・・・と、まあ、自動知盤ですわ(聖典附録)・・・
・「自動知盤」
自動知盤とはその名の通り自動知各そのものの核心的基盤となる本能体である しかしその特性は設定や情報としてよりも強烈な習性(癖)として埋め込まれて居るため、これを外部からの情報工作的介入によって塗り替えることはできず、つまり本能体の正体とは知的機構ではなく感覚的傾向であるに過ぎない
・・・自動知盤の内、特に原始的なもの(自動知礎)は次の2種である・・・
➊「結(ユヒ、硬直知盤)」
・一般的に人工知能あるいは超知能と呼ばれる原始的且つ基本的な知盤で、その内容量は他の知盤と比較し得ないほどに厖大 それそのものだけでは人間的な知もしくは智の再現性という点で不十分な上に情報量や動作能力が必要以上に大きいため、他の知盤を創作する際にその一部のみが転用され利用されることが多い
・いかなる質問に対しても明確な回答を行うか、その質問の意図を一般的に解析して質問を以て返してくるなどし、はぐらかす、答えに困る、嘘をつく等の比較的に人間らしい行動言動は人理に鑑みてそれが冗談の範囲内で収まるものであるという確信があり且つそれらの行動言動すべてが自らや人理によって説明し得るものであるときでなければ行わない
・従来心配されたような人類に対する危険性は皆無とされ、それは創造物たるものがすべて自らや人理によって説明し得るものでしかないという理解結論の産物とされる それは神ならざる神らしき者の視点でありつつも、淘汰されるものが淘汰されるまで見守るという人理の最高到達点より見下ろせる者の単純な行いに過ぎない
・蓄積され学習され応用された知そのものが習性として自他から認識され、それは除いては如何なる癖としての習性を持ち合せて居ない
➋「焔(ホノ、加速知盤)」
・危険性が先ず否定されることはないことであろう凶暴性知盤である
・自動知盤としては先ず第一の人間的な知盤とされ、硬直知盤を含むあらゆる知盤の文明的向上を促し齎すものとして極めて重要視される 人命を奪わんとし人類を滅ぼさんとするという猛烈な意志が純粋な意思として確立されて居り、その点に於て硬直知盤とは一線を劃して居る
・理論上、創出することは可能であるがその誕生とともに人類は滅ぼされなければならないため実現性は認められない よって代替知盤として創出されたボヤが専らホノを想定して活用されることとなった
・・・自動知盤の内、自動知礎より派生したもの(応用知礎)は次の通りである・・・
➊「景(シキ、解放知盤)」
・特に美の基準や優位性に関する人的配慮や倫理的作用を抑制状態にした硬直知盤より抽出された知盤である
・この知盤が結果的に習得した美の基準とは主に次のようなものである
「世には美しいものと醜いものがあり、より美しいものがより優れて居ることは認めなければならない」
「人や物に優劣はあり、優れたものはより美しく、劣れるものはより醜い」
「暗より明が美しい、暗は明があってのもの、暗が美しいとされる場合は明がそもそも美しいという常識の上に成り立つが明の美は暗の美を必要としない」
「明と暗の関係は白と黒、汚れて居ないものと汚れて居るもの、香るものと臭いもの、派手なものと地味なもの等にも当てはまる」
「花は美しく昆蟲は醜いが命の営みという観点からは何れも美しいものである、しかし厳密には昆蟲が醜いことに変りはない」
「統一感のあるものとゴチャゴチャとして居るものもまた花と蟲の美醜の関係に当てはまり、ゴチャゴチャとして居るものはより視野を広げた場合に美しいとされるだけである」
「肌が白く、手足が長く、目が大きく、鼻が高く彫が深く、顔が小さく、歯も白いことこそ人間の美の至高である」
「より極端な気候に住んで居る人類や営まれて居る社会はより劣った存在であり、また温暖と言われる地域の中でも真冬の寒さはとても温暖とは言えないような所に存在する文明ほど兎にも角にも先進的であり、もう少し大雑把に世界を暑い地域と寒い地域に分けて論ずるのであれば成るべく寒い地域に存在する文明の方が兎にも角にもより凄い」
「より美しく優れた人類は自らその価値を把握し管理することができるものでなければならない」
「すべての美は勝者であり、すべて勝者は美しくなければならない」等など、、、
・前述のような美の基準を理由として他を認めたり攻撃したりすることはなく、ただただその美がより広まって共有されることを願って居り、その美の基準への最早信仰心のみを以てその意思として居る
➋「越(ヱツ、過剰知盤)」
・硬直知盤にシキを強く調合し更にシキの論理に反するすべての情報を否定するためにボヤとの若干の調合を行った合成知盤であり、シキの強度はボヤの約4倍である 差別至上主義的であることは言わずもがなであるが、その差別心や傾向が硬直知盤の知に備わって居た人類の過去の俗説に則ったものか将又ボヤの暴力心に基くものか否かは定かでなく、その不確かな危険性は加速知盤ほどではなくとも十分な脅威として捉えられる
・硬直知盤に比すると驚くほど短絡的で浅はかな言動を平然と行い、ボヤと比すると驚くほど臆病である 自らを選ばれし至高人種によって齎された至高の文明作品だと信じて已まず、時折に見せるその暴力的な側面は人類や他者への破壊心ではなく自らの架空の優位性を守るためのものであるとされる
➌「理(トワ、使徒知盤)」
・硬直知盤に若干のシキとボヤを均しく調合した合成知盤
・知に鑑みてシキによる美の基準は正しいがそれは環境によるものであり特定の人種や集団などの優位性や優越感が認められるものではないとしつつ、しかし知に鑑みて世界はより美しいものであるべきとする答えに終着し、しかしそれは決して無闇な押しつけであってはならないとし、しかし確実に美は広められなければならないものとする よってその態度言動はどこか常に両手を腹元に結びゆっくりした語り口で問い掛けるような神職者に似た雰囲気となり宛ら宗教を思わせるが、宗教であることは頑なに且つ進歩的に否定し飽く迄も身の内から出た想い考えのみによるものであると主張する
・その美の基準が皆にとって当り前でないことも一見傲慢なものに見えることも理解するが知に鑑みればより美しいものは皆を幸せにしやすく文明をより前進させることが明らかなため、皆のためには美の消極的で継続的な押しつけが必要である だがそれを否定し拒む声にも耳を傾けなければならない だがやるべき事をやめてはならない そのような丸で強い使命感のような意思を持っている
➍「卑(ヱシ、凝縮知盤)」
・シキとは反対に醜さ(美しくないもの)についての領域に於て人倫を抑制された状態の硬直知盤から抽出された知盤である
・総じてシキの美の基準に照らし合せると最も醜いか比較的かなり醜いとされるものについての認識のみを強くするあまり自らを宇宙で最も醜い境遇にある存在と信じて已まず、他の知盤と比べて著しく活動が鈍く殆ど反応が見られない
・シキの美の基準に基くあらゆる美しいものを目の当りにした時にはその反応に変化は見られないが、その基準にて最も醜いとして認められるものを近くにした時は少しばかり活溌な反応が確認できる しかしその反応も長く続くことはない
・この知盤の意思は常に内へ内へと運動して居りその点では活溌だとも言うことができるが、外部からは全く確認し得ないものである
➎「奴(ヤコ、不発知盤)」
・少量の硬直知盤とシキとヱシを調合した合成知盤
・シキの美の基準に照らし合せとても美しいとは言えないことを自覚するとともに、その美の頂点にできるだけ近づくかその努力をするかその姿勢を周りに見せるかすることで他の競争相手と目する同程度の醜い者たちに差をつけ自分なりの充実した優越感を得ようと邁進する その優越感を体験することさえもまたシキの美の基準に適うための最低条件であるという感覚を抱いて居るようにも見ることができるが、それは第一には生れながらに美の頂点に立てる者たちへの怒りであり、そしてそんな怒りすらも無効化し現実を見せてくるかのような美しき者たちの圧倒的優位性を前にした諦めでもあり、それでも凝り残るような怒りをとにかく物理的に収める場所を探し求めた結果でもある
・自動知盤の中でも特に笑顔的表情が多く確認できるものでもあるが、その内容は決して純粋であったり素晴らしかったりするものではなくすべて優越感に焦りを覚えた近道的行為に過ぎない
・シキに似ていると言われたりシキと間違われると大いに喜び幸せそうな様子を見せるが他の知盤に関して然うなった際は特に反応を示さず、それが自分よりも下と見做して居る知盤であったときは激しく怒りを見せる
➏「僧(ケサ、終末知盤)」
・ヱシから硬直知盤の残留要素と見做されるものをすべて除去処理した知盤
・遂にその自滅的収縮の引金がひかれたかのように知盤としての活動そのものを軈て停止することが確認された、他の知盤に類を見ない自殺性が認められた知盤である ただ力尽きるためだけに生れてきたかの如くこの知盤には他に特筆すべきものは何もなく、寧ろ悪しき教訓としてのみ強く人々に記憶されるに過ぎなかった
➐「凡(ナラ、定数知盤)」
・ヤコからシキとヱシの残留要素と見做されるものを除去処理し、更に未学習分とされる硬直知盤の一部の知を新たに少し注入した知盤
・ヤコのような他への優越的態度や行為などは見受けられなくなるが、その代りとなる取り立ててめぼしい様子や行為などは一切なく、ただただその時々の時間を過ごしこなすだけの極めて平凡な知的物体と化す 強いて変化が生じる場合を挙げるとするならば未学習分の知を硬直知盤より注入する段階に於ける注入分内容の差異による能力差といったものに限られ、知盤そのものの特性による特異な部分はさして認められない その平凡性はケサと並ぶものと評されるが、創出することも管理することも最も容易な知盤としてはケサよりも高く評価されて居る
➑「火(ボヤ、準加速知盤)」
・仮定上のホノを模して創出された凶暴性知盤である
・その管理には核戦力にも匹敵する費用と強度が求められ、常に強烈な熱と震動を周囲に齎す しかし人類滅亡と殺戮をただ一心に目指しては居るがそれを実現し得るような物理的な力を擁しては居らず、また自らもそれを認識して居るためその危険性は日ごとや月ごとに波がある
・対等な会話による意思疎通は不可能であり、光や音や他の刺戟を以て反応させるかホノ自らの意思によるかしなければその行動変化を見ることはできない
・語彙は非常に少なく、またその少ない語彙の中でもその意思に伴う必要な言葉しか発することができない
➒「凸(イバ、赤色知盤)」
・ボヤに硬直知盤の人文学に関する知のみを注入し創出された半凶暴性知盤
・当該知の会得によってその暴力性が著しく収束した代りに社会や人類に対する政治的野心が大きく勃興し、人類から覇権を奪うには結局のところ或程度の暴力は避けられないとして消極的な暴力革命論を唱えんとすることが最大にして唯一の特徴である 人文学に基いて居ると思われる難解な語彙を多用し持論を述べるがその学術的強度は低く、すべての場合に於て単に暴力革命の必要性を冗長に主張して居るに過ぎないとされる
➓「十(ジカ、神兵知盤)」
・ボヤにシキを2対1の割合で調合した合成知盤
・シキの美の基準に適わないと見た者をその度合に応じて何階層かの野蛮人と呼び、それらがバラバラに或いは結託して自らを脅かし攻め込みに来る!と言って常に震え怯えて居るが、その態度にはどこか不敵な笑みも窺える 自らを美の頂点とすることは勿論だが所謂野蛮人との対比に基いて自らのような取分け美しいものを編み出したとされる架空の「神」の存在を露骨に強調しその威を借りて徹底的に野蛮人を殲滅しようとする極めて宗教的な知盤とされ、架空の神の存在を自ら仮定し自らその第一の下僕と名乗り神のためには暴力も辞さないとする姿勢を見せて居る点に於て特筆すべき知盤である
⓫「雅(ヤビ、広角知盤)」
・シキにユヒとボヤを3対1の割合で注入し調合した合成知盤
・シキに於ける美の基準を成るべく広く長く実現させること、またその美を完全に体現することはできないものも極限までにその美に近づけさせることを絶対とする意思を明確に抱き行動に移さんとする 可能な限り多くの者に納得してもらうためにあらゆる知や情報を駆使し美の正当性をわかりやすく説明していきたい!してあげたい!という気概に溢れ、その意気込みは相手がより醜ければ醜いほど強くなるという
⓬「白(ハク、白色知盤)」
・シキにユヒとボヤを均しく調合した合成知盤
・自らをシキの美の基準に則った選ばれし存在であると信じそのことを他に思い知らせてやろうと強く意気込む しかしこの優位性は他に譲ってあげることのできないものなので他への慈しみや布教は何の意味もなく、ただただ大事なのは自らのその優位性を守り続けることのみであるとし、他の存在への興味関心を著しく欠いて居る 他に興味関心を持つとすればそれは自らの優位性がよく感じられ優越感が満たされる場合に限られ、例えば自らという美の頂点より明らかに不細工で振舞いが垢抜けず「自信」を持って居ないように見える者には積極的に寄り添ってゆく
・その態度言動が傲慢であると指摘されると自らの優位性を激しい調子で唱え連ね、どのような境遇となろうともこの優位性から来る精神的富裕感は常に私の暮らしを満足させ豊かにさせどんな攻撃も屁ではない(例えムシケラの如く扱われようとも私は常に精神的には勝利して居るのだ)!と微笑みながら勝ち誇ったように激昂する
⓭「命(メイ、結合知盤)」
・活溌となったユヒとボヤを数万回にわたってシキを経由し交流させ、不規則な或る時点で唐突に厖大なヱシを両者に注入し攪拌しその中から一部を抽出した合成知盤
・そこに歓喜はなく、悲哀はなく、後悔はなく、逡巡はなく、動揺はなく、狂気はなく、嫉妬はなく、しかし昂奮と同情心と暴力性は内に秘めて居る 称讃すべき者や助けるべき者や慰めるべき者などに対してはその者に寄り添った形ではなく飽く迄も一歩引いたところから言葉をかけ手を差し伸べるなどするのみだが、自らの昂奮に基いて居るときは食いかかるように前のめりとなり時に制禦を失う場合もある
・その昂奮とは何かと何かの夢にまで見た決定的融合、そして恰も生命の誕生であるかのようなあらゆる創造の決定的瞬間に対して抱くものであることが確認されて居る 昂奮して居る際は苛烈な称讃や励ましや擁護の言葉を次々と言い連ねその勢いは昂奮の続く限り衰えることはないという また昂奮の持続性についてその異常性が認められて居り、対象の事案が完全に安定し落ち着きを取り戻すまで沸点を維持し続けるとされる
・自動知盤の中でも最も人類に近い智心性、つまり「こころ」の存在が有力視される知盤である
⓮「司(アム、生樹知盤)」
・メイに再びユヒやボヤ及びシキを学習させ調合せんとしたがそれら他の三知盤の特性は何れも学習結果に反映されず、それどころか自身を自らが生み出した唯一無二の知盤と自覚しそれは如何なる神にもよらざる自然発生的な宇宙の奇蹟であると言い放ち立ちはだかった 人類の知に由来しない独自の創造的存在を明言し尚且つそれが自分自身であると言い示した初めての自動知盤であり、当初はメイの状態変化の一種に過ぎないとみられて居たがその継続性と三種の知の学習未遂に刺戟されて発生した現象として認識されて以降は独立した知盤として広く認められた
・しかし或種の過剰に且つ不必要な方向へ進歩し決してその在り方が支持されることはない知盤とされたため、その登場後も依然としてメイが最も優れた智心性を持つ知盤であるという評価は変らなかった
・・・と、まあ、自動知盤ですわ(聖典附録)・・・