蜃気楼は上空の空にまでは影響しない 3/100 fukio

蜃気楼は上空の空にまでは影響しない 3/100 fukio

 正確な記憶など、その後に何が残るのだろうか?

 正確な夢にだなんて、何の魅力があるのだろうか?





ーー作家を目指していた
常勤の仕事をしながら、いつかのデビューを目指していた

甘い考えだった

夢を見始めた時期の早さと遅さ
例えば、そのための訓練に取り組むための時間
登り始めるための準備が遅かったんだ
……きっと
もっと、早く見切りをつけていたなら、幸せな人生を歩めたのかもしれない

選択肢を誤った
ただ、それだけなのか……?



ーーある時、ネット上で連載している作品にコメントがついたんだ


 「応援しています、頑張ってください」


コメントがつくこと自体が滅多にないことだったので、とても嬉しかった

そう思って、コメント主がどういう人なのかを探ってみることにしたんだ



それまで僕が読んできた本たちは、それぞれ名のある作家たちが描いてきたものだ

当たり前だが、商業ベースに乗ったものを読まされてきた。
そこから外れたもの、外地にあるものは意識されることはなかった。
つまり、僕がこうやって綴るものなども、意識されることなく終わるのだと思っていた。
そんな中で初めて意識してみても、これは人の感じ方や捉え方の問題でしかなくて、文学系の同人誌も買ったこともあるし、交流の手始めとしてのものと思えば良かったのかもしれない。

あまり深入りするな、と



ーー夢を見た

昔よく見ていた内容だ
学生時代の頃の設定だ
あの娘が出てきた
久しぶりだった
しばらく夢で会っていなかった
夢の中で会話ができた
嬉しかった
本当に
また、会えるだろうか
夢の中で


もう、こうして40歳を過ぎ、人生を諦めている

再生はないし、再会もない

今世は、だから失敗だった


 ーーでも、その夜の夢には続きがあった

 
 
 それは、左巻きで回る渦の夢だったんだ


ーー田舎をドライブしている夢

何回か通ったことのある土地だ

外の景色をチラチラと眺めながら運転している
小さな木の鳥居が眼に入る

何の神社があるのだろうかと気になり

鳥居の奥を覗く

大きな岩が置かれている


 「僕の運命を助けて欲しい」



何故だかそう、岩に願った

夢はそこで場面を変えたーー



あの娘が出てくるはずの夢に戻る
だけど、どこにも姿が見えなくなって、消えている
代わりに見たことのない夢になっている
よく分からない渦の中が身体をすり抜けてゆくーー目が覚めると、その賽の目は振られたまま内側の葛藤までも顕にして、こう伝えたんだ


 
  山に登りなさい


一体どうしてだか、登山をすることになったんだ



何もない 

ということが、始まりだった

きっと、このまま終わると
 

蜃気楼は上空の空にまでは影響しない 3/100 fukio

次回は、11月中に更新予定です。

蜃気楼は上空の空にまでは影響しない 3/100 fukio

村上春樹 蜃気楼 マイルス・デイビス 線 言葉 ルーン文字 金比羅 アリ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-10-23

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted