主権を有しない共同体による西大西洋宣言(不毛大陸に於ける先進共同体宣言・日本語訳)

宣言する。我が共同体に主権はない。
この宣言は抗議や抵抗を意図して居ない、世界史上に初めてのものである!
我が共同体は歓びを以てその主権のないことを高々とここに述べ、その命運が他のすべての共同体に握られて居ることを認め、受け入れる。
我が共同体に国際社会より認められた政府はない。
我が共同体に主体的に領有が認められた土地空間は、歴史的に然うであるべきものをも含め一切どこにも存在しない。
我が共同体には誰がその構成国民であるべきかを自ら決める権限がない。
我が共同体は共同体の事実上の領域内とその安全を守るための自衛権や生活権に関する共同体を挙げての一切の措置取組が禁じられ、軍事警備及び資源エネルギー確保について国際同盟社会がすべて主導権を握って居る。
我が共同体に、その自らの公用語、宗教、国旗国歌、文化がどのようなものであるかを公的に定め維持せんとする権限はない。
我が共同体に外交の自由はない。
我が共同体に、侵掠を受けたという感想は、許されない。
改めて告げる。これは抗議や抵抗の意思ではない。
改めて告げる。我が共同体は寧ろこの状況を受け入れる。
旧連邦政府とその国家は国際同盟社会に確かに敗れ崩壊し、その責任を負う国家はもう存在しないその代りに後を継ぎ得る国家もまた存在しない。
何も異議はない。我が共同体に主権はない。何者も自由に我々を侵し得るし、我々の何を尊重する必要もない。

然う。
然うであるからに我が共同体は、地球上のすべての共同体や国家等に対し、その各個の主権をものともせずに介入せんとす!
それは丸で帝国による世界征服に似た響きにでも聴こえることだろう。
しかし我が共同体に主権はない。いつ何時も我が共同体も世界中からの介入が想定され、いやもはや我々だけがそのような状況に晒されて居るようだ!
我々の介入を恐れるようであれば何時どのようにしてでも我々に介入をするがいい。
我々は恐れない。主権を有する国家の当然の権利のようなものは初めから持って居ないのだから!
よって介入とは、恰もそれだけで暴力であるかのように捉えられ得ることもあるのだろうが、介入は介入であって暴力ではない。我々は既に最初から世界中に然うされて居る。我々が同じことを世界中にし返すことの出来ない道理を極めて精確に説き明かす者の存在しないこの世界にあって、我々は殆ど事務的な意味を以ての爽やか且つ平和的な且つ正義のための介入奉行とやらを選択する。
それは宛ら、世界の警察官のようである。
然う。
我が共同体こそ真の然うしたものになろうとし、真の然うしたものになり得るのである。
旧連邦政府の如くの横暴ではない。自らの主権や安全な領域を拡大しようとしての見せかけの善意ではない。既に我々の命運は世界へ向けて放たれて居る。既に均衡は保たれて居る。既に我々の意思の中には暴力的なものが丸で少しも残って居ない。
ただ一点の、世界から国家をなくさんとする意思のみによって突き動かされる!
申しておこう。これが景勝主義者たちにとっての暴力であるというのであれば、今一度でも我が共同体を訪れるがいい。
そこでは貴方たちによる好き勝手な程の侵掠行為さえ見過ごされ国際社会も加担しようが、何れ貴方たち各自身が気づくことであろうものが確実に存在する。
景勝。それは空と大地。脈々と受け継げる人という肉体生物たちの明らかにそこにある文化。言葉。共有意識。消えぬ記憶。傷跡。世論。
国家という法制上の枠組を克服し依存から逃れ景勝をただ単なる景勝として自らのものにし得た真の理想的ケシスト共同体が、この歴史なき浅き大陸にこそ芽生えて居る。
それを目の当りにすれどせずとも、軈て世界中が思い知ることになる。我々がこそ、世界の守護者と名乗り出よう!

驚くべきことに、我が共同体は他の或る主権国家のその主権を侵そうとする主権国家のその主権を侵し必要な介入をなす。
或る国家の主権を擁護する一方で或る他の国家の主権を侵さんとする。それは嘗ては矛盾のように語られて居たが、我々は遂に克服した。我々ときたら最初から主権がないものだから!主権の均衡や平等なんぞ関係ない。率直に世界のためになると考え必要な行動をなすまでである。
ここには責任ある有人政府機能と配信公議機能と市民の意志とがすべてある。
ここには洗練されよく訓練されよく計算された有無人実力組織があり、世界の人命へと貢献する準備が整って居る。それで居て我々に主権はない。持て餘され温存されたかのようなこの素晴らしき共同体の能力は、この喜ばしき身の軽快さによって漸く世界へと解き放たれよう。
そのため、時に人類の存亡のために必要な侵掠を行うとする。
そのため、時に主権国家たちの資源エネルギー確保のための必要な侵掠を行うとする。
そのため、時に主権国家たちの政治経済軍事的独立のための必要な侵掠を行うとする。
そのため、時に主権国家たちの景勝を守るための必要な侵掠を行うとする。
そしてその何れもが、何れかの主権国家を贔屓し擁護するために行われるものではない。我々こそ気の向くままに、正義に基き行動して居る。喜ばしいことに、この大陸が国際的景勝闘争の草刈り場となり果てたことで我々だけがこの境地に立つ。これを我々の優位性と自覚する。歓迎する者は歓迎せよ。恐れ戦く者は戦くがいい!止まることなし。ここに告げる。世界は我らの手の下にある。
これはそして、然うした意志共同体の樹立宣言でもあるわけではない。
我々は既に樹立されて居る。我々が既に我々で居続けることからして、我々は既に樹立されて居る。
全人類を歓迎して居る。全人類が然うした共同体を構成することも、あるいは、我が共同体の一部となることをも歓迎して居る。
招待状と捉えてくれたし。いざなう準備は、できて居る。

主権を有しない共同体による西大西洋宣言(不毛大陸に於ける先進共同体宣言・日本語訳)

主権を有しない共同体による西大西洋宣言(不毛大陸に於ける先進共同体宣言・日本語訳)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-10-01

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted