映画『ディスクロージャー・デイ』レビュー
身も蓋もない言い方をすれば、電脳化も義体化もしない『攻殻機動隊』。脳内で情報を処理する人間も含めたネットワークを駆使して、史上最大の国家機密を開示しようとする者と、それを阻止しようとする者の追跡劇をメインに観客を楽しませる。体験者と呼ばれる者たちが有する能力の違いなど、アメコミヒーロー的な側面も加わるところが設定として少し盛り過ぎな印象を受けるも、ストーリー展開に一切の無駄がないから、そういう部分もするすると飲み込め、あっという間に消化できます。
シチュエーションにも捻りがあって、世界情勢は朝鮮半島を震源とする危機に直面し、迫り来る有事に米国内は大混乱の状態に陥っている。とてもじゃないけど秘匿情報の開示に相応しい状況とはいえません。また主人公側に修道女を置くことで、その「存在」証明による信仰の揺らぎも議論の俎上に載せます。これが思いの外、物語に奥行きを与えるファクターになっていまして、神が創りたもうた世界の外側に足を踏み出すことへの恐れが未知への遭遇を阻む最大の難関となり、図らずも主人公サイドを窮地に追い込みます。使命を見失っても信仰を絶やさない彼女の手に、聖痕に模した傷が深く刻み込まれるのも示唆的で、クライマックスの場面を迎えて人類のバトンを体験者に託す立ち回りは非常に見応えがありました。
開示される情報の中身を変に誤魔化したりせず、ストレートに描き切るところも個人的に好感を持ちましたね。小さい頃、あの事件やあの姿をどこかで夢物語のように見聞きしていた分、地続きの現実として映されることが妙に嬉しくて、その「出会い」をリアルに感じられるほど進展した社会にもワクワクすることができました。そういう意味では、『ディスクロージャー・デイ』はかつて子供だった人たちにこそぶっ刺さる作品であるといえるかも知れません。飽和する情報の全てを吹き飛ばす邂逅に世界は正しく止まり、誰も知らない未来に向けて動き出す。オープンエンドの先に確保された余白はとても贅沢だと感じられます。その瞬間に覚える開放感こそ狙っていたのだとしたら、スティーブン・スピルバーグ監督恐るべしです。王道映画になし得ることを全部やっちゃってる超エンタメ作品なので、興味がある方は是非。お勧めです。
映画『ディスクロージャー・デイ』レビュー