1999-06『新・竹取物語』あでゅー


 昔々、竹取地方のある村に竹取の翁(おきな)が住んでいた。
 ある日、竹取の翁が竹を切っていると、目の前に肌衣(はだぎぬ)をまとった若い女が現れた。何という可憐さ。竹取の翁は、見とれて呆然と立ち尽くした。
 その女は言った。
「その方、この竹林になぜ入って参った。わらわの安息の地を汚すもの。その方は、悪しき者か?」
 甘い声と香りに平静さを失いつつも翁、女の眼を一点見つめながら答えた。
「我は、この竹林の正当な持ち主。そして、この竹は我が書物を束ねる物。また、悪しき人かと尋ねられれば、我人であるゆえ、決して善い者とは言い難いことよ」
 その女は問うた。
「では、どうすればその方は、この竹林をそっとして置いてくれのか? そちの願い事を叶えるゆえ、申してみるがよい」
 何という幸運。ここぞとばかりに翁は言い放った。
「さすれば、我に世に出ても恥ずかしくない文才。そして、美しいその方が欲しい。この二つを満たさば、我この竹林より永遠に立ち去ろう」
 その夜、翁の蔵に数多の書物が積まれた。そして、あの可憐な女が寝所(しんじょ)に現われた。その日から、翁は書物を読み漁(あさ)り、夜なよな女の身体を貪(むさぼ)った。
 しかし、翁の幸せは長く続かなかった。二人が出会って三年目の夏の満月の夜、女は大勢の守護者達に迎えられ、翁の下を去って行った。

 何を隠そう、その女とは清和源氏の一族で源満仲が娘『源香耶(かや)』なのでした。竹取の翁、嵯峨源氏の一族で源順(したごう)は、その女が自分の姪であること、そして自分とは身分違いの清和源氏の娘であることを知り、保身の為に竹取物語を書くのでした。その物語の中で香耶は『かぐや姫』、その人だったのです。

 その後、竹取の翁はその物語と数多の歌によって世に認められました。そして、一人の妻をめとることなく、ひっそりとこの世を去ったのです。
 翁七十三才。一人の女を愛し続けた男の寂しい最後でした……。

1999-06『新・竹取物語』あでゅー

1999-06『新・竹取物語』あでゅー

1995から1999年のニフティサーブ時代の小作品です。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-09-25

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