絵画イメージからの詩

絵画イメージからの詩

セイレーンの誘惑

セイレーンの誘惑

ああ
君の何気ない仕草が
僕を誘惑する

僕は自分の全てを擲って
君を僕の腕の中に
閉じ込めたいのだ

地獄に沈もうとも構うものか
刺々しく僕を刺す
退屈な毎日など未練もない

暗闇をさまよう
難破船のように
苦悩に苛まれながら
ようやく生きてはいるが
当て所もない人生が
果てしなく続く

僕が望むものは
ただ君だけなのだ

ああ
君の声は
セイレーンの歌声のようだ
優しくそして妖しく
僕を引き込む

セイレーンの歌声に
惑わらされながら
夜の海原をさまよう
船乗り達のように
僕の船も既に
沈没しているのだ

冷たい波に揉まれながら
もう脱出を試みる力もなく
あたかも天使と見間違うような
美しき魔女の誘惑

僕は苦しみも悲しみも
そして栄光すらも忘れ去って
ただこの瞬間の官能に
沈み行くことを期待する

ああ
この恍惚の刹那
生きる喜びが凝縮されている

この瞬間の永遠を願えど
それは叶わぬこともわかっている

死をも乗り越えた永遠
それが僕に与えるもの
それは苦悩や挫折の連続

だから僕は
セイレーンの魔力に
飲み込まれることを望む

たとえ身を引き裂かれ
はらわたを食いちぎられようとも
甘美な誘惑の瞬間の官能が
僕に与えられた
初めてで最後の快楽

永遠を信ずればこそ
刹那に生きたいのだ

ああ
僕は君に溺れる
周りの嘲笑も非難も恐れず

その上
君の愛も得ることもなく
この身を滅ぼそうとも
僕は後悔はない

何故なら僕の望みは
君しかないのだから



フレデリック・レイトン作
「漁師とセイレーン」

ジャッジする女神たち

ジャッジする女神たち

ああ美しき女神よ
繁栄と平和の重さを
ジャッジするのは
君たちか

君たちは
その美しい肉体の官能で
繁栄の象徴たる王冠と
平和の象徴たる鳩の
重さを比較する

たが僕の興味は
女神たちの
ふくよかな乳房と
すらりと伸びた両足の間の
隠された秘部にある

その肉体の感触を
確かめたくて
君らのジャッジに従い

時には平和の鳩を喜び
時には繁栄の王冠を目指す

のどかな平和も
噴き上がる繁栄も
安心も富も
君たちを
手に入れられなければ
意味のないものなのだ

美しき女神たちは
僕を惑わす

僕は君らのために
平和と繁栄の両方が欲しい
その強欲さの結果は
紛争と貧困が
僕に与えられるのかも知れない

それでもよいのだ
君らを手に入れることが
僕にとって
平和と繁栄なのだから


絵画は
ルイス・リカルド・ファレロ作
「天秤座」

接吻

接吻

君との接吻
ああ
どれほどこの時を
待ち焦がれたことか

君の唇の
柔らかさと弾力
世界中探しても
これほど僕を
満たしてくれるものはない

その唇に触れる時
君もうっとりと
恍惚の海へ沈む

ああ
僕らの周りは
金銀の
豪奢な装飾品で
飾りたてられたかのように

僕ら二人の
官能と感激は
渦巻きかえるが如く
包み込まれていくのだ



  思えば僕らが出会ってから
  随分長い間すれ違って来たものだ
  一体何時から
  僕は君を愛してしまったのだろう

  何時からか
  僕はいつも
  君を追いかけるようになり

  そして君は戸惑い
  僕を避けていたように思う

  君のつれなさに
  僕は嘆きつつ
  でも諦めることもできず

  君に少しでも気に入られようと
  或いは道化師となり
  或いはしもべとなり

  僕の誇りも名誉も
  かなぐり捨てて
  ひたすらに
  君だけを追いかけた

  そしてボロボロになった僕を
  君はやっと受け入れてくれた

  それは同情なのか
  僕の情熱に感応したのか
  或いは逃げられないという
  諦めなのか

  恋に狂い
  破滅し転落する僕を
  当惑しながらも
  君は僕を受け入れる

  ああ
  僕の人生の全てを掛けた
  恋が報われるのだ



君は僕に身体を預け
君の輝く唇を僕の前に突き出す
その唇に接吻する

ああ
電気が走るかのような
衝撃が僕の全身を駆け巡る

そして僕らは
衣服を脱ぎ捨て
君の豊満な曲線を描いた
身体を抱きしめる

ああ
透き通るような君の白い肌
それを抱き締めれば
君の肌の下に流れる血液が
僕の身体に注ぎ込まれるようだ

僕は僕の本能に導かれるままに
巌のように硬くなった僕を
君の潤い開いた場所に埋め込み
二人は水蛇のように絡み合い
互いの肉体を溶かし合う

この美しい瞬間
ああ僕はこの瞬間を求めて
悠久の時間を彷徨っていた

そして今
この悦びのために
未来永劫に君を守ることを誓う

僕の生きる意味
善や悪
損や得
美や醜
その総てが
この瞬間に飲み込まれていく

そして僕は
君を愛することを
実感するのだ



絵画は、グスタフ・クリムト作「接吻」

絵画イメージからの詩

絵画イメージからの詩

観るだけで、頭の中に言葉が溢れ出すような絵画がある。 そのような絵画を紹介する意味で、詩をつけてみる。 目次の作品は、ジョン・ミリアス作「ゴダイヴァ夫人」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 成人向け
更新日
登録日
2013-06-06

Copyrighted
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  1. セイレーンの誘惑
  2. ジャッジする女神たち
  3. 接吻