雨の日にかさもささずに

雨の日にかさもささずに

このところ雨が続いておりますが、
体調など崩されませんように。(2013-04-23)

雨の音がする。
ベッドから体を少しひねって、カーテンをめくった。
雨の日は、低気圧やら湿気やらで頭が締め付けられるように痛い。
雨は憂鬱。

体を壊してから数ヶ月、病院に行ってもあまり効果は見られなかった。
両親からは心配のメールがほぼ毎日届いた。
「元気でやってる?」
「帰っておいで」
両親の優しさがとても辛い。

雨の日の朝はとくに憂鬱。
両親からのメールに返事をした。
昨日は電話でわんわん泣いてしまったため
「大丈夫です、ありがとう」と、

それから、もう一通
「体調不良のため欠席します」
友人へ同窓会の連絡を。

また、ベッドに潜り込む。
冷えて足先がツララのようだ。
布団の中でまるくなって、冷えたつま先を手で包んだ。
そのまま目を瞑って少し泣いた。

思い出していた、仕事をしていた頃のこと。
毎日ようにたえた、セクハラ。
同僚からの白い目。
独り黙々とパソコンに向かう毎日。
気がついたらピアスと手首の傷が増えていた。
市販の胃薬と睡眠薬が並ぶ棚。
いつの間にか、私の心はカラカラに干上がって、悲鳴を上げていた。
限界。

こんなことはよくあることだ、医者が言った。
そして5000円もする診断書をもらった。
それを会社に提出したら、会社を辞めさせられた。
「立身上の都合により」

人が怖い、男が怖い、女が怖い。
目が怖い、口が怖い、手が怖い。
布団の中で震える私を、助ける人はいない。

泣きつかれて、布団から顔をのぞかした午後2時。
誰もいない部屋に響く雨の音と、時計の機会音。
耳を澄ますと、外からピチャピチャと歩く音が聞こえた。
少し体をひねってカーテンをめくると、
雨の日にかさもささず歩く背中を見つけた。
手には白い菊の花束が見えた。
あの背中はきっと、

自分の手首を見つめてそっとこぼした。
「私はまだ生きている」

次に目を開いたら起きて部屋の掃除をしよう。
明日はきっと晴れるから、そしたら部屋から出よう。
大丈夫、大丈夫…。
そう自分に言い聞かせて目を瞑った。

雨の日にかさもささずに

雨と言いますと皆様は何を思い浮かべるのでしょうか?
私は、夏のにわか雨を思い浮かべます。夏の熱いアスファルトに一雫落ち、また落ち。気がつく頃には、バケツをひっくり返したように気持ちよく顔を叩き付ける。服が濡れるのもまた気持ちよくて、傘もささずに叫びながら雨の中を走り抜ける。川を流れる飛沫のように、雲を突き抜ける飛行機のように。そして、気がつくと雨雲の影は山の向こうへと流れていき、太陽が顔をのぞかせる。雨で冷えきった体を温める、光が少し懐かしい。ふと、振り返ると空には優しい色合いの虹が架かる。
とても仕合せな気持ちになる。

春の雨は心を暗くさせ、梅雨は閉じ込めてしまいます。
夏になると心を躍らせ、秋にはアンニュイな寂しさを抱かせます。
冬は、とことん冷えます、冷え性の大敵「雪」!!

天気は、たくさんの感情を与えてくれる宇宙からの贈り物です。

雨の日にかさもささずに

仕事のストレスから体を壊し、心を閉ざした「私」が過ごす雨の休日。きっと明日は、大丈夫…。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-21

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