花は桜、君は美し

『花は桜、君は美し~♪』
(どこかで聞いたことある、、、この歌)

冬が終わり、雪が溶け初めるとき。

その時、何故か【彼女】の事を考えていた。
雨はまだ降り続くとラジオで流れていた。
突然、携帯が鳴り出した。
今考えていた【彼女】からだ。
出てみた、懐かしい声で彼女は泣いていた、昔に付き合っていた
元カノ。
「どうしたの?」
「ごめんなさい、今、大丈夫?」
「うん、、、」
「どうしたの?」
僕はまた聞いた。
「ちょっと、、、」
二人はしばらく無言の時を過ごした。
「明日、会えるかな?」
彼女は突然言い出した。
「う、うん、、、」
焦る僕、彼女は申し訳ないように黙り込んだ、また焦る僕、
「い、いいよ!」
(明日は土曜だし、学校無いから、いいか)

土曜日

変わらない街並みが教えてくれるのは、一つだけ足りない"モノ"でした。
僕は電車に乗り、昔、よく待ち合わせをした駅にいく途中。
(結衣は、何で僕に電話してきたんだろう、、、)
春を待つ、"つぼみ"のように僕の心が揺れてるのがわかる。
(ああ、神様、結衣はまたもう一度、あの頃に戻りたいのでしょうか、、、)
珍しく僕は神様とやらを仰ぎたくなった。
(どうして?)
今はそれ以外頭にはない。
【いつもの場所】と決めていた駅の前、僕は走りながら、彼女の事を考え、揺れ動く心が僕を急がせる。

僕はまたもう一度結衣の手を握りたいのだろうか?
考えてみた、あの時、結衣は泣いていた。
その後、笑顔で言った『ありがとう』と、、、

あの時、僕は夢を追い続ける事しか頭にはなかった。
そのために、『結衣』というかけがえのないものも見えなかった。
そして今、かけがえのないものに会う。
だからた落ち着かないのだろう。

その時気付いた、花は香り、街は色めき、光は踊る事に。
(見えた、結衣だ!)
結衣は背が低い。僕も低いほうだが、彼女は僕よりも低い。

雨は2日も降り続いた。
傘をさす人だかり、その中に赤と黄色のファンシーな傘を見つけた。
2年前と同じ傘だ。
そっと近づくと、結衣は気付き僕を振り向いた。
懐かしい顔が、喜びでいっぱいな笑顔で僕を見上げた。
「潤!」
「久しぶり」
そう言うと、結衣は泣き出した。
よほど嬉しかったのだろう、、、
「どこかで休もうか?」
「うん」
久しぶりの再会に、僕も彼女も緊張していた。
近くの喫茶店に入り、僕はコーヒー、結衣はレモンティーを頼んだ。
「えっと、、、どうしたの?」
僕は電話で話した事と同じ事を言っていた。
「私、実は、、、海外に行く事になったの」
「えっ」
僕は驚きすぎてコーヒーカップを落としそうになった。
「な、何で?」
「パパが海外出張で、私も行く事になって、、、でも、私、潤と
こんなふうに別れたくないの!」
結衣はそう言い顔を赤らめた。
僕は頭の中が真っ白になり、何も考えられなかった。
(外国に、、、行く?)
その時、僕は気付いた。結衣は自分にとってどんな存在かということに。
「ぼ、僕は、、、」
「ごめんなさい、困らせる事を言って、話はそれだけなの」
そう言い、彼女は席を立つと、店を出ようとして歩き出した。
「結衣!僕は結衣が好きだ!だから、ずっと待つよ。」
突然の大声に周りの客たちがこちらを見ていた。 だが、
「もう逃げない!きっとずっと待つ。結衣が大人になって、
帰って来るのを。」
僕と彼女は気が付くと抱き合っていた。
「私も、頑張る!だから、待ってて、、、」

それから8年後

「はい!ありがとうございます!」
最後にあいさつをし携帯を閉じた。
僕は24歳になり、弁護人の仕事をしている。
もう社会人だ。
未だに結衣との連絡はしている。
今は大事な商談の話で大変だが、結衣との連絡はもっと大事だ。
ふと、空を見上げる、飛行機が飛んでいた。
何故か、結衣が自分を呼ぶ声がして振り向くと、
結衣が後ろに立っていた。
「すごい!声も出してないのによくわかったね!」
嬉しそうに彼女は言った。
「わかるよ、だって、結衣の声だから。」
そう言うと、結衣は泣きながら僕に飛び付き、僕らは抱き合った。
「会えてよかった。お帰り、結衣。」


『花は桜 君は美し 春の木漏れ日 君の微笑み
冬が終わり 雪が溶けて 僕の心に 春が舞い込む』

花は桜、君は美し

花は桜、君は美し

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-17

CC BY-NC-SA
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