1999-05『約束』byあでゅー
その町へ初めて行ったのは二十六の夏
帰省の途中の道草だった……
夜遅く駅に着いた私は、重い鞄とギターを抱えて汗だくになって宿を探した。そして一泊五千円の安ホテルに何とか落ち着くことができた。
翌朝、私はレンタカーを走らせ修道院巡りをした。ひととおり見学して満足した私は、最後に行った修道院で名物のクッキーを選んでいた。その時、幸運にも修道士達が私の横を通り過ぎた。
私は失礼のないようにそっと彼らを目で追った。その穏やかな物腰と土に汚れた贅肉のない手。それが彼らの行き方を表している様に思えた。と、その時だった。
「おーい。○○ー」
私のアダ名を叫びながら駆け寄る人がいた。黒い服に包まれた修道士。それは意外にも田舎の同級生だった。
「お前、そんな格好で何やっているんだよ?」
「いやーーー。えへへ」
相変わらず笑ってごまかすアイツ。昔のままだ。
「元気そうだな」
「お前もな」
彼が、なぜこんな所で修道士をやっているのかを聞きたかったのだが、それは彼に失礼に思えて私は聞けなかった。そんなだから、何を話してよいのか困ったが、当たり障りのないように、昔のことや同級生のことを話したように思う。そして別れ際に私は彼に言った。
「今度の正月にクラス会を開くから、お前も来いよ」
「うん、分かった」
連絡用の住所という名目で、その修道院の住所と彼のもう一つの名前を聞きだすことができた。
もう、あれから九年がたってしまったが、あの約束は果たすことが出来なかった。それは、彼がその年の秋に病死したからだった。アイツはしっていたのかもしれない。ふと、そう思った。
私は、毎年その修道院へ行く。そして嘯(うそぶ)くんだ。
馬鹿だな
寂しい場所を選びやがって……
1999-05『約束』byあでゅー