・・・こんな風になりたいのか!?(問答の章)・・・
全惑星拠点及び全周回軌道基地の全民の継続的総意によって、今回新たに銀河大任を選出せり。
皆々が地球にいう一年間にわたって様々な候補のあらゆるすべての雑談配信動画を確と観たり流し観たりしてその目を凝らし考えた結果、空前のイケメンで長身ながら誠実且つ生粋のケシスタンときたやっぱりイケメンが選ばれた。
選ばれたからといって野蛮な就任演説などという蛮習をさして行うことはないものの、儀式としてではなくイケメン自らの意向によって個人の動画上に就任にあたっての意思表明的な演説が全民へ向けて公開されよう。
凛として、そのイケメン。曰くする。
取締られるべきは醜いものではない。
景勝の意思なきものである。
さもなければ、正しからぬ者は、目鼻が冴え彫りの成るべく深い者こそが美しいとして然うでない者たちに美容整形を強要せんとすることだろう。
それらすべての愚かで狭苦しく見るに堪えない、ともすれば人間の常であるかも知れぬ横暴を克服し忌避しそれこそを糺弾し、我々は意思の表れに重きを置く。
それはすなわち、世界のすべては天地海の営みから自然と齎されたものであり、それらすべては明暗長短高低などの乙張のある関係性に成り立って居り、客観的にみて美しいものや醜いものというものは存在し、そしてそれらを否定すらば宇宙を否定するに他ならないということの其等である。
どれほど一般の感覚や人倫に問うて醜く美しからぬとされるものも、そこに然様な景勝の意思あらば何も取り立てることはない。
では、その意思の有無とやらは一体どうして一人ひとりや一つ一つに確かめることが出来ようものか。
然うだからして、我々は人を問うのではない。
また複雑な規制を強いて思想を問わんとするのではない。
敢てそこに単純且つ明確な、そして上辺だけをなぞるような警察行為を志す。
つまりそれは、国土上の景色や見映えの警察である。
思想に触れてはならぬが故に、我々は単に土地の見た目を取締ることでそれとなきように個人個人や町全体の景勝思想を促しながらに国の行き先をより良くせんとす。
なんと!そのケシスタンたる素養も相俟ってみれば更に凄まじいほどのイケメンだった。選ばれる者ということで選挙前をも凌ぐ尚更の人気を呼ぶではないか。
またあちこちの基地幹部や著名な配信者との配信などに赴いてみては口にするイケメン。僕は、自分がイケメンであることには変りない。そしてブサイクも勿論たくさんいらっしゃいます。それらすべてが宇宙なので本当に特に何も思いませんね。自分が優位な顔や容姿を得たということでこれは存分に自分としても当然に利用していこうと思いますしブサイクには同情しませんが、何の優越感も感じません。それより自分のイケメンさを利用していくことにしか興味がありませんからね(笑)。
そのようであった。おお!素晴らしい。心の内の隅々まで崇高なケシスタンに違いなし。支持率の驚異的なことではあろう。それはそれは持て囃された。
対談相手のブサイクが、自分は地球ではブサイクだがどうやら宇宙に於けるこの環境を生き抜く仲間だ的なみんなの同胞意識の中にあると割とブサイクかどうかなんて気にされなくなってきてんじゃね?と語りかけてきたところで大任は同意しない。いや、それはないと思いますよ。正直いうとまあブサイクはブサイクでしょ、すいませんけど、、、という感じに返すものの、その目が笑ってないとか相手を見下すような一瞬の表情をしてるとかない。
ブサイクを対等に表面上だけで馬鹿にするだけで敢て浮ついた細くなる目の笑みを見せるし態と何だか面倒くさそうな顰め面を見せたりもするわけだった。信頼できる。この人はブサイクがブサイクであることを中立的に見つめた上で相手を同じ人類として全く差別して居ない。特に親交のあった相手でもないのに。ほらほらみんな美しかったり醜かったりするけどもそこをウダウダ語るクダリはもういいからちゃっちゃと話すべきことを話そうぜ?みたいな感じが結構いい。結構いいというか、相対的にマシなわけだった。
然ういう人が例えば全共同体の生産力開発力を特に経済生産実績の優れた或る基地連合の更なる強化のために集中して注ぎますと政策の舵を切っても、おいこっちの基地にもっと力を入れろよ!とか癒着があるんじゃないのか!とか言う声はなくみんな落ち着いてその政治力を見守れる。何せ誰もが今や敬虔なるケシスタンであるものだから。
一方で、一方という言い方をすればイケメンに失礼になるのであれば他方で、ブサイク。
別に人という肉体として移動し活動し表現したりすることは自由ではあるが若しそのブサイクな姿が人の目に触れるような場合には必ず仮面などを被るか映像上に視覚的なモザイクをかけ続ける必要がある。決して何の配慮もなく人を不快にさせることは許されなかった。
ブサイクとは、例えば驚くほど目が細かったり鼻が上に向いて居たり部品の配置がとにかく美しくなかったり顔が平らだったりする者のみならず、もともとイケメンではないがブサイクか普通かという多少マシな程度の顔なのにキノコ頭や猿のような茶髪をしてる所為で一気に非文明的で目障りなブサイクになった者、或いはどんなにもともと美人だったとしても整形したことで生命体として美しくなくなった者たちのことをさえも指さねばならない。
地球より旅に出でて間もない頃のケシスタン社会ではまだ著名人や配信者や富豪そして政治家などに然うしたブサイク達は蔓延って居て恥ずかしげもなくその面を晒して居た。それほどのブサイクであることでどんなに年収や能力名声で負けた気がしても顔だけは最終手段的に勝てる気がするから皆の人生に安心を届けることができる。よってとても世間に顔を見せていいような次元ではないブサイクであるにも関らず然うしたブサイクが平気で何とかなって居るかのように有名人や公人として振舞え続けて居たのであった。
その未開な感覚も今では跡形もない、とされ、もし各個の共同体単位に決して許されないほどのブサイクが居れば景勝当局はその本人が正しい行動態度を取り生活して居るか非公式に観察を続け、また工作員たちを駆使しながら近しい水準のブサイク達を親しくなるよう仕向けその者たち同士が「いや自分らってガチでブサイクだから人前で顔とか見せるのは社会の景勝のためにも絶対やめといた方がいいよなww」ということを砕けた感じでハッキリと言い合うことができるような状態をつくらせるべく奔走して居た。共同体社会には単なる差別感情云々とは良い意味で程遠い純粋な衛生意識の高さからのブサイクへの正しい対応意識がすっかり根づいた、とされ、これこそが今や遥かなれる地球に育まれた高尚な文明文化との繋がりを感じることができる皆にとっての誉であったことだろう、とされる。
それを掻き乱さんとするブサイク達が居ることならば、必ずや何かをきっと誤解して居る。
今こそ人の容姿に関する、景勝裁判を!度を超したブサイクかどうかの判断を景勝裁判の裁けるところとするように訴える或るブサイク候補が彗星じみて配信界に現れん。
宇宙。宇宙こと基地共同体生活にはまだ嘗てには地球の姿や面影をカタワラにしながら人類の行き届かない不便な冒険をしてる感があったのでしょうが今や、基地範囲内には何一つ不自由も宇宙らしさも瀬戸際感もない重力都市と人工林と架空の空そして星屑たちのような周回基地たちが広がって居て最初からどれも美しい。地球に言えるところの景勝のその概念の殆どが意味もないかのように言葉だけで君臨して居る。そんな中にあって最も肉々しくて地球臭い生身の人間のブサイクという存在が景勝的意思を以て掃除できる唯一の汚物であるかのように思えてならないのでしょう。わかります。わかります。ケシスタン市民として、そこに行き着く感覚はもちろんにわかるのです。
ならば、ならばです。今こそブサイクについて公的に景勝裁判が施されるべきです。ここは地球ではありません。ここにはここの事情があるんではありませんか?
みるみる内に支持を得て再生され拡散され顧客や視聴者の増えてゆくことには世間も政局もそしてイケメンも無視できない。これまでそのような者が居なかったのが果してケシスタン精神の定着によるものか将又ブサイク達の不要な畏縮によるものかは定かでない。
ただイケメンの思うところは、あくまでも景勝とは何たるかにあった。
人々の容姿というのは、それそのものを以て景勝なのではない。それを然うさせた自然環境や遺伝子の系譜などだけが景勝である。人の容姿とはそこから排出された結果と状態に過ぎず、そしてその場の景勝に影響を及ぼすに充分な排出物であるからして充分な景勝的措置が取られねばならない。
その上にあってこれまでのケシスタン世論はそこで究極的には人命的配慮を用いるを以て、つまり「そこには何となく触れてあげないでおく」という暗黙の諒解を以て人の容姿が景勝の中でどう扱われるかについての言及をして来なかったがそれと同時に、責任をも負おうとはして来なかった。すべては肩の力が抜けて厖大に積み重ねられる雑談的公議配信によって自然と正しい方向へ導かれる筈だと決めつけてきた。
それももはや、宇宙にポツリ在る人間という肉体物の悪目立ちする社会の中にあってはそろそろに限界を見る。我々は、ついに容姿というものを重大な景勝として公然と認め対処してゆく責任をみんなで負わなければならない段階へ来た!声を挙げた勇気あるあなた達に称讃よりも先に望ましい社会が齎されるよう努力する!
然う、そのように全共同体を代表して高々と表明したその者自身が誰よりもイケメンだった。
イケメンがケシスタン共同体史上はじめてに容姿についての景勝裁判機能を新設する法令を提案し、長々と冗長で気楽で白熱した数多の雑談公議にて議論されるところとなろう。
満を持して実現するがいい両者の対談配信は然うした機運の昂りの神輿の上に初めて公に生放送される。
イケメンはよりイケメンで、ブサイクはよりブサイクだった。まさにこれぞ明暗大小の乙張ある宇宙の真理を示して居るかのような見応えある構図光景だとして皆、釘づけになろうし何かケシスタンとしての歓びに満ちる。ああ生きてるなあ。ねえねえ私たちってさ、宇宙っていうところに息吹く人間っていう生き物なんだよ?ガチやばいとか然ういう感じで。
二人も早速イケメンをイケメンと述べブサイクをブサイクと述べた。それがどうした。ここは宇宙だ!という幾百年にもわたる人類の研良の末に成り立った価値観に沿って何の淀みもなく意気投合するではないか。あんなにもイケメンだし、あんなにもブサイクなのに!どちらも素晴らしい。談笑してる。ぎこちなさが丸で無い。互いの容姿に格段の差が存在して居ることを共有し合った上でご家族はどうですか?とか政治や配信業も大変でしょう?などの世話話へと移行してゆく。ああ、美しい。人類も始まったな。我々はこんなとこにまで来てしまった。の、かと。
和やかな会話は後に、用意が整ったみたいにして、新たなる景勝裁判の件に及んでいこうか。だが話すも何も既に広く知られて居ることで、互いもまた知り得る情報はすべてを知り取って居る状態だった。もちろんこれまで両者が直に話してる様子すらも目の当りにしたことのない世間は二人が某件について語り合って居るなんていうちょっとした夢みたいな状況をじっくり観てみようとはするのだけども、既にそれぞれに表明した言葉の内容をなぞり合って改めて確認するだけの逆に他愛ない話が続いてゆくだけなのかと暫くして皆が思い始めるほどではあったのだった。
だからこそブサイクは、ブサイクの方から投げかけられるものがある。丁度イケメンが、景勝裁判の改革後に一体どのようになっていくのだろう?についての質問をやんわりと持ち掛けたその時だった。
ブサイクが告げる。ブサイクが仄めかす。思う。思うのです。我々は是非、美女とイケメンの国を建てるべきです。
何と!放送事故になるのを知った上でそのようなことを突然ぶち込んだブサイクに対し、放送事故になることを承知の上でイケメンが憤怒する。憤怒というか、これまでケシスタン文明が受け継いできたものへの防衛本能であった。国。その国とやらが宇宙に存在したことなど無かったのである!
黎明の宇宙憲法に記されて居た。そして皆が誓い合って居た。国とは地と海と空の地球という森羅万象を象って自然と納得した成立を見せる形なきものに過ぎない。我々人類は地球の生き物ぞ。本来は裸の宇宙に居る生き物ではない。地球の他に故郷があるなどという錯覚に陥ってはどうしてもならない。きっとその道を踏み外してから摂理的に良からぬ運命が降りかかってくる。
だから国などというのは、、、軽々しく口にする言葉ではない!されども選ばれしブサイクは敢てこの場に全共同体の世論の前でイケメンに言い放つ。国というのは詰り、景勝裁判による公的認定とその者の充分な自認によって美しき者と美しからぬ者がそれぞれ光と闇を体現し合う事それ自体です。我々は外の宇宙の生き物ではありません。ですのでそれ故、ここに新しい「宇宙に於ける国」という概念を摸索し突き止めるべきなのです。すなわちそれは、差別的でも対立的でもない公正で平和的な美醜の棲み分けと真の意味での宇宙市民化、それなのでした。ということである。
ブサイクだけの国というのは当然もちろん醜いだけでしかないのもある上に人道に反するし非文明的なことでしょう。見苦しい者ばかり集まった国をその目にする側もその醜さに気分を害するしブサイク国民同士も日常にブサイク以外誰も居ないなんていう世界に閉じ込められてとても健康では居られない。ケシスタンの精神に基いて宇宙に新たな人倫的次元の国を建てられるのは美女やイケメン達だけなのです。そして公私が認めた美しき者だなんて現在の人口の世間全体ではほんの一握りです。殆どの者は今居る基地や土地に生活を続けます。良かろうことですよ?然う思うのですがどうですか。
そこで世間は視聴者たちはその瞬間をよく見て居た。イケメンはどういう反応を更に見せるか。もし頑なに抵抗の色を見せ続けた場合、それが代々ケシスタンに守られる建国禁止の掟に沿って居るだけであるかのように思わせて実際は「美女イケメンを特別扱いするなど以ての外だ!」という偽善的感覚から反対して居るだけなのかも知れない。ケシスタンとしてそんなものが許される筈がない。
だからこそその瞬間にちゃんと驚愕と安堵の時が訪れた。今一度ここでブサイクはブサイクであるべくしてブサイクなだけでブサイクであることに何の罪もないという事実を述べ確認したようにした上で、美女やイケメンはたしかに宇宙に在る物体現象としても明らかに美しいためそれでこそ初めて宇宙的な国が建てられて然るべきとも思えてならない旨を告白する。然うですね。だって美しいものは美しいんですものね。
両者、涙を浮かべるほどまでに握手や抱擁や会釈といった度合に微笑ましくした。ブサイクには到底、宇宙に国など建てられる筈がない。その極めて人道的な発言に全市民が感嘆し拍手を浴びせ、ケシスタンたる者たるすべての者が両者を均しく支持して已まない。生成知能によるすべての配信公議に於ける書き込み投稿また盛り上がり度などの測定、景勝当局による人的解析を経て代表的ブサイクは正式に公議より選挙された公人となり景勝裁判の改革と美女イケメン国家建設に尽力してゆくこととなる。
・・・こんな風になりたいのか!?(問答の章)・・・