ちっちゃくて可愛いパフェ
会話しかない。
息抜き2。
うっすらミステリー
①とある青年作家を告発する
②事実は後で決まるもの
③再度名を知る
④幻惑を捉える
⑤列車が停まる
息抜き
⑥あのお酒はどうなった?
→⑦ちっちゃくて可愛いパフェ
「こういう夜っていいですよねえ」
「私はそうは思いません」
「そんなこと言って今日はご招待くださったじゃないですか。あ、私はジントニックで。度数はなるべく抑えてください」
「いっそ水だけ飲んでいたほうが潔いというものを」
「先生はなんにします?」
「オレンジジュースで」
「え? いいんですか?」
「わざと拾って面白がらないでください。私は……そうですね」
「よかったら選んであげますけど」
「ジントニック。度数はなるべく抑えないでください」
「んー。まあそう言うんじゃないかなと思いました」
「……」
「先生。あのときの、結局どうなりました?」
「あのときの?」
「とぼけないでくださいよ。あのときのギムレット」
「何の話かわかりません」
「コーヒーは?」
「知りません」
「飲んだんですね」
「飲んでいません」
「あれ? ついさっきは知らないと言ってたような」
「……」
「わかりやすいですね。ねえ先生、もうバレてるんですから、一体どんな燃え盛る恋愛をしたのか私にぜひ」
「不公平ですよね?」
「は」
「マスター、今日はケーキないの?」
「今日は寝かせるやつじゃないんだよねえ。ああでも、今はほかにお客さんもいないし、よかったらパフェでも作る? 3人分だからちっちゃくなるけど」
「食べたい。マスターのスイーツ美味いんだよなあ」
「そうでしょう? どうして私だけが過去の恋愛遍歴を漁られているんですか。貴方のほうはどうなんですか」
「前に興味ないって言ってましたよ」
「それはそれ、これはこれです。ほら、どうぞ。貴方だって一応大人なんですから、ひとつやふたつ何かしらあるんじゃないですか」
「うーん……まあ、そうですね。一応ああいう家柄なので、勝手にそういう人が決まってたっていうのはあったんですが」
「その人は今の貴方を?」
「さあ」
「さあ?」
「たぶん知らないでしょう。口は堅い一族なので。それに私、とっくに振られてましたし」
「どうせいつも内心を読んだようなことを言っていたんでしょう。気持ち悪いですもんね、そういうの」
「いや、私が小説ばかり書いていたので。普通に呆れられました」
「……」
「あと、そうですね。こういうことがありました」
『私のこと、実際のところどう思ってるの?』
『将来結婚するんだろうなと思ってる』
『それは貴方の意思なの?』
『そうとも言えるし、そうじゃないとも言える』
『わかった。貴方はいつも小難しいものね。じゃあこれだけ答えて。私のこと好き?』
『興味深いとは思う』
『ねえ、だからその興味深いってなんなの? いつもそうよね。好きだなんて言ってくれたことない。勝手に決まった縁談なのはわかってるわ。私だって最初は不満だった。けど私、貴方のことちゃんと見て、小難しくて自分勝手だけどちゃんと情があるってわかって、今はちゃんと好きになったの。これだけ聞いて、まだ私のこと興味深いだけ?』
『だけだなんて言ってない。でもそこまで考えてるんだ。やっぱり興味深いよ』
「女性にぶっ叩かれたのはあれが初めてでした」
「……」
「それから会ってません」
「そうでしょうね」
「さすがに好きでもないのに好きと言うのは酷いと思って。家が決めたことだったので、どうせ私が拒んでも進行するし」
「災難ですね」
「本当に」
「女性のほうです」
「意志の強い女性でよかったです。力技で自分の未来を勝ち取ったということですから」
「……まあ、そうかもしれませんね」
「じゃあ私の話は終わりですね。次は先生です。最初から教えてください」
「最初ってなんですか」
「出会いの一端からということです」
「何の話かわかりません」
「はい、パフェできた」
「すげー。ちっちゃくて可愛い」
「早く食べてね。ほかのお客さんが来るかもしれないから」
「ねえボス、見て。ちっちゃくて可愛い」
「本当だ。ちっちゃくて可愛い」
「何故貴方が反応するんです? 彼は私に言いました」
「はい。だから先生に繋ぎました。ちっちゃくて可愛いって」
「貴方は本当に……」
「なんです?」
「……なんでもありません。確かにちっちゃくて可愛いパフェですね」
ちっちゃくて可愛いパフェ
息抜きはここまでだな。
オリバーはしばらく出番なさそう。