俺は双子に挟まれて学園生活をおくっている

私たちは、フェイクなのよ・・・?


登場人物

神宮寺 花楓(じんぐうじ かえで)
主人公(?) 双子の妹咲楽と仲がいい
幼馴染の青葉の恋人  まわりの人には猫をかぶっているが親友には本性をみせる
最近はあまり猫をかぶらない

神宮寺 咲楽(じんぐうじ さくら)
花楓の妹 双子で性格は似ていたが、趣味は全く違う
青葉を姉にとられ、すねていたが…?

時任 青葉(ときとう あおば)
花楓の幼馴染であり恋人 本人は許嫁と思っている(最近は…?)
花楓の本性に惚れている  なにげにトラブルメーカー
たまにみせるお人好しが人気

椎名 幸一(しいな こういち)
花楓のクラスメイト  
他人のことをかなり気にする人間嫌いだった…

佐藤 來(さとう らい)
花楓たちの友達。結構謎で、情報通


プロローグ

神宮寺咲楽、花楓、時任青葉  小学5年生 3月

「青葉ァ 帰ろ?」
よく晴れたある日、あたしはいつもどうり青葉を呼ぶ
「ゴメンっ!花楓と帰るんだ。じゃね」
「青葉っ!」
最近、青葉はあたしに冷たい
お姉ちゃんに告白したとか言ってたけど…?
あたしも…好きなのに  お姉ちゃんだけズルすぎるっ!!
いっつも「花楓花楓」いって…
ずっと青葉はあたしの好きな人なんだよ
幼いころからいて、お姉ちゃんなんかよりもずっと前から好きだったのに、
横取りなんて…!ズルすぎるっ!
なんで、青葉はあたしよりもお姉ちゃんを見るの?
妹って言っても、ただの双子なのに!
同い年で、同じ背格好
なにが…違うの!?
あたしじゃ、ダメなの!?
同じ時間、ずっと同じようにいたのに、あたしだけ置いてって
お姉ちゃんを、青葉は選んだんだよね…

なんで青葉は、お姉ちゃんはあたしを無視して、置いてくのっ…!!


            1
「青葉のバカっ!  最低!!」
放課後、中学最初の1学期、4月。 青葉とのけんか
あたしの気持ちをあらわすようにどんよりとした雲がひろがる。
あたしのために、咲楽を手伝った。咲楽が苦労するのは、嫌いだから
「でも…あたしのためにも、動いてよっ!」
我が儘だ。ふざけて幸一と遊んでいたら、青葉が怒りあたしを無視した
それだけ、なのに。
「花楓じゃん!」
後ろ。真後ろから咲楽の声が聞こえる。
「なにさ」
「1人で帰るなんてめっずらしぃ~ 青葉とケンカした?」
「うっさい!」
最近、あたしは猫をかぶってない。あれは、青葉の気を引くためだから。
「お姉ちゃん?」
「そうよぶなっ!」
双子なのにあたしが姉なんて、おかしい 咲楽のほうがよっぽどしっかりしてる
「なんでオレを無視すんだよ。花楓」
「ゴメン。謝ったよ。じゃ、明日ね~」
追ってきた青葉を無視し、つとめて明るくいう
幼馴染だからきづいてるだろうけど。
「神宮寺?」
「ら…い…?」
同じクラスの、友達
咲楽よりマシだろう
「どうしたんだよ、1人で。  時任も神宮寺2も、怒ってねーぞ?」
神宮寺2、とは咲楽だ。
「別にィ」
なんでもない。
そう思って、家に帰った。
これから、青葉と遊ぶために。 どうせアイツは、気にしないだろうし。
それに今日はかなりはやい夏祭り。春の収穫祭、とも言われてる。
1ヶ月前から約束してたんだ。
サボることなんて、できないし。
               
               *
曇っていた空が、晴れて綺麗な星をだしている
ここのイベントは、店が出ているだけ。 でも、あたし達は毎年星を見るために
神社によってく。  毎年恒例だから
「おっせぇぞ、花楓」
「もう、花楓ぇ」
2人が待っていた。來もいる。怒ってないし。
「悪かったね! さ、いこ?」
「ううん。今日は、私と來でまわるから。カップルは楽しんでねぇー
 いこ?來」
咲楽が來のことが好きだ。でも、だいたん
それに、前までは青葉にこんなことはしなかった
少しは変わったのかな
「どうする?俺たち…「いいじゃん。2人っきり」」
秘密を言おうとする青葉を止める。幼馴染だけど2人でいるのは少ない
咲楽のせいで。

咲楽は青葉が好きだった。 あたしも
でも、あたしを好きな青葉のために、あきらめた。青葉もあたしに気持ちを伝えた。
咲楽は、それを嫌がりあたしたちに無理やりついてきていた
でも…來に惚れてから、かわったらしい
かわっていいのか、ダメなのか
少しさびしい気もするが

「久しぶりだしな」
「うん!」
たくさんの屋台を冷やかし、遊び、遊びまくった
新品の、いわば一張羅の浴衣を汚してまで、青葉とあたしは遊びまくった。
1時間ぐらいたったあと。
神社に行き、星を見た。  草のうえに転がり、リンゴ飴を食べながら。
「幸一も、来ればよかったのに」
ポトリとこぼした独り言。
でもそれに反応してしまう青葉は、青葉らしいっちゃぁ青葉らしい
でも、少しめんどうだな…
「幸一のこと、好きなのか?」
起き上がって、真顔できいてくる
「ううん、楽しいから。
   いったっしょ?あたしたちは
フェイクだって。」
「わかってる。でも、俺がお前を好きなのにはかわりねぇ」
「う…ん…」
楽しい夏祭り。告白で終わった1日だった…
なんか、すっきりしないな、今日は
咲楽がいないから?
そんなこと…ないよね
ないはずだよ

「花楓!起きろって!」
青葉があせって起こしてくる
「何さ?」
「何さじゃねぇよ!はやく!」
従兄弟でもある青葉。同じ家に住んでいる。
ま、いろいろあったからね
説明は省くよ
あたしの親と(あたしたち?)青葉の親の少し普通ではないややこしい
入り組んだ事情
「どうしたの?」
「やべぇよ
       

       咲楽が、いないんだ                」

「へ?」
突然のことに、頭が追い付かない。
咲楽がいない?
ははは…
「置手紙のこして、どっかいっちまった」
渡してきた手紙は、こうだった
{2人と一緒にいたくない。いなくなーります!}
咲楽らしい内容。
「どうしよう!」
焦って立ち上がり、外に行こうとする。
「どこいくんだよ!がむしゃらに探しったていみねぇんだ!
落ち着け!」
青葉の声で冷静さを取り戻す。
急に、携帯がなった
「咲楽!?」
違った。そう、幸一だったのだ
少し落ち込みながらも、電話に出る
そう…だよね
家出したのに咲楽が電話をかけてくるわけがない

「花楓かぁ?オレだ、幸一。
咲楽を探してると思うが、心配いらねぇ
オレんちに、いる」
「よかったぁ」
安心して、ベットに座り込む。
「今から、迎えに行くよ」
そう言った途端、断られた。
「いい。アイツは今、心が不安定だ。 なぜか、な
落ち着くまでこっちで預かるよ
心配いらねぇさ。こっちは広いしよ」
そういって、電話は切れた。 今日は平日。学校もある
いかないと。 行って咲楽に会わないと…
                 *
「神宮寺!時任!」
「來?」
昼休み。咲楽が教室にいなかった。だから、探そうと教室をでたのだ
「神宮寺2、いないんだろ?」
ここにもきてねぇし、と付け加え事情をきいてきた
「まじか…
  でも、椎名の奴、朝途中まで一緒に来たって…」
「そ。一緒だったのにさ…」
來までもが探してくれてるなんて
咲楽のせいで、咲楽のせいでっ!
青葉が落ち込んでいる姿、久しぶりに見た気がする。
見たくなかった。咲楽のために動く、青葉を。 ハッキリ言って、物足りない。

「ねぇ、來、青葉」
帰り道、探すのを手伝ってくれる來も一緒に、帰る。
幸一は、塾でいない
塾言ってるのに幸一は、成績が低い
ま、今は関係ないか
「なんだよ?」
「あ?」
日記を見てみない?と問いかける
「いいかもな
咲楽の心境がわかるし。」
「オレはいいよ。神宮寺2の日記、勝手にみれねぇし
見たら神宮寺2に帰ってきてもやられそうだ
俺でも独自に調べてみるし、
  椎名からの連絡を待つさ」
青葉は見るといい、來は見ないという
途中でわかれ、走って帰る。 急いで咲楽の部屋に入り、日記を開く
「ゴメン、咲楽」
「悪いな、咲楽」
謝ってから。
初めて見る、妹の日記
「いつから?」
「2学期はじめ」
幼馴染。言いたいことは、顔みてわかる

9月1日
始業式。おねぇちゃんと青が2人で学校にいった
付き合ってるからって、のけ者にして…!!
「青って…!?」
「俺らの昔の呼び名…!?」

9月2日 火曜日
なんもない。青とおねぇちゃんは一緒にお弁当食べてた。
青は私だって…!!
來のこと、好きって言ったのが間違いだった。

9月3日 水曜日
部活開始。体育好きの私と、文化系の青たち。
部活が違うから、一緒に帰れない
陸上と、吹奏楽。

「ずっと、こんなんだ…」
「9月20から…!」

9月20日 土曜日
私だけ部活あり。2人はデート中。
ずっ!るっ!いっ!
私も青のおっ!さっ!なっ!なっ!じっ!みっ!

「なに…コレ」
「咲楽の奴、俺のことがすきだったのか…?」

9月21日 日曜日
3人で、映画。
おねぇちゃん、青に「花楓花楓」言われてっ!

9月22日 月曜日
部活なし。3人で帰る。久しぶりだ。
私、こんなトコいたくない
来週、家出しますっ。

「コレ、関係してるっ!」
「咲楽のやつ、だから…!!」

9月23日 火曜日
なんでって?
気になる?
今、きっとおねぇちゃんのことだから、読んでるよね
コレ

「咲楽っ!」
「予想してたのか」

9月24日 水曜日
あはっ♪
理由はねぇ               青が好きだから

カップルが家で、周りでいちゃいちゃ♪
おねぇちゃんたち、耐えられる?
來も好きだよ?
だから、幸一の家にした。

「俺らが問題か。」
「前、青葉のこと、あきらめたって…?」

あきらめたでしょ?
  って思ってる?
無理。ムリ!無理無理無理!
おねぇちゃんに、青は幸せにできないっ!

9月25日 木曜日
理由2-!
幸一は興味ない。
幸一んこといけば、青にも、おねぇちゃんにも、來にも会わないし
学校、サボればいいし
幸一に説明したら、わかってくれる  やさしーもんね

「関係ない人、巻き込みやがってっ!!」

9月26日 金曜日
もーすぐ家出。(^o^)
青、心配してくれっかなぁ?
おねぇちゃん、双子だからわかるっしょ?
私の今の心んなか。

9月27日 土曜日
皆でお買い物♪
一張羅の浴衣買いに来た!
青がかわいいって言ってくれたよぉう

たんたんと、今日まで読み進めていく

9月28日 日曜日
火曜は家出の日っ!
楽しみぃ 幸一にメールで説明したら
OKですと
うっわぁーい!

9月29日 月曜日
夏祭り。來と楽しんだ
荷造りした。行ってきまーす!
真夜中の咲楽ちゃんっだいぼーけーん!

「なんだよ…!」
「さくら…」
原因は、あたしと、青葉。 昔のことしか頭にない、咲楽。
來への、ウソ。 幸一への信用。
学校に来なかったのは、聞かれたくないから。 咲楽のことだ。きっと、自分で泣いてしまうとわかっていたから。
「咲楽の奴、こんなこと考えてたのかよ…」
「ねぇ…、どうする?」
あたしたちは、フェイク。付き合ってなんかいない。
好きだ。両想いなのは、確か。でも、青葉に告られたときに
あたしは咲楽の気持ちを知って、「フェイクなら。両方がその気になるまで。
だって、小学生だよ?」
と、ごまかしている。
「オイッ!神宮寺!」
來からの電話。
「來…?どうしたの?
           理由、わかったよ」
「神宮寺2が椎名の家にいた。 事情は椎名から聞いたよ」
青葉が顔を近づけて、声が聞こえるようにする。
普通なら少しドキッとする状況だ。
「咲楽、なんて言ってた?」
「なんも。帰る気は当分ないと。 椎名の奴も、落ち着くまでいいってさ。
学校側には、風邪ってことにするらしい」
「わ…かった。ありがと」
かなり、安心した。心が落ち着いた。ほっとして咲楽のベットに座り込んだ。
開いた窓から、雨がぽつぽつ入ってくる。
「そういや、部活休んじまったな。」
「あ。」
気分を変えるため、話題をかえる。
とりあえず、安心した。 理由もハッキリわかった。
きっと、今までどうりには、いかないだろう。 咲楽の気持ちを知った、青葉
咲楽の本当の想いを知った、あたし。來。
きっと、みんな進んでいく。このままじゃ、ない。
なら、あたしも、咲楽と來、青葉に幸一。ケリつけてやる
               *
1週間が、あれからたった。
咲楽が、登校するといった日。実際、来てた。
朝から、家にいたし。
「咲楽っ!!」
青葉と一緒に、咲楽のとこに行く。
「何?
  青葉、アレ読んだっしょ?
  花楓、アレわかったしょ?
  好き。青葉
  ズルいよ。花楓」
あたしたちを見て、淡々という
「悪い、咲楽。オレは花楓が好きだから。」
「ゴメンね。咲楽っ!ズルいのは、分かってる。でも…、あたしは青葉のことが

            好きだからっ!!
                                        」
かわってく、まわり
ハッキリと、あたしは言ってしまった 咲楽のために、と思っていたことが
咲楽に苦労させていたのだから

あたしと、青葉と、咲楽
3人の幼馴染。
それが、初めての恋を引き起こす。それが、初めての失恋を引き起こす。
環境がかわった。人が、友人がかわった。
それが、このあたしたちの、日常。


                     2
なんで…?
なんで青葉は、青は離れていくの?
おねぇちゃんといるのもいいけど…っ!
私のことを無視しないでよ…っ!
青葉に聞いたら、花楓に告白したって…
あの話、あの噂、本当だったんだ
3月の話、本当に…
そのせいで、あたしを置いて帰ってなんて…
どうしてみんな、私をほっとくんだろう
同じ距離でいた、幼馴染なのに
親友なのに
青葉に告白されて、ライバルとして花楓は抜け駆けしたんだっ…!

私だって、好きなのに!
なんで!?なんでわからないの!?
鈍いよぉ…
青葉ぁ…
青ぉ…
                    3
「青葉、咲楽。」
あれから、1年。
2年の、一学期。5月1日
來は咲楽と付き合い、フェイクをあたしと青葉はやめた
幸一はあたしたちを導いてくれた。
ま、取り残されたけど。
「ううぅ~ねぇむぅいっ!」
「抱き着くなっ!咲楽」
元に戻ったんだよねぇ、日常に

でも、平和は続かない…
だって、あっさり家出が終わるわけないじゃん

                    *
文化祭1ヶ月前

「文化祭? たるくねーか、そういうの」
「たしかにねぇ」
この半年間咲楽は今までどうりに過ごしてくれた。
どう思ってるかどうかは、わからない
あの告白、正式な返事はもらっていないから
「花楓」
「咲楽?どうしたのさ
真顔で」
青葉が男子と遊びに行った後、咲楽があたしの席に来た。
「文化祭の時、ちゃんとした返事をもらわない?
全員が集まって」
「はぁ?なんの、さ」
この雰囲気、あたしはすきじゃない
來・幸一・あたし・青葉・咲楽 この5人の関係は半年前に大きくかわった
なのに…!まだかえるつもりなのっ!
「わかるっしょ?おねぇちゃん  私は、まだあきらめてないから」
そう宣言して、いなくなっていった
このことは、あたしたちの問題だろう 青葉には、きっと言えない
                *
文化祭1週間前
悩む毎日が続いた。もともと騒がしい教室が準備でさらに騒がしくなる
この学校は、1週間前からずっと準備期間
でも、そのぶん詰め込むけどね♪
「あぁ…ダメだ 明るく言っても無駄だよぉ」
文化祭が近づくにつれ、憂鬱になってくる。 帰りも遅くなり疲れが増す
それに加えて…咲楽の発言
「はぁ~ぁ」
あたしのクラスは、喫茶店。珍しいよね、中学で食べ物を出すなんてさ
準備は、ほぼ飾り付け
咲楽と來は当日の料理担当。でも、あたしと青葉、幸一は飾り付け担当だ
だから、当日は暇
接客なんて、やりたくないしね…
                  *
「か~え~で~!!!」
「うぅ~ゴメン」
あたし、本当は細かい作業ダメなんだ。でも、咲楽の発言が気になって
青葉と離れないようにしようと思ってさぁ…
あたし、料理は超超得意なのになぁ…



文化祭当日
「あぁ~なんであたしは午前中!!」
咲楽の嘆きが聞こえる
午前の部は、吹奏楽の先輩方の演奏会らしい
「青葉っ!遊ぼうね」
「あぁ」
後夜祭が終わる午後8時  咲楽の計画実行
だから、その分遊ぶんだ
「花楓、8時ね
來と、幸一もいるからね」
ウインクをして、走って行った咲楽

「すっごぉ…」
結構完成度が高かった
「去年とは全然ちげぇ…」
そう、去年はアーチもなく、お店の看板すらなかった
「サイヤク最低」という言葉がぴったしなくらい
「去年のサイヤクさ、覚えてっか?」
今、2人でまわってるけど…これってデートぉ!?
「で?どこ行く?」
青葉が顔を覗き込んでくる
「えっ!あ!えっとぉ…」
超ドキドキするじゃん!バカっ!
心の中で毒づくけど…ね
「っとぉ、じゃ、あっちにいこっ♪」
最初に行くのは、もちろん喫茶店
咲楽の担当は午後の部だし、自分たちで作ったのがみたいってのもある
だから、今のうちにいって、來と合流
「來~」
教室にはいるなり、來を探す
來には頼んでることがある  來は情報通
咲楽の件も頼んであったんだ
なぜか咲楽の情報はゼロ。双子のあたしとは、性格も体重も、好きな食べ物だって違う
気になるから、本人に聞いたのに…答えてくれなかった
怪しくて來を頼ったんだけど…

「あっ!いたいた
早くいくぞ、花楓」
一番端の席に、來は1人で座っていた
「で?どうだった?」
座って、すぐに聞く
青葉は誤魔化すためにレモンティーを3人分頼んだ 青葉とあたしの好きな飲み物
頼まないと、何しに来たんだこの客、だからね
「はい、青葉
  いま 客少ないんだぁ」
クラスメイトのいう通り、客は全然いなかった
だから、すぐもらえたんだけどね
氷をストローでつつきながら、來に聞く
「咲楽のこと、どうだった?」
少し、ためるようにしてから切り出した
「咲楽の情報が全然ないんだ
それを踏まえたうえで、聞いてくれ。  神宮寺、時任」
「うん」
「あぁ
で?」
1分。無言の時間がおくられる
何か、あったのだろうか
咲楽…
「あのな…

神宮寺2は友達が多いだろ?
なのに、な。  
全く情報を明かさないでいるんだ
むしろ、情報を明かしてないということさえ気づかせないようにしているんだよ
好きな食べ物、身長、体重、自分のハッキリとした性格
血液型だって、神宮寺と違うし、それがあいまいな情報しかない
神宮寺と違うってのは、突然変異
つまり、欠陥品か特別に優れた存在ってことだ

1つきくけど…神宮寺2の行動は、お前等の行動のメリットになったか?」

長くしゃべり、來は1度切った
「おおげさな…
   メリットって…」
青葉があたしのかわりにいってくれる
「生ぬるい言いかただった


神宮寺2の行動が、咲楽の行動がお前らを不幸に、じっくりと導いていないか?

オレは、そう思う」
「……」
「さく…らが?」
客がいないせいで静かな教室
皿の洗う音・かすかな笑い声・氷のとけるピキッという静かな音・來のあたしと青葉を
見つめる冷たい視線・クラスメイトの喫茶店の話

「情報が少ないとふまえたうえ、っていっただろ

すこしはオレの想像も含まれてるが、ほぼ裏付けされたことを話す

いいか?」

「「……」」
無言。何を言えばいいかわからなかった
「このあとの神宮寺2がよんだ集まり、俺に告白するという行動

オレにこくり、俺を喜ばせる
神宮寺と時任を安心させる
椎名の心を不安定にさせる
椎名・オレ・神宮寺・時任、俺等の行動にかかわり、不幸にしてないか?

わざわざ今日にしたのは、昨日裏付けがとれるから
裏付けは、こうだ」
1度、あいだをあけて、話し始めた
「なぜ、オレや椎名みたいな人見知りに近づけたか、だ
 そして、なんのために俺たちにかかわってくるか、だった

一応は信用してたよ
でも、この裏が取れたとき、わかったよ
なぜかって」

「なんだよ…?」
氷がとけて、水っぽいレモンティーをすする
「アイツは、オレたちの史上最悪の
          
          敵

だよ」

かすかな笑い声
そこからひろえたのは、咲楽の声だった もう、午後
咲楽のシフトに入ったのか
何故か、咲楽が怖い
いつだってクラスの中心にいる
でも、裏はかなり大きい
今なら、絶対誰にも騙されないと思う
だって、人が一瞬信用できなくなったから

「最後に言わせてもらう


神宮寺咲楽を 信用するな」

そういって、立ち上がる
「情報があがったらまた伝えるよ」
それを最後に、教室を出て行ってしまった

                  *
(後夜祭・花楓視点)
「あははっ!」
咲楽の笑い声
カップルの誕生で、盛り上がる声
そう。今は8時
來と話しながら咲楽が喫茶店の片づけが簡単におわった教室にくる
來が好きなのか…青葉が好きなのか
「じゃ、やりますか!」
テンション高く、咲楽が仕切る
「ほらぁ、幸一。
気持ちを、ね?」
幸一になぜ最初に話しかけるかがわからない
シーン、と何もしゃべらない
誰、も

「じゃ、いうよぉ
花楓は、青葉が好き
青葉は、花楓が好き
私は、 青葉が好き
幸一は、私が好き
來は、 花楓が好き

               これでいい?」
「「「「いいよ」」」」
全員がそろった
結構サラッっといったけど、結構問題発言だ
さすが咲楽
なにげに自分が來のことをすきじゃないって言ったし、あたしのこと好きっていう
爆弾発言だし
知らなかったよ、こんなこと
知りたくもなかったし
「で?
これを受けて、花楓!
どうする?」
なぜかあたしにふってくる
來はずっと咲楽をにらんでるし…
あたしは、どうすればいいの!?
「あたしはいままでどうり、青葉と付き合ってる」
「ならオレは、ほかを断るよ」
あたしのすぐ後に青葉が重ねてきた
青葉の本心は、分からない
「なら…みんなの気持ちはいいの…?」
落ち着いたテンションで咲楽がいってくる
普段とは全く違う声
明るい咲楽にしては珍しかった…

(來視点)
神宮寺に何気ふられたよ…
神宮寺が時任のことを好きだとわかっていても、やっぱりキツイ
でも、それ以上に神宮寺2のやつ、なんで…?
やっぱり怪しすぎる
「おい、椎名、神宮寺2はそれでいいのかよ」
神宮寺2のやつはわかんねぇが、椎名は絶対納得いってない
俺の知ってる椎名は、少なくともそんなやつじゃぁない
「おいおい、いやみかぁ?」
「黙れ、時任」
時任が笑いながらからかってくる
こっちは情報収集してやってるっつーのに
感謝の気持ちが全くねぇ
「「……」」
2人は聞かれたにのに無言だった
「答えろよ」
すこし声を低くして、いう
神宮寺2は後ろを向いたまま、椎名はうつむいてる
雰囲気が暗いな…
「いい…わけ…ないじゃんっ!」
涙声で、泣きながら神宮寺2が叫ぶ
普段とは違う神宮寺2の声
「お…い?」
「私はっ!あたしはっ!青のことはっ!おねぇちゃんよりはやかったっ!!
もっとはやく…好きになってたっ!!」
へ…?コイツが本性をだすなんて…
でも、いいデータだなぁ
知らなかったことがたくさんわかる

(青葉視点)
昔の咲楽。
俺の幼馴染であり、親友でもあった咲楽
花楓と付き合い始めてから、咲楽はかわった
何があっても常に明るく、落ち込まないで過ごしてた
咲楽がどんな気持ちかも知らずに
「あたしは青がおねぇちゃんにとられてもっ!あきらめられなかったっ!」
本当の気持ちなんて考えようともしなかった
いや、知ろうとしなかった
幼馴染だから。わかってるつもりだったから
今日、來に聞いて、今があって、やっとわかった
俺は全然わかってなかった
よくよく考えてみればわかることだった
この前の家出
あれは、幸一のやつ、心が不安定とか言ってた
それは、今回のことに関係してたんじゃないのか?
「いつから好きだったなんて関係ねぇよ
先に好きであろうが、たったそんなことで恋愛は成功しない
  俺は花楓が好きになった
  好きだったんだよ
もし、先に咲楽に告白されていても、俺は花楓をえらんだ
それだけは、確実だ


こいつと一緒にいたいって思ったからだよ
何もない、面白味のない日常の中で、初めて花楓は俺を楽しませてくれた
人を嫌って、逃げていただけの日常に、花楓ははなしかけてくれた
孤立して、怖がっていただけの俺を、変えてくれた

幼馴染でもあり、恋人でもあり、俺の好きな人でもある
親友でもあり、仲間でもあり、俺をかえてくれた恩人でもある

こんなやつは、どこにもいねぇ
誰もいねぇ
いるわけもない  
これが、神宮寺花楓だからだよ」
孤立していたころの自分
咲楽と花楓に出会って変わった自分の中には、やっぱり昔の俺もいる
その時身に着けていた、この冷徹さ
それが、こんな時に役に立つなんてなぁ

(幸一視点)
意外と青葉って厳しいんだなぁ
別に、ふられるのはわかってた
でも、なぁ
目の前で口論されて、本気で青葉のことが好きっていいだして
オレの恋を全否定されてるみたいなもんなんだよ
「なぁ」
重苦しい空気のなか、オレは切り出した
青葉のせいで空気がかわったじゃないか
「何?」
何も被害がない花楓が切り出す
恥ずかしくないんだろうか
「俺を無視すんなよ
幼馴染がなんだいってるけどよぉ
そんなのそれこそ関係ねぇよ
小説や漫画で幼馴染が結ばれてるけど…
これは漫画の主人公なんかじゃねぇ
もてて、皆を幸せにできるようになんかできない
だったら、誰がつらい、誰かのために、誰かを悲しませたくない
そんなこと考えて遠慮したって、無駄だろっ!!」
つい、キレてしまった
自分の、親
小5の子供を一人置いて旅行に行った、薄情なダメ人間
「俺にはお前らのきれいごとなんてまったくもって興味がねぇ
でも、お前らが間違っている、ってことだけは断言できるよ」
空気が重くなる
思わず咲楽をにらむけど、オレが悪いんだよなぁ

(咲楽視点)
うぅ、にらまれた。幸一なんかに
ま、関係ないけど
じゃ、まとめよっかなぁ
疲れてきたしぃ、ね  涙をぬぐって、いう。言わなきゃいけない
私が言い始めたんだから、私で終わらせないと
それはみんなもわかってるだろうし
「じゃ、まとめるよぉ
    花楓&青葉ぁっ!!
でしょぉっ!?」
簡単にまとめてやったけど…
來と幸一の目が怖い…
えへへ
ま、大丈夫だよね

「じゃ、終了ね!
ばいば~い」

(花楓視点
   以下、もとに戻る)
咲楽…
自分の双子の妹
ある意味でも大親友だったから、分かってるつもりだったんだけどなぁ
所詮、つもり、かぁ
「どうする、花楓?」
青葉が聞いてくる
わかってる
この雰囲気をどうにかしないで、咲楽は逃げてったって
でも、ねぇ
「來、幸一。
帰ろ?」
むりやり雰囲気をかえて、原因をけそうとする
ムリだけどなぁ
「神宮寺」
教室から出ようとしたとき、來に声をかけられた
「また、明日な」
それだけ言って、あたしをこしてさきにいった
來は來で気を使ってんだなぁ
「わかったぁ」
かるぅく返事をして、幸一をのこしてでていく
幸一は自分の言ったことを悔やんでるみたい
ま、しょうがないけどね
あたしもあの雰囲気でずっといるなんてむりだった
幸一はすごいとおもうし、あそこで逃げれた咲楽もある意味すごかった
あたしは、何もできなかったんだから

                 4
去年とは同じなのに、変わった
人間関係
全員の気落ちを知って、大きく変化して、こじれたあたし達
まだ、この中学生活は終わってない
あたしが物語としていくのは、要点をまとめた高校生活まで
これは、ある意味日記なんだよ?
だから、あたし視点
中学入学から、高校卒業までの日常を綴った、日記
だから、このこじれた人間関係はかわらない
高校を卒業するまで
なんでって?
大学に、あたしは行けないから…
これ以上は、ネタバレになるから書かないよ?
あたしが知ってる期間の人間関係、日常であり、非日常を書くから…

これを書いてるのは、高校卒業の次の日
あたしが…


                      5
「花楓」
「何?」
放課後の教室
部活が終わった後に花楓を俺は呼び出した
「俺はお前が好きだ」
それを言った瞬間、花楓が動きを止める
何を思ったかはわからない
小5の俺等には、いや、花楓には友達がいない
だから、俺がそれを補わないといけないという気持ちもあった
だから、無駄に突っ走ってたけど、それも今日で終わりだ
ふられれば花楓のために動かない
成功すれば今までよりは頑張らずに、手助けをする
「咲楽よりも。いや、咲楽はただの親友として、だしな。
俺が言ってんのは、神宮寺花楓を女として好きだってことだ」
無言
花楓が無言で俺を見る
この沈黙は、俺にとって嫌いな沈黙だった
例えば…なんだろう
ケンカした友達と一緒に帰ってるような感覚
『絶交だ!』とかって叫んで仲直りしないで帰ってるような感覚
約束したからしょうがなく、みたいな
絶交したのに、いっしょにいるって、結構きついんだよな
「だから、お前と付き合いたい
お前が嫌だったら…あきらめるけど
そんなに簡単なやつじゃぁないことは、お前の知ってるだろ?」
「っ…」
少し、花楓に迷いが生じてる
初めて見た、花楓だった
俺のことをそういう風に見たことがなかったのか、何かに遠慮してるのか…?
「いいけど…」
花楓の返事に俺は驚いて顔を上げる
「本当かっ!」
そう叫んだ瞬間、花楓が急に焦る
「っと、ね?

フェイクなら。両方がその気になるまで。
だって、小学生だよ?」
花楓が確実に誤魔化したのがわかった
何かを…確実に隠してる。でも…
「わかった。
それでOKだ」
気分はよくないけど、花楓に嫌われるよりましだろう
ましなはずだ
そう…だよな?
                     6
「あぁ~もういやぁ!」
中学3年 6月
修学旅行準備中だった
あたしと青葉は学級委員
修学旅行の運営側
し!か!も!
あたしは1組なんだけど…
2組が咲楽と幸一!
もう、いやな予感しかしないよぉ
しかも、手伝いとしているのが、來だよ?
地獄。地獄としか考えられない
考えたくない

「おい、神宮寺
   早くシナリオと予定表、作ってくれよ
 行き先とかも決めなきゃなんねーし」
3組のひとが言ってくる
『神宮寺』なんて來以外に久しぶりに言われた気がする
「予定なんて行き先決まってからじゃん」
「行き先は大体決まってるだろ?
好きなの選んでいいから
そのあとに審議するし」
否定するってことじゃん…
思いっきりあたしたちに期待してないね
「わかったよ…  青葉ァ、早くやろ?」
分担はクラスごとに振り分けられてる
まだ、そのへんはよかったけどね…
いろいろと、咲楽と一緒の作業になるわけですよ…
來は來で、最近クラスが一緒だけど話してないし…
いろいろ咲楽のこと調べてくれてるみたい
「あぁ…そうだな  どうする?」
「う~ん?」
咲楽が思いっきりこっちを見てる
う、幸一も見てるし
こわぁ
「っと、じゃあこれでいいか?
シナリオ」
青葉がシナリオを作り終えてあたしに渡してくる
なんか、ホテルでもこととかの説明らしい。
「いいんじゃない? あたし、先生に出してくるから、予定表書いといて~」
「あ!俺にまかすなっ!」
やるのがめんどくさくなって、あたしは、逃げた。
あたしは、今回の修学旅行の実行副委員長
委員長は、幸一
やだなぁ
だって、幸一は咲楽が好きなんだよ?
絶対あたしと話したくないって思ってるって…
「先生~シナリオできました~」
かる~くいって、渡してくる」
予定表かぁ、あたし、考えることとか嫌いなんだよ…
むりやり青葉にやらされて、クラスにからかわれて…
調子に乗って、青葉と一緒の仕事になったっていうね
「できた?」
「できるかぁ!
 俺一人で考えろ、とかお前最低すぎるだろ
なんでこんなん引き受けたかなぁ?」
むちゃくちゃ悩んでた
ま、当たり前のことだよね
「何でもいいって言ってたよ?」
手助けをするけど…
「はぁ!?
 3組の奴だろ?アレは適当過ぎてダメだ
幸一と咲楽に審議されてみろ
一発で却下されるっつーの」
それはあえりえるかも
咲楽だもんねぇ
「お~い!
のこりは家でやるか、明日やれ~
今日は終了だぁ~」
幸一が呼びかけてる
「どうする?帰ってやる?」
「いいよ、どうせ花楓はサボるだろうし」
「ひっどいなぁ
ま、間違ってないけどさぁ」
「ならいいじゃねーか」
少し言い合いながらも、教室をでてく
                   *
次の日、朝から來に呼び出された
「なんだよ…?俺、朝は弱いんだって」
「ね~む~い~!!」
朝6時  いろいろとうるさいのは、部活中だからだ
特に、吹奏楽部
あたしたちは、もう退部したけどね…
「人が情報持ってきてやったのに、その態度かよ」
「わざわざ、朝早くなくてもいいじゃねぇか」
「教室に普段いると、神宮寺2が入ってくるし、人もいろいろいるだろうが」
少し來もイラついてるらしい
調査で夜更かししてたっていってたし
ちょっと申し訳ない気分
ちょっと、ね
「で?來。どうしたの?」
急かす。じゃないと、青葉と來がケンカしそうなんだもん
「あぁ…そうだな
まず、1つは、なぜ神宮寺2の情報が遅いか
2は、何のために俺たちに近づき、俺たちを乱すのか
3は、何のために、なにが目的で情報をもらさないか
4は、どうして俺等の邪魔をするのか、だ

これを簡単に説明すると…
  神宮寺咲楽は俺たちの敵。時任と神宮寺を恨み、椎名を羨んでいる
普通に過ごせてるから、だ
俺たちのことを羨み、希ってる
なぜだかわかるか?
アイツは、人嫌いなんだよ。しかも、重度の。
普通にいるように見えて、裏では嫌われたくない、でも、誰かと一緒にはいたくない
そう思ってたんだ

自分の本性が知られたら、怖がられ、逃げられるかもしれない
普通のニンゲンのくせに、だよ

1の結果は、人嫌いであり、浅く浅く生きようとしているんだよ
心のよりどころを作らないために
ま、でもバカな時任と神宮寺に近づいたからな
で、2の結果は、普通に、人を嫌わずに過ごせてる俺たちがうらやましいから
3は、1と同じ。人嫌いだから、だよ
4は…羨ましがるが、そう簡単に壊したら、ばれるかもしれない、と思ってだよ
お前等だって、俺に聞かなければ深く考えなかっただろ?」
そう、あたしが來に咲楽のことを聞いたのは、咲楽が怪しいから
怖いから
でも、確かに情報がなかったら、考えてなかったかもしれない
勘違いかもしれないから
「わかるか?神宮寺。双子だろ?」
急にあたしに話がふられた。へ?
「っとぉ、双子だからっていっても、性格は全然違うから、想像でいうよ?」
「あぁ、いいよ」
來は返事をするが、青葉は黙って聞いてる
「人嫌いってことが、全くわかんない
でもね?一緒にずっとすごしてきたんだもん、わかるよ
あたしを、思いっきり人を避けてるってことぐらい。
ほんとにそぉっと避けてるぐらい。わからないように、ゆっくり、じっくりと」
そういって、言葉を切る
「どうした?」
青葉がやっと喋る
こっちのほうが青葉はいいや
「なんでもない。もう…想像つかないや」

                    *
青葉?いま、これを読んでる?
これを読んでるんだったら、この次は、慎重に読んでほしい
これは、双子のあたしにしかわからない
性格は違っても、心の底は一緒のあたし達しかわからない、本性だから
                    *
想像は、ついていた
なぜ、避けるのか?
そんなこと、簡単だ。青葉が、好きだから、なんだよ
恋をして、ふられて。ふられるのが怖くって、人と話さなくなった
「花楓でわかんないんだったら、キツイなぁ」
「ごめんね」
わかるけど…今は言えない
だって、ねぇ
青葉が咲楽のことを気にしちゃうもん
まだ、平和でいてくれないと

「予定表、どうすんだ?」
朝、学校に行くときに、そう切り出された
「う~ん…?青葉、どうせ決めてきたでしょ」
大体わかってる性格の幼馴染
「ま、まぁな
でも、お前も考えねぇと…」
「あ、來~」
なにか言いかけていたたけど、來を発見して、逃げた
「よう。あれから情報、ゼロだ」
6月にぴったりの言葉「梅雨」
それを象徴するかのように雨が降り続いてる
同じく暗いトーンで話す來
「暗いなぁ」
思わずつぶやいてしまう
「は?どうでもいいから、早くいくぞ」
青葉につれてかれた
ビショビショだよ…
「あ!幸一!もってきたぞ、予定表」
えらいことに、青葉は幸一を発見して、仕事を終わらせてた
「大変だよなぁ、神宮寺と時任
仕事多そうだったし」
「手伝いの來はいいよな
花楓なんて、全然仕事やってくんねぇし」
話の終わった青葉が話に加わってきた
「ひっどぉ!少しはやってるよ?」
「少しは、な」
間違ったことはいってない
「花楓~」
2年の時、クラスが一緒だった人が呼んでる
同じ実行委員会の人だっけ
「あ、じゃね」
無理やり切って、教室をでた

「なぁ、來。お前、いつまで花楓のことで悩んでんだよ
花楓とオレは正式に付き合ってる
わかってるだろ?」
「あぁ。時任こそ、神宮寺2の情報を聞いて、気にかけて
わかりやすく好意を示してんじゃないか」
「來にはいわれたくねぇな
咲楽の情報を調べる、とか言って結構わかりやすく近づいてるじゃねぇか」
「時任には、一番言われたくないことだな
神宮寺は別に、なんか変な意味を持ってお前といるわけじゃないだろ
それなのに自分は気にするなんて。バカらしい」
「來だって、気にしてるじゃねぇか
わざわざ花楓のことを話にだして。結構気にしてるよなぁ?」
「君こそっ!」

「どしたの?」
なんか、來と幸一が睨み合っていた
「いや、なんでもないよ」
「ふーん、そう」
言いたくないっぽいし、ほっとこう
二人が仲悪いのは前からだし
どうにかしたいなぁ
「ちょっ!神宮寺ちゃん!授業始まるよ!?」
「ほんと!?」
クラスメイトに言われて、急いで席についた
間に合ったぁ
怒られると、面倒だからね

                      *
「仕事、もうないじゃん」
「青葉が終わらせたせいでね」
「お前がやらないからだろ」
言い合いながら、4組の教室に入る
「おねぇちゃん、青!」
咲楽があたしたちを見つけて、よってきた
呼び方は、去年の学校祭のころから、昔みたいに戻ってる
「幸一が、これならできるっていってたよ
今日はもう仕事、ないみたい
明日の打ち合わせだけだね~」
「え…ありがと」
修学旅行は、明後日
明日最後の打ち合わせ。予定表が遅くないかって?
この学校、イベント予定っていつも当日まで隠しとくんだよ…
PTAから、批判を買ってる
なにするかわかんないってさ
そこが面白いのに
「じゃ、俺等は帰っていいのか?」
青葉が咲楽に聞いた
「うん。3組はもう帰ってるよぉ」
前とはかわった、おっとりとした、表向きのしゃべり方
猫かぶりなんだよ
それにしても、猫かぶってても、おしとやかじゃないんだよなぁ
無駄な気がする
「サンキュ。」
青葉が簡単に言って、「帰ろうぜ」とあたしに行ってきた
「う、うん。明日何もってくの?」
「はぁ?持ち物の書いたやつもらっただろ
咲楽が書いたやつ」
「あぁ!あれね」
本当に忘れてた

咲楽が、あたしのことを「おねぇちゃん」と呼んでいる
1年のころのあたしなら、真っ先に否定しただろう。「あたしは、姉になど向いて
いない」と
でも、今はわからない
なんて言えばいいのかすら、全く分かってないんだから
文化祭の時の咲楽の様子
前と全く変わっていなかった家出の時の咲楽の日記
どうなるんだろう、この修学旅行
「はぁぁ~」
つい、ため息をついてしまう
「疲れてんのか?準備、手伝うぞ?」
あの、青葉が心配してくれてる
「違うよ。修学旅行で何が起きるかを想像すると、憂鬱になるだけだから」
「あぁ…それは確かに、わかるかも
でもクラスが違うし、大丈夫だろ」
「でも、ねぇ。同じ実行委員会だよ?委員会、とかいってあたしたちを呼んで…
はぁぁ~」
つい漏れる、ため息
だって、ねぇ?あの咲楽だよ?何するかわかんないし、怖すぎるよ…
自分の妹の行動だ、すこしは想像つくんだよね…

「でぇ?あと何がいるのさぁ!?」
家で準備中。基本的に必要なものは用意できた
あとは…その他のものだ。実行委員会で使うものとか、班によって使うものとか。
研修地で必要なものも出てくるハズだし…
「あぁ?あとは…っと。メモ帳とかもいれたかぁ?」
リビングであたしと青葉の2人で準備中。
咲楽は今、委員会の仕事中
最近話すことも減ってきたんだよ
咲楽自身も避けてるっぽいし、あたしたちもなんか距離を置いてしまってる感じだしね…
前とは違った壁があるんだよ
「入れたよ。」
「じゃ、これは?」
「入れた~」
「ほとんど大丈夫じゃねぇか」
そう呟いて、自室に入ってしまった

1人になったリビングで考える
あたしにとって、前までならこの家は安息の場所・一番落ち着ける場所だった
でも、今は距離を置いた咲楽
咲楽やあたしに対しての態度を家だけでも変えようか、と考え直してる青葉
これからの皆への態度や、高校でも生活のことを考える、あたし
全員のこの家での感じ方がかわってしまった

「おねぇちゃん?」
最近、無理をしている咲楽が帰ってきた
「青葉もいないし、普通に話しても大丈夫だけど?」
つい、前と違う冷たい態度をとってしまう
なぜか、今の咲楽にはイライラしてくる
「別に、青葉を気にしてるわけじゃないさ。ま、花楓だけならいいや」
前とも、今とも違う態度。咲楽って、こんなんだったんだ…
「なにさ?用件は」
「あのさぁ、昔とか、前とか、気にしすぎなんだよ
しつこすぎる
過去がなに?今が何?どうしても昔に戻らないといけないの?
意味わかんない。理解したくないし、理解することもできない
いくら前が、昔が楽しかったからって、なにさ
楽しいと、
前に戻らないとだめですか。先に進んだら悪くなることもあるかもしれない
でも、楽しいことがゼロだと、誰が言ったのさ
1回、考えてみろよ
花楓。花楓は青葉や來のことを気にしすぎなんだよ
花楓は落ち着いてみろって」
それだけいって、一方的に喋り、部屋に戻ってしまった
「たしかに…ね。はははっ!」
咲楽に簡単にずっと悩んでいたことをあっさりといわれて、すっきりした
すっきりして、何に自分は縛られていたんだろう、と。
無駄に変なことを考えていたんだな、と今ハッキリわかった
「あはははははっ!」
思いっきり、久しぶりに笑えた気がする

「あぁ~!今日だっ!修学旅行~」
昨日の打ち合わせは、何もなくすんだ
あたしの仕事は、当日はほとんどない
予定表を作る人は、基本仕事が少ないらしい
それだけ難しいんだろうなぁ
「俺等は仕事がほとんどねぇからな。それに、來が手伝いのくせに本当は俺たちにまわってくる仕事を引き受けてくれたからよぉ」
「確かにね。そこはラッキー」
「ズルすぎだろうが」
青葉は、來が嫌いらしい
周りの人には分かりずらいけど、幼馴染のあたしや咲楽にとっては、分かりやすい反応
「あははっ」
                      
                    *
学校に行くと、他にはたくさんの人がいた
「うぅ…」
かなり緊張する
なんせ、出発前の司会はあたしと咲楽。あたしだけっていうのも、
ただでさえ緊張するのに…
咲楽と一緒にやるって…最近苦労してるのに一緒に仕事をするというこの緊張感っ!
逃げ出したいよぉ
「ほら、花楓。早くいけって」
青葉に急かされる。
「おねぇちゃん?早くいかないと、遅れるよ?」
わざわざ2組のところから1組へ、咲楽が来た
気にしてないように話してはいるが、今までのあたし達とは全然違う。
たぶん、幸一か來あたりがこの話を聞いてたら、違和感をおべてたと思う
「わかってるよ…!」
妙にトゲトゲしい感じで接してしまうのもあたしたちにとっての難点
「じゃ、早く行こ?」
前と違ったしゃべり方も、前のようにはならない証拠
先に進んだら悪いことがあるとは限らない、昔のことを気にしすぎだ、と咲楽は言ってたけどあたしには、そんなことを考えないでいるなんて到底無理なこと
昔のほうが、楽しかったから。
全員でたくさん話していられる1年生のころのほうが、絶対よかったと思ってる
咲楽は後悔しているようには見えないけど、見せてないけど、今と昔だったら
青葉も、來も、「昔」を選ぶと思う
咲楽と、皆と距離を置いてしまう今とでは
「おねぇちゃん?」
「あ、ゴメン」
つい、別のことを考えていた
咲楽といると、落ち着かない
咲楽を無駄に意識しながら、司会を始めた…

                  *
「ははははっ!」
幸一が、あの司会の後ずっと笑ってる
「幸一!しつこいって。確かにたくさん噛んだけど…」
1組と2組はバスが隣。だからバスに向かうまでの間は同じ道を歩くことになる
「うっせぇなぁ。あんな面白いことをする花楓が問題だろうが」
口元をにやけさせながら、青葉が後ろを向いて言ってくる。
「でもさぁ…」
誤魔化していても結果は変わらないんだよね。それをしつこく言ってくる彼氏とその友達…
なんという異様なコンビっ!
「わかったわかった。落ち着くよ。」
あの來までもが少し笑ってる。
來が笑うって、あたしどんなことを… 緊張してて、あまり覚えていない。主に咲楽に。
「でもよ、お前が咲楽に、妹に緊張するなんて初めてだよな。いつもなら自分が頑張らないと、的な感じでは緊張してても、今回はどうせ変な壁を感じて緊張したんだろ?」
バスに乗り、学級委員は特別、ということで2人で1番前に座ってる。そして、座ってから青葉があたしの本心をついてきた。
「まぁね。他にも考え事してたってのもあるけど…
でも、あとは帰りだけだもん!しかもペアは來!緊張なんて、ほとんどないって!」
青葉は來が嫌い、とわかっていながらもそういってしまう。
青葉はあたしのことを理解しすぎだから、鈍いんだよ。なら、少しは遊んだっていいよね。
「また、來かよ…」
少し、ほんの少しだけ青葉が不機嫌になる。普通の友達、いや親友レベルでは気づかないぐらい。
「バスに乗るまででこんなに大変じゃぁ、2泊3日のこの先が思いやられるなぁ…」
つい、本音がもれる。でも、これは本当だった。同じ委員に前までは仲の良かった友達
前までは、ね
「それはわかるよ。まだ1日目出しあと2日もこんなきついことをやってないといけない、ってわかったら楽しみな修学旅行が結構憂鬱に…」
「ほんと。青葉がすごく頼もしく見える…」
「ははは…」
青葉もあたしも初日のバスで、疲れ切っていた。
あぁ…どうなるんだろうか
                   *
「う…意外とこのホテルって、しょぼいんだね」
バスで2時間。やっと目的地のホテルに着いた。
「おい、花楓。静かにしろって。バレたら怒られるぞ?」
大浴場に行くまでの道。歩いて5分ぐらいかかる、そこそこ遠い場所。
他には咲楽と來、幸一がいる。
というか、ついてきている
「うん…」
あたしには、去年や一昨年の面倒くさい女子の事件で、女子の友達がいない
寂しいわけじゃないけど、修学旅行の女子の部屋、がかなりいやだ。
咲楽も性格が変わったりして、周りの人が態度に困り距離を置いている。
それとは別に、幸一は昔からの人見知りで他の人に近寄ろうとしない。あたしたちといるから慣れてたけど、極度の人見知りだったっけ。
「よ、時任」
「よ!早く行こうぜぇ」
青葉がクラスメイトに呼ばれてる。この通り、青葉はどのクラスでもあんな事件があったにもかかわらず友達が多い。
來は全員に「広く浅く」で、一人でいるのは見かけないけど、共通の人とずっと一緒にいる、というのも見たことがない。
「あ、佐藤も!早くはいんねぇと、夕食遅れるぞ?」
來と青葉はクラスメイトに呼ばれて先に行ってしまった。
「じゃな、あとで」
幸一があたしたちに一声かけて1人で行ってしまった
「早くいこ?おねぇちゃん」
咲楽があたしに声をかけてくる
「うん、そだね…」
咲楽と2人きりという謎の緊張感
妹と2人きりって、なんでこんなに緊張するんだろう
普通じゃ…ないんだよね
「ね、花楓」
風呂に入り、咲楽が昔のように話しかけてくる
あたしが、昔の咲楽のほうがいい、とわかっているように
「なに…?」
落ち着いた声で話しかけてくる咲楽に少しおびえた感じで返事をしてしまう
「どう?青葉と一緒にいて。私が好きな青葉を奪って、同じクラス・同じ委員会でずっと一緒にいて」
少し恨みを含んだ、落ち着いた声。
「どうって?恨んでるんだったら、うらやましがってんなら、ハッキリ言えばいいじゃん。
なんでさぁ、自分は我慢してんのさ。何?我慢して、自分を追い込んで。1人になって、私はえらい?
意味わかんない。そんでもってつらくなったらあたしの文句をいって、さぁ。
バカじゃないの?あたしはそういう咲楽がバカみたいって。
                キモいんだよ。うざいんだよ
あたしの、私のことが嫌いだと思う名ならば言えばいい。
うざい。うざすぎる。
バカで、きもいっ!!!」
つい、昔のあたしが出てしまった
あたしの、心の底からの本心。
あたしの、昔からの口癖であり、隠していた本音や口癖。
青葉や、咲楽。たぶんずっと前まではいた、親すらも気づいてないと思う
「ど…うしたの?花楓」
咲楽にも見せたことがなかったこの、本心
でも、説得にはなったよね
「どうもしてないって。」
「は…ははははは」
乾いた笑い声。
「なら、いいや。じゃ、これだけは言っておくよ。 
私は、神宮寺咲楽は神宮寺花楓のことが、
                    大っ嫌いっ!!!!」
心の底から言い合った、本音
なんか、緊張感が消えっちゃったよ
「神宮寺ちゃん、咲楽…さん?
そろそろでたほうがいーよ」
たまに話すぐらいのクラスメイト。
わざわざあたしたちに声をかけてくれた
「あ、ありがと~」
黙り込む咲楽に代わり、あたしがお礼をいった。
そして、無言のまま咲楽は着替え、どこかに行ってしまった…

                  *
「おい?神宮寺2は?」
「あ、さっきロビーにいたよ」
「なんだ」
來と幸一が話しているのが聞こえた
なんだ、ロビーにいたのか
「あ、花楓!
わりぃ、あとでな~」
クラスメイトと話していた青葉があたしに気づき、こっちに向かってきた
「早く夕食、食いに行くぞ?」
友達が多いというのに、わざわざあたしたちを気遣ってこっちに来てくれている青葉は、本当にやさしいと思う。でも、それを望んでない人だって、いるんだよね…
「あ…。」
あたしを見て、こっちに向かってきた咲楽が青葉を見て、気まずそうに顔をそらした
「よ、神宮寺。変なことは喋んなかっただろうな?」
青葉についてきていた來が変なことを気にする
「大丈夫だよ。ま、いろいろ言われたけどさ…」
「何?」
「咲楽はあたしのことが大っ嫌いってさ」
「ふーん。なぁ、2年の時に行った神宮寺2は敵だって言葉、覚えてるか?」
「覚えてるよ?」
「じゃ、気を付けとけよ」
「ん」
來は周りに「クール」と言われてるけど、十分口数が多いほうだ
最近は咲楽より多いんじゃないかってぐらい
「最近、神宮寺の情報が入りづらくなってる
気を許すな」
それだけ忠告して、來は幸一と先に行ってしまった。
あ、幸一いたんだ…
「なぁ?早くいくぞ?」
なにかを気にしてるような感じで、青葉が急かす
どうせ、來たちと話したいんだろう
「うん」
食事前にも、いろいろと疲れたよ…
                   *
「あぁ…」
かなり憂鬱だった
クラスが違うから咲楽もいない
そして、ほぼ全く話したことがない同室となったクラスメイト達
なぜかあたしって1年のころから「神宮寺ちゃん」なんだよねぇ
「えっと…?よろしく…ね?」
とりあえず挨拶をしておく
「なぜにそこで疑問形だ。よろしく、と挨拶をするという時に、何の疑問を貴様は持った」
「ん。2日だけど」
「俺はお前と仲良くする気はない」
「ボクは君と仲良くしよう、なんて概念を1度も持ったことはないけどなぁ?
リア充の神宮寺ちゃん?」
1人目は遠山さん。かなり冷たくて、怖いらしい。クールだなぁ
2人目は神崎さん。もともと口数が少ない子だけど、この部屋では1番フレンドリー
3人目は坂町さん。特徴的で1人称が「俺」の男喋りの女の子
4人目は赤羽さん。1人称が「ボク」で、あたしにかなり恨みを持ってるっぽい
うぅ…、個性的すぎる
「貴様、なぜ質問に答えない。しかも全員の挨拶を聞いても無言とは仲良くする気が全くないな。そして、どうせ「個性的」とでも考えていたのだろう」
遠山さんから、すっごく文句をいわれたよぉ…
「えっと… そ、そんな失礼なこと考えてないですよ…?」
う、ついあせって答えてしまった
「な!ぜ!貴様はそこで最後にクエスチョンマークがつく!?
私はめったに語尾にエクスクラメーションマークなどつかないぞ!?」
なぜか、イラついてるらしい
「えっと… 神崎さん。ちゃんと消灯時間に寝るの?」
とりあえず遠山さんを無視して、一番フレンドリーな神崎さんに話しかける
「いっとくけど、リア充ちゃん。神崎ちゃんは口数少ないわけじゃないからねぇ?
ボクはいろいろと聞くからわかるおぉ?」
ひどいけど、赤羽さんはかなりウザいと思った
「あはは…別にいいんだ。」
イラつきをできるだけ隠しながら、言い返してあげる
「ね、神宮寺ちゃん。」
やっと神崎さんがこっちを向いてくれた
「あたしは寝ないで本読むよ」
こういうすぐに話を切る態度、咲楽を思い出す
「へぇ~…
ほ、本が好きなの、神崎さんは?」
「好き。
神崎さん、じゃなくて、神ちゃんでいい。赤羽以外はみんなそう呼ぶ
だからあたしも、神宮寺ちゃんでいい?
同じ神同士、仲良くしよう?」
意外と長くしゃべってくれた
「珍しい。俺でも1日は心を開かなかったというのに」
「へ?」
「神は、お前に心を許したみたいだな。」
「神って、神ちゃん?」
「それくらい理解しないか、カスが」
「うっ…」
痛いところを突くなぁ、坂町さんは。
「それより、だ。俺のことは、坂町、でいい
それ以外はむかつくんでな」
「わ、わかった」
「どうでもいいが、なぜ貴様は最初の文字につまずくのだ?
私は1度もそのようなことになったことはないが」
しつこく遠山さんが追及してくるが、坂町…いわく、これも心を開いてるらしい
神ちゃん以外、苦手だよぉ
「じゃ、ボクは寝るから静かにしたまえ」
消灯10前に、まだあたしに心を許してないであろう赤羽さんが寝た
「神ちゃんと、坂町…はどうするの?
遠山さんはもう、寝てるけど」
声を小さくしてしゃべると、それを皆は無視する
「あたしは寝ない
あと、遠山と赤羽は寝ていようが起きていようが関係ないよ
去年の経験で、どれだけ騒いでも起きないから
むしろ、あたしが普通で、坂町は敏感すぎる
だから今年もあたしは起きてるから、坂町も起きてるよ
1人だけには絶対ならないから、神宮寺ちゃんは安心して寝ていいよ」
神ちゃん、結構おしゃべりらしい
「ん、わかった。おやすみ
神ちゃん、坂町」
「ん」
「おう」
仲良くする気はない、とか坂町は言ってたけど、結構仲良くなってるな。
                   *
「寝れた?神宮寺ちゃん」
「どうだった?神宮寺」
朝、起きて部屋で制服に着替えていると、坂町と神ちゃんから、速攻で聞かれた
「寝れたよ~」
2人だけに話していると、仲良くなったのにイラついたのか、赤羽さんがあたしをにらむ
遠山さんは、無言。
「ね、あたしは先に朝行ってるから」
「え?俺たちと食わねーのかよ」
「ゴメン。來たちと約束してるから」
來、といった瞬間、赤羽さんの顔がこわばり
「時任青葉はっ!?」
焦った様子で、坂町から聞かれた
「一緒だけど…?」
不思議に思いながらも、部屋をでる
「青葉~早くいこっ?」
                       *
日記にするなら、「2日目、特になし」だろう
今は風呂を出た後の、部屋
展開がはやいって?
しょうがない。あたしの心残りとしては、書きたいのだが、本当にピックアップするようなことは全くなかった
青葉と駄弁りながら朝食を食べ、部屋に戻って10分休憩
その後町の歴史を同室の神ちゃんたちと一緒に(同じ班だからね)まわった
ただ、それだけだよ?
今、思ったでしょ。書くのが面倒くさくなったんじゃないか、って
違うよ?みんなは、仲いい集団でずっとしゃべってるのを見て、面白い?
なんにもない、中身が全くない話は、いらないでしょ…
例えば、あまり仲の良くない女子が、目の前の席でその女子の友達と話してるとするよ?
その娘達が、「昨日のあのテレビ見た~」だの、「あの人かっこいよね~」だの。
「あの娘は嫌い~」だのと話しているのを聞いて、面白い?
興味失うでしょ?
話してるほうは楽しいけど、見てるほうは楽しくないから、書かないんだからね?
そこは、分かっとくように
                 *
3日目。帰りのバス。
行きの時よりよりは、緊張してない
だって、相手は來。同じ仕事をする人として、仲いい人はラッキーじゃん
「お前、楽しかったか?」
隣に座ってる、青葉が聞いてくる
「うん。それなりには。
坂町と神ちゃんっていう、友達もできたし」
「坂町って…「俺」的しゃべりの奴?」
「そうだよ」
「じゃ、その…
かんちゃん…?って?」
「神ちゃんっていうのは、神崎さんのことだよ」
「あぁ!あの静かな神崎かよ。」
「そうだよ」
あの2人は、教室では1人だし、友達があの集団以外からいないっぽいから目立たないらしい
「ふーん。お前とは合わないと思ってたよ」
「以外と神ちゃんはたくさん話すし、坂町は面白いよ?」
「ま、どうでもいいけど、楽しくてよかったな」
「うん、そだね!」
青葉も、友達が多いから、かなり楽しんでいたらしい
いいよね、友達が多いって
羨ましいなぁ
「ふぅ…」
「どうした?」
「少し、緊張してきた」
学校まで、あと5分
うぅ…
まだ、咲楽よりはましだけどさぁ
緊張するなぁ
                    *
「では、これにて中学修学旅行を終了とします」
來が事前に決めていた言葉で、締めくくる
來の敬語って、新鮮だ
普段はぶっきらぼう(今は…?)だから、先生とかとも全然話さないし
「うぅ~!!終わったぁ!」
帰り道に、咲楽が叫ぶ
あたしもそうだけど、かなり疲れてるっぽい
あたしも、かなり気分がいい
新しい友達もできたし
神ちゃんと坂町っていう

今年の最大イベントは、とてつもなく楽しかった気がする
 

                     7
「えっと…よろしくね?佐藤君」
「來でいい」
「じゃ、來」
「はっ!なんだよ、急に」
「呼べって言ったから呼んだんだよ!?」
「うるさい、黙れ」
なんだよ、こいつ
今どき始めて席が隣になったからって仲良くなろうとするやつ、なかなかいないぞ
話しかけんなよな
気持ち悪い
こんなやつ、死ねばいいのに
ほっとけよ、俺に話しかけんなよ

「ははは~!」
でも、あんなに否定してたのに次に日には、こいつのペースに巻き込まれてた
よく分からないけど、俺もつい話してしまう

なんで…だよ
中学入って、もう絶対に誰とも話さない、って決めてたのに
たかが席が隣になったぐらいで、話すなんて…!?
俺は、もう昔のようにはなりたくないんだよ
こんな風に授業中に話をしてて、成績を落としたら終わりなのにっ!
なんで、俺は話しちまうんだっ…!

「なら、神宮寺は?」
「花楓でいいよ?妹もいるし」
「神宮寺、でいい
それよりお前はどうなんだよ」
「えー じゃ、妹は、咲楽はどうすんの?」
「そんなのどうでもいいよ
神宮寺咲楽と話す機会なんてないだろうし」
お前とも、な
「じゃ、あたしが紹介してあげよっか?」
「いらない
話す気なんてない」
いままでこんなにたくさん女子と話したことがない気がする
神宮寺は、クラスに女友達がいないらしい
意外だ。
こんなにも明るいやつなのに
避ける理由が全くわかんない
「え~なんで~?
來がそんな冷たいから、友達できないんだよ?」
「別にいらないって
それより、さっきの話
お前は?」
「いいたくな~い」
「早くすれって」
でも、なぜおれは今こいつをかばうようなことを思ったんだろう?
しかも、話してるのは神宮寺咲楽と時任青葉ぐらい
昔からの知り合いらしいから、中学での友達とは言わないだろう
「絶対いや」
「俺だけ言ってお前は言わないきか」
「そ~ですよ~?」
「うざい
早くいえ」
「い!や!だ!」
予想以上に、こいつはうるさかった
でも、1人でいる理由にはならないだろう
よくわかんねぇ、神宮寺の性格は


気づいたら俺は、佐藤來は神宮寺花楓を好きになっていた

いつになっても、理由はよく分からないが



                     8
高校1年7月
無事入学できた高校で、授業もやっと慣れてきた
今の高校、市立桜宮学園 通称サク校には、咲楽以外が来ている
咲楽はどこかの商業高校に行ったらしい。主な理由は全寮制だから。
寮があれば、あたしたちと顔を合わせなくていいと思ってるらしい
「ねぇ、早く行こうよ」
あたしの隣の席(クジで6月に決めた)の原田沙羅ちゃんが次は移動教室だから、と教えてくれる
何気に高校初の友達だ
「そうだね、沙羅ちゃん。」
來以外はクラスが一緒になった。
あたし、青葉、幸一、沙羅ちゃんは1組
來だけが2組だ。
「なぁ、沙羅、花楓」
後ろの席の高山龍君が話しかけてくる
このクラスで青葉にとって一番仲のいい男子。
なぜか幸一と青葉は仲良くないんだよねぇ
「先に行ってるぞ?」
「あ、おい!待てよ龍!」
沙羅ちゃんは龍君と小3のころからの同じクラスらしい
本人はそう思ってないが、あたし達から見てみれば幼馴染で両想い、のようにしか
見えない


「ねぇ、沙羅ちゃん」
授業が終わり、昼休みに屋上でお弁当を食べているとき
「なんだよ?」
沙羅ちゃんは、話していると坂町を思い出す
ちなみにあそこで一緒になった4人とは、あれ以来1度も話していない
「あたしのことさぁ、<神宮寺さん>って、呼んでるけど、花楓でいいよ?」
「ん、わかった。じゃ、私のことは沙羅でいいから」
「わかったぁ」
あたしは6月に席替えするまで、誰も友達がいなかった
でも、沙羅…は、龍君以外は特定の人と仲良くせず、1人でいることが目立ったが、
あたしみたいな誰とも話さないでいる「ぼっち」とも違った
「おい、時任、咲楽」
一緒に食べている青葉、幸一、來、沙羅、龍君は、なぜかこの時期に呼び方をかえあう
もともとのあたしたちの呼び方は変わらないが、沙羅や龍君の呼び方はいろいろとかわった。
「意外だな、神宮寺に新しい友達ができるなんて。
神宮寺の場合1人で、<青葉ぁ~>とかって頼ってそうだったぞ?」
「ひどいなぁ!」
ま、沙羅がいなかったらそうなってたけど
「あの時任に友達が少なくなったってのも意外だし。
椎名に限っては、高山と仲良くなってんのがびっくりだな」
違うクラスでこのクラスのことを知らなかった來が、驚いてる
「別に俺は時任と椎名は席が近かったから話しただけだ」
照れ隠しのような言い方
沙羅がにやにやしてるし。
「へー そーなんだぁ~」
からかうような様子で、沙羅が龍君に向けて、言う
「うっさい」
沙羅から見れば、龍君はいじられキャラらしい
というか、ほんとに2人とも仲いいなぁ
「そういや花楓には妹がいんだっけ?」
急に龍君が話をそらしてきた
「あ、うん
この学校じゃないけどね
ケンカしちゃってさ…」
少し、咲楽のことを思い出す
今はきっと寮で暮らしてるんだろう
                    *
「なんだよ、龍!」
放課後。卓球部の龍君、陸上部の幸一、前とはかわって帰宅部のあたし、青葉、沙羅、來
龍君は中1の時に卓球にはまってからずっとやってるらしい(沙羅情報)
幸一は、咲楽がやってるのに憧れて、陸上部に入りたいと思ってたらしい
でも、途中からは入りにくい、とあきらめてたそうだ
で、チャンスを発見して、高校で陸上を始めた
あたしと青葉は、なんとなく、時間がもったいないから
沙羅は一回も部活に入ったことがないらしい
あ、でもこの学校に文芸部があったら入ってたといってた
将来はラノベ作家になりたいらしい
來は面倒臭いから
いままでそういうことに進んでやってる來は、見たことがない
どっちかっていうと、あたしに合わせてくれていた
そして、教室を出た後沙羅と龍君が言い合っていた
「じゃな、帰宅部」
「うっさいなぁ!中学の時から帰宅部だろーが」
幼馴染らしい両方を理解してる言い合い
なんで毎日龍君は沙羅に何か話そうとしてるんだろう
毎日放課後に教室前でケンカしてる2人
2人とも無欠席だから毎日の恒例になってるんだよね
「帰るぞ、花楓、青葉」
「あぁ」
やっと話終わり学園を出る
「ね、沙羅って龍君のことが好きなんでしょ?」
「う…そうだけど?」
青葉も、というか1組全員が知ってることなので青葉がいても普通に話せる
あ、全員じゃないや。龍君を除く、ね
「じゃぁさ、なんで告白しないの?」
「うっさいなぁ、いいじゃん そんなの」
沙羅は、なぜかそこだけは妥協してくれない
「じゃ、手伝ってあげるよ?」
「んーじゃ、がんばってねー」
生返事で沙羅が返してくる
「青葉も、いっしょ?」
「あ、わりぃ。俺は今回はパス
どっちかってと龍の手伝いだから」
「わかったー」
ま、龍と青葉は仲いいしね
想像ついてたよ
「ほら、やれるもんならやってみなって
小3からクラス一緒でも何の進展もなしだよ?
無理無理」
あきらめてるような沙羅の言い方
「じゃ、あたしは手伝うからねー」
それだけ返事して、沙羅と別れた

                      *
「なぁ、花楓」
沙羅と別れた次の日
沙羅は風邪で休みらしい…が、青葉を連れて龍君が話しかけてきた
「何?」
心当たりが全くない
うぅ…沙羅が龍君のことを好きだって伝えたい!
「あのさ…」
「あぁ…!
まどろっこしいな、龍は!

あのな、花楓。
龍は沙羅のことが好きなんだよ
それで、手伝ってほしいってさ」
えっ…!じゃぁ、沙羅が告白すれば沙羅の願いはすぐにかなうってこと…?
「でもっ…!」
龍君の目を見ながら、ちらっと青葉を見ると
青葉は後ろの神を細かくいじってた
頼みごとをする時のくせだ
何かあるときは青葉は親指の爪で人差し指を押すクセがある
でも、これは久しぶりに見た
「いいよ。
青葉も、でしょ?」
それを確認してから「OK」をだした
青葉と龍君はほっとした顔をする
「ちょっといいか、花楓」
それを見た青葉はあたしを廊下に連れ出す
「沙羅のことは言うなよ?
どっちから告白する、とかは俺も沙羅を手伝うから2人で調整するぞ?」
手を背中に回して、クセを隠してる
「わかってるよ。秘密にしながら、手伝うんでしょ?
でもさ、すぐにでも両想いなんだから告白したほうが楽なのになぁ」
「ダメなんだよ、それがさぁ
龍も沙羅も違うって思ってるらしくて」
「ふーん、大変だぁ
あ、でも青葉は沙羅のこと、手伝えなくない?」
「なんでだよ?」
手を前に戻し、壁によしかかって言ってくる
「だって、沙羅の前で龍君のこと手伝うから無理
って宣言しちゃったじゃん
それなのに急に
両方手伝い始めたら怪しくない?」
「確かになぁ。なら、お前も沙羅を手伝ってんのに龍を手伝ったらダメだろ
沙羅だって気づかれちまう」
「そうだねぇ、でも、龍君にああいった手前、あたしじゃ断れ切れないよ?」
「あ、それはいい。俺がやっとくから」
「ん、よろしく~」
咲楽が見たら羨ましがりそうな状態
他に人がいなくてよかったぁ
                       *
手伝うと決めた手前、どうすればいいか考える
誰かの恋愛を手伝うどころか、あたしには青葉と咲楽しか友達がいなかった
あたしたちは幼馴染であり、恋愛関係なんててつだうどころかライバルだった
だから、そんな経験ないんだよね
「そんなに考えたって無駄だっつーの」
龍君に断った後の、次の日
沙羅が学校に来て、その帰り道
「大丈夫だって、きっと成功するよ」
「はぁ?どうせ、青葉と一緒に龍となんかさせようとしてるんだろ?
無理無理。今までだって何回遊んだか」
「だって沙羅、絶対あの行動は好きって意味だって」
「わっけわかんねぇよ。アイツがうちを好きだぁ?
そんなの、世界が滅亡するよりありえねーっつーに」
うっわ…
世界が滅亡、だって。
じゃぁ、龍君は沙羅のこと好きだから、滅亡かぁ
「告白したりはしないの?」
「するわけねーだろ、したってどうせ無理なんだしよぉ」
「その辺は「マイナス」だよね」
「うっせぇなぁ」
ホントにあきらめてるみたい
「じゃ、さ
1年後ぐらいにチャレンジしてみない?
それまでにいろいろと手助けするから」
「あーもう好きにしろよ…
いいよ、お前はあきらめた。来年の7・8月な
やるんだったら成功させるんだから、お前が頼りだぞ」
「はーい」
咲楽と違って、あたしのことを正面から見てくれて、話しやすい
なにげに初の女友達じゃない?
だって、咲楽は妹だし、青葉・來・幸一は男だし
高校でできた友達も龍君は男だし
そしたら人生初の女友達が沙羅ってことじゃん
「ん…ありがと、沙羅」
「はぁ?なにが?
急に気持ち悪いっての」
とりあえずお礼を言ったら、全力で否定された
「あ、青葉~」
「うっ…」
目の前に部活が休みで一緒に帰ってる青葉と龍君が見えた
來と幸一は一緒に帰るって言って授業終わったらすぐに帰ってたからいないのかな
「よ、お前等だけか?」
「うん、そっちは?」
「幸一と來はいねぇよ」
あたしと青葉の短い会話
幼馴染じゃなくても通じる気がするが、高校生になった今は、
友達とも距離ができるような気がする
沙羅は別だけど
龍君はそういうの、全く気にしてないぽいし
「なんでお前がいるんだよ」
「はぁ?それはこっちのセリフだっつーの」
まあ出会って言い合いしてる龍君と沙羅
仲いいのやら悪いのやら
でも、それでもすぐに普段通りに話せる2人はすごいと思う
それともこれが、普段なの?
「あ!そうだ
龍君っていつ部活休み?」
「今週の土日」
「じゃ、遊びにいかない!?
あたしと青葉と沙羅と龍君で!」
たったいま思いついた案
でも、仲良くなるにはちょうどいいでしょ
「いいけど…」
「ちょ、花楓!?」
沙羅が焦った声を出す
あーあ、龍君が不思議そうに見てるじゃん
「いいから沙羅
どうせ暇でしょ?」
「ま、そうだけどよ…」
ほら、いいじゃん
遊べるんだしさぁ
「俺も、いいけど…
ダブルデートになるだろうが」
青葉がなんか言った気もするが、気のせいだろう
というか、気のせいと思いたい
「じゃ、土曜日朝10時に学校前集合でっ!」
どうやって明日、沙羅の手助けをしようかな
絶対にいいシチュエーションで告白を来年、成功させるんだ!

                    *
「遅い、言い出しっぺのくせに」
「時間ぎりぎりすぎる」
「花楓らしいな、やっぱ一緒に来ればよかったか」
沙羅、龍君、青葉の順に文句を言われた
遅れてないもん…
「ゴメンゴメン」
でも、つい、とりあえず謝ってしまう
しょうがないよね
「で?どこ行くんだよ」
「えっ…」
「はぁ…
やっぱ花楓、無計画だったのか」
龍君に予想外のことを聞かれて、言葉に詰まってしまう
「えっとぉ…じゃ、映画でも見に行く?」
「映画って…」
青葉が驚き、沙羅のため息が聞こえる
「はぁ…
好きにすれば」
龍君までもがため息をついている
「そういや龍が映画の話してるとこ、あんまり見たことねぇな」
「そうか?」
また始まる仲がいいのかわかりにくい面倒な会話
「じゃ、早くいこ?」
                     *
ま、まさかこうなるとはっ…!
映画館は予想以上に込んでいて、真ん中に2名、一番後ろに2名だった
そして、ラッキーなことに2人だから、『あたし&青葉』にすることは簡単
で、そしたら残りの沙羅と龍君は隣になると思ってたんだけど…
「はぁ…」
恒例の沙羅と龍君の言い合い
あたしたちが一番後ろだから、2人の様子はよく見えるんだけど…
な、ぜ、か!
青葉が金欠であたしがコーラをおごったところは、まぁ関係ないでしょう
で、も!
龍君が何も食べないで、沙羅が飲み物を買った
そしたら!
そのことで言い合いになって席が隣だからということで
映画上映中もずっと小声でケンカ!

おかしいでしょ…

                    *
「あ~あ
誰かさんのせいで全然見れなかった~」
映画が終わるなりさっそく沙羅が龍君に向けて明確な敵意を向ける
「ちょっと、沙羅…」
あたしがなだめようとしても、にやけながら沙羅が嫌味を止めない
「うっせぇなぁ」
やっと龍君が言い返したと思えば沙羅をにらんでたし
「うっ…」
あたしが少しひるむも、沙羅はそれを見ても全く気にしてない様子
「大丈夫だよ、花楓
よくあることだっつーの。しょっちゅうこいつ、にらむもん
気持ち悪いしうざいから、しょうがないんだぁ」
沙羅がかばうようなかばってないような意味の分からないことを言う
さすが沙羅…?
「はいはい、悪かったな」
「そうだよ、お前が悪いんだっつーの!」
「は?」
永遠にループしそうな会話
無理やり龍君が謝っても、沙羅がそれに乗っかり茶化す
「めんど…」
青葉が呆れたようにつぶやいた
「ふぅ…」
やっぱ。この2人は説明できない関係らしい
                     *
そのあとは昼ご飯を食べて帰宅
帰りは青葉と今日のことを話しながら帰った
龍君と沙羅は家の方向があたし達とは逆だから、多分2人で同じバスに乗ってると思う
二人っきりで

見たかったなぁ

                  *
月曜日
1日おいてもあの2人のことだから、覚えてるだろうなぁと憂鬱になりながらも学校に行く
でも―怖い!
全く言い合ってないどころか、幸一や他のクラスの來も交えて普通に話してる、という…「そういやあの2人、帰りのホームルーム終わった後もケンカしてたけど、そんあと
掃除とかあったら普通にやってたっけ…」
今までのことを思い出したのか、青葉が頭を抱えてつぶやく
沙羅とは携帯すらもつながらなかったから、ドキドキしてたのに…
「話題にしないほうがいいよね」
少し慎重になりながらも、会話に混ざる
「あ、花楓~」
沙羅があたしをすぐに発見、それに龍君も気づく
「ねぇ、この前の映画の時の話さ、皆に聞いたらやっぱなんか買うらしいよ」
「へ!?」
まさか、自分で掘り返してくるとは…
「俺が異常なのかよ…」
「お前が異常なのは頭だけじゃなくて全部だろ」
「…バカだろ、沙羅」
青葉がため息をついていたが、龍君も沙羅も、全く気にしている様子がない
「そりゃぁ両想いにもなるわな」
つい、青葉がつっこんだ瞬間沙羅が睨む
「うっ、わりぃ」
沙羅はもともと入学の時、怖い人、で通っていたぐらい、目つきが鋭い
たぶん、自分からもそうなるような行動をしてたし、龍君がいなかったら
1人だったと思う
「ちょっと沙羅、いい?」
「何だよ?」
とりあえず誰も聞いていないところに連れて行く
「なんで携帯、切ってたの!?」
龍君と普通に話してることよりも気になること
「あ…切れてたんだ。だって使わなかったし」
「まじ…」
さすがにあたしでも驚く理由だった
咲楽とケンカしてもそんなことしないのに。
「なんでそんなことでケンカにならないの!?」
「だって、昔からこんなんだよ?第一これが私と龍の関係だし」
呆れたように壁によしかかって沙羅がつぶやく
後半は、少し落ち込んだ感じで
目を長くつぶり、開けた時には笑ってた
「だから、これでもいいって思うときはあるよ?
でも、ねぇ」
ため息をついて「じゃ」とだけ言って教室へ行ってしまった
沙羅が、今のままがいいのか嫌なのかが、全くわかない…
                    *
恋愛
それはあたしたちの関係を大きく変えたこと。
でも、いいような悪いような。
だって、恋愛がなければあたしは咲楽とギクシャクしなかった。
でも、恋愛がなければあたしは沙羅とこんな秘密を共有できなかった
ある人は、恋愛を恨み妬んでいる
ある人は、恋愛の出会いを感謝している
ある人は…

                   *
恋愛のことを理解しようと、焦っていた

「はぁっ!?
なんで俺がアイツらのためにっ…」
沙羅たちが仲直りしていたのを確認した、放課後。
來にあることを頼んでいた
「神宮寺、俺は神宮寺2のことも調べてるんだぞ?
なのに、今度は原田と高山のことも調べろだぁ!?」
あたしが頼んだのは、誰が沙羅と龍の好きな人を知ってるか、ということ
「お願い。ね?」
「高山はまだしも、原田のことなんて簡単には…
う、わかったよ」
なぜかじっと見ていたら、やってくれるとのことだ
「じゃ、今日のうちに調べとくから、明日の朝6時に2組にこい」
「明日っ!?」
「あぁ。そんな簡単なの、1日もいらねぇけどな」
「わ、わかった。じゃ、明日6時に」
「あぁ」
あたしの今日1番驚いたことは、きっと來の情報網だろう
なんで好きな人とかのことがわかるわけ?

俺は双子に挟まれて学園生活をおくっている

俺は双子に挟まれて学園生活をおくっている

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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