そうむのおしごと
最終面接
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
石山ももこと申します。
はい、「ももこ」はすべて平仮名で。
気の強い母が、自分に似ないように、少しでも優しさをまとえるように…。と平仮名を使用したそうです。
前職では貴社と同業種の会社に勤めておりました。
営業職でしたので、その経験を生かして即戦力になれたらと思っております。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
2年目の部署移動
「ですので!提出期限を過ぎた申請に関しては受理できません!」
どうしてこうなった。
石山ももこ、今年で28歳。
昨年この「株式会社いいすまいる」に中途入社をし、2年目を迎えた。
入社後は営業部にてギラギラと働いていたのだが、半年後、人事部へ異動。
そのまた半年後の今、わたしはここ、「総務部」にいる。
「頼むよ石ちゃん~。俺と石ちゃんの仲でしょ~。」
「セクハラで訴えましょうか?」
窓口で喚いているこのオッサンは後藤部長。元営業部長、現在は人事部長だ。
入社後、営業部にいたわたしは、後藤部長と共に人事部へ異動した。
入社1年に満たない新人が人事部に配属されることが、そもそもおかしいのだが。
なんせ「株式会社いいすまいる」は万年人手不足。猫の手も借りたいところに、わたしが駆り出された。
「この申請が通らないと、俺のインセンティブがカットされちゃうよ~。」
「だから!何度も!リマインドお送りしましたよね!?」
「期日1日過ぎただけじゃん…。」
「泣くな!」
「ももこ」という名前は母が名付けた。
わたしの母はたいそう気が強く、それは自他ともに認めるもので
姑に「悪魔」と呼ばれるほどだったらしい。
気が強いとはまた話が違う気がするが。
お腹にできたわたしの性別が女だとわかり、母は「どうか自分に似ないように」と祈りを込めた。
春の優しい空気を感じる、柔らかくて女の子らしい名前に。
さらに平仮名で、もっともっと優しく柔らかく…。
そんな子に育つはずだったのだ。
「後藤部長、申請漏れは今回が初めてじゃないですよね!?」
できる限りドスの効いた声で。
「先月も先々月もその前も、期限を過ぎた申請を特別に受理したはずです!」
できる限り大きい声で。
「とにかく今月以降の申請は、受理しませんから!」
はぁ、本当に
どうしてこうなった。
そうむのおしごと