君がいなくなった後の世界は

君がここに飛び込んだのは、前の年の春

桜が満開で

ホームにも舞っていた

君は全然そんなそぶりを見せなかったくせに

気がついたらどこかへ行ってしまった



君はまるで絵画の中から生まれたようで

毎朝見とれていて

毎朝好きになったんだよ



あの日のことをよく覚えているよ


いや、嘘だ


忘れている

わかっているはずのあの時の日付も

わかっているはずのあの時の時刻も

わかっているはずのあの時の列車の色も

知っているはずの君の顔も

知っているはずの君の声も

全て

全て

全て

薄れて色褪せる


君がこの世にいなくなったことは

とても恐ろしいことだ


だけどそれ以上に

僕が

僕自身の脳が

君の記憶を

保存できていないのが

たまらなく恐ろしくて


怖い

もしも

もしも君が

戻ってきてくれるなら

一日だけでもいいんだよ

写真を撮ろう

動画を撮ろう

そしたら

それもいつかは色褪せるだろうけど

僕の

気がついたら忘れてしまう

愚かな脳よりは

ずっと保ち続けるだろうから

君の姿を

君がいなくなった後の世界は

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君がいなくなった後の世界は

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-10-19

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