穴を掘る人
どうも、この作品を手に取っていただき
誠にありがとうございます。
この話は、いつか絵本に仕立てたくて書いたものです。
楽しんでいただけたら幸いです。
あるあるところに 広い広い砂浜 ありました。
そこには、大きな大きな 穴 ひとつ。
あるある少年、覗き込み 大きな声で 言いました。
「おーい、おーい、だれかいませんかー」
穴から帰ってきた声は
しゃがれてカサカサ のおじいさんの声。
「わしに何かようかなー」
あるある少年、誰かいたことに驚きました。
だって、あまりにも深い深い穴でしたから。
「なんでこんなに深い穴をほってるんですかー」
カサカサのおじいさん 言いました。
「ばあさんとの思い出を埋める穴を掘っていたら、
思い出が多すぎてこんな深い深い穴になってしまったのさー」
あるある少年言いました。
「そんなにたくさんの思い出があるなんて すてきですねー」
カサカサのおじいさん、
ガハハと笑った。
あるある日に 大きな嵐が 砂浜を襲いました。
その日のニュースでおじいさんが穴に埋まってしまったことを知った
あるある少年。
砂浜に駈け出しました。
嵐も通り過ぎた砂浜。
真っ赤な真っ赤な夕焼けが
カサカサのおじいさんの 穴の跡を照らしていました。
おばあさんとの思い出と おじいさんを深く深くに埋めた穴。
あるある少年は そこに 流木で大きな十字架を立てました。
あるあるところの広い広い砂浜に大きな十字架がありました。
そこに眠るのは深く深くに埋めた
あるある夫婦の深い深い思い出。
穴を掘る人
私は、谷川俊太郎が大好きです。言葉がきれいだと、いつも思っています。(きれいというのは難しい言葉ですね)彼の言葉には色がついているように感じます。悲しい青や、爽やかな青、優しい青、深い青…。彼の詩は、たくさんの言葉で連ねる小説と違って色んな方向へ人それぞれの想像に浸ることができます。
私は特に、谷川俊太郎の訳すレオ・レオニの絵本が大好きです。スイミー、アレキサンダとぜんまいネズミ、コーネリアス、さかなはさかな…。(私は言葉をあげ続けていくのが好きなんだ、と今気づきました)たくさんのすばらしい絵本を作りあげる人と言葉を変換していく人。幼い子から私のような大人まで魅了する彼らの感覚には憧れも嫉妬もします。
きっとたくさんのことを知り、感じて考え自分の体の一部にしていたんだなと思います。いつか、私もそんな人間の仲間入りがしたいと思いつつ綴り続けております。