寝起きで語る、誰かの話
表紙(導入)
ふわぁ〜と大欠伸を一つ
まだまだ重たい瞼を心の中で「えいっ」と気合いを入れることで何とか持ち上げる
瞳が人工的な光を取り込んだお陰か二、三瞬きをすれば脳みそは未だ寝惚けながらもゆっくりと回転を始め、先程放たれた言葉を咀嚼したのだった
「……ぉもしろ…ぃ……はなし……」
沖田ねおきは、むにゃむにゃと寝言のように小さく呟いた
そして気持ち良く爆睡していた自分を叩き起してきた人物を見る
(何でこんな時間に…)
恨み言の一つでも言ってやりたいところだが今日は一日休みだ
また後で昼寝の時間でも設ければ良い
それにまぁ、お喋りは好きなほうだ
適当な小話を一つすれば相手も満足だろう
「ぃぃけど……ちょっと……飲み物……」
まずは口の中を潤してから
ベッド脇に常備してあるペットボトルの水を一口飲み、軽く「ぁー」だの「ぅー」だの言って声の調子を整える
「面白いかどうかは分からないけど
いくつか持ちネタはあるんだ」
ねおきはそれを前置きにゆっくりと語り出した
【寝起きで語る、誰かの話】
場面1
ふわぁ〜.........
早起きだねぇ、キミ
こっちはねおきだよ...
あっ......
ふふふ、ダジャレじゃないよ
たしかにね、何かお話を聞かせるよとは言ったけどさ......
ふわぁ〜ぁ......
ちょっと待ってよ、むにゃむにゃ......
今、思い出すから...
えぇっとねぇ
「とある日の晩、少女は窓から空を見上げて言いました
『お願いします
私、お花みたいにキレーになりたいの』」
誰にお願いしてるんだろうねぇ〜
あれ、始まりが急すぎた?
ごめん、ごめん。まぁ聞いてよ
「次の日の朝、少女はそれはそれは美しい、大輪を咲かせた花になっていました
少女の願いは叶ったのです!
めでたし、めでたし」
......なんだか納得してない顔してるね
え?少女が可哀想?
お願いが叶ってるんだから、そんなことないよ!
......たぶんね
けど、それは第三者が決めることじゃない
......まだ納得しない?
なら次の話をしようか
場面2
「とある村に、一人の少年が居た
壁と屋根だけの、かつて倉庫として使われていたボロ小屋
そこは少年にとっての秘密基地
『此方は 安心安全委員会です
市民の皆様は 規律を守り
清く 正しく 幸福に 暮らしましょう』
いつも決まった時間に流れるアナウンス
少年は苛立つ
『何が安心安全委員会だ
俺たちに何かしてくれたことがあったかよ!』
思い切り缶を蹴り飛ばした
壁に当たって、カランと地面に転がる
『いつも偉そうにしやがって
あのデカブツも、こんな所にいたら危ないだとか……
此処は少年自警団のアジトだっつーの!
委員会の奴なんかが勝手に入って来て良い場所じゃねー!』
『クソッ.........』
一陣の風が吹き込み、埃っぽさとオイルの臭いが漂った
視界が悪くなった先を睨みつける
『っ! あれは............』
──ザザッ…ザッ………
場面3
『此方、西区──農村。今の所、異常は無い』
シルクハットにガスマスク
黒衣を身に纏い、マントをはためかせたガタイの良い男が歩く
一歩一歩、ガシャンと音を立てて」
わぁ〜、おっもそ〜
「そのうちに、前方からボロ小屋が見えてくる
(以前、子供が遊び場にしていたな)
義眼の焦点を合わせ、拡大して見てみる
人影が居るような気がした
足早に近づく
誰もいない
そっと中を覗き込んでみる
やはり誰もいない
──農村の鉄塊、別の場所へ移動する
──了解
場面4
無線から報告を受けた少女は短く返答すると周囲を見渡した
高地に構える巨大な工場
その煙突からは、モクモクと絶え間なく上がる煙が青空を黒く染めんとしている
『ここらは今日も変わりねーよ、委員会さん』
工場内から出てきた大柄な男に声を掛けられた
石炭を運び込んでいたのであろう、身体のあちらこちらがすす汚れており、首から掛けたタオルまでもが黒くなっていた
『ですがまだ見回りは終わっていません。続行致します』
『そりゃ御苦労なことだな
いや、機械人形なんだから疲れねーか』
『えぇ、お気遣いは結構です』
「………撥条が」
ボソリと呟かれた言葉を高性能なこの機械人形は聞き逃さなかった」
う〜ん……みんな、なかなか冷たいなぁ
仕事って大変だね
わかるよぉ〜? 私も日々働いてるもん
「撥条などという古い仕掛けの人形ではないのだが、訂正することはせずに黙って彼の後ろ姿を見送る
間違いを敢えて訂正しない。人間とはそういうもの
──記憶した」
なるほど!こうやって学習するんだね
「──やほォ♪ 此方、深紅の船 」
おぉ!! きたきた…!
場面5
「──此方東区
──指名手配犯を護送中。予定通り東区の委員会サマに引き渡すぜェ??
──了解。今から向かう
『フンッ、あの赤髪の賞金稼ぎ
相変わらず軽薄な喋りだな』
同じく無線を聞いていた短髪の狐面が不服そうな声を出す
顔が隠れているにも関わらず眉を顰めているのが容易に想像できた
『軽薄なのは貴様もだろう、吽形』
『何だと?!阿形は俺が彼奴と同じだと言うのか!』
『すまない。貴様の方が子供っぽいようだな』
長髪の狐面──阿形に揶揄われて更に不機嫌になる
『見ろ、紅くもなければさして大きくもないくせに遠くからでも目に付く』
吽形が顎でしゃくった先の船着場には、とても深紅とは言えぬセピア色をした小型の船があった
『面倒は起こすなよ』
『それはあの赤髪にでも言え!』
鼻息荒く先を歩く吽形の背中に向かって、阿形は軽く溜息を吐いた
場面6
『よォ〜ッス、阿吽のお狐サン♪』
船の扉を開けるなり、真赤な髪にこれまた真赤な衣服の長身の男が出迎える
さながら彼自身が燃え盛る炎のようだ
『馴れ馴れしく呼ぶな!』
『そうカッカすンなって、チビ狐チャン』
『お、お前は……!本当に無礼だな!
誰に口をきいていると…』
『おい、無駄なことをしている暇はない
早く引き渡してもらえ』
吽形が賞金稼ぎに食ってかかるのを見て、阿形は二人の後ろから声を掛ける
『ノッポ狐サンもヤッホ
獲物チャンはイイ子にしてもらってるぜェ??』
賞金稼ぎが足元の物体を粗雑に蹴り飛ばす
縄でぐるぐる巻きにされ、芋虫のようになった男がゴロリと2人の前に転がった
なおも元気に暴れているようで、随分と活きがいい
『御苦労だった
この者の身元が取れ次第、報酬は支払おう』
『ホント、苦労したぜぇ??
その分上乗せしてほしいンだケド』
場面7
『調子に乗るな!
大体、赤髪のくせに政府から正式に仕事を貰えているのが、どれほど有難いか…』
またしても食ってかかりそうな吽形を、阿形が片腕で制する
『騒がしいぞ、吽形
少しは“吽”と黙ってみないか』
その瞬間、文句を続けそうだった吽形の口は押し黙る
……いや、全く黙ってなかった
ただ「んー!!」とくぐもった声を出すばかり
だが言葉は発せないらしく、一連の様子を見ていた賞金稼ぎは笑い出す
『ハハハハハハ!!!!!
なンだよそれ、おっもしれェ!!!
毎回そうやって躾てンのかよ』
『今回は五月蝿すぎだ
お前も悪ふざけは控えろ』
『それはチビ狐チャン次第♪
とりま、報酬の件よろしくゥ』
『また後日連絡する
…行くぞ、吽形』
『……んんんー!!!』
芋虫男を引き摺り、船を後にする二人を、賞金稼ぎはヒラヒラと手を振って見送った
『さァて、オレは東区の観光でもさせてもらうかな』
阿吽の狐の背中を見送った彼は、街へと向かって歩みを進める
すっかりと夕陽色に染まった景色に、その姿は溶け入るように消えていった」
きゃー!!!
いいねぇ、この3人
こういう愉快な人達好きなんだよね
場面8
……ふわぁ、なんだか急に眠気が振り返してきたな
…………
すやすや……zzZZ.。o
場面9
「 \HELLO/ 」
(゚Д゚)ハッ!!
ごめん、一瞬寝てた
話しの続きを聞きたかったら、またおいで〜…
……むにゃむにゃ
寝起きで語る、誰かの話