黒狼哭く(全文版)(制作進行中)
#百合 #ファンタジー #ミリタリー #高校生 #ライトノベル
『黒狼哭く』
不定期で断片的に投稿していくので、よろしければ読んでもらえると大変嬉しいです。
【あらすじ】富石県 珠菱市(とみいしけん たまひしし)の高等女学校に通う鳴波 紗桜(なるは さくら)は、当校の、銃装によって標的を倒す『銃術部』に所属するいち生徒である。ちょうど夏休みに入ってすぐ、彼女はある決断をすることになる。
――頭を射抜かれるのを感じた。
ゆっくりと、目を開けた。
思わずハッと上半身を起こす。とっさにおでこの真ん中を触った。……しかし、なぜ触ったのか、すぐに思い出せなくなってしまった。夢が原因ということは明確に分かるのだが、このようにして瞬とそれの内容を忘れてしまうのは、特に浅い夢によくありがちなことである。
思い出すのを諦めて、パタ、と左手をベッドに降ろそうとすると、ほんのりと、何か柔らかく、温かいモノが手に触れた。そっと見てみると、それは人の肩、そして、隣で、すーっ……と安らかな吐息を立てながら寝ている彼女――親友の、佐々木 舞香(ささき まいか)のものだった。
彼女は、しわくちゃの制服姿のまま、赤ちゃんのように両手を上げながら、とても深く眠っているようだ。
私は、熟睡する彼女の肩の手を頬に滑らせて、舞香のそれをむにゅ、とつまむ。「……うぅん……」と彼女は、少しだけむず痒そうに身体をよじる。
「……そっか。私たち、昨日から……」
ふっと昨夜のことを思い出して、私は赤面しているかと思うほど頬が照ったけれど、同時に至極幸せな微笑を彼女に向けた。
「……今、何時だろ」
私はそう独りごちて、部屋の時計を見る。二つの針は、午前十時七分を指し示していた。
お腹がムズムズする。昨夜の晩ごはんは二人とも食べていない。腹の虫はペコペコで、今にも口から飛び出してきそうだ。
「ごはん、作るか」
私はそう言いつつ、ベッドから立ち上がり、う〜ん、と背伸びをする。ふわぁ〜、と大きなあくびもついでに出てきた。
「……まい。ごはん作ってくるね。今日はキミの大好きな、半熟目玉焼きだよ」
ピン、と右手で人差し指を立ててウィンクする。彼女はまだ、すっ一……と、気持ちよさそうに眠っている。……昨日があんなに激しかったんだから、無理もない。
立ち去る前の最後に、私は彼女のほっぺにチュッ、とあまキスをすると、自分の部屋をあとにした。
コンコンコンコン――
まな板の上で、人参を切る包丁の音がこだまする。隣ではフライパンがジリジリと、目玉焼きを焼いている弱火の音が静かに響いていた。人参を切り終わったあとは、ピーマンの頭を取り、中から種がらを取る。フライパンを開け、ベーコンを裏返す。
一人の時の料理も、もはや手慣れたものだ。高校生になった時からシングルマザーの母が仕事で忙しくなって家を空ける時間が長くなったが、物理的に一人で家事をし勝手に立つことが長くなると、人は自然と行動を学習し、慣れてくるものなのだ。
ダンダンダンダン
彼女が部屋に入ってくるのを音と気配で察した。
「おはよ、舞香」
私は振り返らずそのまま舞香に挨拶する。
「……おはよ〜、紗桜。あ〜、だるぅ……。疲れて制服で寝ちゃってたよ、あたし。昨日、学校から二人で直行ベッドだったもんね!」
彼女は言いつつ椅子をガタっと引き、スマホを見ているらしい。
「ね〜。手、繋いで、即ベッドイン! だったねえ」
私はフライパンの中の卵を確認しつつ、返事をする。
「も〜、ほとんど記憶ないくらいだったね。そのおかげか、髪がぼさぼさ。スマホで見てもそんな感じかな? ……って、え?」
……ん?
「……なんか、ほっぺたに口紅ついてるんだけど。いや、あたしたち、昨日……ほら『なんかかんや』はしたけれど、ほっぺたにキスは、しなかったような……?」
彼女はもろ恥ずかしがるように、シュンと小さくなってしまったようだ。それを聞いた私も、一気に肌が紅潮してしまった。
「……あっ、ごめ……。それ、私のかも……。今日部屋出る時、我慢できなくて、チュッ、って……」
黒狼哭く(全文版)(制作進行中)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Bluesky (SNS) @ riribento