引き金

人間同士の争いというものはなぜ無くならないのか、平和主義者なら誰もが考えるごく当たり前なこと、しかし言葉では説明できない何かがある。

それは、人間の醜さが露呈する瞬間である。どんな人間もそういったものを深層心理の奥に持っている。その醜さは人間が人間であるためには必要不可欠なものであるため、それを振り払うのではなく、その醜さとどう向き合うかが重要である。

この作品は、不器用な上司 幾太が人間の醜さを殺人の代表ともいえる武器 「銃」 という存在を使って書き綴った作品である。

引き金

僕の住んでいる地域は治安が悪くて、いつも争いごとが絶えず毎日のように起こっていた。

そんな地域に住んでいることもあって、近隣の住人は皆少なからず護身用に拳銃を一丁は持っていた。

でも、僕の家には拳銃がなかった。

僕は父さんと二人で、小さな廃墟になった建物で生活をしていた。

お金が無く確かに拳銃は買えるものではなかったが、別に買わなくとも毎日争いがあるので、拳銃などは遺体のそばに行けばすぐに手に入った。

近隣の人もそのようにして、拳銃を手に入れていた。

だけど、父は決して拳銃を持とうとはしなかった。

あるとき、父さんに聞いてみた。

「父さんどうして家は、拳銃を持たないの?」

父さんはこう答えた、「いいか、たとえ護身用であったとしても、自分から引き金を引く意思がなかったとしても、そこに争いが生まれる引き金が近くにあるだけで、人は意図として、いずれその引き金を引いてしまうんだ。」

「人は引き金を引くという行為の重さを何時までも胸に止めておけるほど、賢い生き物などではないんだよ。」

父さんの言うことは難しくて僕にはよくわからなかった。

けど、護身用で拳銃を持っていた。近隣の家で強盗殺人があってその凶器がその家の人が持っていた護身用の拳銃だったことを聞いて僕は少し父さんの言ったことを理解できたような気がした。

また、それと同時に恐怖も覚えた・・・・・

引き金

引き金

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-24

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