タイムカクテル

タイムカクテル

隣の席、いいかな?

誰よあんた、あんたのことなんて待ってないわ

だが、誰かと待ち合わせしているわけじゃないんだろう?、少しでいい、俺と話してくれないか?

いいわ、その代わりお酒を奢ってくれるならね

よし、わかった。
マスター、彼女に何か甘いお酒を頼む、度数低めでな

あんたと同じお酒が良かったな、カラフルで美味しそうじゃない

ダメだ、この酒を飲む為に俺は、40年間毎日働いたんだからな

なによそれ

君に会う為に、できる限りの手を尽くしたってことさ

なに?、それ、口説き文句なの?
おっかしー

さっき、指輪を見ていたね、何か訳があるのかい?

彼氏がくれたんだ
大ケンカしちゃったけどね ついさっき
私の料理まずいんだってさー

ねぇ あなは?

んー?

恋人よ
奥さんは??

結婚はしていないが
俺にいた彼女は君と同じ位の年齢だったかな

えー、若い?
年下好きなの?

そうじゃない、彼女は…

あー!!!
あれ?、あんたも同じ指輪持ってるのね、なによー、
オーダーメイドだって言っていたのにーアイツー

彼は間違ってないよ
これはオーダーメイドだ

なによそれ?、どういうこと?
え?、あー、あんたケンジのお父さんかなんか?
そう言えばなんとなく似てるもんね

そうじゃない
ちゃんと聞いてくれ、僕には時間がないんだ
君に頼みがある、僕は40年後の未来から来たケンジなんだ。
君は僕とケンカ別れして、バーで飲んで家に帰える途中に大型トラックにはねられる。
そうだ、今日のこの後だ。
君を助けたくて、未来から来たんだ、信じてくれなくていい、
ただ、今日だけは家に帰らないでほしい、40年前の俺に電話して、迎えに来てもらってくれ

急にそんなコト言われても、何がなんだか…、あれ、あんた身体が…

もう時間か、じゃあな、頼んだからな。それと カレーライス美味しかった、さっきは悪かったな

え…。


ねぇ、マスター、この店、電話ある??

ちょっと待った。
電話なんていつだってかけられるじゃない?
私もお酒を奢るわ、だから少し会話を楽しみましょう?

いやよ、そんな気になれないもの

いいから!
マスター、モスコミュール2つ!

あー!、そのお酒は好きよ

そうね、よく知ってるわ
ねぇ、ほらっ、この指輪を見て

あれ?、うそ?、あなただれ?、ひょっとして私??

そう、10年後のね

でも、ケンジは40年かかったって…

ケンジなら40年かかるわ
それだけ、この薬は高いのよ
でも、いまの私なら10年もかからない。

私は、あなた
ケンジに迎えに来てもらって、幸せを夢見たけれど、全然実現できなかったわ
別れてから、やりたかった仕事始めて、すぐに成功したの、でもね、若い女の10年はデカイのよ
時間はお金じゃ買えないの、もっと有意義に使えばよかったわ、ケンジとじゃなくてね

そんな…、私はどうしたらいいのよ

さっきのケンジが言うとおり私は、交通事故に会うはずだったの、それは本当、
でもそれは足の骨を複雑骨折する程度、その後で彼を捨てて、お金持ちの担当医と愛のある結婚生活を送るはずだったのよ
あなたはそうしなさい、きっとそのほうが幸せだから。だって私はあなたの未来を何通りも知っているもの

いやよ!、私は自分で未来を決める!、私はケンジと一緒にいたい
もう、そんな話は嫌!
店を出るわっ


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ごめんね、私 嘘ついてたの
私は未来のあなたじゃないわ。
未来のあなたの子供
もう、お父さんに振り回されて、痩せ衰えていくお母さんを見たくなかったの
私は消えるかもしれないけれど
お母さんに幸せになってほしいから。

タイムカクテル

タイムカクテル

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-17

Copyrighted
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