映画『踊る大捜査線 N.E.W』レビュー

 レジェンド化した『踊る大捜査線』のこれまでの歴史と、そこから先で待ち受ける新たなステージの潮流を描く一作。セルフオマージュで劇場に笑いを生む強みがあるも、新旧のキャラクターが水と油のように入り混じるし、ハリウッド映画を踏まえたメタ的な描写が過ぎる面もあったりで、どこに物語のピントを合わせたらいいのか戸惑う瞬間が少なくなかったです。
 しかしながら一方で、本作のメインとなる連続殺人事件を中核に置くと見えてくるものも多く、例えば今までなら暴力団の関与を疑うべき銃殺という実行手段を女子高生が簡単に手に入れることができるぐらい、あらゆる領域の敷居が低くなった社会の実相に迫るにはどうしても新しい血が必要だし、集合知の有用性あるいはビッグデータの活用を積極的に評価する必要がある。そのためには①デマや噂が飛び交う情報のカオスにどう篩をかけるか、②憲法で保障された人権であるプライバシーの権利と捜査の必要性との調和をどう図っていくかなどの問題に国家機関として対処しなければならず、二項対立の力学で断絶しかねない世代間のギャップを埋めるために、かつての和久さんのような存在がどうしても求められる。そこで白羽の矢が立つ青島俊作は、新たなバディとなる須永あかねや三浦秋から「3歳児」と揶揄されるほど今も立派な問題児で、けれどもうかつてのような無茶をしない。というかできない。還暦手前だから。本当にたっくさんのことを学んできたから。
 マイルドな感じで仕上がった今の青島が最終的に所轄に戻されるのは、だから必然なのだと思います。彼のやることなすことがかつての『踊る大捜査』を物語るし、第二湾岸署を舞台に始まるであろうこれからの『踊る』の確かな土台になってくれる。その大切な役目を彼に背負わせるには、本作のような描き方しかできなかったのだと私は考えます。次回作があるなら間違いなく主人公に格上げされること必至の須永あかねが隣にいれば、かつての青島は直ちに甦るし、W主人公としてあかねと並び立つと期待する三浦秋と対面すれば、角がまあるくなった青島の振舞いに薫風香る想いを抱く。この三人の続きこそ観たいよなぁと強く感じるのは、映画の狙いとして成功していると評価したいですね。ここで終わるのは余りにも勿体無い。
 どんな作品にも賛否はあって当然なので、迷われてる方はとりあえず劇場の座席に身を沈めてスクリーンで流れるものの全部に身を任せて下さい。各々の中で息づく『踊る大捜査』はそれで目を覚まして、勝手に駆け抜けていくはずですから。お勧めです。

映画『踊る大捜査線 N.E.W』レビュー

映画『踊る大捜査線 N.E.W』レビュー

①結末に触れるネタバレを含みます。事前情報なしに鑑賞されたい方はご注意下さい。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-09-22

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