私の声

私がまだ小さい頃の話です。制服に身を通して、わくわくしながら春の校門を抜けます。桜の花びらが、ひらっと宙に舞って、それを掴もうとしたら、私の手から離れていきました。仕方なく、道に落ちていた花びらを手に取って、ニカッと笑いました。目の前には車がありました。

久しぶりに会う友達を見て、何だかとても遠い時間を過ごしていた感覚になりました。
「〇〇ちゃん、おはよう!久しぶりの学校楽しいね!」
私は、うんそうだねと応えて、振り向くと先生がいらっしゃいました。
「〇〇さん、おはようございます。綺麗だね。将来は何になりたいの?」
私はケーキ屋さんになりたいですと応えました。先生も私も友達もニコって笑って、朝の学活の時間が始まりました。

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そんな過去を思い出しながら、私はアルバムを手に取っている。小学生の思い出。私にとっての6年間は、正直もう覚えていない部分が多い。あの頃はもっと鮮明に覚えていたのかと思うと、少し寂しい気持ちになる。記憶の欠落は年々増えているなと感じる。

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私の6年生の頃の話です。私は修学旅行に行きました。友達のりんちゃんと一緒の班になれて嬉しかったです。夏の入道雲が見えます。伊勢神宮の五十鈴川の水は冷たくて、心地よいです。りんちゃんがこう言いました。
「神様ってほんとうにいるのかな。」
私はいると思いました。
「神様がいたら、みんな幸せになるんじゃないかなって思ったの。」
担任の先生が会話を盗み聞きしていたみたいで、ヌルッと顔を出してきました。
「神様は多分いるよ。神様がいるからみんなお参りするんだよ。」
私は確かになぁと思いながら、五十鈴川の水をもう一度手に取りました。私は想像します。神様がこの水の中にいて、神様があの桜の花びらにいて、神様がこの心臓の中にいて、そうだったらなんて幸せなことなんだろう、と。
目を開けると、みんなが内宮に行きかけていたので、慌てて私は向かいました。砂利の音があまりにザーザーと鳴るので、神様が沢山歩いているみたいで面白く感じました。
お守りを家族のお土産にと思い、お財布から2000円を取り出しました。みんなの好きそうな赤色のお守りにしました。金色の文字がキラッと輝いてまるで"星空"みたいな感覚でした。
2礼2拍手1礼を忘れずに、ちゃんとお祈りしました。神様にお願いしたことは内緒です。とても個人的なことだし、凄く大きなお願いだから聞いてくれないだろうな。

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過去の自分の声を聞いて、私は泣いてしまっていた。

どうしてこんな人生になってしまったのだろう。

午前2:00、人はいない。これ以上過去を思い出すのはつらい、かもしれない。でも、なんだか私の声がここにある気がしたから。あともう少しだけ思い出してみよう。私の部屋の隅に、私という神様がいた。その神様は神様なんてものじゃなく、ただ泣いている惰性した神様である、と過去の私から評価されたような。

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私の小さい頃の話です。運動会で組体操を披露する日です。私はピラミッドの1番上の大役を任されました。1度練習の時に落ちて怪我をしてしまったこともあるけど、本番はきっと大丈夫だと緊張しながら心の中で反復しているのでした。
組体操が始まる前に、りんちゃんから頭を撫でられました。
「〇〇ちゃんなら絶対できるからね!大丈夫だよ絶対!」
私はなんだか泣きそうになりましたが、なんとか耐えてニコッとしたのでした。
私の親が見に来てくれており、お父さんは張り切ってカメラで撮ってくれていました。いよいよピラミッドとなったとき、友達の上をどんどん登っていきました。私はふと想像します。下の友達は絶対重いはずなのに、いっぱい支えてくれているのってなんでなんだろう、と。みんなの中に神様がいるのだとしたら、神様を踏んずけているんじゃないかとも思いました。だから、私は申し訳ないなと思ってやっと頂上に立ちました。そこからの景色はもう、言葉では表せないものでした。私が見ていいのだろうか、と思いました。りんちゃんの方が優しい子だし、りんちゃんの方が見るべきだと思いました。必死に手をぴんと横に伸ばして、秋風を全身に受け止めました。下から上にふわっと風が吹いてきて、とても涼しくてなんだかいい気持ちになりました。下を見てみると、親は泣いていました。私はただ登っただけだからどうか泣かないでほしいと思いました。下の子たちの方が褒められるべきだと。だから私は叫びました。

「私はもう一度、私の声を私の口から出してみたい!!」

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声が出せないという、ある意味では個性を持っている。みんなには声があって、そこに魂が宿っている。でも、私には私の声がない。心の声を出すにはこうやって記すしかないのである。
りんちゃんとはあの後ずっと一緒にいてくれている。今でもたまに私の話してくれている。(LINEで)
時には人生を恨んだ。だって、あの時花びらを取りに車道に出なければ私は声を失わずに済んだんだから。
でもこうして、私の声を届けている。言葉という声にのせて、私はあなたに問いたい。

声ってなんだと思いますか。

私の声

私の声

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-10-24

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