桜落葉
踏み行きし 桜落葉の 乾く音
まだ九月なのに並木の桜は、かなり葉を落としていた
園路には、その桜の落葉が沢山あって、歩いてゆくとその落葉を踏むたびに乾いた淋しい音を立てた
少し上り坂の道の脇にはソメイヨシノの大きな木があって並んでいた
4・50年ぐらい経った木だろうか、幹もかなり太く、枝も大きく広がっていた
園路を歩きながら、足元の黄色くなった落葉が気になってその一枚を拾ってみた
黄色くなった葉のところどころに丸く虫が喰ったようになっていて穴が空いていたので病葉かと思ったが、それはもうただの落葉に違いなかった
桜の木は余りに早く葉を落としてしてしまうと、寒くなった頃に花を咲かせてしまう事がある
この桜にも、或いはそんな事があるかもしれないと思った
静かな桜の並木道には、犬を連れて散歩する人や、運動に歩く人、ジョギングをする人などが通りすぎてゆく
ズック靴を履いた私は、一人ゆっくりと桜の下の園路を歩いていった
足元に散っていた沢山の落葉は、いずれ公園の清掃をする人が片付けるのだろう
その仕事はシルバー人材センターの人達の仕事だった
私は枯れた木の伐採を役所から委託されていたので、その現場を見に来たりしていた
大きな桜の木で、一本だけ半枯れの状態の木があったので、それも伐採をした
いつもは伐採の作業の前に、木の供養にと、お米と塩とそれにお酒を伐る木に撒いたりかけたりもしている
しかし作業の都合で、その桜の木に撒くのが間に合わなかった
やむなく作業をした翌日に、お米と塩とお酒を桜の切株に撒いたりした
桜の木の切株の直径は約60cmぐらいあった大きな木だった
樹木の死刑執行人は寂しいという言葉を使う
あんたはそれも仕事だろうと言われそうなのだが、感情はいつも嘘を付かない
太い幹をチップ材として売却した僅かなお金は、いつも供養金としてしかるべきところに納めさせて頂いている
木の命と引き換えに頂いたお金は使えないと昔から思っている
バチ当たりのないようにという、勝手な罪滅ぼしなのかもしれないのだが、そうした方が作業の安全のためにも、後々のためにもいいと思っている
秋の深まりは冬へと続いてゆく
空調服を着ながら作業をした季節は、いつの間にかすっかり終わりを迎えていた
桜の落葉は、まだ完全な枯葉ではないものの、踏めば寂しい音を立てている
桜落葉