山田

君と僕

30歳、独身、フリーター。


僕は、大学卒業後、すぐに、家電メーカーに就職した。
あのときは、夢のようだった。
家電マニアだった僕は、仕事が、楽しくて仕方がなかった。



ただ、たった2年後にその会社は、倒産してしまった。
夢のような日々から一転、地獄のような日々が始まってしまった。



そのとき、僕は、倒産したという事実を受け入れられなくて、
当時の社長に何度も聞いた。
「この会社は、終わったんですか。」

「ああ、終わったよ、何もかもね。」


決まって社長は、こう言う。


まるで、飛行機が急に墜落したような気分だった。
今まで安定していたのに、なぜ。。。






それから、約6年。
仕事がまだ無い。
親にも、家から追い出された。
築70年。ボロアパート。
今はそこに住んでいる。


家賃は、アルバイトで稼いでいる。
フリーターって言っても金を稼ぐわけではないからね。




ああ、僕に生きる価値なんてあるのか。
ああ、僕に生きる資格なんてあるのか。





最近、そう思うことが増えてきた。




なんか、死の道をどんどん進んでいるような気もしてきた。



「なんか、もういいや。」



それが、最後に言った言葉だった。




午後3時56分、家の中で自殺しました。
もう、この生活に耐え切れなくなりました。





でも、なにか物足りない。






もう一度やり直したい。







僕は、そしてゆーれいになった。
物足りないなという思いを無くすために。






そこで、僕は、来世の僕を見に行くことにした。
もう死ぬなんて思って欲しくないから。





ただ、君は・・・。





                                               つづく

「They're here」(ここにいるよ)

僕の来世、

もう高校生だった。

僕の、高校生時代は、いい思い出ばかりだった。

ただ、来世の君は・・・。

学校の窓越しから君を見た僕は、唖然とした。

僕の時代とは、まるで違った。

普通に暴力。そして、大声での悪口。いじめるものといじめられるものの立場。

胸が苦しかった。ただただ、苦しかった。

君の顔には、あざだらけ。

それでも、君をいじめるやつは、なぐり続ける。

これが、現実なんだ。

でも、自殺したいなんて思わせたくない。

笑顔が絶えなかった高校時代。

君にもそれを味わわせてあげたい。

しかし、僕は、ゆーれい。

君には、見えない。

声をかけても聞こえない。

I am here.  僕はここにいるよ。

それを伝えたくて、僕は、決意した。

君のための歌を作ろうと。




                                                つづく

山田

山田

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-04

CC BY-ND
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CC BY-ND
  1. 君と僕
  2. 「They're here」(ここにいるよ)