未読のマザーグース


・未読のマザーグース




逆さまな様しか映せないで
水溜りに浮かんだ三時五分。
蝙蝠傘が言えないバイバイ,
雨のち曇りの先も知らずに
最寄りの駅まで連れていく。
短距離バスが停まる前にと
マスコットなイヌを叩いて,
言うことを,残していかない。



マザーグースを読んでない
後ろめたさに付けた理由は
興味ない関心と逸らした事。
万葉集を諳んじたりしつつ
好きなことばが好きなのに。
マンボウよりは多く語って
くっ付けた額に冷たい水槽,
イルカの姿なんて底になく
ジンベエザメは大きかった。
瞳の綺麗なウツボは見えた。
蝙蝠傘から正しく仕舞った。
折りたたみで,コンパクトに。


落っこちた逆さまなことは,
きっと話すより読みやすい。



置いてけぼりの三時五分を
迎える時刻表の間隔で測る。
短い指に励ましのことばを。
曲げない指を支えることを。



閉じた瞼の少ないまばたき,
開いて干してきた逆さの傘。
一番近いコウモリなすがた。
一番近い,ベンチの端のはし。



マザーグースは読んでない。
けど
諳んじない万葉集を捲った。

未読のマザーグース

未読のマザーグース

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-14

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