Steel

虚空─にそびえる遠くのタワーに 空から雪が降り続いている
部屋の灯りの中で 誰かが笑い合っている
ずっと─先まで続いていく 木枯らしの吹き付ける冬の旅路で
街行く人たちは他愛ない言葉を口にすれ違っていく
心の中をいつまでも─流れていかない温もりを胸に
ずっと昔から張り付いて剥がれない痛みを抱えて
錆びた─鉄のよう─な冷たさを手元に感じ─ながら
閉じ込められた僕の心は、ひび割れるように(ひず)んでいる
僕の何が間違いだっただろう? ただまだ素直に生きていたい
遠くから届く仲間の声がまだ心に谺している
揺らめく半透明な光が現実という影を映し出す
間断なく打ち続ける胸の鼓動を感じながら
僕は情熱の灯を消さないように押さえ込んで─いる
冷たい空気の裏側でこの固い外套が温もりを守っている
鉄のように冷たいこの街で、いつまで僕は生き残れる?
力なんてくそくらえだ でも今の僕は強さが欲しい
──きっと弱さに美しさなんて感じられないから
何の─ために戦う?……ただこの感覚から意味を奪いたくない
この傷が痛むのは きっと生きたいという本能の証
僕の傍にいてくれるもう一つの愛の住処を探して
いっそこの冬の果てまでまっすぐ─駆けて行けたら……
ずっと輝いて見えた世界も 真実を知ればくすんで─いて
白々しい空の青さが打ち拉がれたこの瞳に焼き─付く
変わらない─この街で、変わっていく僕の中の何か……
止むことのない─悲しみの中で まだ大切なものがあると思うから
別れを告げた─君の背中が幻のように遠くにかすむ
今はこの道を進んでいく いつか安らぎを手に入れるまで
それでもまたいつか君のところに行ける日を夢見て─
その場所にいつたどり着くかさえわからないけれど
明日にまだ見ぬ春の光を探して まだこの道を歩いていく──

Steel

Steel

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-27

Copyrighted
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