感じている。どこかで、発散させないと、この社会は地球の裏側のような暗黒の社会になる」
「で、大人たちは不道徳な遊びを楽しんでいる。美少女アンドロイドとエッチなこともすれば、バーチャルリアリティでも男女混浴の公衆浴場でもエッチなことをし放題。で、そのままバーチャルリティ中毒で廃人になる人も多い。大人はみんなエッチなのよ。それに、いかにしたら社会の抜け道を上手に渡るかということに長けている。おじさんたちは、みんなタヌキに見える」
「そうね、タヌキ男ばかり」
 美優は、あたしの親友。他の子たちは、目がギラギラしている。目が鋭い。本気でアイドルになるためには何でもする。だから中学一年の夏休みを犠牲にする。

「だいたい、ひとつのクラスに、ふたつのチームを作る。チームの中に三つのユニットをつくる」
「お互いに競争するから目がすわっている。ちょっと怖いわ。だからルームメイト以外の子だけしか話ができない」
「みんなアイドルになることに夢を持っているから」

 午後五時、寮にいるのは、あたしたちだけ。

 みんな、宇宙に行くとかサバイバルキャンプで精神力とチームワークの結束を強めようと考え、門限、午後八時ちょっと前に帰ってくる。

 あたしと美優の二人、いやライバルの石岡ひとみを入れて、三人だけが寮の広い浴槽で、まったりしている。温かいお風呂の中で、ゆっくりくつろいでいる。
 
 明日は学院の終業式。明後日から夏休み。学院から二十人の宇宙旅行の希望者が南先生と一緒に、横田国際空港からモルジブゆきの飛行機に乗る。


 昔、アメリカ空軍基地だった横田基地は、西暦二千二百年に日本に返還された。そのまま、とても広い敷地を利用して、北東アジアのハブ空港になった。

わたしたち三人は、寮内の温泉施設で、まったりする

 今日から夏休み。希望者二十名が南先生と一緒に宇宙へ行く。別に月とか他の惑星に行くわけではない。今の科学力では短期間で火星にはいけない。片道だけで半年もかかる。それに、ものすごくお金がかかる。
 
 それでも、既に百万人もの人たちが太陽系宇宙に住んでいる。

 二十三世紀、人類の有人宇宙開発は三世紀も停滞した。人類が月に再びおとすれたのが、西暦二一二五年。アポロ十七号から百五十三年後。

 貧困と宗教的な争い。テロとの戦いで政治体制が大きく変わった。全ての政党の敵は宗教テロリストと貧困を生み出す資本主義と悪質な経営者や企業。共通の敵で北米は一つになった。これを一党独裁という。または翼賛政治と言う。戦争直前の日本の政治体制がモデルになっている。他の先進国も同じように全体主義国家となり、理想的な社会になった。福祉が充実している。社会保障が整っている。善良な政治家しか政治に参加できない仕組みになっている。

 民主主義や個人主義は自己中心主義につながるから忌み嫌われている。自己中心は社会を破壊する危険思想。
 だからそれに対峙している全体主義が人々から支持されている。人々は他人の幸せだけを考えるように厳格な教育を受ける。他の人を幸せにすれば必然的に自分も幸せになると教えられる。とても厳しい社会規律がある。

 それで人類の人口が急激に減ったのが、二十一世紀の中期から。徐々に先進国と中進国の人口が少子化で減り、資源の消費量も少なくなった。地球温暖化問題も平均気温五度というギリギリのところで食い止められたが、ヨーロッパは寒い砂漠が広がりつづける。一部の開発途上国は海の水が上昇して、南太平洋の国々は国土を失った。バングラディシュは国土の半分近くを失った。東京でも沿岸部が水没している。水没した東京二十三区が過疎化した。ほとんどの地下鉄は浸水して使えなくなった。地下鉄という速度が遅い乗り物は時代遅れになった。

 人々は自由を求め中東や北アフリカに人類の大部分が集中した。そこにイスラム法による理想的な社会を作ろうとした。アフリカ大陸には多くの資源がある。世界中の人たちがイスラム法による楽園を作ろうとした。自由を求めて世界各地から人々が集まる。北アフリカや中東では、急激な人口増加による食糧不足、雇用問題の悪化による失業率が高くなる。そして宗教家による腐敗で、あらゆる改革が失敗した。

 ロボットもパソコンマニアからは嫌われた。ロボットの性能が良くなり普及すれば生活も仕事も楽になる。ロボットがいれば重労働から解放してくれる。ロボットがいれば仕事のミスが減り作業効率が飛躍的上がる。そうすれば職場のストレスからも解放してくれる。介護の心配もなくなるのに、ロボット研究所が襲われつづけた。ロボットの開発が二世紀も停滞した。人間は過剰なストレスを好む生き物だと実感する。

 二十三世紀、全世界の主要都市は急激な人口減少で廃墟と森林に囲まれている。でも、あたしたちが住む二十三世紀の建物のデザインは二十一世紀とはほとんど変わりがない。

 夏休み、関東女学院の寮には、あたしたち三人だけが、とても広い浴槽なのでリラックスできる。三十八度の生温かいお湯でまったりした。ジャクシーで泡がでる。あたしたちは、なぜか三人で泡がでる浅い浴槽で横になった。
「夏休みくらいのんびりしたいわね」
「あたしも」
 隣にいるのはライバルの石岡ひとみ。長い髪を巻き上げた。
「ねえ、柏原さん。仲良くならない。私と友達になって」
 甘えたような声、とても高い声で話しかけられた。でも、あたしに、こんなことを言うのは、とても勇気がいると思う。むげに断るわけにいかない。
「いいわ。石岡さん。仲良くなりましょう。夏休みは、楽しい思い出を作りましょう。それに、こんな学園だけど何かの縁。あたしたちは、あたしたちなりに楽しい思い出を作りましよう」
 あたしは笑顔で石岡さんに答えた。
 
 この学院には女子だけ。全生徒は五百四人もいる。全員がアイドルになれるわけがない。大学受験のための難しい授業もある。体力を競う。ダンスの特訓。だから、女子体育大学に進学する子もいれば、音楽関係の大学に進学する子もいる。入隊するのがとても難しい「市民軍」という軍隊へ入隊する子もいる。市民軍は自衛隊や警察官の三倍以上の給料がもらえ、どの職業よりも福利厚生が充実している。だからアイドルになれるのは、ほんの数人だけ。

「ねえ、握手しましょう」
 でも、あたしは石岡ひとみが嫌いではない。むしろ良きライバルと思う。石岡ひとみが立ち上がった。白い肌がとてもきれい。皮膚から水をはねている。
「いいわ」
 あたしも立ち上がる。石岡ひとみと、あたしの上半身が丸見えになる。
「きれいな肌している。これからも、親友でいましょう」
 あたしは石岡さんの勇気ある行動を歓迎した。あたしは石岡ひとみと握手した。
「ありがとう。こんな私で。今まで失礼なこと言ってごめんね。でも、夏休みが終わったら、ライバルだから」
 石岡ひとみは、笑顔で答えた。とても美しい体と顔。
「いいわ。あんたも作詞して。大人たちにインパクトをあたえる歌を歌いましょう」
「うん」
 美優は、美術関係なので、学科試験が受かれば美術系の大学に進学するつもり。まだ中学一年生ではっきりした目標があるのは羨ましい。
「美優、石岡さんとなかよくして」
 美優も立ち上がって石岡さんと握手した。
「ねえ、石岡さん。私の身体をじろじろみないで」
 石岡ひとみは田中美優の肌がきれいで、スタイルが良いので凝視している。
「いいじゃない。女の子どうしだし」
 
 私たちは宿題も学校の授業の復習をしなくてもいいので、しばらく広い浴槽で、ともに笑い、ふざけ合った。

「ねえ、実家に帰る前、プールにいかない」
「いいわ。あたし水着を着たくなった」
「どこのプールにする」
「国営公園のプールのほうがいいわ。日光にあたれるし。冷たい水に入りたくなった」
「じゃあ、決まり。で、水着はどこで買う」
「立川のデパートで」
「モノレールに乗って行くの」
「すごく古いじゃない。高いところを通るでしょう。それに築、数百年だから、ちょっと怖いわ」
「何十回も補強工事をしたし、あの首都直下型大震災でも南海トラフ大震災でも耐えた実績がある」
「でも、モノレールなんてダサくない」
「うん、古典的な乗り物だからいいじゃない。レトロな雰囲気がいいのよ」

 都内では人口が急激に減っているので、モノレールと電車の時刻表をタブレット端末で確認しなければならない。人口が少ないので運転本数がとても少ない。モノレールも電車も一時間に一本あるかないか。歩いて行ったほうが早い時刻もある。それに、ロボット・タクシーという手段がある。

 玉川上水駅からモノレールを乗りかえる。
 今の公共交通はロボット・タクシーか地下リニアモーターカーが主流の時代。モノレールや電車のように大きな窓がある乗り物は珍しい。モノレールは蒸気機関車のような古典的な乗り物である。

 私たちはお昼を食べてからショッピングして、それから国営公園のプールに行く。デパートで新しい水着を買う。それを選ぶのは楽しい。三人で仲良くプールに行く。

モノレール・車掌ではなく婦人警官だけが乗っている

 警察の仕事は暇。一日七時間三交替勤務である。二十三世紀の日本本土では警察官が余っている。日本本土では犯罪は、この百年間、一件もない。既に事件が起きる前に、犯罪が予知できる。犯罪が起きる前に警察官が阻止する。犯罪を起こしたくてもおこせられない。

 あたしたちは学院がある寮から鉄道路線の電車にのる。学院がある玉川上水駅でモノレールに乗り換える。

 なるべく、お客を待たさないために、モノレールが人工知能で運行時刻を調整する。モノレールは半分くらい循環線になっている。

 一九九八年に開通し、二十一世紀中期に他の鉄道会社と共同でモノレール路線を延長した。東京はドーナツ状で人口が急増した。郊外に人口が移動するためにモノレールの路線が、東青梅から八王子へと。八王子から町田。町田から多摩市へと。上北台から箱根ヶ崎へと延長した。二度の大震災に耐えた実績がある。

 電車もモノレールにも婦人警官が一両に一人いる。とても暇そうにしている。でも、万が一、犯罪が起きないために厳重に警備しているし、鉄道車両には何台もの監視カメラやドライブレコーダーがある。

 あたしたちは駅に入ると網膜スキャンされる。電子マネーで改札口を通り超える。改札口を通ると顔写真が取られる。必ず個人情報が入ったスマートフォンを持たないとならない。駅には既に自動券売機がない。
 
 駅の周囲には警察官が何人かいる。人間は労働から解放されたが、ほとんどの人たちは警察に就職している。警視庁の下部組織、または警備会社に就職している。あとは教育機関、すなわち学校、または学校を管理する会社に就職している。


 あたしたちは婦警さんから話しかけられた。いつも駅前で会う婦警さんである。
「柏原さんたち。これから水着を買って国立公園のプールに行くの」
「はい。そうです」
「駅前のデパートで、水着は今が買い時だから。ネットに接続しているから。だから海水浴なら溺れそうな場所がすぐわかるの。ハイテクだと位置情報がわかるし水着の色も着心地も変えられるのよ」
「そうですか」
「柏原さん。南先生からの忠告を守っていますね。ちゃんとお金を管理できて」
「そうです」
「では、今日一日、楽しんで」
「ありがとうございます」

 小川駅では、電車の本数が少ない。昔の田舎の駅のようだけど、駅の管理は警察官が行っている。
 警察官の人たちは気さく。とても犯罪を守るというような雰囲気ではない。近所のお姉さんという感じ。


 あたしたちが電車に乗ると、必ず婦人警官が一人いる。駅前にいたのとは違う別の婦人警官が、あたしたちに話しかけてくる。
「こんにちわ」
「こんにちわ。いつも、街の安全のためにありがとうございます」
「いいえ。仕事ですから。これからデパートで水着を・・・あら、それは駅前で言われたのね。失礼・・・。ねえ、今の時間だと、あそこのボックス席がいいわ。窓が大きいから窓の近くのボックス席がいいわ」
「ありがとうございます」
 昔の社会よりも人とのコミュニケーションが増えた。
「あたしたちこれから行くのがデパートで、新しい水着を買う。美優はどんなのが良いの」
「ビキニのほうが恥ずかしくないから。だって身体のラインがもろに見えないでしょう」
「私もネット接続のハイテク水着を。着心地も調節できるし」
「そうね。でも、昔は太りすぎの女性がいたのよ」
「そうなの」
 あたしは昔のことは、よく知らない。栄養を過剰なほど摂取すると太る。
「だって、栄養管理は自己責任だったし、社会がそこまで面倒みられないじゃない」
「そうね。今は膨大な情報を処理できる。ひとりひとりの行動が予測できる」
「そうだわ。ねえ、どんな水着がいい」
 あたしはタブレット端末を取り出し、水着のデザインのカタログを見る。
「そうね。これがいいわ。かわいらしいボトムだし」
「私は、この形のビキニ水着がいいわ」
「あたしはレオタード状の」
「それ、モロに身体のラインが目立つじゃない」
「でも、あたし痩せているし。いやもっと食べないと」

 その時、電車に乗っている婦人警官から話しかけられた。
「ねえ、立川駅には美味しい料理のお店が。たしか田中さんと石岡さんには向いているのね。でも、柏原さんは、いつも栄養チューブでしょう。たまには食べないと。内臓に負担がないものなら、このお店が」
 だれもタブレット端末をいじっていないのに、自動的に別のサイトに移動した。立川駅前の飲食店のサイトへと移動した。

「そうね、柏原さんには、おかゆ料理のお店がいいわ。駅から歩いて5分くらいの場所に」
「そこにいくわ。ねえ、ごはん食べてからでいいでしょう」
「うん」
「私も賛成。カロリーは医療管理会社が管理しているから」
「日本列島本土からは糖尿病は絶滅したけど、治外法権の自治区とか自治共和国では、糖尿病はなくならないの。今の医学で治せない。だって生活習慣病だから」
「そうね自由には自己責任が伴うのね」

 あたしたちは玉川上水駅で、モノレールにすぐに乗れた。待ち時間は五分。待たないで済む。電車とモノレールの接続が良いのは人工知能で自動運転をしているから。
 高いところに車両が走っている。高いところを走っているので、あたしは少し怖く感じた。モノレールの大きな窓が新鮮だった。窓から景色を見ると広大な森林と無数の廃墟が延々と見える。東側には森林の先に無数の超高層ビルがある。そこには、多くの人たちの脳から取り出した「思い出」とタブレット端末やスマートフォンのデーターが管理してある。

あたしたちの時代の科学技術は三世紀も停滞した

 あたしたちの社会は、三世紀も科学が停滞した。二十一世紀初期から順調に行けば、たった百年で、あたしたちの時代と同じレベルの科学力になれたはずだけど、貧困問題や宗教上の争いのため三世紀も科学が停滞した。
 
 もし科学が停滞していなければ、今頃は誰でも自由に火星へ旅行に行けたかもしれない。火星までわずか三日で行ける超高速の宇宙船が実用化したかもしれない。人類は、この太陽系を飛び出し、他の太陽系に行けたかもしれない。もっと早くロボットと人間が仲良くなれたかもしれない。他の太陽系の生命体との遭遇もあったかもしれない。中東や北アフリカでの暗黒時代はなかったと思う。

 あたしたちの時代の科学技術は二十一世紀初期から百年に満たない科学技術のレベルである。

 ただし人間が人間を監視したり、次に誰が何をするか予測する技術だけが向上した。

 あたしたちは、お昼ご飯食べ、これからデパートにいくと店員さんから声をかけられた。

「あなたは柏原さんだね。レオタード状の水着。Sサイズ、ネット接続機能あり、有機Elで水着の色を自由に変えられます」
 女性の店員から声をかけられた。
「どうして、あたしが水着を買うのを予測できたのですか」
「電車の中でタブレット端末で水着カタログサイトを見たでしょう。柏原さんが欲しいものをセレクトしました。これでいいでしょうか」
「はい。かわいらしいデザイン。布地が薄くって触り心地がいい。で、色も自由に変えられるしネットに接続できるのね」
「そうです。それに人工知能があるので、この水着と会話もできます」
「これをいただくわ」
「では、ご試着をお願いします。一応、3D情報で柏原さんの体型にあった水着を選びましたが確認をお願いします」
「では、試着します」
 
 試着室にはいった。プライバシー保護のため監視カメラがない。ネットで位置情報とか体温、脈拍の情報がだけが送られる。
 
 試着室は、とても広い。あたしが寝泊りする寮の部屋くらいある。約六畳分の広さ。周囲は鏡に囲まれている。
 あたしは、これから買う水着に着替えた。
「肩紐がとても細い。背中が丸見え。胸元が広く露出している。この水着は露出部分が多すぎ。でも、あたしは体型に自信があるから」
 水着の着心地は良く感じる。とてもコンピューターが内蔵しているとは思えない。
「これで大丈夫だわ。ねえ、記念に、あたしの水着姿の写真を」
 撮影用ロボットが試着室に入った。あたしの水着姿を撮影した。無数の水着すがたの少女たちの画像がクラウドビルにデーターとして保存している。あたしは、3Dホログラムの立体写真で、あたしの水着姿も保存した。
 その時、あたしが着た水着から音声が聞こえた。くすぐったく感じる。壁に貼り付けている大きな鏡から文字が表示された。
「これからユーザー登録します」
「はい。いいわ」
 ユーザー登録が終わると、あたしは水着を脱ぎ、普段着であるネットに接続しているショートパンツとタンクトップを着た。

 女性の店員は丁寧に水着をたたみ、紙に包んだ。
「お買い上げありがとうございまいた」
「どうも」


 地上に降りると、ロボット・タクシー乗り場がある。
「これから国営公園のプールに行くのですね」
 あたしたち三人が、これから行く場所をロボット・タクシーが予測している。
 機械的な音のタクシーが話しかけた。
「今日の気温は三十八度。とても蒸し暑いです。晴天です。でも紫外線が強いので、なるべく日陰にいてください」
「はい」
「では、今日一日、プールで、のんびり、たのしんでください」
 ロボットタクシーは、あたしたち三人を乗せて国営公園のプールへと送る。

 午後2時半、国営公園のプールは六月から九月まで二十四時間営業をしている。周囲には、暇そうな婦人警官が何人かいる。あたしたちを見守っている。

 あたしたちは、強い日差しを守るために日焼け止めを塗り、日陰になった場所で水着のまま横になる。

夜遅くまで起きて、あたしたちは友情を深めた

 気がつけば、夜中の一時なっていた。楽しい時間なのであっという間に時間が過ぎた。あたしは、こんな遅くまで起きたことはない。あたしたちは、水着すがたのまま駄弁りつづけた。
「寮に連絡しました。事務員の許可が特別におりましたので」
「ありがとう」
 あたしたちは、しばらく婦警さんたちに見守られた。
「これは夜食です」
「ありがとう」
 美優が婦警さんの優しい気配りに感心した。
「いい時代に生まれてよかった」
「でも、地球の裏側は中世の暗黒時代よりもひどいのよ。人類の大部分は北アフリカと中東に住んでいるし」
「そうよね。それで見かねて、ボランティアに参加しても誘拐されたり殺されたりで」
「なんで、とても善良な人たちが、あんなところにいくの」
 あたしは理解できない。そんなに恐ろしいところに行くことが。
「優しすぎるじゃない。昔、二十世紀にはマザーテレサがいたの。カトリックの信者でインドの貧しい人たちに奉仕したの。でも今は宗教を信じる人のほとんどが、ムスリムやムスリマで、みんな善良な人たちなのに、みんな誘拐されて酷い方法で殺されるのよ」
「そうね。科学がどんなに発達しても、地球上から貧困と因習、それに犯罪はなくせない。でも、この日本とか北米、欧州とロシアなどの全体主義圏は貧困と犯罪がないのよ」
「人類は先進国のみで完璧な社会を手にした。それが最も忌み嫌われた『全体主義』という形で」
「そもそも善良な人しか政治家や官僚になれない。6年間の人格検査を受けないと」
「経済は共産主義。みんなで社会の富を分かち合う。善良な独裁者・ビックブラザーのもとで」
「そうね」
 星空が見える。何人かの婦人警官や警察官は、プールの周辺を掃除している。警備は暇。その時間に掃除する。
「民主主義は結局、不完全な社会システム。悪い政治家を選挙でやめさせることができるシステムなんだけど、イメージで騙されるのよ。民衆は政治に無知な人が多いから」
「そんな時代。混迷を極めた事態に強い指導者が起きたのよ。それがビックブラザー。さまざまな改革をすすめて貧困と犯罪から解放したのよ」

 もし資本主義の社会のままだったら、全世界が北アフリカや中東のような暗黒時代になり、飢饉で食糧不足・水不足で伝染病が広まり今頃は人類が滅びたのは確実。個人の利益をいちいち気にしていたらきりがない。社会全体の利益のために個人が献身的な精神で国家のために尽くさなければならない。そのためには善良で強い独裁者がいなければ人類は既に絶滅したのは確実である。その結果、北半球の先進国は地上の楽園になった。


 テロと貧困との戦いで翼賛政治が生まれた。政党は共通の敵で一つに統一した。悪質な経営者を一掃する運動で企業は全て国営化した。旧・ソ連のような社会になったことに、ほとんどの人たちは反感を感じたが、『人格係数』という概念ができ、善良な人たちのみしか政治に参加できないシステムになった。善良な官僚と政治家が、私たちの生活を守っている。

 
 監視システムが爆発的に普及し事前に人々の行動が予知できる社会なった。

 あたしたちは婦警さんたちが持ってきた柔らかい簡易エア・ベットで少しだけ寝る。

 早朝五時、目が覚めた。国営公園は二十四時間営業で無料。あたしたちは、早朝、体操して、それから流れるプールで泳ぐ。
 タブレット端末は完全防水式なので、水の中でも使える。

 あたしたちは早朝のプールで水着姿の写真を撮る。タブレット端末のカメラを使って。
「ひとみ。昨夜はトコトンお話したわ。ひとみの考えが理解できるようになって」
「瑠菜の考えていることも理解できたわ。確かに完成度が高い全体主義社会だけど、まだ、改善の余地があるわ」
「あたしも、そう思う。でも、歌だけでなく、あたしも政治家になろうとおもう」
「でも政治家になるには人格係数はA+以上ではないと。今の瑠菜はBクラス。人格はなかなか変えられないのよ。まあ電脳化すれば、自由に感情をコントロールできるようになるわ」
「電脳化ねえ。美優はどう思う」
「だって水着でも下着でも、今はみんなネットに接続している。体温とか汗の成分も分析できるし。今は人工知能まで備えている」
「そうね。あたしたちは毎週、必ず総合カウンセリングセンターに通う義務がある。IT機器から健康問題や心理的な相談まで」
「でも、あたしどうしても感情をコントロールできないし、嫌いな人は嫌いなの」
「それが普通じゃないの」
「そうね。人格係数A+は、よほど訓練している人格者なの。あたしたちの担任の南先生みたいに」
「南先生は、今頃、モルジブにいっているのね。宇宙エレベーターがあるところに」

 あたしたちは、婦警さんたちから軽い朝食を食べさせてもらった。
 大部分の人たちは労働ではなく相互監視という仕事で給料をもらう。でも、この都内では悪人と思われたら最後。北海道の北端の学園都市へと送られる。その中には更生施設がある。更生できなければ、とても貧しい中東の都市へと追放される。

 早朝、プールの水の流れが聞こえる。あたしたちは、紺色の空を見上げる。流れるプールの水の音が心地よい。
 あたしたち三人はクラスの中では異質な存在。それなりの意義がある。

夏休みの一日目

 あたしたちは朝、寮に戻った。寮長さんは夏休みということで、特別に外泊を許可してくれた。

 あたしたちの社会の幸福率が、北アフリカよりも低いのは、脳内のエルドルフィンが不足しているから。教育や警備の仕事につく人がほとんど。希に芸術関係の仕事をする。生産活動はロボットやアンドロイドがやってくれる。警察の仕事は暇過ぎてつまらない。それに、あたしたちが住む日本列島では、脳内を操って幸福率を増やすことを禁じている。幸福物質が多すぎると統合失調症や躁うつ病などの病気の原因になるからだ。また、気分がハイになって無理なことをすると筋肉や骨を破壊する。脳を勝手にいじれないから中東や北アフリカよりも幸福率は低い。


 中東や北アフリカでは文盲の人ばかりだし、奴隷のように酷使されているけど、脳を自由に操られるからエンドルフィンが大量の出る。だから自分の境遇が惨めだと思わない。そこに住む人は、外国のことを全然知らない。比較するものを知らないから、長時間の労働、無休で働かされたりしても自分の境遇が不幸だとは感じない。治安もとても悪く、いつ殺されるかわからない。平均寿命が二十三歳である。病院もほとんどない。警察も機能しない。宗教警察があるが、宗教警察の腐敗はひどい。

 宗教警察は売春の斡旋、人身売買、脳や臓器の販売などが行う。それでも、奴隷以下の境遇の人たちは、みんなとても幸せそうな表情をしている。

 日本や北米からは、精神病質、サイコパスと呼ばれる人たちが移住させられる。彼らは、地元の人たちを残忍な方法で殺しつづける。中性の暗黒時代の社会に戻った状態である。

 当然、ごく一部の宗教指導者や追放されたブラック企業の経営者たちだけが近代的で優雅な生活をしている。多くの人たちは一部の特権階級の人たちのために超高層ビルの建設の仕事を休みなしで働いている。高さを競い合う。高度四千メートルの超高層ビルなんか珍しくない。


 あたしたちは中東からの動画をみると、楽しそうに働いているので笑顔が多い。数日連続の完全徹夜で休日はない。

 脳をいじれば、自分がどんな境遇でも幸せになれる。

「あたしたちは外国のことを調べると、先生たちの話と違うように感じる」
「そうね。かなり悲惨な状態なのに笑顔が多い。婦警さんたちは退屈そうで、何か辛そう」
「そうなのよ。仕事が退屈だから、私たちに、よく話しかけるのよ」
 私のライバルの石岡ひとみが言う。
「今の私たちの社会は、その笑顔が足りないのよ」
「でも、知らないほうが幸せなこともある。私たちは美味しいご飯を食べ、快適な部屋で生活する。中東や北アフリカの人たちは、生まれてから死ぬまで家畜小屋以下の場所で生活する。でも私たちから見ると、家畜の方が幸せなのよ」
「そもそも、中東や北アフリカでは、情報が皆無。地球が丸いことを知らない人が多い。そのまま遠くに行けば、地の果ての壁があると信じている」
「幸せとはなんだろうか・・・」

 あたしは複雑な気持ちになった。中東や北アフリカに住む人たちは、ほとんど家畜以下の奴隷。地理も歴史も知らない。周囲五キロ四方の世界だけでしか知らない。地球が丸いことを知らない人が人類の七割もいる。人類全体をみるとコンピューターとかロボットを知らない人がほとんどである。
 
 あたしたちは、初めに石岡ひとみの家に泊めてもらう。あたしたちは荷物をバックに入れた。バックの中が何が入っているか、バックにあるディスプレイで表示される。それに話しかけてくる。
「ひとみさん。荷物は大丈夫です。必要なものは全部入っています。でも重さ三十五キロで、あなたには、とても重い荷物です。寮内を世話する女性型アンドロイドを呼ぶますので」
「おねがいします」
 寮内にいる女性型アンドロイドが、愛想よく挨拶した。
「おはようございます」
「おはよう」
「みなさん。これから石岡さんのうちに、遊びにいくのですね」
「そうなの。夏休みだし、あたしたち三人の友情を深めるために」
 あたしは、アンドロイドが愛想よくはなしかけて気分が良かった。
「あら、柏原さんたち。喉かわいていないですか。そんな気がするので」
「よく気がつきましたね。じゃあ、あたしたちに冷たい麦茶をお願いしますわ」
「かしこまりました」

 寮の中の事務員の女性が話しかけた。
「みんないなくなるのは寂しいわ。ねえ、暇があったら何でもいいから連絡して」
「わかりました。で、寮長さんは」
「昨日、英国へ旅行に行きました。UKBの研修会の見学のために」
「そうですか。でも昨夜、話が盛り上がりすぎて、石岡さんと仲良くなれて」
「それは、良かったですね。そうゆう事があると思って、特別に外泊を許可しました。三人とも、Aクラスのみんなに染まらないように。自分たちの個性を失わないように」
「はい」
「まだ六年間あるから頑張って。先が長いから」
「わかりました」

 あたしたちは女性型アンドロイドが持ってきた冷たい麦茶を飲み、少し休んだ。
「もうじきロボット・タクシーが来ます。この近くに警備している婦警さんたちも来ています。婦警さんたちも荷物運びの手伝いをしますから」
「そうなの。少し急ぎましょう」

 あたしたちは、女性型アンドロイドに荷物を持ってもらいロボット・タクシーに乗る。婦警さんたちから声をかけられた。
「夏休みを楽しんで。良い思い出ができるように」
「ありがとう」

 あたしたちが去ったあと、寮の事務員と婦警さんたちは勤務時間が終わるまで、お菓子をほおばり、お茶を飲みながら駄弁り続けていた。大人たちの仕事はとても暇そうに感じた。

あたしたちは石岡さんの家に泊まる

 女の子どうし三人でパジャマパーテイをする。午後四時、ビキニ水着みたいな露出度が高いパジャマに着替えて、夜九時まで駄弁り続ける。
 
 あたしたちは、下着をつけないで、タンクトップとショートパンツのパジャマを着ている。背中とお腹の肌が露出している。ノーパン・ノーブラは気が落ち着く。

 あたしは宗教を信仰している人は無料で脳内チップで自分の感情を自由にコントロールできることを話した。
「ねえ、宗教を信じている人は、警察の許可があれば、自分で自分の脳をいじれるの。眠たさとか空腹感、それに性欲も感情も自由にコントロールできるの。それに聖書を読むと自動的に脳内にドーパミンが生成されるのよ。聖書を読むのが、楽しくなるの。あとは讃美歌を歌うとエンドルフィンが生成されるから気持ちよくなるのよ」
「それは電脳化した人だけに限られているのね」
 ひとみが答えた。
「で、電脳化とは、人間の脳内にナノマシンというコンピューターで脳を操る技術。むかしは外科手術でマイクロマシンを埋め込んだけど、今は注射器でナノマシンを埋め込むのよ」
「ねえ、やめましょう。ひとみ、夕食前だし」
「そうよね」

 あたしたちの時代、既にテレビ放送が廃止された。インターネットによるビデオ配信がテレビの代わりになる時代。緊急時のときだけスマートフォンやタブレット端末に強制的にニュースを放送する。
 このあいだ、南先生がいう「ラジオ放送」というものは、あたしたちの世代では知らない人が多い。
 音だけしか送れないという。とても原始的な装置である。


 電脳化すれば、匂いと味覚さえもネットで送ることができる。当然、多くの死者の脳から自由に、いろんな人の思い出を見ることもできる。年齢制限がない領域なら、あたしたちのタブレット端末でも、いろんな人の思い出を見ることができる。

「菜瑠。これから夕食だけど。少しづつ内臓を慣らしたほうがいいわ。栄養チューブでは、バランスが悪いから」
「そう思うけど。あたしって味音痴だし」
「でも、お腹すくことはないの」
「お腹すかないのよ。空腹感を感じないの」
「でも、よく健康診断で落とされなかったの」
「これは一時的な病気みたいなもので、もう少ししたら治ると診断されて」
「そうなの」

 あたしは栄養チューブを口につけて吸い込む。石岡ひとみと田中美優は、美味しそうに夕食を食べる。
「少しだけ食べてみたら」
「うん」
 ひろみが口つけたスプーンで、ほんの少しだけ食べたが味がよくわからない。
「どう。美味しい」
「わからない。ちょっと味を感じるだけ」
「でも、徐々に内蔵が丈夫になるから」
「ねえ、菜瑠。あなたの栄養チューブの味はどんなもの。口に入れさせて」 
 あたしは、ひとみに栄養チューブを渡した。ひとみは、あたしが口をつけたものを飲んだ。
「とても甘い」
 ひとみは、しばらく栄養チューブに口をつけたまま、あたしの顔を凝視している。
 あたしは、ひとみが口つけたスプーンで夕食を食べた。あたしは味がよくわからない。
「ねえ、スプン返して」
「いいわ」
 ひとみは、あたしが口をつけたスプーンに口に入れたまま、あたしの顔をしばらく眺めた。そして微笑んだ。
「菜瑠って、とてもかわいい」
「ひとみも、男性にモテそう」
 その一言を言ったら、ひとみの表情が暗くなった。
「あたし何か変なことを言った」
「うんん。だいじょうぶ」

 あたしの隣にいる美優は、何かを感じ取った。美優の表情が微妙に変化した。

 あたしは栄養チューブに依存している。これがないと生きていられない。
「文明が進歩すればするほど、未知の病気も増える」
「そうなのよ」
 あたしは答えた。
「それに、電脳化で人格に障害が起きる。それで、第一段階で北海道の最北端にある学園都市にある更生施設にいれられる」
 ひとみが人格に問題ある人を更生させる施設の話をした。
「施設に入れられると、土日以外は外出禁止」
 美優も、そのことを知っている。
「さまざまな人格検査がある」
 あたしも学園都市のことを知っているので、しゃべりだした。
「で、学園都市は治外法権だから、この国の法律が適応されないから保護されない。自治共和国独自の法律が適応される。で、南先生は大阪自治区で臨死体験をしたけど、あれは、とても危険なの。あのまま死んでしまって帰らない人がたくさんいて。日本本土の国籍がある人は、治外法権の場所でも臨死体験ができなくなったのよ」
 美優は少し興奮した口調で言う。
「臨死体験とは、肉体から魂が抜け出す現象。この世のものとは思えないものがたくさん見えるの。魂が身体から離れると視界が広く鮮明に見えて、それに周囲の人たちの心が読める。それで、とても強い幸福感を感じる。そのままお迎えが来て、あの世に行く人がいるの」

 あたしたちはコンタクトレンズ状のコンピューターを両目に入れた。あたしたち3人は目をつぶった。
「これから、善良な人の臨死体験が見られるのよ。あのままあの世に行った人の最後の思い出が」
「見えるわ」
「アクセスの許可がでたから」

 あたしは、生まれて初めて臨死体験をした人の思い出にアクセスした。
 天井から自分の体を見る男の人。周囲の人たちの姿が見える。そして、トンネルみたいなところで、遠くから光が見える。
 そして、美しいお花畑が見える。空がとても青い。そして、既にあの世にいる人たちらしき人たちが何人か迎えに来る。

 何か話しかけてくる。唇が動いている。

 笑顔があり、みんな幸せそうな表情をしている。そして、船に乗るところで映像が消えた。

「ねえ、見た。これが臨死体験なの」


 あたしたちはコンタクト・レンズ状のコンピューターを外した。

 午後九時、あたしたちは、ひとみのベットで三人で寝た。ひとみと美優の肌の感触を感じる。柔らかくてスベスベして気持ちいい。
「美優ちょっと、暑苦しいわ。あたしたちの身体が密着して」
「菜瑠。ごめんね」
 エアコンのスイッチが自動的に入った。
 徐々に部屋の温度が下がった。
「美優、ひとみ。少し涼しくなったわね」
「おやすみ。菜瑠」
 あたしの顔のすぐ近くに、ひとみの顔がある。いまにも頬にキスしてもいい状態。

 照明が自動的に切れて、部屋の中をうす暗くなった。
 あたしの頬に、ひとみの唇の感触を感じた。
 あたしの心臓がドキドキした。キスされたみたいで。

 それから、15分して、ひとみも美優も寝た。
 あたしは寝る直前、金縛りにあった。すごく怖かった。あのまま死ぬのではないかと思うほど怖い。死ぬということが、なぜ怖いのか説明できない。
 目だけが開いて、ひとみの実家の部屋の中だけが薄く暗く見える。あたしは金縛りで幽体離脱できると期待したが、強引に腕に力を入れたら、あたしの腕が動いた。
 あたしの腕が、ひとみの身体に当たった。
「どうしたの。瑠菜」
「ひとみ。ごめんね。あれ金縛りが解けた」
「それは、精神的に疲れている証拠。ねえ、ちゃんと、のんびりすごせば金縛りにかからないから」
 あたしは美優に抱きつくつと、ひとみから嫉妬の感情を感じた。あたしは、ひとみと抱きしめた。あたしは、ひとみと抱き合う形なった。ひとみの心臓の音がかすかに感じる。
「菜瑠の肌は、なめらかで気もちいいわ。私、菜瑠のことが大好きなの。ねえ、これからもよろしく。明日も早いから、寝ましょう。菜瑠、おやすみ」
「おやすみ。ひとみ」
 あたしたちの隣にいる美優は、すやすや寝ている。あたしたちは全裸で寝ている。
 あたしは人が死んだらどうなるのか、考えているうちに寝てしまった。

美優からの連絡。あたしはどうしたらいいの

朝、目が覚めたとき、あたしたち三人で一緒にシャワーを浴びようとした。
「狹い」
「ちょっと身体がぶつかる」
「ひとみ、交代でいい」
 美優が窮屈そう。あたしも、一人一人でシャワー浴びたほうがいいと思う。
「じゃあ、私、菜瑠と一緒に・・・」
 もしかしたら、石岡ひとみは、そのけがある。昨夜、あたしの頬にキスした。あたしは気が優しいので断れなかった。
 でも、美優は、あたしたちに意見を言う。
「ひとり、ひとりでいいでしょう。三人で交代で一人づつシャワーを浴びても。私、朝ごはんを作るから。ショートパンツとタンクトップを着て待っているから」
「ねえ、菜瑠。私たちは親友だから二人でいたいの」
 あたしは、その言葉を聞いて心臓がドキドキした。異性でなく同性から、全裸でシャワーを浴びる。
「ねえ。菜瑠、わ、私・・・。いいわ。でも菜瑠は、とてもかわいい」

 やはり、あのけがある。つまり同性愛。
 
 
 ひとみが私の顔をしばらく見つめている。ひとみの目が優しい。好意に満ちている。
 ひとみは長い髪を温かい水で濡らしている。笑顔で、あたしの顔を見ている。

「あら、私、見とれてしまった。菜瑠が、あまりにもかわいいから」
「ちょっと・・・」
 これ以上、私は何も言えなかった。
 お互いの身体を洗う。女の子ふたりだけで。

 それから二人でバスタオルで体を拭き、室内着のショートパンツとタンクトップを着た。そのあと、美優がひとりでシャワーを浴びる。
 テーブルのイスにすわると、ひとみの視線が熱い。あたしの顔を見つめ続ける。
「ひとみ、あたしの顔に何かあるの」
「何もないわ。きれいな顔。ちょっと子供っぽいけど、美しい顔。肌が赤ちゃんのようにきれい。菜瑠はアイドルに向いているかも」
「そ、そんなことないわ。で、ひとみの両親は出勤したんだね」
「そうよ。お母さんは学校の先生。お父さんは警備会社の社員」
「そうなの。見つめないで、ひとみ。恥ずかしいわ」
 その時、ひとみが、あたしの手を握った。
「菜瑠、くち・・、いや、やめましょう」
「なんなの」
 あたしは困惑した。このまま進むと人には言えない事をしてしまいそうで。
「いや、私、性的な悩みがあって。異性に興味ないの」
「解ったわ。でも、あたし心の準備ができていないの。でも、ひとみも、とてもかわいいわ。茶色い長い髪が艶があって。白い肌がきれいだし」
 お互いに見つめ合う。

「や、やめましょう。なんだか変な世界に入りそうで」
 あたしは顔を赤くした。照れくさい。同性の女の子に好意をもたれた。
 ひとみの初恋の相手が、あたし?
 あたしは自分の顔を確認したくなった。


 あたしは恥ずかしくなって洗面所に行く。気を落ち着かせるために。
「ひとみ、あたしちょっと洗面所にいくから」
「いいわ」
 ひとみは笑顔で答えた。

 あたしの顔を自分で確認した。顔が子供っぽい。でも、まだ十三歳。背が低いから、小学生の女の子に間違われる。夏休み、露出度が高い服装で外出できる。
 
 あらゆるところに監視カメラで、あたしたちは監視され言動が録画されている。この社会の秩序を乱さない限り服装は自由。

 胸元に振動を感じた。美優からの連絡。鏡に美優の顔が映る。
「ねえ、菜瑠。特別なプライベート回線だけど。警察から許可が下りたの」
「美優なの」
 あたしのタンクトップから声が聞こえる。美優はシャワールームから、あたしに話しかけた。
「同性愛者でしょう。ひとみは・・・」
「わかっていたのね」
「だって、仕草でわかるわ。いかにも、女の子にしか興味なさそうだし」
「どうする、美優。あたし、ひとみを傷つけたくない」
「そうね。私、ひとみに心の準備させるわ。えーと、いまから神社へ向かいましょう。婦人警官と一緒に歩く女性はムスリマで人格者だから。今から三十分後に、神社の近くの通り向かうから。その人と相談しましょう」
「ありがとう」

 あたしたちの時代は、どんなに細かい情報も手に取るようにわかる。
 ひとみは、あたしの親友。でも、同性愛の恋人ではない。あたしは、石岡ひとみが大好き。彼女に恋しているのではなく人間として愛している。

八時五十三分。あたしたちは、ムスリマとお話しようとするが

 あたしは、ひとみに性的な意味で愛されている。あたしに恋心を感じている。でも、あたしは生理的に受け付けられない。女の子どうしが愛し合う。それを考えると気持ち悪い。
 ひとみはあたしの手を握り続けた。そして、あたしの顔を見つめる。

 そして美優が、ひとみに話しかけた。
「ひとみ・・・、これからカラオケに行きましょう」
「でも、朝食のパンを食べてから」
「カラオケボックスでも朝食が食べられるし。その後に、プールに行きましょう」
「わかったわ。美優」

 美優と会話しているとき、ひとみは手を握り続けるのはやめた。
「ねえ、美優。私のこと軽蔑していない」
「ひとみ。信頼して、私、同性愛のことを気にしていない。でも、菜瑠のことも考えて」
「うん」
「菜瑠。ひとみのことどう思っているの。正直に言って」
「私の予知能力は未熟で見抜けなかった。でも、私は、ひとみのことを尊敬している。親友だと思う。これが、あたしの正直な気持ち。あたしのことを好きなのね」

 ひとみは安堵の表情をした。


 室内着を脱ぎ、それから露出度が激しいエナメル質の服装に着替えた。エナメルの感触が何とも言えない。

 横、側面の肌が完全に露出している。下着をつける必要がない服装。エナメル質のピンクのホットパンツとタンクトップで外出した。背中と胸元が大きく露出している。お尻と胸に何とも言えない感触が心地いい。
 朝、通勤時間に誰もあたしたちを見ようとしない。男の人たちは、あたしたちを避けている。見ている方が恥ずかしいから、目をそむける。
「ちょっと待って。意外な人が来る。どうしよう」

 美優は若い男性から声をかけられたことを予知した。彼は一眼レフカメラを持っている。
「はじめまして」
「どうも、よろしく、私は田中美優。私たちの写真を撮りたいのでしょう」
 美優が笑顔で答えた。美優は、あたしたちの中で背が一番高く大人っぽい。美優は長い髪に大人っぽい雰囲気でしっかりしている。
「えーと、私たちの写真を撮りたいのですね。遠慮しなくてもいいですよ。でも私たち今、急いでいるから」
 若い男性は答えた。
「ムスリマの女性と相談でしょう。この通りに神社がある。彼女たちは午前八時五十三分に神社の近くを通りますから」
「よく予測できますね。と言うことは、あなたは警察官で、今日は非番」
「そうです。君たちは関東女学院の生徒だね」
「はい」

 着ている洋服がネットで接続している。あたしたちの情報は手に取るように解る。
「では、近くを歩いているムスリマに相談したら。性的な悩みを。石岡さんでしたね」
 ひとみは返事した。
「ありがとう。でも、私の性的な悩みは、どう思いますか」
「僕は宗教を信じていないから、同性愛を悪く思わない。でも、あのムスリマは相談に乗ってくれる。とても寛容な人だ」
「そうですね」

 予告どおり午前八時五十三分に、婦人警官と一緒に歩くムスリマとあった。彼女は夏でも長袖のシャツを着ている。ロングスカートの下に長ズボンを履いている。髪を完全に隠している。柔和な表情、とても優しそうな女性。
「はじめまして。あなたは関東女学院の生徒の石岡ひとみさんですね。私のようなものに、相談とは」
「私、なんだかとても悪いことしているみたいで。とても好きな女の子がいるのです。その子に恋しているの。同性愛のことはどう思いますか」
 

 ガチガチな人だったら、怒鳴りつけられる。または「地獄に落ちる」と脅されるが、彼女は柔和な表情で答えた。
「神のご加護がありますように。石岡さん、神様が祝福してくださいますよ。でも、とてもかわいいらしい服装」
 ひとみは、派手で露出度が高い服装を褒められて顔を赤くした。
「でも、ムスリマは露出した服装は厳禁でしょう」
「私は神に使える身です。人のことをとやかくいう資格はないです。石岡さん、自分を責めないで。神様があなたを愛していますから。今日中にカウセリングを受けることになるでしょう。職員が親身になって相談にのるわ」
「はい」
「カウンセラーに自分の悩みを打ち上げなさい。よいアドバイスをしてくれます。必ず悩みは解消されます。とても気持ち良い思いを夏休中に体験します。人生で最も充実した日々になるでしょう」
「わかりました。ありがとうございます」
「あとは何かありますか」
「いいえ」
「では、あなたに神様からの祝福がありますように祈ります」
 そのムスリマは柔和な表情だった。

 

 婦人警官と一緒に歩いているムスリマは、その場を去った。
 二十三世紀には特定の宗教団体を厳重に監視する『宗教法人法』と『テロ防止法』という厳しい法律がある。政府から指定された宗教団体の信者を常に監視する。礼拝するとき警察官が何人か来て監視する。

 でも信仰の自由はある。それは個人の尊厳を重視すること。または、社会の秩序を乱さない限りである。監視カメラや警察官、警察ロボットなどが礼拝所に二十四時間体制で監視する。

 ただし特権として、自分の脳を自由に操るナノマシンの費用は無料になる。税金や交通費の免除もある。つねに優しい警察官と一緒なので、孤独になることはない。

 公立学校と同じように、指定された宗教団体の宗教施設は、警察官が二十四時間常駐している。また、家庭集会までも警察官がつきそうように指導されている。公立の小学校や中学校、それに高校も警察官が常駐している。二十三世紀の日本には交番はほとんどなくなった。

 イスラム教信者だけではなくキリスト教信者も同じような扱いをされている。
 でも、日本列島内に住むムスリムとムスリマは、必要なものに恵まれているので、他文化には、とても寛容である。


 でも、あたしたちは宗教のことは全く知らない。

神社で気を落ち着かせて

 あたしは、ひとみと腕を組んで歩く。ひとみの肌の感触を感じる。肩とか腕の感触を感じる。なんだか、暑苦しいく気持ち悪いけど、言葉で言えないし、拒否できない。ひとみの汗が、あたしの肌に流れる。
 ひとみが、あたしと腕組んで体を密着する。お互いの汗で身体が湿る。ヌルヌルした感触が何とも言えない。ひとみの身体は皮下脂肪が多いので柔らかい感触が気持ちよく感じる。あたしは、このままだと人に言えない世界に入りそう。あたしは罪悪感みたいなものに襲われそうになる。ひとみと一緒に全裸で抱き合いたいという誘惑を感じる。あたしは、このままだと、ひとみのことを恋してしまいそうになる。

 あたしたちは下着をはかないで、ホットパンツとタンクトップを着ている。
 お尻に何とも言えないホットパンツのツルツルした少し硬い感触がする。真夏だから下着をつけていない。
 あたしたちの着ている露出度が高い服もネットで接続している。あたしのタンクトップから早い脈拍が、ひとみに伝わる。あたしは心臓がドキドキしている。美優にも、あたしのドキドキが解る。
「菜瑠、大丈夫。気分は大丈夫。心臓がすごく早く動いている」
「大丈夫よ。美優」
「でも、心拍数が早さは異常。呼吸も普通じゃない。冷たい栄養ドリンクを持ってきたのね」
 あたしは、喉が渇いて冷たい栄養ドリンクを飲んで気持ちを落ち着かせた。
 
 そのとき知り合った若い男性が言う。
「気を落ち着かせるには、神社に行ってお祈りをする。そうすれば気持ちが落ち着くよ」
 あたしたちは、ホットパンツとタンクトップの下にサポーターも下着も穿いていないのが、わかるように、真横の肌が露出している。大きな穴が空いている。

 
 すぐ神社に入り、水を飲んだ。そして、あたしたちは神社の賽銭箱の前で、お祈りをした。お祈りをすると、少し気が落ち着ちついた。
「ねえ、写真を撮っていい」
 彼は声をかけ、あたしたちのエナメル質のピンクのホットパンツとタンクトップ姿の写真を撮った。ホットパンツとタンクトップの色が自由に変えられるし、さまざまな柄が表示される。
「いいわ。かわいいく撮って」
 小刻みなシャッターの音が聞こえる。
 撮影された写真は、あたしのスマートフォンですぐに見られる。
 
「かわいく撮れている。あたしは背が低いけど、脚が細く長い」
「菜瑠はスタイルがいいから。それに成長期でしょう。これから背が高くなるわ」
 美優が、あたしに言った。美優が、あたしたちのリーダーみたいな存在。
「ねえ、気が落ち着いたでしょう。菜瑠、この人は、私たち最初のファンなのよ」
「そうなの」
 あたしは彼を見る。

「そうだな。僕がファン、第一号だと思う」
「でも、すごい暑さ。顔が暑い。今日の気温は、正午になると三十九度になる。地球温暖化で夏は、ものすごく暑い」
「ねえ、お兄さん。熱くないですか。長袖のシャツに長ズボンで」
「えーと、これはエアコン付きの洋服だから身体は涼しい」
「そうですか」
 ひとみは言った。
「でも、今の女の子は、大胆に肌を露出したいの。紫外線対策クリームを塗ったわ」
 あたしは、ひとみに意見を言う。
「さっきのムスリマの人のように、衣服のマイクロエアコンで身体の温度を下げられるのよ。そのほうが涼しいのよ。直射日光から守られるのよ」
 ひとみは、露出した服装が好き。本当はヌードモデルになりたい願望があるが、まだ十二歳なので、それができない。ほとんどの女の子は夏はビキニ水着みたいな方がいいという。
「でも、露出度が高い服だと肌に涼しい風が当たるのが心地よいが、とても熱い熱風くると肌が焼けそうに感じる。それに今、私たちが着ている服の生地の感触がダイレクトに感じるから気持ちいいのよ」

 でも、露出度が低い夏の服装もできる。半袖の膝丈の長さのワンピースとか。
 その服装だと流行おくれで、かえって目立つ。
 今の流行の女の子の服装はビキニの水着と同じ。

パンツを穿くと気が引き締まる。何を着るか、迷う、ひとみ

 あたしたちは服装がだらしないから気が抜けるので、一旦、ひとみの実家に戻り、清楚な服装に着替える。

 あたしはミニの半袖のワンピースを着ようと思う。美優はショートパンツに半袖のTシャツにその上にタンクトップ。ひとみは、何を着るのか迷っている。
 あたしたちは、ひとみの家に誘ったが、お兄さんは嫌な予感を感じて帰る。あのお兄さんの前で全裸になって、あたしたちのきれいな裸をダイレクトに見せたい。でも、これは犯罪である。あたしたちは自制した。
「ご、ごめんね。家に誘ってくれて、でも、ぼ、僕はこれで帰るから。楽しかった。また、会おうね」
 あたしたちが、これから着替えるところを見せたいという誘惑を強く感じた。未成年の女性が全裸を見せるのは犯罪になる。学院の名前を傷つけることになる。で、あのお兄さんは顔を赤くして帰った。

 それから、あたしは清楚なミニの半袖のワンピースを着る。ブラをつけると胸が少し締めつけられている。パンツを穿くとお尻が引き締まる。

 下着をつけると気合が入る。

 美優も活発な女の子らしいショートパンツ。当然、下着をつける。学院の校則でも制服の下には必ず下着を履きなさいと学生手帳に書いている。ひとみは、まだ全裸のまま何を着るか迷っている。

「ひとみ、何を着たいの」
「私、今朝、着た服でいいわ」
「ねえ、ひとみ。今まで月曜日から土曜日まで緊張の連続だった。授業が終わっても、毎日、補習と部活。で、特別に私たちだけ夏休みには宿題がない。あと三十九日も休みがあるの。ねえ、ひとみ、気合を入れるためにスーツを着たら」
「菜瑠、清楚なスーツを持っている」
「あたし、バックから出すから」

 あたしのバックから紺色のスーツを取り出した。
「ねえ、サイズが小さいけど、ひとみ大丈夫」
「うん。菜瑠の服なら喜んで」
 ひとみは、あたしのスーツを着るが、ひとみは私よりも身長が十センチ以上も高いので、身体に合わない。ひとみの身長は百五十八センチもある。中学一年生にしては背が高い方である。
「菜瑠、成長期なのに洋服買いすぎよ。でも、少し窮屈でも着られるでしょう」
 ひとみは、あたしの無地のミニスカートと白のブラウスに着替えた。
「ちょっとキツイ。私には無理だわ。窮屈で」
「じゃあ、どうする。ひとみ、かなりレトロだけど、チェックのミニスカートに白の半袖シャツを」
「え! これじゃあ時代おくれよ。勘弁して。すごく目立つのよ」
「でも、これじゃあ昔の女子高生の服装なのよ。みんなが振り向くわよ」
「そっちのほうが恥ずかしい。それに昔の女子高生のミニスカートだとパンツ穿かないとお尻が丸見えじゃないの。私、パンツを穿くとお尻に違和感を感じるの」
「じゃあ、女学院の制服を着なさい。ひとみは、気がゆるみすぎ」
「そんな・・・」
「ひとみ。服装で気分が変わるのよ。もう少し自制しなさい。女学院のミニスカートは、めくれないようにできているからパンツ穿かなくても、お尻が見えないのよ」
「うん。これから女学院の制服を着るわ」

 あたしたちは、下着を穿くと気が引き締まる。ひとみは嫌々ながらノーパンで女学院の制服を着た。
 これから、あたしたちはカラオケボックスと室内プールに行く予定。

カラオケボックスに入った私たち

 あたしたちは、流行に走らず慎み深い夏服でカラオケボックスにはいった。ひとみだけは、関東女学院の制服で入る。ひとみは、実はパンツ穿くのが嫌い。どんなタイプでもサイズのパンツも、お尻が締めつけられるから。
「ひとみは、あたしたが見守らないと暴走するから」
「うん。ちゃんと、ひとみを見守って。美優」
 ひとみは、あたしの顔を微笑んで見つめる。
「ねえ、明日、ひとみの定期的カウンセリングの日でしょう。それから中学生になると身体に変化がくるし。それにいつまでも子供のままじゃないから」
「はい」
 ひとみは素直に返事した。今年の夏休みは、ひとみにとって最も楽しい夏休みなると予言された。
 美優は少し大人っぽい。やはり本気でアイドルになる子と一緒にいると、しっかりしている。頼りになる。あたしは美優がいないと何もできない。
「ひとみ、なんでアイドル育成の関東女学院に入ったの」
「別に入学するつもりは全然なくて。ただ、興味半分で転入試験を受けたの。それで、もうひとりの子が、いかにもやる気まんまんの女の子もいたの。本気だという雰囲気だったけど試験を受けずに落とされて、私がそのまま入学することになったの」
「でも、勉強が難しすぎない。まるで授業の内容が高校生のレベルだよ。それに思考力を使う問題も多すぎる」
「そうね。あたし美優がいうように、レベルが高すぎると思う。なんというか『ゆとり』が全然ない。日曜日もアイドルになるためのレッスンに補習でしょう。日曜日くらいゆっくり休ませて欲しいわ」
「でも、私は美術の大学で芸術を入学するために必要と思って。ロボットでは作れない人間だけしか創造できない芸術作品を作りたいのよ」
 美優が将来の話をした。

 あたしは、ひとみが夏の解放感で暴走して、あたしに抱きついたり強制的に口づけをされ、あたしの身体でいろいろと変なことするではないかと考えると気持ち悪くなる。ひとみは露出症でビキニ水着よりも露出度が高い服装で街を歩き自分の裸を見せたい。でも、あたしは、身体に自信があっても、そこまでする気になれない。
 美優も同じ。美優もスタイルもいいし、きれいな肌をしている美少女。でも、ひとみの好みに合わせられない。それに流行の服装も露出度が高すぎる。これではビキニの水着と同じ。ひとみはエナメル質のセクシーコスチュームを着たい。この服装は露出度がとても高いのでビキニの水着よりもエロい。
「ひとみ、あたしのことを好きになるのは良いけど、肉体関係だけは勘弁して」
 ひとみの表情が暗くなった。泣きそうな顔をした。
「菜瑠、私のことが嫌いなの」
「そうじゃなくて」
「ねえ、プラトニックな付き合いならいいでしょう」
「うん」
「でも、あたしもどちらかと言うと異性が苦手。だって男の子は、なんとなく汚い感じだし。乱暴そうだし」
 あたしが気を利かせて、ひとみをがっかりさせないことを言ったら、美優から厳しいこと言われた。
「ねえ、ひとみに変な期待させないほうがいいわ。菜瑠、嫌なら嫌でいいのよ。それで壊れるくらいの友情なら本物の友情じゃないわ」
「ねえ、美優。これは、あたしたちの問題なの。厳しいことを言わないで」
 あたしから、ひとみの肩を抱いた。
「ひとみ。あたしは、ひとみのことが大好きだから」
「菜瑠・・・、ひとみと事を、あとで傷つけることになるわよ。どうなっても知らないから」
 美優は少し困惑した。
「で、ひとみ。学院の制服を着て少し気が引き締まったでしょう」
「でも、お尻に違和感を感じる。パンツを穿くと」
「ひとみ、みんな、パンツを穿いているわよ。それに慣れないと。まあ、思い切り回転してもスカートがめくれないようにできているからノーパンなのかわからない。その代わり担任の先生のスマートフォンでどんな下着を穿いているかわかるのよ。学院内だとノーパン・ノーブラがすぐわかるのよ」
「そうね。よくできているわね。私、パンツ穿くのは学院にいるときだけ。寮に戻ったらすぐにノーパン。あと日曜日もノーパンなの。パンツはお尻に違和感を感じるから」

 女学院の制服はミニスカートが基本である。
 長い脚が目立つ。アイドルを育成する女学院だから少し派手なデザイン。
 ひとみの髪は校則ギリギリの長い髪。背中の真ん中まで伸びている。

「ひとみ。長くツヤがある髪がいいわね。それに、声がかわいい」
「ありがとう」
 ひとみの喋り方は、甘えた雰囲気で声が高い。

「では、カラオケをはじめます」
 自動的に予測した曲が演奏した。モニターに歌詞に合った映像が映し出される。
「あら、あたしたちの好みを予測しているのね。では、あたしから」
 あたしは歌を歌うのが嫌いではない。あたしの好みをカラオケボックスが予測している。
 これは、あたしが超指向性スピーカーで聞く曲をカラオケボックスが自動的に好みの曲を選ぶ。この時代には、ほとんどヘットホンというものがない。

 あたしの目の前のモニターに歌詞が表示される。それを歌う。
 歌い終わったとき点数が出る。
「六十点。もう少し努力しましょう」
「菜瑠、アイドルは歌が上手でなくても大丈夫よ」
 美優が言う。次は、ひとみが歌う。
 ひとみの好みを予測して、次の曲が演奏された。

「ねえ、スマホで、ひとみの写真を」
「いいわね。制服で歌うのは。でも、うちの学院の制服、デザインが派手なのよ」
 ひとみの好みは、少し大人っぽい歌。中学生の乙女には早すぎる内容の歌詞。性的に倒錯した歌詞。どこかのインディーズ系の作品のカラオケが流れた。
「で、ひとみの点数は」
 美優が言う。
「なんと三十五点。ねえ、ひとみ、あたしの歌は下手と言っていたくせに」
「ごめんね。菜瑠。私、もっと歌の練習しないと」
「ひとみ、このカラオケボックスは、ちょっと採点が厳しすぎない」
「でも、私たちはアイドルを育成する女学院生だから」

 その時、ひとみがトイレに行きたがっている。
「私、ちょっと、トイレに行ってくる」
 
 それから、ひとみは二十分くらい出てこないので心配になった。
 

ほぼ全裸に近い、ひとみ。あたしたちは、唖然とした

「美優、ひとみはどうしたの」
「菜瑠、心配する必要はないわ」
「なぜなの」
「それは、第三の生理現象。すなわち大人に近づいた証拠」
「えーと、あれをしているの」
「そうなの」
「あたしたちの寮で、個室なのが菜瑠と、ひとみだけでしょう。プライバシーがある程度は保てる。だから、生理現象まで監視されない」

 あたしは早生れの十三歳の女子中学生。まだ中学一年、その話を聞いて顔が赤くなった。恥ずかしい。
「と言うことは、あれをすると脳内にエンドルフィンとドーパミンが生成される。で、何を考えながら」
「それは、菜瑠のことを考えながら・・・、あら、不味いこと言ってしまったわ」
 美優も乙女。ひとみと違って恥じらいがある。手で膝を押さえた。美優の太ももに視線がとまる。美優の太ももの肌がとてもきれいなので見とれてしまった。あたしは徐々に、ひとみに染まっていくのを感じた。心が穢された気持ちになる。罪悪感を感じる。
「もし電脳化していたら、あたし卒倒するわ。あたしと愛し合うことを考えながらあれをしている。知らないほうがいい事があった方があるのね」
「そうよ。ねえ、菜瑠。嫌だったら嫌で、これ以上、ひとみを期待させないほうがいいわ」
「うん」
「でも、たぶん、ひとみは室内プールに行っても、必ずトイレで、水着を着たまま、あれをするわ。とても気持ちいいから。でも、今日は室内プールは行けなくなるよ。そんな予感がするの」
 あたしの事を思い浮かべながら、ひとみはトイレの中であれをする。脳内にエンドルフィンを生成する行為をする。考えただけで、とても気持ち悪い。ひとみは、あたしの事を性的な欲求のハケ口にしている。

 それから10分後、ひとみが戻ってきた。

 あたしたちは、唖然とした。
「ひとみ・・・、なんなの! このかっこうは」
「ちょっと、水着以上に肌を露出している。みっともない。恥部だけ隠して。それ以外、肌が露出している。お尻丸出し。これではセミヌードそのものだわ」
 あたしは、ひとみが胸のふくらみと、お尻までも露出しているので、唖然とした。
「だって、制服を着ていると窮屈で気が変になりそうなの。だから、ヌードになりたくて」
「もういいわ。ひとみは自制心がないのよ。まるで動物みたい。トイレの中で、あたしのことで変な妄想をしていたのでしょう」
 あたしが強い口調で、ひとみに言う。ひとみは自分が責められたと思って半分泣きそうだった。
「もう我慢できないの。ねえ、菜瑠、ワンピースを脱いで、私を抱きしめて・・・」
「ひとみは、意思が弱すぎ。いくら夏休みで、学院の部活や補習がなくなったとしても、これは異常だわ」
「ねえ、菜瑠、それに、ひとみ。今すぐカラオケやめて、それぞれ、あたしたちの実家に戻りましょう」

 あたしはひどく困惑した。ひとみは、今にも泣きそうだった。
「ご、ごめんなさい。だって、私、もともと女学院に入るつもりはなく、常に自制を強いられたの。もう、我慢できないの」
 あたしは動揺している。ひとみは、恥部以外は肌を露出している。背中とお腹、お尻と胸のふくらみまでも露出している。セミヌード状態。いくら露出度が高い服装が流行でも、これでは異様に思える。
「ねえ、ひとみ。制服を着て。そのまま外にでるつもりだったの」
「だって、私のきれいな肌、整ったスタイルを、外にいる、みんなに見せたいから」
「ねえ、いくらなんでも暴走しすぎ。ひとみ気がおかしくなったの。あなたは、まだ十二歳。裸で外に出たら犯罪なのよ。学院の名を汚すことになるわ。ことの重大性がわかっているの」
 あたしと美優は、ひとみを諭した。

「ひとみ。いくら夏休みでも、あたしたちは、常に公共の教育機関や警察に、それに学院を管理する教育管理会社などに監視されているのよ。担任の南先生でも、あまりにも、みっともない事したら擁護できなくなるのよ。担任の南先生にも責任を追及されるのよ。南先生は政治家を選ぶ権利がなくなるの。参政権を失うの。それは社会から信頼を失うことになるの。下手すれば南先生と一緒に北海道にある学園都市の更生施設に入れられるのよ。そこに行けば、どんな子が入ってくるかわからないわ。異性からひどい目に遭わされるわ。この社会は完璧なまでに管理されているから性犯罪がないの。でも更生施設は治外法権だから、南先生でも、ひとみのことは守れないのよ」
「わかった。美優、菜瑠、私、はめを外しすぎた」
「ねえ、トイレにいた時間が異常に長すぎたわ。ねえ、あたしのことを思い浮かべてやったのでしょう」
 ひとみは、答えられないので黙っていた。あたしは生理的に、とても気持ち悪く感じている。
「ひとみ、どうしてそんなに淫らなの。あたし、とても気持ち悪いの。ねえ、今日は、これでそれぞれの実家に戻るから。あたし気持ち悪いの。生理的に受け付けられないの」
 ひとみは大泣きしてしまった。あたしは、ひとみ以上に動揺している。

「菜瑠、言い過ぎよ。ひとみ、女学院でよほど我慢したのね。ねえ、たまにハメを外したほうが精神的にいいのよ」
 美優が、あたしの顔を見た。目でサインした。美優は、ひとみを優しい表情で見つめた。あたしはワンピースを脱ぎ、ブラとパンツだけになって、ひとみを抱きしめた。
 ひとみの肌が密着する。肌がすべすべしている。とてもなめらかで、きれいな肌。
「ごめんね。ひとみ。あたし言いすぎて」
 あたしも涙を流した。あたしたち二人は、しばらく大泣きした。

 今頃、遠くモルジブにいる南先生は、あたしたちのことを知っていると思う。

緊急カウンセリングを受ける

あたしとひとみは、しばらく泣き続けた。

「ねえ、涙を拭いて」
 美優は優しい表情で、あたしに言ってハンカチで涙を拭いた。
「でも、ひとみは、よほどストレスを溜めたのね。ねえ、緊急カウンセリング・センターに連絡したから。今日は室内プールに行くのはキャンセルして」
「そうね。せっかくハイテク水着を、みんなもって来たのに。泳がなくても水着を着るだけで気持ちいいのに」
「ねえ、菜瑠。このままだと、ひとみは暴走するし、かといって押さえつけると心が病んでしまう。ねえ、緊急カウンセリングを受けたあと、夏休みの計画をたてなおしましょう」
「いいわ、美優」
「だって、あたしたちの中学1年の夏休みは今だけしかないし。それに、学院の授業は難しいし試験問題も八十点以下だと、早朝補習を受けて、もう一度追試を受ける。それにダンスと歌のレッスンも受けないと」
「なんというか公立の中学校よりもはるかに厳しい」
「だって偏差値が高いでしょう。でも大学への進学には有利だけど」
「そうね。ねえ、ひとみ緊急カウンセリングを受けましょう」
「うん」

 ひとみは、ちゃんと下着を履き、女学院の制服を着た。
「やはり制服すがたの、ひとみはかわいいわ」
「そうよ。さっきの姿は異常だわ。今の女の子は、みんなビキニ水着みたいな服装で外出するけど、やはり服装がちゃんとしないと気が抜けるわ」

 ひとみは自分のスマートフォンを取り出して、教育機関の相談所に連絡した。

 偏差値が高いほど精神が病む確率が高い。確かに進学や就職に有利だけど、それだけ脳にプレッシャーがかかる。それに、倫理的な観点から電脳化や薬で、性格をよくすることや、頭をよくすることは禁じられている。それぞれの力に応じて努力するしかない。

 一部の戒律主義の宗教信者だけが、それを許されている。でも機械や薬でも、人間は完璧な心は持てない。結局、だれでも人間は罪を犯す。死後の世界で地獄に落ちるという不安をなくすために、人工的に人格をより完璧なものへと変えるができるが、完璧に近づけば近づくほど、自分の心の醜さがよく見えてくるので死後の世界の不安が永遠に払拭できない。宗教を信じると、死後の世界への恐怖がより強くなる。神様の裁きが、とても厳しく感じる。

 電脳化による臨死体験ができれば、死ぬことに対する恐怖がなくなるが、臨死体験をすると、とても気持ちいいみたいなので、そのままあの世に逝ってしまう人が多いので禁止された。
 
 そもそも、あたしたちは宗教を信仰することに強い不安を感じる。電脳化によって人工的に人格が変えられロボットのような『完璧な人格』というプログラムに支配されると、あたしが、あたしでなくなる。自分の人格が消去される。別の人格へと変えられることが、とても怖い。だから、女学院では宗教を信じている子は誰一人としていない。

「ねえ、もうすぐ緊急カウンセリング機関の人が迎えに来るわ。ひとみ」
「うん。気が少し落ち着いた。私、どうかしていたわ」
「仕方ないわ。勉強とレッスンのしすぎだし、自分の余暇がなかったから」
「でも、ひとみ。よく我慢したわね」
「私、気が変になっていたのね」
「いいのよ。もう気にしないで」

 気がつけば、あたしは、ひとみを抱きしめ続けていた。ひとみは女学院の制服を着ている。あたしは、下着姿のままだった。あたしは半袖のミニスカートのワンピースを着た。全身を映す大きな鏡を見ると、あたしの下着が透けて見える。でも、下着姿が見られても、あたしは別に恥ずかしく感じない。最近の女の子は、あまり下着を着たがらない。
 ひとみは精神的に、かなり疲れていた。たぶん、あたしたち三人が精神的に疲れたことを知っているので学院から夏休みの宿題を出されなかったと思う。

独裁者でも監視されている。政治家と官僚たちの質素な生活

 あたしたちは、カラオケボックスの外で待機するように指示された。
 真夏の日差しが眩しい。清楚な服装でもネットで接続している。あたしたちの服には太陽電池で稼働するエアコンがあるけど、太もものところが強い強い日差しが当たるので肌が熱い。あたしたちは、太ももにエアスプレーで紫外線から守るようにした。スプレーを振り付けると冷たく感じる。太ももに日差しの熱さが感じない。現在の気温四十一度。でも、吹き付ける熱風で全身が火傷するのではないかと思うほど熱く感じる。外はとても暑い。だから外出している人がほとんどいない。

 ひとみは緊急カウンセリングを受ける。強い日差しでは女学院の夏服では、すごく暑いので、樹の下で待機した。直射日光から守られるが風がふくと、焼けるような暑さをかんじる。
「こんなときエアコンつきのニーソを穿けば良かった。そうすれば足と太ももが涼しいのに」
「しっかりものの、ひとみが初歩的なミスをして」
「そうね。ひとみ、大丈夫。ひとみは公立中学校では優等生だったでしょう。偏差値七十三くらい」
「うん。模範的な女子と呼ばれていたの」
「でも、あたしたちの学院に入ると、もっと賢い子がいる」
「レベルが高すぎ。私は四人が入れる部屋にいるけど、みんなとても賢いのよ。夏休み前の期末試験は平均九十点。それも公立中学校よりもレベルが高い試験で。どうやったらそんなに勉強ができるのか不思議だわ」
「ひとみ、試験の内容は難しかった。あたし、半分しか回答できなくて、だから、毎日、早朝と放課後の補習を受けて追試でなんとか赤点にならないですんだわ」
「そうね。今の勉強の仕方は、ゲーム機感覚なのかな。授業を聞いてノートにメモして、それを暗記するのではなく、初めから試験問題集を全部暗記するのよ」
「そうしないと勉強ができない。だって毎日、補習と部活でしょう。それに日曜日もアイドルになるために自主的にダンスのレッスンを受ける。勉強する時間がないのに、みんな難しい勉強ができる。それに思考力が必要な試験があるけど、みんなスラスラ問題を解ける。不思議だわ」

 それから二十分後、緊急カウンセリングの女性スタッフがロボットカーで来た。あたしたちが、まだ食事していないことを知っている。
「こんにちわ。あら、朝食とお昼も、まだ食べていないの。あなたたちは。よほど深刻な問題だったのね。でも連絡してくれて、ありがとう」
「どうも、忙しいところ、ありがとうございます」
「そうなの。夏休みになると、急にハメを外して問題行動をする子が、たくさんいるのよ」
 女性スッタフの二人から案内された。山梨広域市の中心部へと向かうことを説明された。二週間のあいだ一日三時間の性教育の研修を受けることを告げられた。
「では、ロボットカーの中に入りましょう」

 あたしたちはロボットカーの中に入る。イスを全部使えば八人座れるが、室内を広くするために、五人までしか座れない。車内が広く感じる。

 あたしたちは東京西地区内の教育管理会社の建物に向かう。約十五分で教育管理事務所の高層ビルに到着した。

 そのロボットカーから降りて、建物の中に入る。あたしたちの事情を聞く。
「そうだったの。それは大変だったわね。ちょっと中学生の女の子には厳しすぎますよね。関東女学院の理事長に至急連絡します。私たちの社会は独裁者でさえも監視されています。当然、政治家や官僚は全て高潔な人格者のみしか政治に参加させないシステムです。それに政治に参加して名誉と権力があっても給料は安いです。それに全ての国民のためのベイシックインカム制度は、政治家と官僚には適応されません。どこかで仕事をしながら政治活動をします。だから地方公務員や国営企業の職員よりも忙しく生活は貧しいです。あのビックブラザーの給料は月十四万円の固定給です。夫婦共稼ぎで狭く古いアパートで生活しています。ビックブラザーの身内が生活費と政治活動資金を補助しています」
「そうですか。でも国全体の生活向上のために空いている時間に政治家として活躍されているのですね」
「そうです。昔の民主主義社会のような矛盾をなくさせました。今の政治家と官僚はみんな、とても質素な生活をしていて、言動を厳しく監視されています。だから独裁者だから何をしてもいいということはありません。国のために自分の命さえ捧げる覚悟がなければならないのです」

 全体主義とは民主主義の脆弱性を補う政治システム。政治家は全て善良な人ではないと政治活動をさせないシステム。金銭欲がない人格者だけしか政治家になれない。

 担任の南先生は選挙人選挙に毎回立候補している。南先生は政治に詳しい。政策について細かいことに目をつける。それぞれの国会議員のことを知り尽くしている。十八歳以上になれば選挙人を選ぶ選挙で選挙人に投票できる。選挙人が国会議員や市議会議員を投票する。南先生は教師だから社会的に信頼されている。選挙人選挙で当選すれば、政治家を選ぶ選挙で信頼できる政治家を投票できる。簡単に言えば間接選挙である。 

 政治家が体調不調で政界から引退することがある。そのとき補欠選挙があるが、選挙人を選ぶ選挙を行う。選挙で投票をする人を選ぶするシステム。政治のことが詳しい人で、政治家の言動を監視している人。政策について詳しい人。社会的に信頼されている人のみが政治家を選ぶシステム。昔の民主主義政治では、誰でも彼でも同じ一票であった。
 
 でも民主主義では常に大きな政党のみが、どんな時も圧勝する。これでは第二次世界大戦の時のナチスと翼賛会などの一党独裁体制と、たいして変わらない。

 一般庶民は政治に対して無知で無関心である。

 だから形だけの民主主義になり、個人の尊厳と人権が守れないと思って、初代ビックブラザーは全ての政党を一つの政党に統合させた。複数政党制でお互いの足の引っ張り合いは無意味である。選挙制度そのものは無意味。選挙では良い政治家が選ばれない。

 初期の全体主義社会では、民主主義勢力による激しい抵抗があった。『全体主義・共産主義』反対運動が盛んだった。初代ビックブラザーは汚いやりかたで大金持ちになった資産家、悪徳経営者の財産を全て没収させた。その資産額は気が遠くなるような天文学的な数字である。日本の総資資産額は百京円。百兆円の一万倍の金額。これでは一パーセントの富裕層と九十九パーセントの貧困者で社会がなりたつ。よって天文学的な資産を全て社会資本の強化、教育と福祉に割り当てた。貧困がなくなり社会が安定すると徐々にビックブラザーの理解者が増えた。
 二十二世紀、傲慢な経営者に洗脳された人たちによるテロが頻繁に起きた。傲慢な経営者に洗脳された従業員たちが仮想新興宗教でテロ活動を組織化した。とある新興宗教(地下鉄サリン事件)の信者のように、過疎地で化学兵器・細菌兵器・機関銃などを秘密工場で作る。洗脳された人たちによる一般市民に対する無差別殺人テロが頻発化した。その結果、より安全な社会を作るために、監視システムを強化した。傲慢な経営者たちを次から次へと逮捕する。(粛清の強化政策の実施)厳しく取り締まり、社会の秩序を破壊する重大犯罪者として死刑を言い渡した。死刑というのは建前で秘密裏に人体実験をした。すなわち脳外科手術を強制的に行う。局部麻酔で頭の皮と頭蓋骨を外す。脳に電極を埋め込む。電脳化の人体実験である。ある意味では凶悪犯罪者よりもひどい扱いだとみなされた。
 
 数万人もの資産家やテロリストを強制収容所で脳外科出術による人体実験を行う。

 その時に人間の脳から未知の物質が採取されることが発見された。
 脳から噴水のよう幸福物質が吹き出す現象がある!

 マイクロマシンやナノマシンが飛躍的に進歩して、人間の脳とコンピューターが合体した。人格を変えられて社会復帰させられる。金銭欲の塊である人たちを、精神的な欲求をもつ人間へと変化させた。
 釈放された経営者たちは、戸籍上、別人になった。逮捕前とは違う顔と人格と名前になり、無欲で謙虚な人格になった。従業員の幸せを考えて社会に貢献するようになった。


 ビックブラザーとは善良な独裁者の称号となった。でも、政治監視員とか政治批評家、マスコミや警察に監視される。ビックブラザーは、みずからの意思で監視されることを望んでいる。

五十四歳の少女・金町凛音。あたしたちは四人の生活がはじまる

「ねえ、ひとみ。リボンつけたら」
「そうよ。長くってきれいな髪。それに大きな赤いリボンをつけたら」
「あら、ウサギさんみたいで、とてもかわいい」
「なんなの。菜瑠、人がさんざん悩んでいたのに」
「みなさん。お待たせしました。石岡ひとみさんを担当する。金町凛音です。よろしくお願いします」
 耳が隠れる少し短い髪に髪留めをしている。オデコが出ている。髪が、とても黒い。無表情な彼女は、あたしたちと同じくらいの年齢に見える。でも、とても落ち着いた雰囲気がする。
「石岡さん。はじめまして」
 彼女は無表情に挨拶をした。無口な雰囲気がする。
「はじめまして」
「で、柏原さん。たいへんでしたね。でも、これからは石岡さんの言動に動揺するこなく夏休みを過ごせますから安心して」
「はい」
 あたしは、不思議な少女と思える金町凛音という、あたしたちと同じくらいの年齢と思える少女を見つめた。いや、正確に言えば年齢不詳の女性というべだろう。
「何かあるのですか」
「いいえ。とても不思議な感じで。とても落ち着いている雰囲気があるので」
「そうね。もうこの仕事して三十二年ですから」
「と言うことは、金町さんは五十四歳ですか」
 あたしは唖然とした。例のアンチエイジング技術で、彼女はあたしたちと同じくらいの年齢にしか見えない。
「でも、どんなに若く見えても歳ですから、無理はできないですわ。あなたたちと遊ぶと翌日は筋肉痛になるので」
「そうですか。でも、どう見てもまだ十代前半」
「まあ、全世界の女性はいつまでも若くいたいですから」
「そうですね。で、昔は美人でないとか、かわいくない女性がたくさんいたのですね」
「そうです。遺伝の問題とか文化的に遅れて封建的な思考が根強いと、たいていの女性は、美しくないです」
「そうね。昔の田舎は、かわいくない女の子とか、美人ではない女性が多かった。たいていの場合、一生結婚しないで過ごす」
「ねえ、そんな言い方しないの。昔の人たちに失礼よ」
 あたしは、ひとみに注意した。

「で、石岡さんでしたね。とてもかわいい女の子ですね。多くの女の子たちの憧れの的になるのは間違いなしですよ」
 ひとみは嬉しそうな表情をした。凛音は、ひとみの顔を両手で触った。
「そう言ってくれたら嬉しいです。だって、私、少女趣味で女の子にしか興味ないの。男の子は嫌いなの」
「で、柏原さんに恋しているのですね。相手は女の子ですよ」
「そうです。ほんとうは」
「石岡さん、これ以上言わないで」
 無表情の女性、凛音は、ひとみに注意した。

「で、これから二週間、あなたたちの精神的なリハビリを行います。今後のスケジュールを既に作りました。でも幸運ですよ石岡さん。最高の夏休みになりますから」
「はい」
「関東女学院では暇がなかったですね。女学院の理事長には、もっと『ゆとり』が取れるように指導します」
「ありがとうございます」
「で、石岡さん。いま、淫らなことを考えましたね」
「え! なんで解るの。私は、まだ電脳化していないのに」
「仕草で解ります」
 あたしは、ひとみが淫らな女なので少し苛立ちを感じた。
「ひとみ。考えていることは、この人に読まれるのよ。何を考えていたの。正直に言って」
「菜瑠の肌を・・・」
「やめて」
 あたしは強い口調で叫んだ。生理的に受け付けられない。とても気持ち悪い。
「柏原さん。石岡さんのことどう思いますか」
「とても大事な親友ですが、肉体関係をもつのは抵抗があります」
「正直な意見ありがとうございます。で、これからロボットカーに乗り、山梨広域市の観光地で気分を落ち着かせます。どうか楽しい思い出ができますように。それから、私のことを、凛音と呼んで」
 金町凛音は、初めて微笑んだ。
「でも」
「いいの。私は永遠の十四歳なの。気分は女子中学生なの」
「解りました」

 私たち四人はロボットカーに乗り、地下を走る高速道路を通る。四十五分後に山梨広域市の温泉地にあるの高層ホテルに到着した。
 最上階から見ると山に囲まれている。二百年前から廃墟になった建物がたくさん見える。多くの森林があり、野生動物がたくさん棲んでいる。
 あたしたちは、カウンセリングを受ける部屋に入り、金町凛音という女性から、学院生活の悩みを打ち明けた。

山梨広域市のホテルにて

 あたしたちは山梨広域市のホテルで過ごすことになった。
「石岡さん。食事は私と一緒に」
「はい、凛音さん」
「石岡さん。緊張しなくてもいいですよ」
 凛音さんは、今年で五十四歳だけど、どうみても十四歳にしか見えない。あたしたちから見ると少し大人っぽいお姉さん。とても落ち着いた雰囲気がする。人生で数多くの忍耐をしたと感じる。柔和な目つきをしている。
 ひとみと凛音さんは手をつなぎ続ける。そして凛音さんは、ひとみの顔を凝視する。
「金町さん」
「ねえ、私は永遠の十四歳。永遠の少女なの。凛音と呼んで。ひとみ」
「はい。凛音」

 あの凛音さんも、ひとみと同じ同性愛の性癖がある。
 美優とあたしは、ホテルの休憩室の長いイスでくつろいだ。
「やはり、あの女の人も、そのけがあるのね」
「でも、子持ちなんでしょう」
「そうなの。スマホの情報だと娘は二十七歳で既婚。孫までいるの」
「そう。でも女って、いつまでも若くいたいのね」
「そうよ。今はアンチエイジングで年齢を自由に操作できるのよ」
「でも、人によっては年相応の落ち着いた女性が好みの男性もたくさんいるのよ」
「そうだけど、みんな若くなる。そうすると美少女とかアイドルの価値って下がるじゃないの」
「でも、体力的には長時間ダンスがつづけられるのは十代だけなの。だからダンスが上手じゃないとダメのよ。長時間、激しい運動に耐えられないとアイドルの仕事はできないのよ」
 あたしは、身近なところに同性愛者が多くいることを実感した。でも、統計によれば女の子の半分は同性愛者である。
 それに、あたしは、ひとみから肉体関係を求められることがなくなって気が落ち着く。
「ねえ、菜瑠。あなたは同性に好かれるタイプなのよ。とてもかわいい顔しているから」
 あたしの髪は若干短い。肩まで髪が伸びていない。黒い髪で内側にウェーブがかかっている。毎朝、前髪が揃わないのが悩み。寝癖で髪が滅茶苦茶になることもある。

 あたしと美優はホテルの部屋で、一人でベットで寝る。ホテルの部屋には、二つのベットがある。
 そして、美優と一緒に夏休みの計画を立てる。
「ねえ、私は女学院を卒業したら美術大学に進学するわ。美術は人間ではないとできないから。どんなに性能が良いロボットでも、芸術作品は作れない。まあ、鉛筆画で写真と同じ絵は描けるけどね」
「でも、ロボットだと偽札も作れるのでしょう」
「それができないようにプログラムされているし、そもそも現金というものは、今の時代、廃れて、なかなか手に入らないのよ。今は電子マネーの時代だから」
「そうね」

 午後六時、あたしと美優の二人だけでホテルのレストランで夕食を食べる。タンクトップとショートパンツというラフな服装で。
「なんだか落ち着くわ。ひとみは、あたしが口に入れたスプンを舐めるから」
 あたしたちはノーパン、ノーブラで気が落ち着く。昔の女の子が、みんな常に下着をつけていることが信じられない。
「それが嫌だなの。気持ち悪いの」
 あたしは美優に愚痴を言い続けた。
「間接キスでしょう」
「うん」
「ひとみは、あたしの事を性的な目で見ている。それが気持ち悪いのよ」
「で、菜瑠は、男の子は好きなの」
「え・・・! 男の子は苦手。べ、別にひとみに気を使ったわけではないのよ」
「そうなの。で、あれは覚えたの。菜瑠は個室でしょう。寮では」
「いや、まだなの」
「そうね。私は四人部屋だから、あれがしたくてもできないのよ。とても気持ちがいいと言うけど、私もまだやったことないの。夏休みに覚えるけど」
「やめて、いやらしい話を」
 あたしは美優に強い口調で言ってしまった。
「ごめんね。でも私たち中学生なの、性に関心もたないと」
「ひとみは子供なのよ。裸で外出して、外で歩いている人たちに裸を見せようとした。全裸よりも刺激的なコスチュームで、不特定多数の男性に裸をみせようとした。犯罪なのよ」
「だって、ひとみのスマホのカメラで自分撮りしても警察のクラウドで検閲されるのよ。ひとみは警察から注意されたと思うの」
「いや違う。注意されたのは、担任の南先生なの。そのことはクラスメイトのみんなに秘密にするように警察に頼んだの。そこまでやったら、ひとみは犯罪者あつかいされるから」
「そうだね。大阪自治区なら合法なのに」
 担任の南先生は、仕事が好きだけど、いつも叱られてばかりいる。そんなにアイドルを育てるのが楽しいのだろうか。
 ストレスをためていないだろうか。あたしは南先生のことが気にかかる。今頃はインド洋にあるモルジブ・シティのホテルにいるだろう。

 午後七時、あたしたちは美優と一緒に大浴場に入る。ひとみと凛音さんは手をつなぎ、狹いお風呂の中で抱き合っていた。あたしはすぐに目を背けた。
「ねえ、美優。見ないほうがいいわ。ひとみたちを」
 それを聞かず美優は、ひとみたちを見た。
「でも、ひとみの表情は陶酔している。すごく気持ちよさそうで」
 あたしも、ひとみの顔を見た。見た目が十四歳でも、凛音は大人の女性。女のツボを心得ている。ひとみは、既にあれを寮の個室の中で覚えている。それに比べて、あたしはまだ子供。凛音という女性は、ひとみの感じやすいところに指で触っていると考えると、震えが止まらないほど気持ち悪い。

 あたしたちは、とても恥ずかしい気持ちを感じた。
 でも、これからどんどん性に関する知識が増えると思う。

 あたしは女子中学生。どんな優等生で勉強ができても性的なことには目覚める。あたしは、いやらしい穢らわしいという気持ちと、とても気持ちがいいという気持ちが入り混じる。あたしは、まだ十三歳の乙女。性欲というのもを実感できない。性について、穢らわしく感じる。

 

 「戦う民主主義」との戦い

 あたしは、自分勝手な人、自己中心的な人が嫌い。
 で、いまの日本は長いあいだ平和が続いたので平和ボケしている。

 ホテルに戻った。
 あたしたちは全裸になって、お互いの身体の肌や身体のラインを見つめる。
「美優、とてもスマートで肌がきれい」
「ありがとう」
「ねえ、ホテルの理容院にエステに行かない」
「また、エッチなコスチュームを着るのね」
「でも、ここはホテルの室内だから全裸でも、東京市内で着る古典的な服装でもいいのよ」
「そうね。ねえ、どうせ男の人は、エッチな服装の菜瑠に目を向けないわ」
「でも」
「いいわ。古典的な服装で行きましょう」
 
 二十世紀にナチスが敗北した。ユダヤ人の大量虐殺を行ったという暗い過去がある。
 そこから「戦う民主主義」という政治思想が生まれた。ファシズム思想の根絶を目標としている。でも二十三世紀の現代社会ではファシズム思想なしでは平和な生活はありえない。民主主義は遇衆政治や自己中心主義に拝金主義つながる。そこから富の独占が行われ貧困になる人が増える。民主主義は「基本的人権」というが、過剰な過密労働と長時間労働、それに学校や職場内でのいじめがある。それで「基本的人権」守られるだろうか。学校では、いじめ自殺がある。そんな環境では個人の尊厳と基本的人権なんて絵に書いた餅に過ぎない。

 口先だけの「人権」。これでは誰もが幸せになれない。

 二十一世紀の中期からは、多くの人たちは劣悪な政治家しかえらべられない議会政治に愛想つかせた。善良な独裁者による「戦うファシズム」が多くの人を虜にした。「戦う民主主義」との熾烈な争い起きた。流血を避けるために実験的に国の中に国を作る。国の中の国、すなわち自治共和国内は民主的な統治を行う。どちらが暮らしやすいか比較できる。そして日本連邦という国ができた。



 

山梨広域市 性の自由がありすぎる街

 山梨広域市では、広範囲の地域を管轄する広大な街。長野県の南半分まで管轄するから表面積がとても広い。東京市よりも人口が多い。

 あたしたちは、観光地である広域市を歩くと、他の女の子たちとくらべて浮いている。慎しみ深くミニスカートを穿いてニーソで太もものほとんどを隠している。半袖シャツの上にタンクトップを着ている。美優もミニスカートのワンピースを着て、長袖のジャケットを着ている。美優は、マイクロエアコンがあるジャケットを着ているので涼しそうだった。茶色い靴の上は太ももを隠すニーソを履いている。

 山梨広域市でも、ビキニ水着のよりもセクシーな服装をした女の子がたくさん歩いている。
 
 ここは観光都市。性に対して自由な街。いたるところにバーチャルリアリティセンターもあれば、ラブホテルもたくさんある。性的なパートナーを求める出会いの場もたくさんある。政府による人口増加対策である。
 だから女の子たちの肌は露出度が極端に高い。全裸よりも恥ずかしい服装をしている。

 極、希に私たち以上に、肌を出さない服を着る子もいる。たいていの場合、その子は宗教を信じている。
「頭をスカーフで髪の毛を隠している」
「ということはムスリマでしょう」
「でも、あたし宗教がとても怖いの。だって15歳以上になれば、電脳化の注射をする。前頭葉や側頭葉に宗教生活のプログラムを入れられる。そして好みが今までと違ってしまう。そして、おまわりさんとか婦警さんが、24時間体制で監視する」
「でも、税金を払わなくてもいいのよ。宗教を信じると特典として交通費も無料だし」
「税金を払わなくても所属している宗教団体に収入の十パーセントを自動的に寄付する義務があるのよ」
「でもロボットタクシーや地底リニアなどの公共交通は免除。まあ、ときどき警察のパトカーに乗せてくれるし、警察官はみんな優しいから二十四時間、いつでも話し相手になってくれる」
「で、自分とはなんだろう。宗教を信じれば自分が自分でなくなる。死んだあとにパラダイスに行くためには自分の人格を消去しなけらばならない。当然、憎しみ嫉妬、憤り、人が許せないなどのネガティブな感情もなくなる。性欲も貪欲もなくなる。食欲さえも聖職者からコントロールされる。自動的に聖書を読むように操られる。神様に祈るようにプログラムされる。宗教を信じると教会やモスクから操られる。これだと生きたロボットだわ」
「でも宗教にはいると、信者全員の思い出を共有できるのよ。過ちを侵さないために。アンドロイドやロボットと同じことが人間にもできる。それにPDSTという心の深い傷も消してもらえるのよ。過去の記録を消去させることで」
「なんだか怖い。宗教が」
 あたしたちにとって宗教ほど怖いものはない。あたしは、そのことを考えると、怖くって震えがとまらない。死んだあとパラダイスに入るために自分が自分ではなくなる必要があるから。

 あたしたちは、背中をださない。とても短いマクロミニスカートの中にパンツをはいても白いパンツをチラチラみせないので、逆に周囲の人たちから変な目で見られた。美優はジャケットを脱ぐ。日差しで、すごく熱く感じる。極薄のワンピースでパンツとブラが透けて見える。あたしは、周囲の女の子たちから変な目でみられる。パンツとブラをつけるとダサいとみなされる



 たぶん、あたしたちのことを時代遅れのダサい女の子だと思っている。

「恥ずかしい。女の子たちは、あたしたちのことを変な目でジロジロみている」
「で、仕方ないからホログラムを使いましょう。これを使えば、他の女の子と同じ、エッチな服装に化けられるから」
 あたしたちはホログラムで、とてもエッチな服を着ているように化けた。
 背中まるだしの服装。お尻の半分が飛び出すホットパンツの姿になった。
 そうしたら、周囲の大人の男の人も女の子たちも、あたしたちのことをジロジロみなくなった。


「ねえ、明日からビキニの水着よりも性的にアピールするコスチュームを着ましょう」
「え! 嫌だ」
 あたしは、こんな服装をするのが恥ずかしい。あたしの考え方が古すぎるのだろうか。
「でも、今は夏休み。女学院の規則は就学中だけなの。夏休みは女学院の校則は『映画館(政治・宗教・ポルノのみ)と男女混浴の公衆浴槽(出会い系と性風俗)に入らない』以外は全て無効なの。ねえ、今からパンツとブラを履かないで過ごしましょう。いいね。ここではノーパン、ノーブラが常識なの」
「うん」
 あたしたちの学院では、水泳とかレオタードでダンスのレッスンをする以外は、パンツとブラを必ずつけるよう校則で決められている。
 
 あたしは十三歳の乙女。当然、昔は都内とよばた東京市では、昔の女の子のようにタンクトップとショートパンツで少しだけ肌を露出をするのいいけど、二十三世紀の東京は、既に田舎。そこで育ったあたしは過度の露出で外出するのは抵抗がある。これは山梨広域市と東京市では文化が異なるからだと思う。

 そもそも性犯罪は百五十年以上おきたためしはない。変質者であると思われ、性犯罪をおかすと予測された男性は何もしなくても確実に警察のお世話になる。そして北海道の山奥の学園都市で更生するための教育を受けるように強制的に送られる。痴漢やストーカーをしたくでも、事前に警察に予知されて、それがしたくてもできない仕組みになっている。

 山梨広域市は東京市や名古屋市、長野市、そして港町で比較的に人口が多い富山市や金沢市などに警察官を送り込める。超高速緊急車両の基地でもあり、警視庁の本庁がある。甲府広域市の学生が大人になれば九十パーセントが警視庁に就職して、そこで働く。残り十パーセントの人たちが観光地で働くロボットを管理をしている。警察のヘリコプターの基地もいくつかある。ここで東日本全体の治安を管理している。

 厳重な管理化では性犯罪は起こしたくても起こせられない。性犯罪、痴漢をするまえに警察官に捕まる。それが百年以上も前から続いている。

全天周映画を見て、あたしは放心状態

 あたしは山梨広域市の公共教育、すなわち中学生のための性教育の講習会にでた。あまりにも過激で精神的なショックが強い。しばらく声がでない。あたしは○姦された女の子たちの叫び声の全天周映画を見て、激しく動揺した。エッチなコスチュームからでる声が聞こえない。
「菜瑠。菜瑠」
 美優の声が聞こえるが、精神的な衝撃が強いので答えられない。放心状態である。あたしと同じくらいの中学生の男子が無断でスマホのカメラで、あたしの顔の写真を撮った。
 放心状態の女の子の顔ほどエッチなものはない。それをカメラでとらるがシャッターが動かない。
「ねえ、やめなさい」
 美優が、あたしの写真を撮ろうとした男子に言った。
 あたしの顔写真を撮ろうとした男子はスマホのカメラのシャッターを何度も押しつづけた。
「ええ、なんで。どうしても写真が撮れない。シャッターが反応しない」
「そうよ。無断で人の顔を取れないようにできているの」
「ごめんなさい」
 あたしは二十分以上、放心状態が続いている。はじめて、とてもエッチなビデオを見た。三百六十度の全天スクリーンに超鮮明な画像でエッチなビデオを見た。あたしがエッチなことを男の人たち何人かと同時にとしたと錯覚するほどリアリティを感じた。
「ねえ、菜瑠。しかっりしなさい」
 そのとき、あたしの両頬に強い衝撃を感じた。往復ビンタをされた。それで我に返った。
「痛い」
 破裂するような音が頬から四度も聞こえた。頬の皮に強い痛みを感じヒリヒリしている。あたしは強烈な痛さで頬を手で押さえた。美優は女子中学生なので手加減を知らない。
「痛い。何するよ」
 あたしは強い口調で美優に向かって叫んだ。
「当たり前でしょう。そのくらいのことしないと菜瑠は気を取り戻さないから」
 あたしの両頬がヒリヒリする。
「ねえ、もうトイレに行く時間がないのよ。でも、おしっこしたいなら、ここでお漏らししても大丈夫なの。ここは性の楽園だから」
「でも、あたしトイレに行きたくなった」
 あたしは強い尿意を感じる。
「だめよ。すぐに次の講習があるから」

 それから、ビデオを見た感想を、一人づつ述べた。あたしがビデオの感想を述べた。
「あたしには衝撃が強すぎて、それで放心状態になりました。今すぐにトイレに行きたいです」
「では、前に出て、みんなが見ている前で、おしっこをしてください」
 その時、あまりにも悲しいので泣き出した。隣にいた美優はあたしを抱きしめた。
「ねえ、菜瑠。一緒にお漏らししましょう。それなら平気でしょう」
「え!」
「だって、一人では恥ずかしいでしょう。菜瑠、私もおもらしを付き合うから」
 その時、講師の男性が言った。
「じゃあ、五分だけ休憩。柏原さん、トイレに行ってください」

 あたしはエッチなコスチュームを着ている。みんなに目立つようにコスチュームはピンクから真っ赤に変色した。
 美優は講師に言った。
「先生、ひとりひとり発育が異なるのです。柏原菜瑠さんは、まだ完全に子供です。で、自由なセックス。男性五人で一人の女の子を○姦するビデオは過激すぎだと思います。一人の女子中学生の女の子に複数の男性が相手というのは・・・」
「このビデオは大阪自治区が作ったものです。あそこは年齢に関係なく、本人の同意があれば何歳でもセックスをしてもいいのです」
「大阪自治区は性が解放されすぎです。小学生の子供がポルノ映画に出られるし。あそこまで行くと、倫理的に問題があるのですか」
「本土と倫理観が異なりますから。まあ、未成年の女の子とエッチなことができるのは、この地球上では、この日本連邦の大阪自治区民だけですよ」
「でも、いろんな形のセックスがあるけど、性に免疫がない柏原さんは精神的なショックを受けました」
「そうですか。でも性の欲望と快感には限りはありません。でも空想でなく、本当に女性の手足を切りとって喜ぶようになれば・・・」
「わかっています。即刻アフリカ送りですね。情状の酌量の余地なしのサイコパスです」

 それから五分後、あたしが着ているエッチなコスチュームが服を脱がせてくれない。そのまま、尿意に我慢できなくなって女子トイレで、お漏らしをしてしまった。おしっこで服が濡れている。ブーツの中には、あたしのおしっこが入っている。とても気持ちが悪い。
「ねえ、おもらしは気持いいのよ」
 エッチなコスチュームが話しかけてくる。
「やめて、変な話をしないで」

 講堂の中に入ると周囲の子がたちが、あたしを見つめている。
 とても恥ずかしい。
「だから、これからの時代は、みんなが見ているところでお漏らししたり、オ○ニーしてもいいのだよ。今は二十三世紀の八十年代。今は西暦二千二百八十年。時代はより快楽を求める」
 あたしがおもらしすると予測したのか、美優は消臭スプレーで、あたしのおしっこの臭を消した。ブーツを脱いでタオルで、あたしの足を拭いた。でもお尻が濡れたままなので気持ち悪い。

「菜瑠さん。あなたは今、十三歳です。人生は短いです。もっとエッチなことを楽しんでください」
 あたしが着ているエッチなコスチュームは、みんなに聞こえるように普通のスピーカーで話しかけた。他の子にも聞こえる。性の講習会に参加した女の子が言う。
「柏原さん。おしっこしたくなったら、この教室の中で恥ずかしがらず、おしっこをしてもいいのですよ。私も遠慮なくおもらしをみんなの前でしますから」
 あたしと同じ年齢の子が変な励まし方をしている。

 そして、講師が変なこと言う。
「で、柏原さん。東京は田舎になった。こことは文化と価値観が違うから」
 

「で、今のかわいい女の子は、同じ年齢の男子よりも女子にモテます。すなわち女の子の同性愛者が多いので、女の子は女の子と上手に愛しあってください。女の子は女の子とエッチなことをすれば、男女が抱き合うよりも、強烈な快感を感じるようにできていますから」
 あたしは、徐々に女の子たちそのものが怖くなってきた。あたしの周囲にいる女の子たちから好かれている。あたしを見て性欲を感じている。でも、警察の力が強いので、あたしのことを性的なはけ口として、あたしを目立たないところに連れて行って集団で、あたしのことを襲えない。でも、徐々にあたしは同性愛の世界へと導びかれる。とても気持ちが悪く怖い。身体の震えがとまらない。

 あたしは石岡ひとみよりも、親友の田中美優を警戒するようになった。あたしは今晩も、美優と裸の付き合いがある。お風呂に入る前に全裸になったら、いきなり美優から抱きしめられ口づけされだろう。さまざまな方法で性的なイタズラをされる。

 ひとみは、永遠の少女、金町凛音と深い仲になっている。そう考えると美優があたしに恋するのは当然のなりゆきになる。

 あたしは美優なら、何をされてもいいと覚悟を決めた。

 

山梨広域市の婦警さんと相談して

あたしたちは甲府広域市の街を歩いている。小さい犬を一人で何匹か連れている人もいる人たちが休日を楽しんでいる。十代の女の子のように見える女性たちが、全裸に近いセクシーコスチュームを着ている。 肌を異常に露出している服装は百年も前から主流となっているので、誰もその服装に驚かない。

 全裸よりも恥ずかしい格好で街を歩く。周囲には花がたくさん咲いている。でも、地球温暖化に甲府盆地は、とても暑い。一年中、真夏日である。

 子供たちは超ミニ・ロボットカーで公園へ急ぐ。現在の気温は三十八度。肌が焼けるように感じる。

 コンビニでは、エッチなものがたくさん売られている。二十一世紀ならアダルトショップでも通用するものが平然と売られている。

「ねえ美優、あたし、あなたに何されてもいいわ。覚悟ができているから」
 美優が笑っている。肩を叩かれた。
「なによ。いきなり、でも、気をつけて、私、嫌な予感がする。あの石岡ひとみと金町凛音は昼夜逆転している生活している。凛音という女性を気をつけて。あの人は五十四歳。今まで数十人、いや数百人の少女と寝てエッチなことをしたわ。なんというか、あの人、仕事とエッチなことの区別がないのよ。まあ、仕事が趣味の女だから、ある意味、羨ましい限りだわ」
 あたしは強い不安を感じた。
「ねえ、どうする。美優。あたし怖い」

 その時、婦人警官から話しかけられた。
「あらかわいらしいコスチューム。いいお尻しているわね。肌が透き通るほどきれいで」
「はじめまして。婦警さん。お願い、私、怖いの。相談にのってくれますか」
「そうね。あなたの表情が暗いから、気になって。ねえ近くの公立小学校学校にいかない。そこで、ゆっくり話を聞きましょう」
 すぐにロボット・パトカーが着た。
「はじめまして。私、山梨広域市に所属する沢井ともうします。よろしく」
「よろしくお願いします。で、あたしは、柏原菜瑠です。で、とても嫌な予感がするの。あたしの親友、石岡ひとみが嫉妬されて友情が壊れると宣告され、五十四歳で見た目が女子中学生にみえる金町凛音に狙われているの。あの人にさまざまなイヤラシイことをされる気がして。今の時代、未来を予知するのは簡単でしょう」
「で、名前は戸松菜瑠さんで、現在は関東女学院に在籍しているのですね。寮の個室に住んでいるのでしょう。実家は東京市の西でしょう。ここは観光地で警視庁の本拠地がある。世界で、いや人類史上、最も治安が良い街。だから文化が違うのよ。驚いたでしょう。で、中学生のための性教育の一日目でショックを受けたのでしょう」
「そうです。よくわかりましたね」
「だって私、電脳化しているから、あなたのことは手に取るようにわかるのよ。ねえ、ゆっくり、お話しましょう。今は交番といえば小学校や中学校の教室なのよ。交番ではスマホのバッテリー交換から、医療の相談までなんでもできるわ」
「そうですか。で、あたしの親友、石岡ひとみと仲が悪くなるのですか」
「ああ石岡さんね。嫉妬の問題は一時的なの。石岡さんは、もっともっと気持ちいいことを体験するから。何度も臨死体験をするほど。それに、友情にヒビが入らないわ」
「ありがとう」
「で、もうすぐ公立学校に到着します。ここで、ちょっとお茶を飲まない」
「はい」

 公立学校は、まるで軍事要塞のように警備が厳重。
 あたしは網膜スキャンで、あたしのことを確認した。声紋認識に指紋認識、あたしの覚えている複雑なパスワードをタッチパネルに入力した。

 一人一人が各自のドアから入る。あたしたちは婦警さんと一緒に小学校の教室に入った。
「で、粗茶ですが」
 婦警さんたちは、お茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「ねえ、このコスチュームは人工知能が搭載されているのね。とても賢いように感じるけどエッチな事しか知らないのよ。安物のAIだから低脳なの」
「そうですか」
「だから、もし人間だったらダメ人間なのよ。安物AIのことを、いちいち気にしないで。というよりも、近い将来、気にしなくてもいいようになるから」
「はい。そうですか」
「で、金町凛音のことは気にしないで。何もしないから。でも・・・柏原さん、自分から女の子とエッチなことをするようになるから。その時、自分を責めないで」
 あたしは嫌ことを予告された。あたしが同性愛の世界に入り込む。それに、ひとみが臨死体験を何度もするというのは、どうゆう意味なの。

 美優もエッチなコスチュームを着ている。乳首だけ隠し、胸のふくらみが見える。背中がまるだしに、お尻の膨らみも見える。とても小さいパンツで恥部だけを隠している。太ももの半分が隠れるほどの長いブーツに、とても長い黒い手袋をはめている。
「ねえ、あなたたちは、とても可愛い顔をしているから、ホログラムで化ける必要はないけど、このコスチュームにはホログラムで、どんな人物でも化けれるのよ」
「そうですか」
「でも無数の監視カメラでは本当の顔がわかるし、個人に振り分けた社会保証番号で認識するのよ。自分の所有物に既に固定IPv6が振り分けているの。それにLSIタグという膨大の情報量があるチップで、誰のものなのか解るの。だから窃盗罪とか万引きは過去のものになったの」
「でも、あたし石岡さんと仲良くしたい」
「そうね。石岡ひとみが、あなたが通っている関東女学院を変えるわ。もう警視庁や教育管理会社、学園管理会社から理事長や校長先生に通達が届いている頃だし。でも、柏原さんは夏休みが終わったら甘えていられなくなることだけは覚悟して。気が合わない人と一緒に行動することになるから」
「そうなの。あの南先生は学園を変えたいと頻繁に言っていたのね。ひとみはとても知能が高いのよ」

 で、あたしと美優は、急におしっこをしたくなった。
「ねえ、遠慮しないで、ここでおしっこしてもいいわ」
「え! でも警察の施設でしょう」
「着衣したままおもらしするのは気持ちいの。慣れれば気持ちよく感じるわ。あとオ○ニーは、かわいい女の子なら、いつどこでもしてもいいのよ」
「それだけは、恥ずかしい。やめて」
「まあ、男性がエッチなことをしたくなったら、コンビニでそれを申告すれば、近くにいる女の子、または若く見える女性とエッチを30分以内でさせられるから」
 他の婦警さんも言った。
「今の男性は、男性の格好のままでセックスをしない。男性の格好のままするのは複数で一人の女の子を襲う○姦だけ。バーチャルリアリティは、仮想空間だからどんなこともできるけど気持ちよすぎて中毒性があるのよ。だから、できる回数が制限されているの。でも男性が擬似的に女の子になり、女子中学生と肉体関係ならいくらでもできるのよ。両者の合意があれば」

 あたしは、これほど性が解放された社会に驚いた。下手すれば、そのうち神罰を受けるではないかと思う。それが古い考えなんだろうか。
「ねえ、戸松菜瑠さんは東京市という田舎育ちだから、考えが保守的なのよ」
「そうです。でも、旧約聖書では性が乱れていて、ソドムとゴモラが神罰で滅びました。みんな同性愛をしていて。それに古代のいくつもの文明社会も同性愛者が多かった。少年に女装させて髪を長く伸ばさせて、エッチなことをして、道徳が退廃して文明が滅びました。だから、ある程度、自制心と道徳が必要です」
「わかりました。警視庁でも性に関する特別チームがあります。政府が認める範囲なら、娯楽として性を楽しむ権利は保証しますから」
 あたしは、この日本の将来に一抹の不安を感じる。

 徐々に進んできている民主化運動。民主主義社会になれば自己中心的になり富を独占して日本は潰れる。それに性の解放で社会は混乱する。その結果、日本は潰れる。みんな繁栄を謳歌しているが、滅亡は突然訪れる。その前に何とかしないと。

 民主化すれば、みんなが自己中心の生きたかする。そうなれば、政治と経済が混乱して昔のように富が一極集中して貧富の差が広がる。経済が混乱すれば、あたしたちの安定した生活が崩れる。全体主義という政治体制がなければ、みんなが自分勝手な生き方をして他人の幸福を考えなくなる。自分勝手な生き方すれば「自由と平等」という概念がなくなる。大昔から「自由と平等」は単語として存在していたが、たんなる理想論にすぎなかった。全体主義、一党独裁、そして強い独裁者がいるから、あしたちは、他の人の幸せを考えるようになった。それで、みんなが幸せでいられる。

 もし日本が民主主義になり、それぞれが自分勝手なことをすれば社会は大混乱に陥る。あたしは、そんな未来がこないように願う。

あたしは、ひとみから嫉妬される。金町凛音に優しくされた

 この時代の婦警さんの仕事は楽で暇。全く犯罪が起きないようにできているから。日本国内で犯罪が起きるのは民主的な統治している自治区や自治共和国ない。この日本連邦の本土は、人畜無害な人間しか生活できないシステムになっている。とての善良な人たちだけが、富を平等に分配している社会。そうではない社会では、貧富の差が激しい。

 あたしたちは婦警さんの勤務時間が終わるまで、小学校の教室の中で、駄弁り続けた。婦警さんの仕事は市民と仲良くなること。むかし交番といわれたところは、今では教会・モスク・公立小学校や中学校である。
「婦警さん。へんな質問だけど」
「ああ、仕事が暇ということ。それに、自治区や自治共和国で刺激的な仕事をしたいということ」
「はい」
「ねえ、この日本連邦という国は、全体主義・共産主義国家なの。政府を批判したりしても政府の支持者はほとんどだから、どんな意見でも微動だしない。で、ただし民主主義で統治している社会生活は、とても厳しいの。富が権力者や有力な経営者に集中している。安い賃金でこき使われる」
「そうですか。でも無職は認められないのですね」
「そう。国家のために働く義務がある。永遠に犯罪が起きない社会を継続させる。犯罪がおきては国家の恥。犯罪事件を起こされる前に、怪しい人を更生施設に送り込むのよ」
「そうですか。でも、あたし明日、『性の秘宝館』に行くように言われたの。多くの女の子たちがくる。今日はあたしを見る目が尋常ではなかった。あたしを性欲のハケ口にしようとしている」
「大丈夫よ。でも、あなたは自分から、女の子の身体を求めるようになるわ。必ず」
 あたしは嫌なことを宣告された。

 あたしと美優は婦警さんからロボット・パトカーで、あたしたちが泊まる高層ホテルへと送られた。

 

 あたしは美優と手をつなぎ、ホテルのお風呂で美優と抱き合うように狹い浴槽に入った。
「なにかが、おかしい。みんな欲望にとりつかれている」
「今は23世紀。公衆浴場では混浴が常識。そして気があったらエッチしていいのよ」
「だから、みんながエッチなことばかりしたら神罰が当たるような気がして」


 それから、全裸からネットで接続したパジャマもタンクトップとショートパンツを穿いた。
 鏡にはあたしの脈拍と呼吸数が表示される。タンクトップには人工知能が搭載している。
「今日はお疲れ様でした。明日の予定は、性の秘宝館で女の子同士の愛し合い方を勉強します。女の子同士が愛し合うことほど、この世には気持ち良いことはありませんから」
「ねえ、だまって」
 あたしは人工知能が搭載しているパジャマに大きな声で怒鳴った。

 部屋の中が静かになった。外の風景を見ると、山梨広域市の夜景が見える。そのとき金町凛音が来た。
 金町凛音は『百合道・八段』の国家資格をもっている。あたしのような子供を同性愛の世界に引きずり込むのは、指先ひとつでできる。
 凛音は黒い髪をしている。
「凛音さん。こんばんわ」
「こんばんわ。ねえ、明日は性の秘宝館に行くでしょう。で、あなたは女の子のファンがたくさんできるわ。でも、性欲のハケ口として」
「あたしって、そんなに美少女なんですか」
 凛音は、あたしの頬を両手で軽く触った。あたしの顔を優しい笑顔で見つめる。
「ねえ、背が低いことを気にしているでしょう。身長は、そのうちちょうど良いくらいに伸びるから。ねえ、あたしと手をつながない」
 凛音は全裸だった。あたしも全裸になるように指示した。

 あたしはパジャマを脱ぐ、そのまま凛音とベットの中に入る。
「ねえ、女の子どうしで愛し合うのは、この世で最も気持ちいいことなの」
 そのとき、嫌な雰囲気を感じた。背後に強い嫉妬の感情を読み取った。あたしは強烈な恐怖を感じた。
「菜瑠、どうして。菜瑠は、あたしのもの」
 ひとみは、半分泣きそうな顔で、あたしに訴えた。
 その時、あたしは凛音という女性に指で背中を触られた。とても気持ちがいい。あたしは凛音から、なにをされてもいいと思った。
「ねえ、かえして。私の菜瑠を」
 ひとみも全裸だった。
「ねえ、私は百合道八段。どんな女の子でも指先一つで同性愛の世界の虜にできるのよ。ねえ、ひとみ。あなたは、明日からもっと、もっと気持ち良い思いをするわ。人生観が変わるほど」
「そんなのことは、どうでもいいの。菜瑠をかえして」
「いいわ」
 あたしと凛音は、ベットから出た。床には脱ぎ捨てたパジャマがある。

「ひとみ。ごめんね。ひとみなら、あたしの身体に何をされても、大丈夫から。あたしのことを好きなようにして」
 その時、ドアを叩く音がした。

 凛音は全裸のまま、ドアから声をかけた。
「どちらさまですか」
「私たちは、石岡ひとみの両親です。娘がいつもお世話になっていまして」
 あたしとひとみは急いでパジャマを着た。
「ちょっと待ってください」
 ドアのカメラから、ひとみの母と父、それに弟がいる。その背後には婦警さんが二入いた。

 ホテルの部屋のテレビが自動的に、ひとみの両親の姿を映し出した。凛音は安心して全裸のままドアを開けて、ひとみの両親と弟をいれた。
「おねえちゃんたち。大丈夫。おねえちゃんが夏休みになったら、こんなところでお世話になって」
「大丈夫よ。学院の寮生活は厳しいけど」
「ひとみ。好奇心だけで試験を受けて。ひとみはアイドルになる気は全然ないでしょう」
「そうだけど。でも、学院は女の子だけ。それも、とてもかわいい女の子ばかり。でも、学院から報酬として、明日から、とてもかわいい女の子たちから痛い目に遭わされる。この痛さに慣れると、快感になるの。私のことを一日中、痛めつけるのよ」
「ねえ、ひとみ。女の子の恋人がいるでしょう」
「うん。ママ。紹介するわ。この子は、柏原菜瑠なの。背が低いけど、とても可愛い女の子なのよ」
「柏原さん。うちのひとみが迷惑かけて申し訳ございません」
「いいえ。ひとみはあたしの、しん・・・、いや恋人。でもまだ愛しあっていませんが」
「ねえ、ひとみ。とてもかわいい女の子を恋人にして、羨ましいわ。私もアンチエイジングで少女になりたいわ。私もアンチエイジングで十代に戻るから。一緒に青春を謳歌しましょう」
「お母さん・・・」
 ひとみは、静かな口調で言った。
「お姉ちゃん達はいいよ。女性だから。僕は男だからバーチャルな世界か、少女型の義体に脳を連結しないと、とても気持い思いができない」
 ひとみの弟はミニスカートに髪の毛には花飾りをつけている。ピンク色の洋服を着ている。ひとみのお父さんも、女の子らしい。可愛い顔をしている。とても優しそうな顔をしている。
「柏原さんだね。これからも、ひとみのことをよろしく。で、ひとみは明日から、数人の女の子たちと一緒に生活する。ひとみ、万が一、死んだときのための手紙は書いたか」
「お父さん。書いたわ」
「そうか。明日から、とても痛いことの連続だから。でも、ひとみの人格も、より柔和になる。価値観も変わるだろう。脳内にエンドルフィンが大量に生成される。この世と、あの世の境界線を何度も往復するだろう」
「でも、お父さん。私が万が一のことがあっても、私を痛めつける、あの子達のことを責めないで。私の自己責任で一日中、痛い目にあうから」

 あたしは、ひとみの言っていることが理解できなかった。
「ねえ、もしかしたら今晩で、ひとみと食事するのは最後になるかも。ねえ小さい時の思い出を語りましょう」

 あたしが泊まる部屋に、多くの料理が運ばれた。そして、ひとみはタブレット端末をもちだし、小さい時の思い出話を延々と続けた。



 

私たちは、バラバラで行動するようになった

 ひとみの両親と弟が帰ったとき、遅い時間になった。午後十一時を過ぎている。あたしは、毎日、午後九時に寝ている。とても眠いのでパジャマを着たまま寝た。

 ひとみの家族だけで、しばらく過ごしたいので、あたしは疲れているので一人でベットで寝た。金町凛音は、あたしに何もしなかった。ひとりでベットに入るとすぐ寝た。すぐ朝になった。全く夢を見ていない感じだった。
「美優、おはよう」
「おはよう。菜瑠」
「ねえ、凛音さんとひとみは」
 あたしは美優に質問した。
「知らないわ」
 美優はぶっきらぼうに答えた。
 美優の誕生日は来年の2月。遅生まれ。まだ12歳だけど、あたしから見ると大人っぽく見える。長いストレートの茶色い髪を後ろで束ねている。あたしとちがって、とても背が高い。まだ中学一年なのに、ひとみよりも身長が高い。軽く百六十センチを超えている。
 美優の足が長い。
 あたしは美優のあとを追いかけた。そして美優の手を繋いだ。
「なによ」
 美優はぶっきらぼうに答えた。そして、笑顔になった。
「菜瑠はすごくかわいい。究極の美少女になるわ」
「そうなの」
「で、ひとみと凛音さんは」
「ああ、あの人たちは、私たちと既に別行動。早朝、山奥の温泉つきの山荘に行ったわ。かわいい女の子たち五人で」
「そうなの」
「ねえ、私も実家に帰るから」
「そう。ねえ、だいぶ夏休みの予定が変わったわね」
「で、菜瑠。凛音さんが菜瑠の実家で、しばらく過ごしたいと言うから」
「そうなの」
「ねえ、菜瑠。凛音さんは、あなたの体を直接触らないわ。でも、菜瑠も、女子高生のお姉さんたちの性欲のハケ口にされるから。それだけは覚悟して」
「え!」
 あたしの目の前が真っ暗になって、歩くのをやめて老化でうずくまった。
「ねえ、しっかりして」
「しっかりしなさい。そうしないと、また往復ビンタをするわ」
「ねえ、あたしの気合を」
 その時、あたしの両頬から破裂する音が2度聞こえた。あたしは頬を手で押さえて痛みを耐えた。
 美優は、厳しい性格。泣き言を言うあたしを本気でビンタをした。
「ねえ、菜瑠。しっかりしなさい。今は女の子が女の子の身体を求めるのが当たり前なの。ひとみは、今のビンタよりも痛い思いを一日中体験するのよ。でも、ひとみは元気な姿で学院の寮に戻るのよ」
「ねえ、美優。ひとみはどこに行って何をするの」
「ああ、ひとみは、マゾだから。痛い思いを存分するのが好きなの。そうすると脳内に幸福物質が大量に作られるのよ。場合によっては臨死体験をするのよ」
「そうなの。ひとみは特殊だから」
「ねえ、菜瑠。今日は私と一緒に性の秘宝館に行くのよ。今日は貸切だから。菜瑠は自分から同性愛の世界に入り込む。強い罪悪感を感じるでしょう。それに押しつぶされそうなる。そのとき、あなたのことは、私が助けるから」
「そうなの。ねえ、美優、今日は、あたしは何人かの女の子たちから性的なイタズラをされるの」
「大丈夫よ。婦警さんやおまわりさんがいるから、襲われないけど。でも、必ず自分から身体を差し出すようになるわ」


 早朝のお風呂にはいり、あたしと美優は手をつなぎ浴槽にはいる。お互いに身体を洗う。

 そして、午前八時。あたしたちはセクシーコスチュームを着る。全裸よりも恥ずかしい格好をする。ロボット・タクシーは、あたしたちを性の秘宝館につれてくれる。到着したら、三十人ほどの美少女たちがいる。長い脚にきれいな透き通るようなきれいな肌をしている。髪には艶がある。黒い髪が自然な感じがする。

 美優は少し茶色い長い髪なので、少し目立つ。
 あたしと美優は手をつなぎ性の秘宝館に入る。

「ねえ。菜瑠。ホテルのトイレ行かなかったでしょう」
「うん」
「ここでは、おもらしもオ○ニーをしても、平気だから。菜瑠、オ○ニーを覚えた」
「いいえ」
 美優は呆れた表情をした。
「私は昨夜、菜瑠が寝ているときに初めてやったわ。何とも言えない気持ちなの。でも、オ○ニーが未経験でも、お姉さんたちから教えさせれるから。でも、菜瑠は単なる性欲のハケ口だと思っているから友達でも恋人でもないの。お姉さんたちは、菜瑠のようなかわいい女の子をオモチャのように扱うから」

 あたしは女に生まれたことを後悔した。女の子が怖い。あたしは女の子とよばれる女子高生のお姉さんたちに囲まれオモチャのように扱われる。
 あたしは、性的イタズラをされると考えると身体が震えが止まらない。美少女といわれる女の子たちが、とても怖い。

 後ろから見ると美優のお尻の形が美しく感じる。引き締まった身体をしている。あたしは背が低いし美優ほど体力がない。身体がとても細い。


 性の秘宝館の中を、美優と手をつなぎながら見学した。あたしは性の奥深さを実感した。でも、それによって、あたしの心が次第に穢れていくのを感じる。神様に罪深い私に祈りたい気持ちになるが、あたしは神様にどう祈ればいいのかよくわからない。あたしは神様に対して大きな罪を犯していると思う。

 施設の中の見学を終えた。あたしは、ひとみが夏休みが終わるまで、山奥にある温泉地の山荘で、とても痛い目に会う理由がわかった。ひとみはマゾ。美優から強く往復ビンタされるのは、ひとみとっては何でもない些細な刺激に過ぎない。ひとみは痛みを感じても不快に感じない。むしろ痛みが快感になる。
 五人の女の子、たぶん女子高生のお姉さんたちから、集団リンチのようなかたちで痛めつけられ、そして、一緒に寝て抱きしめられ、口づけをする。お姉さんたちから、ひとみは優しくもてなされる。三食の食事は、とても美味しいご馳走を食べさせてもらえる。女の子たちと抱き合うように温泉に入りリラックスする。翌日、朝食を食べ終わったあと、少し運動してから、プロレス技を長時間受ける。とても痛い思いをする。鞭で何十回も叩かれ続けられる。顔やお腹を何十発も殴られ続ける。それに耐えたらお姉さんたちから優しくされ一緒にベットの中で愛し合う。

 次第に痛みに慣れると、強い快感になる。気を失ったときに臨死体験をする。この世のものと思えない美しいお花畑を見るかもしれない。それで、ひとみの人格が変わるかもしれない。


 午前十時、全天周スクリーンの映画施設に美少女たちが集まる。女の子同士の愛し合い方の映画を見る。
 あたしは、女の子どうしが全裸で愛し合ったり、または、縛られて痛い思いをさせれるなど、さまざまな性のあり方を学ぶ。あたしは全天周スクリーンの映像を見ると、あたしは既に女の子とエッチなことをしたような気分になった。あたしは覚悟を決めた。あたしは美少女だったら誰でもいい。どんなことをされる覚悟をした。

「ねえ。ほんとうに、おもらししていいの」
「いいわ。でも、みんなが見ている前で、おもらししたほうがいいわ。舞台の上で一人一人が挨拶するから」
 あたしは、強い尿意を我慢しつづけた。今にもおしっこが出そう。

 午前十二時、二時間ばかりの性教育映画が終わり、一人一人の自己紹介が始まった。あたしは舞台の前にたち、そしてみんなが見ている前でおもらしをした。足元が濡れる。床があたしのおしっこで濡れた。
 あたしの目の前にいる女の子たちは、感動的なほど、とても美しい。これでは同性愛の世界に入るのは当然。
「あら、やっちゃったわ。我慢できなくて」
 ひとりの美少女の女の子が叫んだ。
「ねえ、気にしないで。おもらしする女の子はかわいいのよ」
「でも」
「ねえ。私と付き合って。あなたは関東女学院に通っている柏原菜瑠さんでしょう。小柄の身体がかわいいわ」
「ありがとう」
「だって、今の女の子は、みんな背が高いのよ。身体が小さい子はかわいいのよ」
「そうなの」
「ねえ、柏原さん。どんなタイプの女の子が好きなの」
 あたしは、秘宝館に見学した女の子たち全員が、あたしよりも美少女なので、どう答えるかわからない。数十秒後、あたしは考えたすえ答えた。
「みんな、あたしよりも美しいですし、とてもかわいいです。あたし、女の子が女の子を恋することが悪いと考えていたけど、それは古くさい宗教的な道徳だと思いました。目が覚めました。みんなのことが大好きです。あたし、どんなことをされてもいいです」
 あたしの事を好意的に見ている。でも、性欲に満ちた表情をしている。でも獣ような目で、あたしのことを見つめているので怖い。
 今にも襲われそうだけど、周囲には婦人警官やおまわりさん、警備員がいるので、絶対に暴走することはない。

 あたしは、美少女たちの反応が怖くって、おもらししたことを忘れた。

 午後三時に女の子たちの性教育が終わり、あたしと美優はホテルに戻った。
 外はとても暑い。熱い風で肌が焼けそう。ほとんど肌を露出しているので、熱風で露出した肌が火傷しそうだった。強い日差しで目がくらむ。眩しいすぎる。気温は四十度を超えている。激しく汗が流れつづける。あたしと美優はペットボトルの水を一緒に回り飲みをした。すぐに大きめのペットボトルの水がなくなる。
「すごい暑さだわ」
 美優の肌が汗で濡れてもすぐに乾く。


 午後五時、美優は秋田県の実家に突然、帰ることになった。外は熱い熱風で肌が火傷しそう。
「ねえ、これで私たちの夏休みは終わりだわ。とても楽しかったわ。あとは金町凛音さんが、菜瑠の実家にしばらく泊まるから」
「そうなの。百合の世界にはいって四十年だから、数百人の美少女と一緒に寝たのね。女の子と肉体関係を持ったのね」
「でも、あの金町さんは、菜瑠が嫌がることをしない。だけど菜瑠は、既に同性愛者になったのよ」
「そうね」
 あたしは、神罰を受けるかもしれないと悟った。
「ねえ9月の始業式のとき会いましょう」

 美優は紺色のスーツとパンツ(長ズボン)を履ている。背が高いので、まるで二十代の大人の女性のように見える。キャリアウーマンのように見えて、かっこがいい。美優が大人になれば、アンチエイジングをしなければ、あのような大人になると思った。

 それからロボット・タクシーは、あたしたちをヘリポートに連れて行った。
 空港には大型のジェットヘリが数台とめている。

 ジェットヘリの甲高い機械音が聞こえる。
「じゃあ、菜瑠。元気でね。菜瑠も痛いことに我慢しないといけないのよ。そうしないと人の心の痛みがわからないから」
「ねえ、もう一度、私の頬に往復ビンタをして」
 美優は背が高い。歳上のお姉さんのように見える。
 厳しい表情で、あたしの頬を四発強く往復ビンタをした。とても痛いので顔を抑えた。
「ねえ、顔を抑えないで。このくらいの痛さは何でもないでしょう。情けないわ」
 美優は強い口調で、あたしのことを叱った。もう一度、あたしの右頬を強くビンタをされた。頬が充血して赤くなっていると思う。頬がヒリヒリしている。
「ありがとう。気合が入った。ひとみは、一日中、今よりも痛い思いを耐え続けるのね」
「そうよ」
 ぶっきらぼうに答えた。でも、美優の表情は優しい。
「でも、あたしたちの世界は平和すぎる。だから、何か変な社会なの。全然、刺激がないの。刺激をみんな求めているのよ」
 あたしは変なことを言ってしまったと思った。
「それがどうしたの。この社会は過去の人たちの命懸けで築いた社会なの」
 美優の表情が厳しい。
「そうね。美優、あなたはあたしの大事な親友だから」
 美優は優しい表情になり、笑顔で答えた。
「ねえ、困ったことがあったら、いつでもあなたのところに来るから連絡して」
「ありがとう。美優元気でね」
「菜瑠、身体を気をつけて。無理しないで」
 あたしは美優と握手した。

 美優はジェットヘリに乗り込んだ。ジットヘリのターボ吸引器のとても高い機械音が耳につく。ジョットヘリが上昇して、東北方面へと向かう。

 美優を見送ったあと、あたしの頬に強い痛みを感じた。ひとみは、夏休みが終わるまで、美優が、あたしを殴ったよりも、もっと強く殴られ続けると思う。それに、強い痛みがともなうプロレスの関節技を長時間耐えなければならない。
 強烈な痛みは、不快感ではなく強い快感を感じさせるようになる。あたしは美優から叩かれた頬を抑えた。美優は腕力があるから、ビンタの力は半端ではない。頬がとても痛い。

 その時、金町凛音がミニスカートに半袖のブラウスの清楚な服装で来ていた。あたしの前に立っていた。
「ねえ。私はあなたに何もしない。あなたから進んで女の子と全裸で抱き合うようになるから」
「でも、金町さん」
 強い口調で言った。
「ねえ、私は永遠の十四歳なの。凛音とよんで」
「ごめんなさい」
 あたしは泣きそうになった。あたしは小学生の女の子と間違われるほど背が低い。身体が細いし、発育が遅れている。
「いいのよ」
 あたしの肩に手が乗った。優しくソフトな感触を肩に感じた。
 凛音は笑顔で答えた。そして、あたしの手を凛音は両手で握った。凛音の表情は優しい。とても五十四歳とは思えない。でも、目がとても落ち着いている。
 美優とは握り方が全然違う。美優は力を込めて力いっぱい強く手をつなぎ、あたしの手が痛くなるが、凛音の握り方は、優しい感じがする。指先から優しさ柔らかさを感じる。
「ねえ、菜瑠。しばらく菜瑠の実家に居候していい」
「歓迎するわ」

 あたしと凛音はロボット・タクシーに乗って高層ホテルに戻った。

ひとみ。特殊な性癖

 あたしと凛音は高層ホテルの部屋の中で過ごした。

 凛音は百合歴四十年、永遠の十四歳の美少女。先進国世界の女性たちはいつまでも若くいたい。アンチエイジング技術で自分の年齢を選べられる時代になって百年になっている。ただし先進国法では、科学的な倫理論で「遺伝子操作によるデザインされた子供の出産」「クローン人間」「必要以上に長生きする」ことが厳しく禁じられている。またそのような技術は日本連邦や北米、ロシア、欧州では全く開発されていない。
 凛音もいずれ高齢になれば、体力を失い老衰で死ぬ。人間は必ず死ぬ。アンチエイチングが、ごく普通に使われ、科学がある程度進歩した時代でも人間は死んだらどうなるか全く謎である。

 死んだ人間の脳細胞を取り出して、記憶や視覚を司る部分のみを一時的に蘇生せられる。その時、コンピューターに接続して人間の最後の記憶である臨死体験の映像を録画できるようになった。死亡した人の約二十パーセントが臨死体験をする。残り八十パーセントは全く意識がない。完全な無の世界である。

 
 
「ねえ、凛音」
 その時、凛音から顔を強く殴られた。
「な、何するの」
 あたしは動揺した。凛音がいきなり、あたしのことを殴るなんて夢にもおもわなかったから驚いた。
「ねえ、ひとみは、毎日、今のように殴られ続けるのよ」
 あたしは凛音から顔を強く殴られた。顔に傷がつかない程度の強さで。
「ねえ、痛みを感じ続けると脳内にエンドルフィンが生成されて、今のように殴られると気持ちよく感じるのよ」
「そうなの」
 あたしは殴られた左顎を手で押さえた。殴られたところが、とても痛い。
「ねえ、菜瑠。あなたも臨死体験をしたい」
「え! どうゆうこと」
「百年以上も平和な日常生活に飽きていない。この社会は平和すぎて、全然、刺激がないでしょう。非日常を求めているでしょう」
「そう思うわ。あたしが体験したのが、せいぜい金縛りくらい」
「平和と繁栄が長く続きすぎたでしょう。平和な日常生活は退屈でしょう」
「だからバーチャルリアリティセンターで戦争体験ができるのよ。それで、潜在的な闘争心が蘇る。で、男性は、一人の少女を襲って複数で○姦をするのよ」
「そうね。このような永遠に続く平和。それは人類の究極の夢だった。それが先進国世界では全体主義という厳格な規律のもとで実現したの。多くの人の命を犠牲の上で」
「いい時代に生まれて良かったわ。でも、何かがおかしい」
「で、人類の過去の長い歴史はサバイバルの連続だった。それには強烈な痛み。いや極限状態を多くの人が体験した。とても残酷な方法で」
「そう思う」
「でも、今は滅多なことでは怪我はしない。事故と犯罪と無縁の社会になった。だから、ひとみは痛みを求めて、ひとみの美しい顔と身体を見て性欲を感じる女ん子たちと夏休みが終わるまで過ごすのよ。ひとみは、それを望んだのよ。学院が頑張った報酬を与える形で」
「そうね。ひとみは公立中学校では模範的な女子生徒だった」
「そうよ。でも、監禁して拷問したり虐待するのではなく、一人の美少女として大事にされる。ひとみが耐えられる程度で痛みを与えられ続ける。長時間の痛みに慣れると、その痛みが快感になる。場合によっては生きたまま臨死体験ができるようになるの。ひとみは、幼児期から平和な日常よりも、非日常的な生活を求めていたのよ」
「そうなの。で、あたしも女子高生のお姉さんたちからオモチャあつかいされるのね。性欲を発散させための道具として。慰めものとして」
「そうよ。今は小学生と間違われるほど幼い顔に背が低い。でも、あなたが16歳になったときには、多くの女性たちを虜にするわ」
「でも、あたしアイドルになるよりも、ちゃんとした歌が歌えるボーカリストになりたい」
「で、あなたは運動神経が抜群。あたらしい娯楽を考え出す。それで社会は発展するのよ。そして、あなたの今、味方にしている人を、反動勢力、反体制派として訴えるようになる。まあ、生徒と先生との戦いが始まるわ」
「どうゆうこと」
「ねえ、よく考えればわかるでしょう。で、菜瑠は夏休みに、女子高生の女の子と、いろんなところにデートしたり海水浴したり、遊びに行って楽しい思い出をつくるけど、新学期になれば試練が訪れる。あなたを嫌っている人と共闘することになるのよ」
「そうなの」

 あたしは豊かで平和な社会に生きているけど、全然、幸せに感じない。むしろ多くの人が羨むほど裕福な生活をしている。
 そんな状態だから、あたしも、ひとみのように何か強い刺激を求めたくなった。

 
 あたしと凛音は、別々のベットで寝る。あたしたちは、半袖のパジャマを着て寝る。

 あたしは初めて、とても美しい風景が見える夢を見た。夢の中で、燃えるような青い空、きれいな山々、お花畑を見た。その美しさを夢の中で感動した。
 あたしの甘い生活は、この夏休みで終わる。そのあと厳しい試練がある。あたしも、ひとみのように誰かに殴られたくてしかたくなった。あたしもマゾだと思う。ストレスが足りなすぎた。目が覚めたとき、あたしは誰かに何度も殴られ続けたいと思った。



 あたしは、朝早く、凛音と一緒に目覚めた。
「おはよう。凛音」
「おはよう。菜瑠」
「ねえ、凛音。あたしの顔を何度でもいいから殴って」
 凛音は、動揺した。表情がこわばっている。凛音の目つきがちがう。落ち着いた目をしていない。
「昨夜、あたしを殴ったでしょう。ねえ、殴られると気持ちいの」
 あたしは強い刺激を求めている。毎日が平和すぎる。だから強い痛みを求める。
「ほんとに、いいの。ほんとうに殴るわ」
 あたしは凛音から顔を十発も強く殴られ続けた。とても痛いけど気持ちがいい。顔が傷がつかないか気になる。
 鏡を見たけど、凛音という自称、永遠の十四歳の女の子のパンチの力では、顔には傷もアザもできない。
「痛いけど。気持ちいい。ひとみは、夏休みが終わるまで、温泉地の山荘で殴られ続けるのね」
「そうよ。でも、あまり顔が殴られすぎると脳にダメージを受ける。鞭で打たれると肌に傷が付く。だからプロレス技がほとんどなの。でも、『ギブアップ』なしで終わるまで長時間、我慢するのよ」
「そうなの。あたし、もう何も怖いものがなくなった」


 窓の景色を見た。かつて多くの人口を抱えた日本という国のとても古い建物がたくさん残っている。大部分が廃墟になっている。草原や森林に、とても古い建物や自動車道路が隠れるような形になっている。本土の人口は、わずか二千万人だけ。かつては一億人以上の人たちが住んでいた国。これが日本列島である。急激な人口現象で、多くの都市は廃墟になった。この国は人間よりも万能ヒューマノイドロボットや人工知能を搭載したアンドロイドのほうが多い。人間が働く必要がなくなったが、治安維持のために、ほとんどの人は警視庁で働いている。




 

菜瑠の甘い生活

民主主義という政治体制は限界なんです。だから無能なエリートたちが日本を滅ぼします。
なんか新しい社会システムを望んでいます。
「ARIA」と「一九八四年」の中間的な未来社会を描きました。

善良な政治家による全体主義社会では、現代の民主主義社会より、はるかに良くなる。いつの時代でもアイドル産業は盛んである。
遺伝的要素とアンチエイチングで女性は美人しかいない。(美女しか結婚させないように仕掛けられている。非婚化社会の結果である)
10代の女の子は、全部、美少女ばかりいる社会でも、アイドルに憧れる若者が多い。
貧困がないから犯罪もない。厳重に監視しているから、とても治安がよい。警察官は暇である。警察官は市民の良き友だち。

現代とは異なる社会を描きます。

菜瑠の甘い生活

アイドル育成の女学院に、アイドルになる気がない、まったくやる気がない女の子が二人転入した。 クラスメイトは彼女たちを受け入れられるのだろうか。 現代社会では異物を排除する、いじめが多過ぎるが未来社会では、とても厳しい規律がある。 いじめもない。担任の先生は優しく、必ず守ってくれる。それに甘える菜瑠。でも、一部のクラスメイトはストレスを感じる。 菜瑠と、ひとみは親友になったが、ひとみはある悩みを抱えた。ひとみは菜瑠に恋している。でも、菜瑠は同性愛者ではない。 現代とは道徳基準が異なる未来社会を描きます。

  • 小説
  • 中編
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-26

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著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. やさしい雰囲気の女学校・日曜日の午後
  2. 親友ができる。田中美優という女の子
  3. 男の格闘・ローラーボールに夢中な私
  4. 門限に遅れ、担任の南先生は寮長に叱られた
  5. 日曜日、みんな忙しそうだけど、あたしのために時間を作ってくれる
  6. 月曜日、転入生が来た・あたしのライバル
  7. 忙しい一週間。補習のあと、みんな自主的なレッスンをする
  8. 七時限目の授業が終わって
  9. 孤立しているのは、あたしではなく、佐々木美沙というクラスメイト
  10. 資産管理会社より。あたしが警視庁のお世話になる?
  11. もう少しで夏休み・夏休み、あたしは別の学校で補習を
  12. わたしたち三人は、寮内の温泉施設で、まったりする
  13. モノレール・車掌ではなく婦人警官だけが乗っている
  14. あたしたちの時代の科学技術は三世紀も停滞した
  15. 夜遅くまで起きて、あたしたちは友情を深めた
  16. 夏休みの一日目
  17. あたしたちは石岡さんの家に泊まる
  18. 美優からの連絡。あたしはどうしたらいいの
  19. 八時五十三分。あたしたちは、ムスリマとお話しようとするが
  20. 神社で気を落ち着かせて
  21. パンツを穿くと気が引き締まる。何を着るか、迷う、ひとみ
  22. カラオケボックスに入った私たち
  23. ほぼ全裸に近い、ひとみ。あたしたちは、唖然とした
  24. 緊急カウンセリングを受ける
  25. 独裁者でも監視されている。政治家と官僚たちの質素な生活
  26. 五十四歳の少女・金町凛音。あたしたちは四人の生活がはじまる
  27. 山梨広域市のホテルにて
  28.  「戦う民主主義」との戦い
  29. 山梨広域市 性の自由がありすぎる街
  30. 全天周映画を見て、あたしは放心状態
  31. 山梨広域市の婦警さんと相談して
  32. あたしは、ひとみから嫉妬される。金町凛音に優しくされた
  33. 私たちは、バラバラで行動するようになった
  34. ひとみ。特殊な性癖