生首の話
自分の体験に関係する。
1
子供の時、寝室に置いてあるサイドボードの中に、
家族や親類の旅行でもらった土産物を並べていた。
ある日の未明、その土産物の一つを見ていた。
しばらく見つめていたそれは、人形の首だった。
いや、青い肌の男の生首だった。
「あんな物なかったはず」と思ったその時、
金縛りにかかっていた。
私はそういう存在よりも金縛りのほうが怖くて、
金縛りを解こうと必死だった。
さいわい自力で解けたが、
あったはずの場所にそれは無く、
似ている物さえ置かれてなかった。
2
ある日、寝ている時に金縛りになっていた。
そういう時に目を開けていると不気味な物が
見えたりするので目を閉じていた。
しかし、目を閉じた視界の真ん中に
不気味な男の顔が浮かんできた。
現実に見たことない知らない人だった。
しかも、その顔は苦しんでいる表情のまま
ケタケタというか奇妙な笑い声を出した。
3
ある日、変な夢を見た。
用事があって、目的地に行くのに
人も車も多い大通りを避けて裏道を通っていた。
だんだん草木がうっそうと茂ってきて通り難くなってきた。
途中から大通りに移動しようか悩んだ時、
服が破けたような布があちこち散乱していて、
散り散りに木の枝にひっかかっていた。
次の瞬間、見てはいけない物を感じて目をそらした。
しかし、確認してみようと少しずつそれに視線を移すと、
枝に突き刺さった生首であることに気付いてしまった。
実際に見たのは鼻から下だけだったが、
目から上半分を見る勇気はなく、
恐怖を感じて元来た道を引き返した。
草木が茂っていない場所まで戻った時初めて
警察に通報すべきか考える余裕を持った。
しかし、そのためには正確な場所や状況を確認する必要があると思い、
再び見に行かねばならないと思ってその場所に戻ろうとすると、
男が一人立ちはだかっていて、ここから先は通行料を払えと言った。
(忘れたので中略)
なぜかその裏道で結婚式の行列に出会った。
その行列の一人がなぜか私にこう言った。
「ここから男の生首が見えるのですよ」と。
4
昼飯の時間が近づくと三人の争いが始まる。
一、「今日は近所の定食屋だ」
二、「いや、弁当にする」
三、「昼くらい自分で作れ」
一、「定食がいちばん美味しい」
二、「弁当がいちばん気楽」
三、「自分で作るのがいちばん健康」
一、「弁当はゴミが出る、自分で作っても出る」
二、「店では行儀良くしないといけない、自分で作るのも大変」
三、「店も弁当も健康に悪い!」
実は一個の肉体を共有する三人は、言い争いながら外へ出た。
そして、近所の定食屋に入った。
今まで何度も入ったことがあるのに、
今まで見なかった、変な物が置いてあった。
気付かなかっただけだろうか、いやそんなことない。
どう見ても生首だ、確かに生首だ。
顔で歳や性別がわかるというのは間違いだけど、
中年男性のように見える。
さいわいと言うのも何だが、目を閉じている。
しかし、飯を食い終わって再び見た時、
目が開いていたら怖い。彼と目が合ってしまったら、
おそらく、私は彼と何かを交換するだろう。
たとえば記憶とか、魂を。
しかし、他の人はそれが見えないのだろうか。
絶対にあってはならない物を見た時、
人は心の底から無視してしまうか、
無視できなければ自分の中に、
耐えられる別人を作って記憶を背負わせて
主人格は結局、無視するらしい。
私の場合、その生首は「絶対にあってはならない」
というものではないらしいから見えるのか。
飯を食い終わった後すぐに生首の方を再び見た。
再び見た時に消えていたら怪談になるのだろうけど、
それは今度は目を開けた状態でそこにあった。
確か、最初はお互い視線が合ってなかった。
そのせいで恐怖感もあまり強くなかったのが、
いつの間にかこちらに視線を合わせてきた。
ついに互いの目が合ってしまった時、
確かに何かが変わったのを感じた。
その時から私は三人から四人に増えた。
昼前、四人はいつものように争いを始めた。
一、「外食」
二、「弁当」
三、「自炊」
四、「断食」
生首の話
今まで書いた中から生首だけ集めた。後々空想で追加するかもしれない。